夢が一つ叶った日の話(Linkin Park From Zero World Tour 2025 ライブレポート)
お久しぶりです。ご覧頂き、ありがとうございます。
だいぶ期間が空いてしまってすみません。前回の記事を書いてからしばらくの間、次は何を書こうか迷っていました。色々書きたいことはあったんですが、前からどうしても書きたかった事があったので、今回はそれを書く事にしました。ただ、書きたい事が多すぎて、この記事の製作に3か月もかけてしまいました。何度も読み直しはしていますが、文脈にまとまりがなかったり、読みづらい部分があるかもしれません。その点、ご了承頂いた上で読んでくれたら嬉しいです。
内容は、2025年2月11日・12日にさいたまスーパーアリーナで開催されたアメリカのロックバンド「Linkin Park」のFrom Zero World Tour 2025についてのレポートです。この2日間は僕にとって一生忘れられない日となりました。今回は、Linkin Parkとはどんなバンドなのか、そしてこれまでの思い出なども含めて、じっくりと語っていこうと思います。「75000字以上」の特大ボリュームとなってしまったので、ゆっくり見て頂ければと思います。
※ライブから時間は経ちましたが、この先セットリストが出てきますので、ネタバレ等が嫌な方は閲覧をお控え下さい。また、今回のライブはスマートフォンでの撮影OKという事で、自分が撮影した写真を掲載しています。
(海外アーティストのライブは日本での開催の場合も撮影OKな場合が多いです。NGの場合もありますので、公演ごとのルールを守った上でライブは楽しみましょう。)

出典 Warner Records Press
1.Linkin Parkとは
1.基本プロフィール
山ほど書きたい事はありますが、まずはLinkin Parkについてご紹介します。初めて僕の記事を見てくれた方もいらっしゃるかもしれないので再度ご説明しますと、僕は各アーティストのファンの方々だけでなく、特に洋楽はあまり知らないよという方が読んでも楽しめる記事作りを目指しています。(洋楽を普及したいだけ)
その為、基本的な所からご紹介していきたいと考えています。とは言っても、Linkin Parkはあまりに有名なロックバンドで沢山記事もありますし、知ってる方も多いかと思います。全然スキップしてもらっても構いません。
※軽く紹介するつもりが、プロフィール紹介からとんでもないボリューム感になってしまった為、今回の来日に関してのみ知りたいという方は、目次の「3.ライブ前のイベントなど」からご覧頂くとスムーズです。当日のライブレポートのみ見たい方は「4.ライブレポート(開演まで)」からご覧下さい。先程の目次一覧のタイトル部分をタップすれば、その場所まで飛ぶことが出来ますので、是非ご活用下さい。
・バンド名 Linkin Park(リンキン・パーク)
・結成 1996年(アメリカ カリフォルニア州 アグーラヒルズ)
・活動期間 1996年~2017年、2024年~現在
・ジャンル
ニューメタル、ラップメタル、オルタナティヴメタル、オルタナティヴロック、ポップロック、ヒップホップなど
・メンバー紹介
・チェスター・ベニントン Chester Bennington
(Vo)1999年~2017年 ※2017年 7月20日 逝去
エモーショナルな歌声と強烈なスクリームを合わせ持つ、ロック界屈指のボーカリスト。2017年に他界。心の葛藤を表現する歌詞で、今なお世界中のファンを魅了している。
・マイク・シノダ Mike Shinoda
(Vo/MC/Key/Gt)1996年~現在
ラップや作曲、プロデュースを担うバンドの頭脳。父親が日系アメリカ人。バンドの方向性を牽引し、ソロでも活動している。(Fort Minor及びソロ名義での活動)
・ブラッド・デルソン Brad Delson
(Gt)1996年~現在
堅実なギタープレイでバンドを支える創設メンバーの一人。ライブではヘッドホンを付けて演奏する姿がトレードマーク。現在は作曲等の裏方メインで活動している。
・フェニックス Phoenix
(Ba)1996年~1999年、2001年~現在
温厚な性格のムードメーカー。フェニックスという名前はニックネーム的な物で、本名の略でもあるDave(デイヴ)と呼ばれる事も多い。力強くもメロディアスなベースでバンドのサウンドに圧倒的な深みを与えている。
・ジョー・ハーン Joe Hahn
(DJ)1996年~現在
韓国系アメリカ人。スクラッチやサンプルを操るサウンドの裏番長であり、縁の下の力持ち。バンドのMV監督も務めるマルチクリエイターで、アート面でもバンドに大きく貢献している。
・ロブ・ボードン Rob Bourdon
(Dr)1996年~2017年(現在は実質脱退扱い)
テクニカルで力強い正確なタイム感で、派手さよりも楽曲を支える事に重点を置いたドラムが特徴。バンド随一の真面目人間で控えめな性格だが、メンバーからの信頼も厚かった。
・新メンバー
・エミリー・アームストロング Emily Armstrong
(Vo)2024年~現在
亡きチェスターの意志を引き継ぐ新ボーカル。男性顔負けの力強いシャウトと豊かなメロディーを兼ね備えたボーカルスタイルが特徴。アメリカのロックバンド「Dead Sara」のフロントウーマンとしても知られる。
・コリン・ブリテン Colin Brittain
(Dr)2024年~現在
G FLIPやONE OK ROCKを始め、これまでに数々のアーティストのプロデュースやソングライティングを務めてきた人物。新ドラマーとしての起用だが、ギターの腕前も素晴らしく、今回のツアーでも披露している。
・サポートメンバー
・アレックス・フェダー(Alex Feder)
(Gt)2024年~現在
ブラッドの代役で2024年からツアーギタリストとして参加中。活動初期はインディーロックバンド「The XYZ Affair」でギターボーカルを担当。解散後はソロ名義で活動し、Enrique IglesiasやMiley Cyrusなどのサポートも務める。
・その他の旧メンバー
・マーク・ウェイクフィールド(Mark Wakefield)
(Vo)1996年~1998年
(チェスター加入前のリードボーカル)
・カイル・クリステナー(Kyle Christener)
(Ba)1999年頃(ベース代役)
・スコット・コーツィオル(Scott Koziol)
(Ba)2000年頃(ベース代役)
2.結成~Linkin Parkになるまで
最初のきっかけはマイクとブラッドでした。二人は中学からの親友で、ニューヨーク,ロングアイランド出身の社会派HIPHOPグループ「Public Enemy」とスラッシュメタルの四天王(Big 4)の一角である「ANTHRAX」のライブに衝撃を受けた事で、バンドの結成を決意。
1996年、二人は当時高校卒業時に友人だったロブを誘って、Linkin Parkの一番最初の原形となる「Super Xero」を結成しました。(ブラッドとロブに関しては、かつて「Relative Degree」というバンドで共に活動していました。)
その後、大学でブラッドがアパートをシェアしていたルームメイトのフェニックスと、マイクがパサデナのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで知り合ったジョーが加入。加入後、バンド名は「Xero」に変更されました。その後、旧ボーカルであるマークが加入し、初のデモテープを自主制作しました。
