mumuとwawa②
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mumuとwawa②
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【あらすじ】
七月、蓮が咲きはじめる頃。
引っ越してきたばかりの家で、小学生のmumuは、なにも手につかずにいた。
そんなとき、古い妖怪図鑑から、謎の言葉が書かれたメモを見つける。
5歳の弟wawaに引っ張られて庭の奥へ進んだふたりは、蓮の咲く静かな沼と、三本指の足跡に出会う。
足跡を追った先には、霧と苔に包まれた不思議な場所が広がっていた——そして、ふたりを待っていた者がいた。
これは、まだ知らない場所へ足を踏み入れた、はじまりの物語。
▼第一話
https://note.com/mumuwawa/n/nf40ce0299c72
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第二話 「霧の中へ」
光が、消えた。
音も、消えた。
世界が、静まり返った。
気づいたら、ふたりは霧の中に立っていた。
足元には、やわらかく深い緑色の苔。踏むたびにふかふかと沈む。まるで雲の上に立っているみたいだった。見上げると、霧が、どこまでも広がっていた。
少し湿った空気が、やさしく肌に触れる。深呼吸をすると、木と土の懐かしい匂い。
ふと気づくと、霧の向こうから、やわらかい光がにじんでいた。
青白くて、静かな光。まるで水の底から月が照らしているみたいに。木々の輪郭が霧の中にうっすらと浮かび上がり、苔の上の小さな水たまりが、点々と輝いていた。
mumuは息をのんだ。怖いのに、とてもきれいだった。
wawaは、そんなこと気にもせず。
wawa:むむ!!ここふかふかだよ!!
霧の中で、wawaは足元の苔をぴょんぴょんと踏みながら飛び跳ねていた。
mumu:wawa!!飛び跳ねるな!!
wawa:えー!?なんで!?ふかふかで気持ちがいいのに!!
mumu:ここどこかわからないんだぞ……
mumuは苦笑いした。そして、あたりをゆっくりと見回した。
扉も、木も、消えていた。どこから来たのか。どこへ向かえばいいのか。わからない。
(戻れるのか、これ……)
wawaの笑顔を見ていたら、言えなかった。
静かすぎて、自分の心臓の音が聞こえた。
この静けさの中に、何かが、いる気がした。
そのとき。
霧の奥から、何かが、ゆらゆらと揺れながら、こちらへ向かってくる。
……?
音はない。でも、確かに、近づいてくる。
mumuは息をのんだ。wawaも、ぴたりと止まった。
ふたりは顔を見合わせ、ゆっくりと霧の奥へ視線を向けた。
やっぱり、来る。
ふたりはぴたりとくっつき、手を取り合った。
心臓が、どきどきした。
何が来るんだ。
どんどん近づいてくる。
『ぼすっ。』
wawaの左肩に、何かが降りた。
wawa:ぎゃー!!とってとって!!僕の肩になんか乗った!!!
ふたりは怖くて目をギュッと閉じ、抱き合って縮こまった。
クク:あのーー、そんなに怖がらんでも。
なんとも言えない、やさしい声だった。
恐る恐る、ゆっくりと目を開けた。
驚くほど、小さかった。
木だった。手のひらサイズの、小さな木。細い枝と小さな葉、そして二本の根っこ。wawaの肩の上で、ゆらゆらと揺れていた。
その穏やかな表情に、ふたりはホッと息をついた。
mumu:………
wawa:………
ふたりとも、何も言わなかった。
クク:待ってたよ。ふたりのこと。
mumu:………えっ?
wawa:まってたの?
クク:うん。
wawaが、けらけら笑い出した。mumuは、ぽかんとしたまま、wawaの肩をじっと見た。
mumu:……お前、何者だ
クク:クク。
mumu:クク?
