
あなただけが見てた、文化祭のあと
文化祭が終わった教室は、
急に広かった。
さっきまで騒がしかった机も、
今は脚を引きずる音しかしない。
「おい、手止まってるぞ」
丸めた紙ボールが、頭に当たった。
「祭りなんて、終わってしまえばただのゴミ山だ」
悪態をつきながら、
あなたはクラスの打ち上げにも行かず、
なぜか居残り清掃の俺に付き合っている。
「お前が遅いから帰れねえんだよ」
そう言いながら、
俺より先にガムテープをはがしていく。
荷物を運び終えて、体育館の裏でしゃがみ込む。
遠くで、軽音部のギターがまだ鳴っている。
「これ、お前のだろ」
あなたが差し出したのは、
折れ曲がった台本だった。
照明の時間、音出しの秒数、赤ペンの書き込み。
裏方の俺しか読めない字で、何重にも線が走っていた。
「教室に落っこってたぞ」
そう言ってから、少しだけ間を置いて、
「……お前、ちゃんと回してたもんな」
胸の奥が、少し熱を持った気がした。
空になった教室に戻ると、
窓の外には、一番星が姿をあらわした。
「腹減った。コンビニ行くぞ」
あなたの背中を追いかけて、
俺たちは夜の校門をくぐった。