しかし、結成当初は中々上手くいかず、98年にはマークが脱退。残されたメンバーは彼の後任を探していました。そんな時、1990年代〜2000年代初頭にかけてHIPHOPやR&B、ポップで大きな影響を誇っていたZomba Recordingsという音楽レーベルの有力スタッフだったジェフ・ブルーを通じて、9年間他のバンドやソロで活動していたアリゾナ州のボーカリストであるチェスター・ベニントンと知り合います。
1999年、デモテープを聴いたチェスターはその音楽性に感銘を受け、オーディションを受けて加入が決定。結構有名な話ではありますが、オーディションの際にチェスターの歌があまりにも凄すぎて、他の候補者は諦めて帰っていったという逸話があります。また、チェスター加入のタイミングで、バンドのコンセプト明確化の為にバンド名を「Xero」から「Hybrid Theory」に変更、この名義でEP「Hybrid Theory EP」を1000枚自主制作しました。
少し話は逸れますが、ベースのフェニックスは1999年~2000年の後半の間、他バンドのツアーに参加する為に、一時バンド離れました。その間は短期間でありますが、代役としてカイル・クリステナーやスコット・コーツィオルがサポートのような立ち位置で活動を共にしました。スコット・コーツィオルに関しては、1stアルバム「Hybrid Theory」の「One Step Closer」のミュージックビデオにも参加しています。フェニックスに関しては、2001年の「Crawling」PV撮影から復帰しました。
話を戻します。チェスターが加入してようやくメンバーが揃った6人ですが、一向にレーベルとの契約を勝ち取れずにいました。そんな時、先ほど出たジェフ・ブルーがワーナー・ブラザース・レコードのA&R部門に移籍していた事がきっかけで、無事にワーナーとの契約に成功。
※A&R部門→新人のアーティストを発掘したりデビューさせる部門
しかし、既に同じ名前のバンド名が存在していた事から、バンド名をさらに改名をする必要がありました。そこで出た案が、チェスターが住んでいたカリフォルニア州サンタモニカの公園である「Lincoln Park」(リンカーン・パーク)。ですが、この名も既にドメイン取得されており、断念。そして、最終的に同じ発音の「Linkin Park」に改名しました。
3.これまでの主な功績など
・1stアルバム「Hybrid Theory」の大成功
今更僕が語るまでもないですが、2000年にリリースされた衝撃のデビュー作です。全世界で3000万枚以上を売り上げ、歴史的な名盤となりました。2001年に世界で最も売れたアルバムでもあり、21世紀で最も売れたロックアルバムでもあります。2025年の現在でも、この記録は未だ破られていません。「In the End」、「Crawling」、「One Step Closer」などを中心に世界的なヒットとなりました。リンキンパークを知らない方でも、1度はどこかで聴いた事がある方も多いのではないでしょうか。
・その後もチャートを席巻し続ける
衝撃のデビューに続いて、2003年にリリースされた2ndアルバム「Meteora」以降、5作で全米アルバム・チャート初登場1位を獲得しました。全世界でのアルバム累計売上は1億枚を超えています。
・様々な受賞歴(主要なもの)
・グラミー賞2回(ノミネート6回)
2002年 第44回 最優秀ハード・ロック・パフォーマンス部門
2006年 第48回 最優秀ラップ/ソング・コラボレーション部門
・アメリカン・ミュージック・アワード5回
・MTV VMA アワード4回
・MTV ヨ ーロッパ・ミュージック・アワード10回
・ワールド・ミュージック・アワード 3回
その他にも、ウォール・ストリート・ジャーナル「史上最も人気のある100のロックバンド」にて12位にも選出されています。
・2000年代以降の音楽シーンへの多大な影響
リンキンパークの登場により、以降のアメリカのロックシーンは大きく動きました。90年代以降に頭角を現していたHIPHOPやラウドロックが合わさった、いわゆるミクスチャーロックと呼ばれるスタイルの決定打となったアーティストです。また、アメリカだけに収まらず、ここ日本などでもラウドロックやミクスチャーロック、エモ/ポスト・ハードコア系のバンドを中心に、今なお多大な影響を与えています。個人的には、以降の日本のロックバンドに関して言えば、もはや彼らの影響を受けていないバンドの方が少ないのではと思います。
また、彼らのジャンルを超えて洗練されたサウンドはロックシーンだけではなく、HIPHOPやポップ、EDMなどを中心に、様々なジャンルのアーティストが影響を受けたと公言しています。
4.Linkin Parkの音楽性
よく言われるのはニューメタルやミクスチャーロック、ラップロックなどと言ったジャンルですが、彼らは特定のジャンルに分類される事自体をあまりよく思っていません。それが彼らの音楽にも顕著に表れていて、時代と共に彼らは音楽性を大きく進化させてきました。これは彼らがラウドロック、HIPHOP、エレクトロニック、ハードコア、インダストリアルを始めとした、多様なジャンルから影響を受けてきたからだと思います。時には賛否両論となりましたが、この音楽性の幅広さこそ、彼らが今でも愛され続ける理由の一つだと思っています。
彼らの音楽性は大まかに分けると以下のようになります。後ほど補足しますが、ここでは2017年までの時代についてご紹介します。
・初期(Hybrid Theory~Meteora)
初期の彼らは一番ラウドロック色が強く、チェスターの強烈なシャウトとマイクのキレがあり癖のないニュートラルな英語による高速ラップ、DJによる多彩な装飾とヘビーなバンドサウンドが融合した、まさに革新的でニューメタルの象徴とも言えるサウンド感です。10代の不安や怒り、孤独をテーマにした歌詞が多く、多くの若者の共感を得ました。また、2000年代初頭のアメリカ社会の閉塞感や、インターネット黎明期の情報の洪水ともリンクし、彼らの音楽はまさに時代の「声」となりました。
・中期(Minutes to Midnight~A Thousand Suns)
初期の2作から大きく変化し、ポストロック、エレクトロニカ、アンビエント的な方向へ進化。ニューメタルから脱却し、ジャンルに縛られない音楽を作るんだという宣言ともとれるサウンド感です。ラップやヘビーなギターは控えめとなり、チェスターの素晴らしい歌唱力が前面に出ています。歌詞は政治的・社会的なテーマが増え、より抽象度の高いものが多めな印象です。この大きな音楽性の変化は賛否両論となりましたが、それでも絶大なセールスを誇りました。
・後期(LIVING THINGS~One More Light)
5作目となる「LIVING THINGS」、6枚目の「The Hunting Party」、そして2017年リリースの「One More Light」。この3作もそれぞれ大きくジャンルが異なるので一括りにするのは難しいのですが、この3作は個人的にこれまでの時代を全て踏襲したような印象です。「LIVING THINGS」はエレクトロとロックの融合のバランスが良く、「The Hunting Party」では初期の原点回帰を果たして攻撃的に、そして「One More Light」ではポップ路線への全面転換が行われました。この大きなふり幅についても当時は大きな賛否両論が巻き起こりましたが、今改めて聴いてみると、当時とは違った印象を受けるかもしれません。リリース当初は好きになれなかったという方もこの機会に聴き直してみてほしいですし、僕は大好きな作品です。
5.チェスター・ベニントンの死
