
悪役令嬢の観察記/わたくしは面接官ではなくてよ? 派遣会社がやりがちな「特定行為」の罠
ごきげんよう、令嬢方。
わたくしの屋敷に、
新しいメイドを迎えることになりましたの。
本来なら執事が候補者を見極めるはずでしたけれど
―― あの男、最近は庭師と料理長の“派閥争い”の仲裁で忙しいらしくてよ。
「お嬢様、
採用は信頼できる商人に任せておりますので、ご安心を」
……と、あまりに涼しい顔で言うものだから、
わたくしもつい「では任せるわ」
と言ってしまったのですわ。
ええ、これが地獄の始まりでしたわ。
🌹 商人(派遣会社)、法律で“選んではいけない”のに候補者を並べてくる
数日後。
応接間に案内されたわたくしの前に並んでいたのは――
一名の募集に対して、五名のメイド候補。
商人は胸を張って言いました。
「お嬢様、こちらからお選びくださいませ」
……選ぶ?
わたくしが?
商人よ、あなた方は“選んではいけない”のではなくて?
(派遣法:特定行為の禁止)
法律を守る気がないなら、
せめて“守っているフリ”くらいしなさいな。
🌹 “これは見学です”と言いながら、完全に面接を始める商人
商人は言いました。
「これは“見学”でございます。
決して“面接”ではございません」
……と言いながら、
候補者に向かってこう告げるのです。
「前の屋敷での役割を説明してください」
「なぜ前のご主人のもとを離れたのですか?」
「他の候補より優れている点は?」
わたくし、扇子を落としそうになりましたわ。
それ、どこからどう見ても“面接”ですわよ。
“見学”という名のコスプレをしているだけの“面接”ですわよ。
派遣法が泣いておりますわ。
🌹 そして翌日、“追加質問状”という名の追撃
翌日、商人から書状が届きました。
「お嬢様、昨日の候補者について、
追加でいくつか質問がございます」
……追加? ……質問?
見学の後に“選考のための質問”を送るとは、
もはや派遣法を焚き火にくべて暖を取っているレベルですわね。
🌹 ついに悟る(そしてキレる)
ああ、なるほど。
商人は“見学”と称して、
わたくしに“選考”をさせていたのですわね。
本来、商人が責任を持って選ぶべきなのに、
わたくしに判断を押しつけ、
しかも“見学”という名の仮面をかぶせて。
🌹 王宮広場にて
王宮広場。
わたくしは大理石の階段の上に立ち、
その下で震える商人(派遣会社)を見下ろしておりました。
「商人よ。
あなた、
わたくしの屋敷に
五名ものメイド候補を並べましたわね」
商人は震えながら言いました。
「お、お嬢様……あれは“見学”でして……」
わたくしは扇子で彼の言葉を切り捨てました。
「見学?
あれを?
“前の屋敷の役割を説明せよ”
“なぜ前の主人を離れたのか”
“他の候補より優れている点は”
……それを“見学”と呼ぶのは、
豚にティアラを乗せて“王女”と呼ぶようなものですわよ。」
広場がざわめきました。
「あなた方は“選んではいけないと
法律で定められているのに、
堂々とわたくしに“選ばせる”。
派遣法の精神を、
馬車の車輪で踏み潰して進むつもりかしら?」
商人は地面に額をつけました。
「も、申し訳ございません……!」
「申し訳ないのは、あなたの知識の乏しさですわ。
“特定行為の禁止”くらい読みなさいませ。
文字が読めないのなら、
わたくしの執事に読み聞かせてもらいなさい。」
わたくしは階段を降り、商人の前に立ちました。
「次に同じ真似をしたら
―― あなたの商会、王都から追放しますわよ?」
商人は泣きながら頷きました。
あら、泣く暇があるなら、
派遣法でも読みなさいませ。
注・紹介予定派遣の場合は、事前面接が認められています。