
旅の夢の中に溶ける、午後6時ごろ
陽が沈みかけ、空はぼんやり深い青に染まり、
暖かい電球色の灯りが、ぽつぽつと街を満たし始める時間。
街の景色は、昼間とはまるで別の顔を見せ始める。
仕事を終えて、思い思いに自分の時間を過ごす人、
これからが本番と、慌ただしく店先で準備をする人。
それぞれのリズムで、自由な時間が流れる夕暮れ。

「今日も仕事して街を歩いて。疲れたしそろそろ宿に戻るか。」
メールチェックと休憩を兼ねて立ち寄ったカフェを出ると、
入ってきた時とは違う空の色で、1日の終わりを感じる。
夕暮れ空と馴染む、キラキラした夜の街の明かりが、私の心を躍らせる。
仕事で疲れた心なんて、一瞬で吹き飛ばしてくれた。

「少し遠回りして宿に戻ろう。」
まだ夢から覚めたくない。今日を終わらせたくない。
とっくに歩き疲れているはずなのに、
不思議と足も心も軽くて、どこまでも歩けそうな気持ちになる。

旅をしながら暮らしていると、
たまに自分がどこにいるのか分からなくなる瞬間がある。
移動と周りの変化に、自分の気持ちが追いついていないのかもしれない。
ぼーっと、「今自分はどこにいるんだっけ」って考えながら、
最後には、「別にどこにいてもいいか」となんとも曖昧な気持ちにたどり着く。
地面は続いていて、世界は点じゃなく、すべてが繋がっている。
国も、文化も、その中の自分も。
私はただ、旅の途中にいるだけ。
長い人生の中の、とある1日を過ごしているだけ。

この景色、空気、温度、匂い、喧騒、静けさ。
旅の日常が、静かに夢の中へ溶けていく。
私は、この日常がたまらなく愛しい。
そんなことを考える、旅の午後6時ごろ。