ここまでご覧頂いた方で、何故2017年リリースの「One More Light」までしか紹介しなかったのか、疑問に思った方もいらっしゃるかと思います。知っている方も多いかと思いますが、ここで皆さんにご紹介しなければならないのが、ボーカルであるチェスター・ベニントンについてです。
彼は残念ながら、2017年7月20日にこの世を去ってしまったのです。本当に突然の訃報。自宅で首を吊っての自殺、41歳という若さでした。この記事を今日投稿したのは、彼の命日という忘れられない日に合わせたかったからです。
この日の事、今でも僕はたまに夢に見ます。当時僕は高校生でした。朝起きて眠そうに朝ご飯を食べていた時、テレビで速報が流れたのを覚えています。それを見た時、僕は何を言ってるのか理解出来ませんでした。頭がパンクしてしまって、その日はもうご飯が喉を通らなかったです。それからというもの、しばらくは一人になるといつも泣いていたのを覚えています。
当時は周りにLinkin Parkを聴いてる友達なんて全くいなかったので、どこにこの感情をぶつければいいのかも分かりませんでした。でも、大好きだったアーティストとは言えど、僕は彼に一度も会えた事もないですし、彼からしてみれば僕なんか赤の他人です。それでも僕にとっては本当に辛かったし、誰かが亡くなってここまで泣いたのは人生で初めてでした。あの日以来、今でも思い出す度に涙が止まらなくなる時だってあります。それくらい彼の存在は大きくて、支えになってくれてたんだなと感じました。
その後僕は、2023年くらいまで彼らの音楽を聴くのも見るのも辛くて、完全に距離を置いてしまいました。今では逃げてしまっていた事に対して少し苛立ちや後悔を覚える事もあるのですが、あの時はそれくらいのショックを受けました。この場を借りて、改めてご冥福をお祈り致します。
何故、彼はこの世を去ってしまったのか。詳細については不明確な部分もあるので簡単な紹介に留めますが、それには彼の壮絶な過去などの様々な要因が関わっているのだと思います。
・幼少期の性的虐待と家庭環境の亀裂
1976年3月20日、アリゾナ州のフェニックスに彼は生まれました。小さい頃から音楽に興味を持ち、Stone Temple PilotsやDepeche Modeなどから影響を受けて育ちます。
しかし、彼は7歳の頃から年上の男性によって性的虐待を受けていたことを後年になって告白しています。また、この影響で彼は自殺を過去に考えた事があると言っていたそうです。さらに、家庭環境も複雑で、両親はチェスターが11才の頃に離婚。父親に引き取られ、父子家庭で育ちました。
※余談ですが、チェスターはStone Temple Pilotsの2代目フロントマンでもありました。彼は元々STPの大ファンで、「人生に最も影響を与えたバンドの一つ」と語っています。2013年に初代ボーカルであるスコット・ウェイランドが脱退した後にチェスターが約2年間ボーカルを務め、その後はLinkin Parkの活動などを優先させる為に脱退しました。
なお、スコット・ウェイランドも2015年12月3日に享年48歳で亡くなられています。(薬物及びアルコールの過剰摂取が原因とされています)
・薬物とアルコールへの依存
幼少期に経験したこれらの出来事がきっかけで、彼は10代後半からコカイン、メタンフェタミンなどの薬物やアルコールに溺れてしまいます。また、家庭環境の寂しさを紛らわす為に、絵を描いたり詩を書いたりするようになりました。
※Gray Dazeについて
再び少し話は逸れますが、彼はLinkin Parkに加入する前(1993年~)に「Gray Daze」というグランジバンドで活動していました。何度かメンバー変更がありつつも5年ほど活動し、2枚のアルバムをリリースしました。98年に解散しましたが、翌年の99年にチェスターはジェフ・ブルーの紹介でLinkin Parkのオーディションに参加した、というのが主な流れです。
また、Gray Dazeはチェスターの提案で2017年に再結成する予定でした。約20年前のコレクションの中から選曲してそれらを再構築、さらにコンサートも行うというプロジェクトを発表していましたが、残念ながら彼が亡くなってしまった事で一度断念。しかし、残されたメンバーとチェスターの未亡人であるタリンダさんや家族、そしてチェスターが愛してきた数々のアーティスト達のサポートも得て、バンドは2020年にアルバム「Amends」、2022年には「The Phoenix」を完成させました。
さらに、バンドは2025年1月に新ボーカル「Cris Hodges」の加入を正式に発表し、新曲をリリースしました。彼のボーカルはクリアで力強い歌声が特徴で、チェスターのような表現力とは違いますが、自身の個性や強みと彼へのリスペクトは強く感じることが出来ます。
Linkin Parkと同様に今後の活動が楽しみでもありますし、チェスターの原点と言えるバンドでもありますので、聴いたことがない方はこの機会にチェックしてみて下さい。
・うつ病や自己嫌悪
話を戻しますが、これらの辛い過去や薬物依存などもあって、彼はさらに慢性的なうつ病や不安障害にも苦しんでいました。彼は表に立っている時は非常に明るくて社交的な印象が強いですが、裏では常にこれらの闇と戦っていました。
6.チェスターの親友の自殺
さらにチェスターのメンタルに大きな影響を与えたのが、彼の親友だったSoundgardenのクリス・コーネルが2017年5月18日に自殺してしまった事でした。彼の葬儀でチェスターはLeonard CohenのHallelujahを涙ながらに歌っていました。彼が受けたショックはあまりに大きく、以降のコンサート前のサウンドチェックの間も取り乱すほどで、1曲通して歌うことさえ出来なかったそうです。また、彼はクリスへの追悼コメントとして、「君がいない今、世界はもっと暗く、もっと空っぽだ。あなたが存在しない世界なんか想像できない。」などと投稿しました。
クリスもまた、チェスターと同じく薬物やアルコールなどと戦っていました。さらに子沢山の家族に生まれた影響で、親の目が届かず寂しい幼少期を送ったそうです。チェスターとクリスは、これまでの人生に共通点が多かった事もあって、親友になったんだと思います。
そして、チェスターがこの世を去った2017年7月20日。この日は奇しくも、亡きクリスの53歳となる誕生日でした。また、クリスも首を吊っての自殺とされています。共通点が多いことからも、チェスターの自殺はクリスの自殺がトリガーで、後追いでの自殺である可能性が高いと多くの方が分析しています。
7.活動停止
チェスターがこの世を去ってからは、残されたメンバーも活動停止を余儀なくされました。特にこの時期は、チェスター存命中の最後のアルバムである「One More Light」のワールドツアーの最中というタイミング。そしてここ日本でも11月に3日間幕張メッセでコンサートが予定されていて、ゲストにはONE OK ROCKも参加するスペシャルな日になるはずでした。
知っている方も多いとは思いますが、ワンオクが最も影響を受けたアーティストの1つがまさにLinkin Parkで、彼らにとってこの対バンはキャリアの中でも特に重要な日になると思っていたでしょう。チケットを確保して行ける予定だったというファンの方を僕も何人も見てきましたし、僕はワンオクも同じくらい大好きで影響を受けたアーティストなので、とても注目していました。しかし、このツアーも全て中止。その後は未公開曲のリリースやベスト盤の発表、マイクはソロでの活動も度々行ってきましたが、以前のようにLinkin Parkとしての本腰を入れた活動は無くなってしまいました。
