
瑠璃色の来訪者|マーサの丘より(51)
ツクツクボウシの声が、少しずつ静かになってきた午後。
真夏のような勢いはもうなく、途切れ途切れに響くその声の合間に、
ふと、違う音が混じっているのに気づいた。
笛のような、澄んだ一声だった。
窓辺に寄って見上げると、近くの公園にある屋根の頂で、
一羽の鳥が凛とした姿で こちらを見下ろすようにとまっていた。
瑠璃色の頭と背、そして栗色に染まった胸。
逆光の中でもその色は鮮やかで、姿勢はまっすぐ、少しも揺るがない。
後で調べてみると
この鳥は イソヒヨドリのようだ。
本来は海の近くにいる鳥だと聞いていたが、
今はこうして、蝉の声がやんでいく季節の午後に
舞い降りてくるものらしい。
しばらくその場に立ちどまって、鳥を眺めていた。
特に何をするでもなく、ただ屋根の稜線に留まり、
時おり喉を鳴らすようにあの笛の音を響かせる。
ツクツクボウシの声がまばらになった分だけ、
その一声はよけいに際立って聞こえた。
夏が退いていくのと入れ替わるように、何かが訪れる。
そんな気配が、この午後にはあった。
鳥はやがて、来たときと同じように、ふいにとび去っていった。
屋根には何も残らず、まばらな蝉の声だけがまた辺りを満たした。
けれど、あの一瞬の凛とした姿は、どこか清々しくて涼やか。
季節の変わり目には、こうして思いがけないものが訪れる。
そこに遭遇したことが 今日はただ、ありがたかった。
青い鳥、とふと頭をよぎった。幸せは遠くではなく、案外すぐそばの屋根の上にいるのかもしれない。