
25.私の日記【ヒメジョオンはしたたかに】
夏の夕方はまだ明るくて、子ども達はもう少しだけ外にいる事を望んだ。
庭の木陰に、ドクダミの花が咲いている。
アナベルの蕾はいよいよ大きく開いて、ブーケのように枝を飾る。
子ども達は、思い思いに庭を探索した。
花壇を囲うレンガの上に、海で拾われた貝殻が1つ。
その上に、ドクダミの花びらが3つ並べられている。
4歳の娘が、ここに置いたのだろう。
花の終わった芍薬の横に、置き去りにされたリカちゃんの人形。
2歳の娘が、ここに落としたんだ。
熟したブルーベリーを、二人は酸っぱいと言いながら口に運んでいる。
少し上を向くと、背の高いケヤキの木々の隙間から、西日が差し込んでいる。
私は鎌を右手に持ったまま、手で日陰を作り、目を細めた。
誰かに望まれて、そこに居場所を与えられたものがあった。
私たちが望んで、居場所を与えたものもある。
そして、誰に求められたわけでもないのに、ここに居場所を見つけた花も。
思い通りにならない庭を、それでも私たちは好きに遊ぶ。
娘たちに望まれた花から先に、摘み取られていった。
高く背を伸ばしたヒメジョオン。
茎の先はいくつにも分かれ、白い花を咲かせている。
触ろうとすれば風に揺れる。
摘もうとすれば根から抜けて。
束ねる頃にはしおれている。
いつしか子ども達は、ヒメジョオンと遊ばなくなった。
その代わり、足元には全ての花を毟られたドクダミ。
のびのびと育ったヒメジョオンは、私の胸の高さにまで届こうとしている。
楽しく遊べなかったから、君は生き永らえた。
ここまで上手く頑張ったね。
私はその足元を、鎌で払った。
ヒメジョオンは、どこにでも行けるだろう。
私の目が届かない所に咲いて、いつか同じ場所へと帰ってくる。
鎌を片付け、子ども達の側に歩み寄ると、もう私の分のブルーベリーはなかった。
でも、それでいいんだ。