※7thアルバム「One More Light」の意味
チェスターが亡くなる2か月前にリリースされた7枚目のアルバム「One More Light」。彼らのアルバムの中で最もポップ色が強い異色の1枚となった本作は、多くのファンの間で賛否両論が巻き起こりました。中には「これはLinkin Parkじゃない」なんて思った方も少なくなかったと思います。
しかし、チェスターが亡くなってしまってからこの一枚は、まるで彼の遺書だったのではと感じる人が多いようです。実際にそのような証言はないですし、歌詞などに直接的な遺書の役割と汲み取れるような意味合いがある訳ではないので分かりませんが、聴いてみると確かに深く考えさせられる一枚です。このアルバムは彼の死後、さらに深い意味を持つアルバムとなりました。彼の命日である7月20日に、是非一度聴いてあげて欲しいです。
8.突如の再始動
それ以来、もう二度とLinkin Parkとしての活動は見る事が出来ないと思っていましたが、約7年ほどが経過した2024年9月6日。彼らはなんと、ステージに現れたのです。日本時間で朝7時頃だったでしょうか。YouTubeやInstagramなどのSNSでライブ配信が始まり、映っていたのは謎のステージとそれを360度囲むように集まるファン達。何が始まるのかと期待していたら、続々とメンバー達がステージに集まり、聴いたことのない新曲でコンサートが幕を開けたのでした。
あの時の感動と衝撃は本当にすごかった。僕も会社でこっそり見ていましたが、涙を全力で堪えながら画面を見ていたのを覚えています。そして1曲目に披露した新曲「The Emptiness Machine」の1番をマイクが歌い上げた後、謎の女性が歩いてきて登壇。彼女こそが、Linkin Parkの新ボーカルであるエミリー・アームストロングでした。

出典 Warner Records Press
9.エミリー・アームストロング
突如現れた新ボーカルのエミリー。前任のチェスターが偉大過ぎるボーカルだったので、今なお賛否両論があるのは事実です。ただ、僕個人の意見としては、今回の再始動はこれ以上ないくらいの完璧なスタートだったと思っています。
まず、女性ボーカルを起用したという点。かなりラディカルな判断だったとは思いますが、この勇気に脱帽でした。というのも、個人的にはチェスターを超えるボーカリストなんてほぼいないというか、そもそも上手い下手関係なく、誰も彼の代わりにはなれないのです。そんな中で、もし同じような男性ボーカルを起用したとしたら、それこそ下位互換として終わってしまっていたと僕は思います。じゃあどんな選択肢なら過剰に比べられる事無く、昔も今も対等に活躍出来るかと考えた時に、今回の様な振り切った選択は凄く効果的だったと思います。それにこのエミリー・アームストロングというボーカル。ものすごくかっこいいボーカルじゃないですか?
元々エミリーはロサンゼルス出身のハードロックバンド「Dead Sara」のリードシンガー&ギタリストとして活躍していました。日本ではまだあまり馴染みのないバンドですが、地元ではかなり有名なようで、あのFoo Fightersのデイヴ・グロールからもお墨付きを貰っている実力派のバンドです。現在はLinkin Parkに加入してツアー中な事もあり、Dead Saraとしての活動は控えめとなっていますが、解散などはしていないので、今後は恐らく並行しての活動が予想されます。
彼女のボーカルはチェスターとは一味違ったパンク的エネルギーを持った声で、尚且つ女性ならではの透明感のあるクリーンも出せる素晴らしい方です。スクリームに関してはチェスターより音域などは限定的ですが、ハスキーで攻撃的な叫びが特徴です。最初は若干癖が強いように思う方もいらっしゃるかもしれないですが、男性顔負けの力強いボーカリストなので、Linkin Parkの新譜や最近のコンサートは勿論、Dead Saraの楽曲も是非聴いてみて欲しいと思います。
10.再始動までの経緯
そもそも今回、どのような経緯でLinkin Parkは再始動に至ったのかを簡単にご紹介します。インタビューなどで語られてはいますが、今回の再始動は意識的に努力した結果という訳ではなく、必ずしもLinkin Parkの名義でなくても良いから、また一緒にクリエイティブな事をしたいという純粋な思いから始まったそうです。
2017年の活動休止から時が経ち、マイク、ブラッド、フェニックス、ハーンの4人は近年再会を始めていたそうです。「バンドを再始動させたい」というよりかは、単に一緒に過ごす時間を増やし、学生時代からの友情の核である創造性と仲間意識を取り戻したいという直感のもと、再会の機会を増やしました。そんな中で、メンバーはスタジオに様々な友人やスタッフを招き、その中でも特にエミリーとコリンの二人に特別な親近感を覚えます。そうして共に活動していく時間を増やしていった結果、今回の再始動に繋がったという流れです。
また、マイクはエミリーのボーカルに関して、チェスターの真似をしている訳ではないと言及しています。「彼女は彼になろうとしているわけではなく、彼女自身であろうとしている。僕は、彼女がこれらの曲で歌っているのを聴くと、Linkin Parkだと感じるんだよ。」と話していました。
※ブラッドとロブについて
補足としてまずギターのブラッドについて。彼は今回再始動するにあたって、今後のツアーには参加しない事を表明しています。今後も作曲等の活動には引き続き参加しますが、ツアーのギタリストにはアレックス・フェダーを迎え、現在ワールドツアーの真っ最中です。ツアーなどの表立った舞台には立たない理由として彼は、「年月を重ねて僕はスタジオで新しい音楽を共同制作したり、ライヴの構築を手助けしたりと、裏方としてバンドメンバーと一緒に活動している時が、自分が最も生き生きと活躍できることに気づいたんだ」と話しています。
ファンとしては寂しくはありつつも、Linkin Parkを辞めた訳ではないですし、今後も楽しく音楽活動を続けられるならそれが一番かなと思います。
また、ドラマーのロブに関しては残念ながら、今回の再始動には現状加わっておらず、実質脱退となっています。そもそも彼は何年も前から、「Linkin Parkから距離を置きたい」と語っていたそうです。マイクがインタビューにて、「数年前、ロブはバンドとの間に距離を置きたいと僕達に伝え、僕達はそれを理解した。というのも、それはすでに明らかだったから。彼は次第に姿を見せる事や連絡を取る事も減っていったし、ファンもそれに気づいていたと思う。「Hybrid Theory」の再リリースやベスト盤の「Papercuts」リリース時にも、彼は一切姿を見せなかった。友人としてそれは悲しかった。でも同時に、彼が幸せになれる事を何でもしてほしいとも思ったし、勿論みんな、彼の最高の幸運を祈っているよ。」と語っています。
距離を置きたいと思うようになってしまった詳細な理由については不明ですが、個人的に彼のドラムプレイはかなり好みだったので、正直残念ではありました。ですが、新しく加入となったコリン・ブリテンも僕は大好きな方なので、再始動1発目のコンサートで登場してきた時は本当に驚きました。
というのも彼は、G FLIPやILLENIUM、そして僕が大好きなONE OK ROCKなどのソングライティングやプロデュースを手掛けてきた方なんです。こんな素晴らしい事って中々ないですよね。マイクはコリンについて、「音楽制作に対するアプローチが同じで意気投合したんだ。」と語っています。ロブ脱退は悲しいですが、今後の楽曲にコリンのエッセンスが入る事でLinkin Parkの音楽がどう変わるのか。新生リンキンとても楽しみです。
