
〈エッセイ07〉心という名の荷物の背負い方〜大切な人の顔〜
私には、この先一生拭いきれない大きな後悔がある。
それは、祖母の顔を真っ直ぐ見れなかったこと。
上京してしばらく経った時、祖母が遊びに来たことがあった。
昔から明るく、優しく、好奇心が旺盛でどこか抜けている。
そんな素敵な人だ。
映画が好きでよく連れて行ってくれた。
遊びに行くと、いつも好きなアイスを買っておいてくれた。
実はもう飽きていたけど、それでも嬉しかった。
大好きな祖母が来てくれると聞き、私はその日を楽しみにしていた。
久しぶりに会った祖母は、相変わらず明るく、優しく、そして好奇心のままに色々な所に行きたがった。
ただ私は、なんとなく祖母の顔を真っ直ぐに見れなかった。
久しぶりに会った祖母は、変わっていた。
思っていたよりもずっと痩せて、年老いて見えた。
まるで知らない人に見えてしまった。
好きなのに、好きだからこそなのか、その現実を目の当たりにしたくなくて、目を見て話すことができなかった。
…それからしばらくして、祖母は亡くなった。
なぜあの時、ちゃんと目を合わせて話さなかったのか。
真っ直ぐに彼女の笑顔を見れなかったのか。
悔やんでも、悔やみきれない。
お葬式の後、あの時の写真を見返した。
満面の笑みで写っていた祖母は、私が思っていた以上に若々しく、眩しかった。
笑顔の裏に、少しのモヤモヤを抱えていたことを、気づいていたのか、いなかったのか。
抜けているようで人のことをよく見ていたから、もしかしたら気づかれていたかもしれない。
楽しそうに話す祖母の顔を、目に焼き付けておくべきだったと今でも強く思う。
私たちは得てして、信じたくないことや自分の想像・気持ちと離れたものを見ないふりする。
けれどもどうか、それが大切であるならば真っ直ぐに見て欲しい。
私のように、心の底に残り続ける苦々しい感情を持たないために。