
とにかくお金を拾え
ショートショート
題:とにかくお金を拾え
コインを集めてはや五年。
一日二百円を拾うことで、生計を立てていた。
男の名は、カネナシくん。
どこにでもいる。どこにもいない。
公園でアリの行列を観る。
夏はゴマダラカミキリを探し、
秋はエンマコオロギを追って空き地を歩く。
冬は段ボールの中で、捨てびとごっこ。
春になると、なぜか冬眠を始める。
この奇妙な生活の中で、彼は一つの真理にたどり着いた。
——お金は、必ず「人の油断」に落ちる。
駅の改札前。
自販機の下。
ベンチの影。
ポケットから滑り落ちた、その瞬間。
すべて記録した。
分析した。
そして、アルゴリズムにした。
「ここに立てば、今日の二百円は確実に拾える」
完璧だった。
カネナシくんは、満足した。
焚き火を起こし、
五年分の資料を、すべて燃やした。
炎を見つめながら、ぽつりと呟く。
「……これで、もう拾えないな」
その翌日から、カネナシくんは姿を消した。
誰も知らない。
彼が、
「お金を拾う必要がない場所」に行ったのか、
それとも——
「お金を落とす側」になったのか。