11.チェスターの役はあなた達一人一人
今回の新体制を受けて、それでも特に「チェスターがいないLinkin Parkを受け入れられない」という方も少なくないかもしれません。僕自身も、再始動が嬉しかったという反面、迷いや葛藤もありました。特にこれまでの楽曲を聴く時。別のボーカルが旧曲を歌うのを、僕はどんな感情で聴けばいいんだろうって思いました。また、彼らの曲はチェスター自身の心情を歌っている曲も多い上に、彼の声でしか表現できない世界観があったので、それらをどう受け止めれば良いのか迷ったのも事実です。
そして、他のメンバーについても心配な点は勿論ありました。まず、新メンバーについて。バンドメンバーの半分が変わるって、全く違う音になってるのでは?なんて当然思いますし、ここまでの大きいバンドに今から加入する、特に前任のボーカルがここまで偉大な方ともなると、想像も出来ないくらいのプレッシャーがかかってくるはずです。期待値があまりに大きすぎて、色んな意味で残念な結果にならないかは心配でした。そしてオリジナルメンバーについても7年のブランクがあるので、パフォーマンスのクオリティという面で心配があったのは事実です。
でも、僕自身がこの再始動を受け入れる事が出来た理由が、再始動1発目のコンサートでマイクが放った一言でした。
''In the role of Chester Bennington is each of you''
(チェスター・ベニントンの役割を担うのは、あなた達一人一人)
この言葉を聞いて、僕も一歩前へ進む事が出来た気がします。ファンである自分達が彼の事を忘れなければ、永遠にみんなの心の中で生き続けている。そして何よりも、残されたメンバーが新しい仲間と共に歩みを再開したのであれば、僕らファンも止まってられないなと思いました。
色々な意見があるとは思いますが、僕は彼らがあの頃と変わらず今も最高の音楽をかき鳴らしてくれる事に心の底から感謝しています。また、メンバーが半分変わったとは言えど、あの頃の空気感はまるでそのままという感じのコンサートで個人的にはほっとしたし、本当に「おかえりなさい」という感じでした。エミリーやコリン、アレックスも、Linkin Parkに来てくれて本当にありがとうとしか思えなかったです。
先程も言いましたが、このレベルのビッグなバンドに加入するって、相当な覚悟がないと決断できないと思います。期待も責任も重くのしかかってくるし、普通ならその重圧に耐えきれない。それでも恐れずにこの道を選んでくれた3人を、僕は心の底からリスペクトしています。

出典 Warner Records Press
12.From Zero
7年以上の空白期間を経て、奇跡の復活劇を遂げたLinkin Park。復帰一発目のライブにて、さらに嬉しいアナウンスもありました。ワールドツアーを行う事、そして新体制としての最初のアルバム、通算8枚目となる「From Zero」をリリースする事が明らかになりました。
これは本当に嬉しかった。これまでの楽曲を今後も披露してくれるのは嬉しいとして、やっぱり現役で活動する以上、新しい音楽をリリースしてくれるのが一番嬉しいですよ。もう聴けないと思ってた彼らの新しい曲がこれからも聴けるって、それだけでも再始動してくれた意味は大いにあるなって思います。
そして2024年11月15日、待ちに待ったアルバムがリリースされました。これを聴いた特に昔からのファンの方はどう思ったでしょうか。僕は正直、良い意味でかなり面食らいました。めちゃくちゃ良かった。簡単にこのアルバムをまとめるなら、これまでのLinkin Parkの全ての時代を感じさせつつ、新たな未来を感じる事ができる。そんな感じの一枚だと思いました。
まず、どの時代のサウンド感も無駄になってない気がしました。曲によっては初期のリンキン節全開なTHE ニューメタルだけどミックスは現代って感じの曲もあり、中期や後期のようなエレクトロとの融合が素晴らしい曲、そしてリンキンらしい実験的でこれまでにない一面が垣間見えるような曲もありました。彼らのこれまで、今、そして未来が全部詰まってる。
そして、エミリーのボーカルも想像以上にハマってる気がしました。曲によってはかなりガッツリ叫んでる印象で、ここまで攻撃的なサウンドが聴けたのが良かった。そしてDead Saraで培ってきた彼女のエッセンスが入ってる曲もありました。上手くリンキンの雰囲気と融合されてる気がして、懐かしさがありつつも新鮮な印象を受けました。
また、過去から未来までを表現しているのはサウンド面だけではありません。本作のタイトルである「From Zero」。このタイトルの意味も、彼らがLinkin Parkの前のバンド名であった「Xero」から来ていて、彼らの活動の原点と、現在続いている旅の両方を意味しています。

出典 Warner Records Press
実は僕、アルバムのリリース前に都内にてワーナーさん主催で開催された、アルバムのリリースパーティーに運よく当選して参加しました。リリース数日前に映画館の爆音でアルバムを聴けたんですけど、その時は思わず涙が出てしまいました。アルバムを聴いて涙が出たのはいつぶりだろう。自分にとっては間違いなく、近年で一番記憶に残った一枚でした。
それでもやはりボーカルが変わってる訳ですし、世間の評価的には賛否両論って感じでした。でも、そんなの自分からしてみれば本当にどうでもよくて、俺はこれをずっと待ってたんだよって強く思えましたね。
今回の再始動は新しいボーカルになってる分、今からファンになる方にとっては良いチャンスに捉えられると思います。これからLinkin Parkを聴いてみたいって方は、この「From Zero」から入ってみるのも良いかなと思います。今後さらに世代を超えてファンが出来るのを想像するだけでも、ワクワクが止まりませんね。
※また、今年の2月28日には「From Zero」のアカペラ&インストアルバム「From Zero (A Cappellas + Instrumentals)」、そして5月16日には3曲の新曲が追加された「From Zero(Deluxe Edition)」がリリースされました。既に新曲もツアーで披露されていて、どれも素晴らしい仕上がりです。是非聴いてみて下さい。
13.個人的なおすすめ曲と聴き方
簡単に経歴紹介すると言っておきながらこんなに語り尽くしてしまった以上、流石におすすめの曲くらい紹介した方がいいですよね。
という事で、特にこれからLinkin Parkの音楽にトライする方向けに、僕なりのおすすめ曲をいくつか紹介します。個人的に思い入れのある曲も勿論ありますが、それよりかはこの曲を聴くとLinkin Parkを知れるかなという視点で選んだつもりです。完全な個人的趣味のおすすめ曲については、今度別で記事にでもしようかなと思います。
※その前に補足として、個人的に彼らの曲は単体で聴くよりアルバム単位で聴いた方が、より真価を発揮します。というのも、彼らのアルバムは曲順や曲の繋がりが非常に綿密に構成されているのも特徴です。また、アルバムのコンセプトも一貫しているものが多く、曲単体では拾いきれない文脈や物語が見えてくるかと思います。
以下のおすすめ曲を聴いてみてハマったものがあれば、今度はそのアルバムを通して聴いてみると違った印象を受けたり、もっと深く好きになれると思いますので、是非トライしてみて下さいね。
1.Papercut
