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Photo bykomatam52nz

浪の䞋にも郜あり安埳垝の垰還(あき぀したの韍王)#平家物語

    ささら猫

    ここは、壇ノ浊だんのうら。
    氎平線に倕陜が沈みかけおいる。氎面みなもには、平氏ぞいしの幟のがり、指物さしもの、たくさんの兵士が浮かび、空も海の䞭も朱に染たっおいる。いちめんの玅くれない。

     

    氎面みなもから、光のあたり届かない青い青い氎底みなそこ。

    ゆらぐ黒髪がある。その間からのぞく、小さな口からぜこり、ず泡がひず぀、ふた぀。

    泡は氎面ぞず、ゆらゆらずのがっおゆく。

     その小さな口の持ち䞻、「トキ」は、びっくりしたようにその泡をみ぀めおいた。

    母䞊の蚀った通りだった。氎を胞いっぱいに入れるず、最初は苊しいけれど、すぐに慣れお動けるようになりたすよ、ず

    すぐそばに、トキの祖母、二䜍尌にいのあたが暪たわっおいた。腰に宝剣「倩叢雲あめのむらくも」をくくり぀けおいる。二䜍尌もただ生きおはいた。が、胞のあたりから、ゆらゆらずひずすじの赀い糞が、海面にむかっおのがっおいる。

    「おばばさた、怪我けがしたの」

    氎の䞭なので、《あわおあわお》ずしか聞こえないが、二䜍尌はわかったようだった。

     トキはそっずかたわらに寄り添う。

    二䜍尌は、最埌の力を振りしがるように、やっずのこずで腰のひもから宝剣をはずしおトキに差し出した。

    その県はもう行きなさいず蚀っおいるようだった。

    トキは銖をふった。二䜍尌は口を

    「や、く、そ、く」ず動かした。

    トキも、すぐに行かなくおはいけないず、わかっおはいた。䜕床も、海の底に沈んでからのこずを蚀い聞かされおいたのだから。

     トキは宝剣を背䞭にくくるず、䞀床だけ、おのひらを二䜍尌の頬ほおに合わせた。二䜍尌はかすかにうなずくず、そっず県を閉じた。

     トキは二䜍尌から離れお、海䞭を泳ぎだした。名残惜なごりおしく䜕床も振り返りながら。䜕床目かに振り返ったずき、もう青い氎に阻はばたれお、䜕も芋えなくなっおいた。

     

    しばらく海の底を歩くように進んでいたが、あれ、泳ぎがらくになったなあず思い手を芋るず、指のあいだにうっすらず氎かきができおいる。肌もほんのり草色に倉わっおきおいた。

    トキは山鳩色の埡衣おんぞを脱ぎ、小袖こそでも脱いで、裞になった。宝剣をくくり盎し、たた泳ぎだす。

    家来たちは、私のために海での死を遞んだ。海ならば、私は泳いでどこたでもどこたでもいけるから

     

    トキは、「安埳倩皇あんずくおんのうずきひず」ずしおは六幎の生涯しょうがいだった。男の子ずしお育おられたが、じ぀は女の子だった。にんげんの䞖界では、跡継ぎあず぀ぎは男の子だけだったからだ。䞀族のために、男の子のふりをしおいたのだ。母も祖母も韍族。トキの母の「埳子ずくこ」は、陞に残るこずを遞んだ。

    地䞊に、竜宮を䜜るのだず、それが倢なのだず。この囜『あき぀した』を地䞊から守るのだず。

    「だから、トキは「ほんずうの竜宮」ぞもどっお、この囜を海の䞭から守るのですよ」ず。

    来し方を思い出し぀぀、泳いで泳いで、たる䞀日ほど経ったず思った頃、ようやく海面に登っおみた。

    ちゃぷ、ず顔を出すず、倜空にはほんの少し欠けた月が光っおいる。

    満月の時の月は八咫やたの鏡のようだな、ずトキは思った。䞉皮の神噚のうち、八咫の鏡ず募玉はどこかぞ行っおしたった。韍族にずっお、鏡は月、募玉は星。宝剣こそが倪陜が地䞊に届く光を暡したもの。

    うすみどりの肌にできはじめおいるやわらかなうろこが、ほんのりずした月明かりにきらきらず光っおいる。トキは、翡翠色ひすいいろの韍になったのだった。

     

    静かな、静かな海だった。

    トキは長くなった䜓をくねらせお、思うがたたに時には速く、時にはゆったりず泳ぐ。

    時々、海面すれすれをトビりオのように飛ぶ。背䞭の宝剣がからからず音を立おた。

    ばば様は、緎習すれば、空も飛べるのだず蚀っおいた

    い぀しか、トキの近くに青韍、癜韍の二䜓の韍が寄り添い泳いでいた。

    凪(なぎ)の海に、䞉䜓の韍の぀くりだす波が幟筋いくすじのらせんを描く。

    やがお、癜韍が案内するように朜りはじめた。トキも、䞀緒に深く深く朜っおゆく。

     

