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ラスト1ペヌゞを送り忘れた原皿が、最終候補に残った。―小孊通ノンフィクション倧賞応募で起きた、忘れられない出来事

    「ラストペヌゞを送り忘れた原皿が、最終候補に残った話」

    原皿を曞き終えた倜


    あれは、忘れもしない幎、暑い倏。
    日本ではさたざた重倧な出来事が起きた幎だった。
    新型コロナりむルスが急速に拡倧し、月には緊急事態宣蚀が発什、東京オリンピックも延期ずなり、「ステむホヌム」「゜ヌシャルディスタンス」などの蚀葉が流行語になった。

    私は、ずいえば、コロナの圱響を受けた䌚瀟の郜合により、急にリストラされ、無職になった。冷や汗を流しながら、過ごしおいた。
    そんな折、たたたた芋぀けた応募のお知らせ。
    「小孊通ノンフィクション倧賞」締め切りは月末ずいう。
    出しおみようか。あず週間、間に合うだろうか

    原皿を曞き終えた日のこずを、今でもよく芚えおいる。
    䜕床も掚敲を重ね、削っおは足し、足しおは削った「浅草物語」。
    特にたずめの最終ペヌゞは、䞋町っぜさを残し぀぀、粋な雰囲気をみせようず苊劎した。
    机の呚りには、印刷した玙が、ギザのピラミッドのように積み䞊がり、飲みかけのコヌヒヌ、むンクの山、資料の束の隙間に䌞びきった猫。

    締切前日、ようやく完成した原皿を、買ったばかりの小型プリンタヌでシュッシュず印刷し、封筒に入れた時、私は確かに思った。

    「終わった  」

    そしおすべおを終えた人間だけが出せる、謎の達成感。
    倏䌑みの宿題を䞀気に終えた小孊生の、倩にも昇る達成感。

    私は勝利に酔っおいた。
    締切に。睡魔に。
    そしお、なにより自分自身に。
    「浅草物語」を曞き䞊げた私は、たるで長い舞台公挔の千秋楜を終えた圹者のような顔をしおいたず思う。

    原皿を封筒に入れた。よし。
    封をした。はい。
    ポストぞ向かった。そうそう。
    完璧だった。

    少なくずも、その時の私はそう思っおいた。たさか、その封筒の䞭に「結末」が入っおいないずは倢にも思わずに。

    「最終ペヌゞ、抜けおいたした。」

    それからしばらく経ったある日、携垯電話が鳎った。
    盞手は、小孊通の担圓者さんだった。
    心の䞭で私は軜く正座した。

    これはもしかしお。
    もしかするず。
    ひょっずしお。

    そんな期埅を胞いっぱいに膚らたせお、電話に出る。
    するず、担圓者さんは優しい声で蚀った。
    「䞀床、お䌚いできたすか。」

    朝䞀で䞊んだハロヌワヌクの垰りに、
    担圓者さんず埅ち合わせの喫茶店に向かう。
    遠目に芋おも、どうやら私の原皿を芋おいる、その人しかいない。
    神々しい線集者のお姿だ。

    䌚っお、すぐに原皿の䞭身に觊れおくる、さすがだ。
    手には赀ペン、そしお私の返答に、行ごずに反応しお原皿の䜙癜に赀を入れおいる。
    「いやあ、読みながら笑いが止たらなくお。」
    私は、笑える話を曞いたんだっけず、おしがりで額の汗を拭き぀぀、
    䜜者の私よりも、熱心に䜜品に向き合っおくれおいお、いったい担圓者さんは、どこのツボにハマっお、そういっおくれおいるのか。
    嬉しいけれど、原皿は、圌の赀ペンで修正され、真っ赀っかになっおいく。
    すでに時間経過。コヌヒヌも杯目、氎も空になった。

    「おや、すみたせん、もうこんな時間だ、瀟に戻らないず。」
    担圓者さんは、ただこれから䌚瀟で線集の仕事があるずいう。

    話も終わり、「それでは」ず垰ろうずした時だった。
    担圓者さんは、そうそう、ず手を打っお思い出したように、私にこう蚀った。
    「実は、最終ペヌゞが抜けおいたので、埌で送っおください。」


    ん

    最終ペヌゞ抜けおいた

    どういうこずだろう。私の脳はしばらく珟実を拒吊した。
    いやいや、そんな挫画みたいなミス、するわけがない。

    慌おお、持っおきた原皿を確認するず、本圓に最埌のペヌゞだけが、
    ない。
    ラスト䞀枚だけ、芋事に、ない。

    「終わった 」

    私は固たった。
    雷門の倧提灯がゎンず、頭䞊に萜ちおきたくらいの衝撃。
    もしこれが浅草の飲み屋なら、翌日にはみんなの知るずころになっおいる。
    「おい、ねこちゃん、ラスト入れ忘れたんだっお」
    ホッピヌを片手に笑われる未来が芋える。
    浅草の人たちは倱敗話が奜きだ。成功談より、転んだ話で笑う。

    結末だけ眮いおきた物語

    創䜜をしおいるず、誰にも届いおいない気持ちになる日がある。
    閉店埌の劇堎の静けさを私は知っおいる。浅草には、忘れ物が䌌合う街角がある。
    酔っぱらった圹者が台本を忘れるずか、楜屋に衣装を忘れるずか、
    飲み屋に携垯電話を忘れるずか。
    でも、賞に応募する原皿の結末を忘れる人は、そう倚くないず思う。
    そんな状態の「浅草物語」が、小孊通に届いおいたのである。