この曲は先程紹介しました、彼らの1stアルバムである「Hybrid Theory」の1曲目となります。ファンからしたら「良いね」って思う方もいれば、「なんで?」って思う方もいるかもしれません。このアルバムには「In the End」、「Crawling」、「One Step Closer」などのもっと有名な曲だってあるし、それで良いんじゃない?って。確かにそれでも全然良いと思います!でも個人的にはやっぱりこの曲をお勧めしたい。単純に本作の中でこの曲が特に好きだからというのもあるんですが、この曲って先ほど紹介した初期のリンキンの音楽性や良い所が全部詰まってると思うんです。そしてリリースからもう25年も経つのに、2025年の今聴いてもどこか近未来的で先進性すら感じる名曲です。この曲がデビューアルバム1曲目だなんて、そりゃ名盤になるよなって、聴く度に思います。
ダークで攻撃的なギターリフを主体としたヘビーな初期のバンドサウンドや、ラップをメインとした二人のボーカルの掛け合い(特にマイクの高速ラップ)を聴きたい方は、マストで聴くべき一曲だと思います。
2.Faint
こちらは2003年にリリースされた2ndアルバム「Meteora」の収録曲で、彼らの代表曲の一つでもあります。ライブでも定番曲となっていて、一番盛り上がる曲と言っても良いかもしれません。この曲を選んだ理由の一つは単純に、僕が1番最初に彼らの曲で衝撃を受けたからです。同じ人も世界中に沢山いるかと思います。僕自身のLinkin Parkとの出会いや思い出は後で語りますが、初めてこの曲を聴いた時は今でも忘れられませんね。これまでの人生で一体何回聴いたんだろうって感じです。
この曲はなんと言っても、ビートの疾走感やマイクのラップ、そしてチェスターの爆発力のあるシャウトが特徴です。これらの要素がこの曲のテーマである、見捨てられる不安や孤独だったり疎外感、それに対する怒りや絶望を秀逸に表現していると思います。とてもテンポ良く駆け抜けるような曲なので、夜のドライブなんかにぴったりな一曲です。相当有名な曲なので、1度はどこかで聴いた事があったなんて方も多いかと思います。ミュージックビデオも2000年代の象徴と言えるような作品になっているので、見た事がない方は是非ご覧下さい。
3.Leave Out All the Rest
この曲は2007年リリースの3rdアルバム「Minutes to Midnight」の収録曲となります。個人的にこのアルバムは、どの曲をおすすめしようか物凄く迷いました。日本での有名度で言えば、映画「トランスフォーマー」の主題歌にもなった「What I've Done」などの方が圧倒的にあると思います。ただ、彼らのもっと幅広い音楽性を知って欲しかったという意味で、この曲を選んでみました。とは言っても、この曲も本作の代表曲の一つなので、自信を持っておすすめ出来るかなと思います。
先程の2曲とは打って変わって、この曲は感情に訴えかけるような美しく切ないバラードです。歌詞は自分がいなくなった時に、どう記憶されるのかという重いテーマですが、チェスターの内面を映す鏡のような一曲として、ファンからも大切にされている一曲です。
激しい曲は少し重たいと感じる方や、彼らの静かな一面を体感したい方、チェスターのクリーンなボーカルを聴きたい方は、是非聴いてみて欲しい一曲です。
4.Keys to the Kingdom
こちらは2014年リリースの6作目「The Hunting Party」の1曲目となります。本作の全体の方向性を象徴するような曲で、初期の原点回帰を感じさせます。「A Thousand Suns」や「LIVING THINGS」も個人的には好きなアルバムなんですが、この2枚は他の作品よりも特に実験的で電子音寄りなので、実際のところ好き嫌いが分かれます。これからリンキンを聴くという方におすすめしたいのは、やはりバンドサウンドが前面に出ているものだなと思ったので、今回は「The Hunting Party」から選曲しました。
この曲はチェスターの加工されたシャウトから始まる、正に攻撃的で荒々しいオープニングといった感じで、ヘヴィロック好きにはたまらない一曲となっています。ただ、「Hybrid Theory」や「Meteora」の雰囲気をそのままなぞった物かと言われればそうでもなく、原点回帰をしつつも、本作は全体的にオーガニックな生バンド感がより強く表れているのが特徴です。
マイクのラップ× チェスターのスクリームという、彼らの王道パターンが好きな方や、アナログ感のあるバンドサウンドが好きな方は是非聴いてみて下さい。
5.Heavy(feat. Kiiara)
こちらは先程紹介した2017年リリースの7作目「One More Light」の収録曲であり、アルバムのリードシングルとなります。それまでのヘヴィロックやラップロックといったスタイルから大きく離れ、打ち込みベースのミニマルなサウンドで、Linkin Park史上初の女性ボーカルをコラボに起用した一曲でもあります。
不安だったり自己嫌悪、コントロールできない感情の渦が描かれていて、精神的な葛藤と向き合う多くの人の心に刺さるメッセージとなりました。特にチェスターのボーカルは、当時彼が抱えていたうつ病や苦悩がそのまま反映されているように聴こえ、彼自身の心の叫びがダイレクトに伝わります。さらに先程ご紹介した通り、このリリースから数か月後に彼は他界してしまった為、より深い意味を持った曲となりました。
大きく変わったスタイルには当時批判もありましたが、メロディアスなボーカルと洗練されたビート、シンプルな構成ながら感情を強く引き出すアレンジは新しいファンやロック初心者の方にも聴きやすく、バンドの進化も感じる事が出来る曲となっていますので、是非聴いてみて下さい。
6.Two Faced
最後におすすめする曲は、彼らの最新アルバム「From Zero」の収録曲で、第4弾シングル曲となります。新体制となった彼らが再び魅せる原点回帰と新たな進化を象徴するような楽曲で、新ボーカルエミリーの非常にエネルギッシュなシャウトが前面に出ています。
曲のテーマは、信頼していた相手の裏切りや偽善に対する怒りや失望。「Hybrid Theory」や「Meteora」の頃を思い出させるような、限界を超えた怒りの爆発を強く表現しています。サウンド面でも初期のリンキン節を強く感じることができ、特に「Hybrid Theory」の収録曲である「One Step Closer」の雰囲気によく似ている事から、タイトルの「Two Faced」とかけて「Two Step Closer」なんてファンから言われたりもしています。キャッチーでエモーショナルなボーカル、タイトでシリアスなマイクのラップ、ブレイクダウンの爆発力&ハーンのスクラッチとバンドサウンドが織りなす彼らの黄金パターンを感じながらも、ミックスは2020年代へアップデートさせているという印象で、懐かしさと新鮮さが絶妙に合わさっています。
新体制のLinkin Parkをとりあえず体感したい方や、初期の音楽性が好みだよという方はマストで聴いてみて欲しい一曲です。MVもシンプルな構成ながら、スーツ姿で暴れまくるメンバーがとてもクールで印象的なので、是非ご覧下さい。
2.Linkin Parkとの出会い
元々は導入という意味で書き始めた経歴紹介だけで18000字超えという、明らかに間違ったボリューム感となってしまってますが、やっと次の項目へ行きたいと思います。
一番最初に「この2日間は僕にとって一生忘れられない日となりました」と言いましたが、そもそも僕がLinkin Parkにどうやって出会ったのか、どんな思い入れのあるアーティストなのかを軽くご紹介できればと思います。
1.全身を雷に打たれたような衝撃
皆さんはこれまでに音楽を聴いて衝撃を受けた事がありますか?