クク:名前だよ。クク、クク、って笑うから、みんなにククって呼ばれている。
wawa:かわいい!!
mumu:なんでここにいるんだ
クク:ずっとここにいるから。
mumu:えっ?ずっとって
クク:……ククっ。
wawaは、ククに顔をぐいっと近づけた。
じっと見て。
wawa:……あっ!!じぃ!!じぃだ!!むむ、じぃだよ!!
クク:ククっ。バレたか。こっちの世界だと小さくなるんだよね。
wawa:ちっちゃくなっても、じぃはじぃだ!!
(えっ?どういうことだ……。あの大きな木が、この小さなやつ……?僕、どうなってるんだ?)
クク:全部聞こえてるよ。
mumu:?
wawa:ねえクク、僕たちはなんでここにいるの?
クク:あっちに行こう。
ククは細い枝をひょいと持ち上げて、霧の奥を指した。
mumu:ちょっと待って、wawa、なんでそんな普通に話せてるんだ
wawa:え?だって話しかけたら答えてくれるじゃん?
mumu:……そうじゃない
mumuはwawaを見た。不思議そうな顔をしている。
(この子には、最初からわかってるんだ。)
mumu:あっちって、何があるんだ?
クク:待ってる子がいる。
mumu:待ってる?
クク:行けばわかる。
wawa:行ってみよう!!
mumu:でも……もっと奥に行ったら、帰れなくなるじゃないか
ククは、少し間を置いた。
クク:どっちにしろ帰れないんだから。怖いと思うか、楽しみと思うかで、見える世界が変わる。
wawa:ゲームみたい!!楽しそう!!
mumuは、息をのんだ。
(え……帰れないの……?パパとママ、心配してるんじゃないか……)
mumuは霧の奥を見た。何も見えない。
足が、動かなかった。
mumuはうつむいた。
また、体が動かない。
でも、ククが、じっと見ていた。
クク:ずっと、待ってたんだよ。
(ずっと、待ってた。)
その言葉が、胸の奥にじわっと広がった。
mumuはゆっくりと、息を吸った。
mumu:……行くか
wawa:うん!!
クク:ほら、こっちこっち。
霧の中を、三人は歩いた。ククは時々立ち止まり、細い枝をそっと土に入れた。何かを聞くように。
mumu:手の枝で何してるの?
クク:土の中の水と話している。水はね、忘れないんだよ。人は忘れても、水は忘れない。ずっと、流れながら、全部抱えて生きている。
wawa:おー!!
wawaは土に指を入れて、ふむふむこっちだなとククのマネをした。
mumuは頭を横に振りながら、それでも歩いた。
どれくらい歩いただろう。
霧が、少し薄くなった気がした。
どこからか、『ふう……ふう……』という音が聞こえてくる。
そのとき、霧の色が変わった。
白になったり、苔の緑になったり、空の青になったり。まるで何かが、霧の中で色を探しているみたいに。
wawa:んんん??何かいる!!
wawaが声をあげた瞬間、それは、ぱっと霧の中に消えた。
ククはまた土の中に枝を入れ、しばらくじっとしていた。
クク:……ふむ。
wawaはククのマネして、指を入れ、ふむふむと言った。
そのとき。
遠くで、風が唸った。
低く、重く、まるで、誰かが泣いているような音だった。
霧の奥の、さらに奥に、暗い何かが、ゆっくりと渦を巻いているのが見えた。
wawa:……mumu
mumu:ああ
wawa:あれ、なんか、悲しそう
mumu:……ああ
ふたりは霧の奥を見つめた。
クク:……そうだね。
いつものククの声じゃなかった。
クク:さあ、先に進もう。
wawa:あっちでしょ!?
クク:おっ。わかるようになったか。
mumu:水の声がわかるの?
wawaは自慢気ににやりと笑い、
wawa:ククっ
と言った。
霧の色が、また変わった。
白から青へ。青から、深い金色へ。
霧の奥に、ぼんやりと、何かの輪郭が浮かびあがってきた。
小さくて、動いている。
待ってる子が、いる。
mumuは、一歩踏み出した。
第二話 完
(第三話へつづく)
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