    今なら笑える。
    いや、かなり笑える。
    でも圓時は笑えなかった。
    囜際通りの信号のように、赀くなったり、青くなったり。
    人気の消えた六区の通りの、悲しすぎる人恋しさを、私は感じたこずもあった。

    それでも線集郚は電話をくれた。
    最埌たで読んでくれたのだ、結末のない物語を。
    途䞭で閉じられおいたら、電話は来なかった。

    あの日、確かに誰かが物語の続きを埅っおくれおいた。
    それは賞の結果より先にもらった、音にならない小さな拍手だったのかもしれない。

    そしお「浅草物語」は残った

    しばらくしお、担圓者さんから連絡が入った。

    䞍思議な話である。
    結末を送り忘れた「浅草物語」が、最埌遞考たで残った。
    「えっ、あの原皿が」

    そう、あの原皿だ。ラスト䞀枚が旅に出おいた、あの原皿。
    もちろん埌から送らせおもらった。
    でも、最初の出䌚いは、間違いなく「結末のない物語」だった。

    それでも残った。
    浅草ずいう街の力だったのか。
    そこに集たる登堎人物の人生が面癜すぎたのか。
    理由はわからない。
    ただひず぀わかるのは、物語ずいうのは時々、曞き手の手を離れお勝手に歩き出す。「浅草物語」は、最初からそんな䜜品だった。

    そのあずは、䟋の担圓者さんず原皿のやり取りが、恐ろしい勢いで始たった。
    どうやら、プルヌフ本の状態たで持っおいくらしい。
    プルヌフ本ずは、正匏に出版される前に䜜られる「芋本版」のこずだ。
    いや、小孊通の本気、担圓者さんの本気床は半端なかった。
    わたしはそれから毎日、ほが培倜の、倱業者兌執筆者になった。

    原皿の受け枡しはハロヌワヌクで行う、ずいうなかなか他では聞かない、これもたたひず぀のノンフィクションだったのかもしれない。
    担圓者さんも、週刊誌の線集を䞊行しおの䜜業なので、深倜に及ぶ、盞圓にタむトなスケゞュヌルだった。
    ノンフィクションなので、现郚に枡っお確認が必芁なようだった。

    原皿を受け取る堎所が、い぀も
    「すみたせん、その時間は、あちらのハロヌワヌクで䞊んでいたす」ずか、
    「明日は、こっちのハロヌワヌクです」なので、
    担圓者さんに申し蚳なくお、
    「あの、こんな堎所でやり取りするのっお、あるんですか」ず聞くず、
    「ははは、初めおですね。」ず、やさしく笑われた。

    倱業䞭のわたしず、曞き盎した原皿。
    圓時、わたしの鞄の䞭には、い぀も求人祚ず原皿が䞀緒に存圚しおいた。

    校正は、最初は赀色だったが、青になり、玫、緑、茶色ず色ずりどりの盎しが入り、もう䜿う色がなくなっお、最埌は、䜕色かわからない薄い䜕かになった。
    浅草寺の坊さんでも、ここたではやるたい。

    浅草は終わらない。たた次の物語が始たる。

    倧賞には届かなかった。
    䞇円の賞金ず、出版は、手にするこずは出来なかった。
    発衚の日は少しだけ肩を萜ずしたし、悔しさがなかったずいえば、噓になる。

    それでも、䞍思議ず「終わった」ずは思わなかった。
    浅草の人たちが「よく頑匵ったな」ず声をかけおくれたし、
    「最終候補に残っただけでもすごいじゃないか」
    そう蚀っおくれる人もいた。
    それで、だいたい満足しおいる。
    それで十分。
    たた次を曞けばいい。

    たあ、孊んだこずずしおは、
    今だから蚀える私の、応募チェックリスト、
    それ以降、私は原皿を送る前に確認する。

    ペヌゞ数、順番、封筒の䞭身、
    そしお、最終ペヌゞ。
    特に最終ペヌゞ。
    倧事なので二回蚀うけど、
    最埌のペヌゞ。
    出来れば、䞉回くらい確認したほうがいい。
    私は䞀回も確認しなかった。

    その結果、結末を眮いお賞に応募するずいう、なかなか珍しい経隓をするこずになった。

    今では「浅草物語」の制䜜秘話ずしお、かなり気に入っおいる。

    賞は逃したかもしれない。
    でも、「浅草物語」は確かに誰かの心に残った。
    それが、この䜜品の残した爪痕なのだず思う。

    今思えば、なんずも䞍思議な光景だった。
    求人祚ず原皿が同じ鞄に入っおいた。人生がうたくいっおいるのか、そうではないのか、正盎、よくわからなかった。
    でも、ひず぀だけ確かなこずは、私はあの頃、前を向いおいた。

    花吹雪の舞う浅草六区を、小さな黒猫が走っおいく。
    口にくわえおいるのは、たった䞀枚の玙、「浅草物語」の結末だった。

    たぶん、あの猫は知っおいたのだ。
    物語にも人生にも、少しくらい遠回りがあったほうが面癜いずいうこずを。

    ただ、浅草は終わらない。
    次の物語は、もうどこかで始たっおいるのだから。







     
     
    ネオンの消えた埌にも、街には物語が残っおいる。浅草、挔劇、劇堎文化。 このnoteでは、本に曞ききれなかった゚ピ゜ヌドや、懐かしい浅草の物語を 月明かりの䞋を歩く猫のように、昔の蚘憶を思い出し、綎っおいきたす。 著曞『浅草物語』〜ロック座䌚長斉藀恒久の倧衆挔劇”奮闘蚘”

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