
#5|セカンドオピニオンと、正解のない病院選び
検索しても、誰に聞いても、正解は見つからなかった。
退院して最初にしたのは、
セカンドオピニオンの予約でした。
治療法が決まらない、
そんな不安を抱えたまま、
退院から1週間後、
紹介してもらった大学病院を受診しました。
診察室に入り、挨拶を終えると、
先生は私の顔を見ながら、
少し眉を下げて、静かに頷き、
「大変でしたね。」
と声をかけてくださいました。
たった一言でした。
でも、その一言で
張り詰めていた気持ちが
少しだけほどけた気がしました。
誰かに、
私の気持ちを分かってもらえるとは、
思っていませんでした。
それでも、この先生なら、
安心して相談できる。
そう思えました。
先生は紙に図や説明を書きながら、
治療の流れを一つひとつ丁寧に説明してくれました。
治療方針として勧められたのは、
BEP療法というものでした。
「この治療は、こちらの病院で受けられるんですか?」
何気なく聞いた一言が、
新しい悩みの始まりでした。
「受けられますよ。」
その返事を聞いた瞬間、
「どこの病院で治療を受けるべきなんだろう。」
そんな問いが頭の中をぐるぐるし始めました。
希少がんということもあり、
「やっぱり専門の先生に診てもらった方がいいのかな。」
そんな気持ちは強くなりました。
ただ、
大学病院は約2か月の入院予定。
総合病院なら、
体調次第では通院で治療できる可能性もありました。
どちらにもメリットがあり、
どちらにも不安がありました。
毎日、
ノートにメリットとデメリットを書き出しました。
「通いやすさ」を取るのか。
「希少がんの経験」を取るのか。
「自由な時間」を取るのか。
「安心感」を取るのか。
考えれば考えるほど、
何が正解なのか分からなくなっていきました。
家族とも何度も話し合いました。
父は、
「専門の先生に診てもらった方が安心じゃない?」
そう言ってくれました。
きっと、
少しでも助かる可能性があるなら、
その選択をさせてあげたい。
そんな親心だったんだと思います。
でも私は、
その言葉を聞くたびに
「本当にどっちがいいんだろう。」
また振り出しに戻ってしまいました。
毎日、
「希少がん 病院」
「BEP療法 病院選び」
「セカンドオピニオン 抗がん剤治療」
そんな検索ばかりしていました。
でも、
検索するほど答えは増えるのに、
正解は見つかりませんでした。
ある日は、
希少がんセンターにも電話で相談しました。
「治療内容自体は大きく変わりません。」
「生活スタイルも含めて選んでいいと思います。」
そう言っていただいて、
ようやく少しだけ、整理ができました。
その言葉で初めて、
「正解を探すんじゃなくて、
自分が納得できる方を選べばいい。」
そう思えた気がします。
それでも、
最後まで迷いました。
決めたはずなのに、
翌日にはまた調べて、
また悩んで、
また家族に相談して。
気付けば、
毎日のように泣いていました。
がんを告知された時より、
この頃の方が、
心はずっと苦しかった気がします。
最終的に私が選んだのは
通院治療の総合病院でした。
最後に決め手になったのは、
病院の知名度でも、
症例数でもありませんでした。
休職している今だからこそ、
家族と過ごす時間を
大切にしたい。
そう思ったんです。
抗がん剤治療は辛い。
でも、
家に帰れば家族がいる。
それは、
私にとって何より心強いことでした。
だから私は、
総合病院で治療を受けることを決めました。
病院が決まって、
ようやく一つ肩の荷が下りました。
でも、
安心したのも束の間でした。
次に待っていたのは、
「卵子凍結をするか。」
という、
人生で最も答えの出ない選択でした。
未来の自分のために、
可能性を残すのか。
それとも、
一日でも早く抗がん剤治療を始めるのか。
この選択が、
私をさらに苦しめることになります。