    埅ち受ける韍宮りゅうぐうは、トペタマ姫さたが手をたたいた。

    韍王さたがもどっおきたす。さあ、祝いの垭をずずのえたしょう」

    そういうず、にっこりず埮笑んだ。

    するず、タむやヒラメ、そのほか色ろりどりの魚がぱっっず四方に散った。ほたお貝は氎を吐きだしお、ぱくぱくず氎䞭を飛んでいった。

     

    トキの県に、海の底の明るい街が芋えおきた。朱塗りの倧きな鳥居を門ずしお倧通りがたっすぐ䌞びおいる。通りに面したくさんの建物が立ち䞊ぶ。通りの䞊朚は、梅ず桃ず桜が䞀緒に咲いおいる。薄桃うすもも色の花びらが舞い、ずころどころで小さな枊うず巻く。

    トキは再び裞の女の子の姿になっお、町の倧通りにふわりず降り立った。するず䟍女の姿をした女たちが歓声をあげお取り囲み、あっずいうたにトキを童姫わらべひめの栌奜に仕立お䞊げた。

    「韍王女さたヌ」

    「お垰りなさい―」

    出迎えた倧小の韍、倧勢の海人、ヒレを付けた女神、倩女、゚ビやカニ。みな、笑いさざめきにぎやかだ。

    トペタマ姫さたがすうっず近づいおきた。

    「お垰りなさい。もう、みなさん先に着いおたすよ。魂たたしいのかたちだずすぐに遠くぞ行けたすからね」

    トペタマ姫さたのうしろから、泡をたずった海人うみひずたちがたくさんあらわれた。町人の栌奜をしおいるが、壇の浊だんのうらで呜を萜ずした家来、兵士や䟍女たちだった。

    「ずきひず様、いえ韍王女さた、たた仕えられお嬉しゅうございたす」

    みな、泣き笑いしおいた。トキも嬉しくお、手を取り合っお喜んだ。やがお、トキの隣に、ぜんっず倧きな泡があらわれた。

     泡の䞭から懐かしい声で

    「トキ」ず声がした。

    泡がしゅっず消えお、出おきたのは二䜍尌にいのあただった。

    「おばばさた」

     トキは二䜍尌に抱き぀いた。

    「海の底でなかなか䜓が眠りに぀かず、遅くなりたした。トキはちゃんず韍にもどれたのですね。よくがんばりたした」

    「おばばさた、おばばさた」

    たたひずきわ倧きな歓声ずずもに、ふたりの呚りで、みなひらひらず螊りはじめた。い぀のたにか笛や倪錓も鳎らされお、倧通りはお祭りのよう。

     トペタマ姫さたが

    「韍宮城にもご甚意が  」

    ず蚀いかけたが、あきらめたようにほんのりず笑っお、少し浮かんで華麗に舞い始めた。

     

    あき぀したの地䞊では、トキの母、健瀌門院埳子けんれいもんいんずくこが、小さなお堂で祈っおいた。

    お堂のそばには小さな小川がある。想いを氎にのせる。氎はいたるずころにあり、祈りを運んでゆく。

    山の間を流れ、泉ずしおわきだし、池になり、湖になり、海にそそぐ。

    氎は、朚や草や花、魚や鳥、そしお人のあいだを網の目のように流れ、癒いやし、祓はらう韍脈りゅうみゃく。

     

    海に囲たれたあき぀したは、韍のかたち。

    韍のかたちに生たれ、韍が守る囜。







    ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ
    あずがき
    アニメ「平家物語」の最終回のタむミングにあわせお再UPしたく、以前曞いた「あき぀したの韍王」を改題、改皿したした。皆入氎しおしたっおかなしい気持ちでいる方がほっずするような気持ちになれたらず。
    安埳倩皇は生き延びた説、女の子だった説、色々ありたすね。りうごで遊ぶ安埳倩皇の絵はたさに女の子。ずっず前に安埳倩皇の鎮魂の぀もりで曞いたこのお話ですが、今幎は倧河ドラマ「鎌倉殿の13人」ず同時期のタむミングで、アニメ「平家物語」が攟映され、ああ、今幎は平家鎮魂の流れなのだなず思いたした。
    波の䞋には竜宮城があっお、そこは雲の䞊の倩でもあり、私たちず二重写しで泣き、笑い、幞せに暮らしおいる。生者ず死者ではなく魂同士で響きあっおいる。
    震灜があり戊争があり、芋聞きする珟実は時にずおも蟛いけれど、波の䞋にも郜あり、ず思うずほんの少し心が平らかになる。平和の平。。。ふるべ、ゆらゆらずふるべ。





     
     
     
    叀代日本の謎解きを読むのも考えるのも奜き。映画「かぐや姫の物語」がきっかけでかぐや姫探しもラむフワヌクになり぀぀ありたす。神瀟、猫奜き。INFP。時々、物語も曞きたす。TALESずYouTubeもあり。Amazonのア゜シ゚むトずしお、ささら猫は適栌販売により収入を埗おいたす。

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