
貴方が残したこの夏に
曾祖母が亡くなって遺品整理してる。
まあまあお金持ちだったので、綺麗な食器やら、スカーフコレクションやら色々出てきたが、
3つの小さな木箱の中身が気になった。
恐らく2つは本物の綺麗な石たち。多分宝石の原石。
でも、一番丁寧に保存してあった箱の中身は色とりどりの、おもちゃみたいな宝石風。
プロじゃないから確かなことは何もわからないし、最初に話した2つの箱の中の石も偽物かもしれない。
でも、一番丁寧に保存してあった石は際立って偽物感。
わざわざ偽物を買って見栄を張るような曾祖母でもないし、宝石の類は趣味じゃなかったのか、これ以外ない。
でも、確かにパッと見華やかなカラフルな宝石風の石たち
曾祖母の少女時代に思い出として購入したのか、曾祖父など誰かから頂いたのか、はたまた見て楽しむために自分で購入したのか、もう誰もわからない
でも、一番丁寧に保存してあった石
これらが本物かどうか、価値があるかどうかが気になるわけではない。
でも、この偽物みたいな石を何故曾祖母がこんなに大切に保存していたのか、理由だけがただただ気になるし、その答えに近づくために真贋を知りたいとは思う。
(ちなみに、曾祖父は戦争から帰ってきて、戦後数十年経ってから亡くなった。だから、曾祖父からの最期のプレゼントとかそういうのではなさそう。)
タイムマシンとかに乗って決定的な真相を知りたい訳ではないけど、せめてこうだったんだろうっていう予想ができるくらいには、知りたいと思ってる自分がいる
ねえ、ひいおばあちゃん、
あなたは亡くなる前に私のことを覚えてくれていましたか。
生前最後に会った時は、それすらもわかりませんでした。
私は沢山のことを話したかったし、昔のことももっと知りたかった。
でも、気を使って敢えて何も聞きませんでした
いや、聞けなかったんだと思います、思い出させるのが怖くて。
でも、今それを少し後悔しています。
この宝石風たちも、家に残された遺品の数々も、貴方のにおいや面影は思い出せても、それらに対する貴方の愛情や温かさが、冷たくなって、そこから抜けているから。
私は生前最後に会った時、あまりに変わった姿と、世界の全てを忘れてしまったような様子に戸惑ってしまって、
数年ぶりにやっと会えた感動より、現実を受け止める時間が必要で、
最後に手を握って帰りませんでした。
貴方が布団の中から、震えながら差し出したその手を、見つめるだけでした。
また前と同じような貴方に戻るまで、その手を取るのが怖かったから。
でも、それは文字通り最期だった
私の甘い見立てや希望は、現状に対する認識を歪めた私の恣意的な願望に過ぎなかった
結局、私は死化粧をし、花々に囲まれて美しく在られる、そんな状態に貴方がなってから、やっと手を取ることができました。
でも、遅すぎました。
それはよく炊事やお茶をしていて、ほんのり温かい貴方の手ではなく、今、この家にある、遺品に含まれているのと同じような、無の手でした。
遅すぎました。
あの時、もっと私が大人なら、覚悟して最後貴方の手を握れただろうに
私は貴方に約束していた自身の成人式の写真を見せることができても、
本質的に、まだ何のことも知らない子供でした。
点火した瞬間、貴方はどこにいたのですか。
私のみっともない顔を見ませんでしたか。
マスクの中で口を開け、喉を絞め、別れの涙を出すこともしなかった私の、
これでも現実を見きれない私の間抜けな姿を
貴方に見られたくないけれど
線香の香りを体に含める度に、貴方のことを思い出して
真贋わからぬ石ころとともに、酷く会いたくなります。