ロックが好きな方は特にそんな経験をした事があるという方も多いかもしれませんね。「このアーテイストに出会って人生が変わった」とか「命を救ってもらった」だったり、「音楽嗜好がまるで変った」なんて方もいらっしゃるかと思いますが、人によっては元気や勇気を貰ったくらいの事はあるかもしれないけど、「音楽で人生が変わるなんて、そんなの大げさすぎるよ」なんて思う方もいらっしゃると思います。ただ、僕個人としては音楽1つで人生が変わる事って本当にあると強く思っていて、要は僕自身もそういう体験や衝撃を何度も受けながら、これまで育ってきたと思っています。そして、僕がそんな体験をしたアーティストの1つがまさにLinkin Parkでした。
僕は元々、両親が少し洋楽を普段から嗜んでいたという事もあり、小学生の頃から邦楽よりかは当時流行っていた洋楽をメインに聴いて育ってきました。特に初期は1Dだったりテイラースウィフトだったり、平成の洋楽ポップス黄金期のど真ん中を体感してるような感じでした。家族でドライブに行った際には、毎回車の中でくそみたいな英語で熱唱して親に笑われてたのを覚えています。ただ、まだ幼すぎたというのも勿論ありますが、それらの音楽を聴いて衝撃を受けたかと言われれば、それは少し大げさだと思います。今でも影響は勿論受けてますし、ライブも行きますけどね。
そんな中、僕が小学5年生くらいの頃に日本のロックバンドである「ONE OK ROCK」と出会いました。「いやリンキンじゃねえのかよ!笑」って思うと思いますが、そうだったんです。(笑)
ここら辺は以前投稿したワンオクのライブレポの記事にも書いてありますが、2013年リリースの「人生×僕=」というアルバムをたまたま聴いて、僕は初めて音楽で、そしてロックで衝撃を受けました。ワンオクについて気になる方は、是非こちらの記事もご覧下さい。
小学生にして初めてロックの入り口に立ち、そんな中で彼らとほぼ同時期と言っても良いくらいの頃に出会ったのが、Linkin Parkでした。でも残念な事に、2013年に彼らを知ったのは覚えていますが、なんでLinkin Parkに出会えたのか、その詳細な流れについては正直な所、昔すぎて今では忘れてしまっています。だって世代も違いますし、それまでロックに触れてたわけでもない。そして、何より今ほどインターネットだって発展してないのに、当時小学生でスマホすら持ってなかった自分が良く見つけたなと思いますよ。まあ多分似たような音楽性のアーティストだからだとは思いますけどね。
ただ、彼らの曲を聴いた時の衝撃は今でも覚えています。最初に聴いた曲の一つが、先程のおすすめ曲の紹介でも出た「Faint」でした。初めて聴いた時、「この世にこんなカッコいい音楽って存在するんだ」と思いました。ワンオクに関してもかなりの衝撃を受けましたが、リンキンはそれの何倍も凄かったです。今振り返ってみると、あれを超える衝撃はもう二度と体験できないのかもしれないな、なんて記事を書きながら改めて思いましたね。そもそも英語なんて全く分からないのに、自分にとってここまで心震える音楽が存在していた事、そしてそんな音楽に出会えた事に心から感謝したいです。
2.ロックを教えてくれたアーティスト
Linkin Parkは自分にロックを教えてくれた、そんな大好きな師匠のような感じのアーティストです。ワンオクに関してもそうですが、彼らの音楽に出会ってなければ、ロックとは無縁の人生だったんだろうなと思います。そもそもここまで音楽にハマる事自体なかったかもしれません。1番最初に音楽、そしてロックの本質や信念を教えてくれたのは彼らの音楽です。毎日のように家で聴いて熱唱して喉ぶっ壊してって感じでした。また、彼らに出会ってから音楽の扉が開いて、ジャンル問わず様々なアーティストを知るきっかけにもなりました。まさに自分にとっての原点です。
3.心の代弁者、感情の受け皿
お前英語分んない癖に何一丁前な事言ってんだよって思うかもしれませんが、当時の自分にとって彼らの音楽というのは、本当に代弁者的な存在でもありました。歌詞は当時確かに理解できてなかった部分の方が多いけど、彼らの奏でるサウンドから僕は何かを汲み取って、生きる為の原動力にしていたんだと思います。
今でもそうですが、僕は子供の頃から自分の感情を表に出すのが非常に苦手なタイプでした。そもそも人と絡む事自体そこまで好きじゃないし、だからこそ表には出せなかったけど、心の内ではどこか人生に生きづらさを感じる日々。ただ、それらのフラストレーションを受け止めてくれる場所もなかった。そんな行き詰ったような僕に光を与えてくれたのがロックでした。
どんなに毎日が辛くても、どんなに人生に絶望したとしても、彼らの音楽だけはそばにいてくれた。心の奥底にある怒りやフラストレーションを彼らの音楽が全部吹き飛ばしてくれたから、これまで僕は生きてこれたんだと思っています。実際僕は一時期自分を見失い、軽い鬱状態になってた時期もありました。自分の人生に価値を見出せなくなって、何回も生きるのを辞めたいって考えながら生活してました。そんな状態になっても本当の意味で助けてくれる人なんて誰もいなかったし、頼れなかった。毎日孤独に苛まれながら一人で絶望していました。でも振り返ってみれば、そこで踏みとどまって立ち直る事が出来たのも、大好きな音楽のお陰です。今この記事を書けてるのも、彼らのロックが、そして沢山の音楽が僕の命を繋いでくれたから。本当に出会えて良かったと思っています。
3.ライブ前のイベントなど
ここまで語り尽くしてようやく今回のLinkin Park来日のレポに入っていきたいと思います。元々自己満でnoteを始めた身なので、好きなアーティストに関して語るとどうしても大ボリュームになってしまいますね。僕自身、こうやって書き残した記事は今後見返して思い出として残していくつもりなので、誰も見てくれる方がいなくても書いた意味はあるんです。ただ、もし見てくれた人がいるなら、それはそれで感謝感激でしかないですね。あなたは相当なLinkin Parkのファンなのでしょう。
1.コラボレーションPOP UP開催
ライブ本編のレポに行きたい所なんですが、今回のLinkin Parkの来日にあたって、ライブ前のウォーミングアップとも言えるような催しや嬉しい出来事が多数ありましたので、それらもご紹介したいと思います。
まず、今回の来日記念で2月8日~15日の期間限定で中目黒にて、Linkin Parkとストリートブランド「Peace and After」とのコラボレーションポップアップが開催されました。そこでは限定のグッズを購入出来るのは勿論、彼らがこれまでに愛用してきた機材や楽器、サイン等の展示も多数ありました。また、Peace and Afterさんの他にも2種のブランドとのコラボグッズが販売され、大盛況となりました。僕も勿論これは即行こうと決意し、開催初日の1番目に並びました。真冬の中で始発の電車に乗って一時間半ほどかけて会場に行き、営業開始6時間以上前から待機するという、転売ヤーでも流石にやらないであろう覚悟のもと参加。ミスって防寒対策が不十分だったのもあって、流石に6時間は死ぬかと思いましたが、大好きなアーティストの為なら致し方ない。そして並び始めてから2時間以上経過してから、ようやく2人目、3人目と、列ができ始めました。待ち時間の間はファンの方と雑談出来ました。そもそもこんなにLinkin Parkのファンの方と話すのも初めてだったので、とても楽しかったのを覚えています。その節は本当にありがとうございました。

そして12時になり、いよいよ開店。1番目のお客の気分はとても清々しかったです。(笑) 店内はとてもかっこいいセレクトショップって感じの雰囲気で、スタッフの方は半分かそれ以上が海外の方でした。因みにこの外国人のスタッフさん達は、Linkin Parkのライブ当日にもスタッフとして来られていました。勿論ですが、日本語は伝わらないので商品を買う時に皆さん苦労していましたね。(笑)
今回のポップアップの目当てがポスターと龍が描かれているTシャツ、ロンTで、一番に入店したので当たり前ですが、無事に購入出来たので良かったです。Linkin Parkの公式のグッズを手に入れたのも実は初でした。龍のTシャツなどは超人気で、初日で一旦完売してしまう程でした。後に再入荷されたようです。ポスターも手書きのシリアルナンバー入りで、330枚限定でした。
その後は店内を一周して、メンバーの機材などを見させて頂きました。Linkin Parkのファンなら絶対見覚えのあるギターや壊れたベース、ターンテーブルなど、様々なものが展示されていました。チェスターが使っていたマイクだったり、マイクが描いた絵画やメンバーのサインなんかもありました。今まで散々画面の向こう側で見てきた物が目の前に置かれている光景は感動ものでしたし、何だか感慨深い気持ちになりましたね。

そして周りの方と少し雑談して帰ろうと思った時、近くで海外のスタッフさんが他の方と会話してたので混ぜてもらったら、なんとLinkin Parkのロゴが入ったギターピックを貰う事が出来ました。まさか自分がリンキンのピックを触る日が来るなんて、本当に思ってなかった。家宝がまた一つ増えました。墓場に入れてもらおうと思います。スタッフさん本当にありがとう。

因みにこのポップアップにはメンバーも来店し、マイクとフェニックスの誕生日会も開かれました。その他、沢山の著名人やインフルエンサーなども集まり、UVERworldのボーカルTAKUYA∞さんなんかも来ていたようです。ぶっちゃけ誰よりも圧倒的に早く6時間以上並んだ一般市民の僕がメンバーと会えなくて著名人が並ばず簡単にサインや2ショットを撮っていた姿を見て若干ぶちぎれそうにもなりましたが、メンバーが楽しそうにしていたのでまあ良しとしましょう。(笑)
下記のサイトには、ポップアップで販売された商品の写真が掲載されていますので、気になった方はご覧下さい。
また、先日にはLinkin Parkの日本公式オンラインストアが開設されました!来日公演で販売されていたグッズの再販や、「Peace and After」とのコラボ服の新作が発表されました。是非ご購入下さい。
(今回出た新作コラボ商品の予約期間は終了しています)
2.メンバー直筆サイン入りポスター購入
これは何故かあまり知られていないのですが、今回のワールドツアーでは各国の公演ごとに、その土地ならではのエッセンスが入ったデザインの限定ポスターが順次販売されているんです。各デザイン200枚限定で、各ポスターごとに違うデザイナーの方に依頼して制作しているという、何とも豪華な企画になっています。Linkin Parkの海外公式ストアで販売中で、勿論ここ日本の公演用にも2種類の限定ポスターが発表されました。
さらに凄いのが、各ポスター10部限定でメンバー全員の直筆サイン入りバージョンも販売されました。日本円にして5万円くらいだったので悩みはしましたが、流石に買いたいと思ってサイトにて待機。そしてなんと購入出来た…。10秒以内には全種売り切れでした。下手したらこれ買ったの、日本で僕だけの可能性も全然ありますからね。現に自分が探した限りだと、もう一種の方のポスターは日本の方で数名購入者を見かけたのですが、僕が購入したデザインの方は一人も発見できていません。もし購入された方がいましたら、是非教えて下さい!
そして、注文から約4か月が経過した6月4日、遂に我が家に無事届きました。僕が今回選んだのは、日本出身で国際的に活動している漫画家兼イラストレーターの岡崎能士さんが手掛けた、侍のイラストが描かれているポスターです。代表作で言うと、自費出版誌「ノウノウハウ」にて連載していた「アフロサムライ」ですね。その他、「スターウォーズ・ビジョンズ:THE DUEL」、「ニンジャバットマン」、「SOUND & FURY」等のキャラクターデザインや、映画「サマーウォーズ」、「竜とそばかすの姫」のアバターデザインも担当しています。日本の伝統的な水墨画や浮世絵の影響を感じさせるタッチや、侍や忍者的モチーフと西洋のストリートカルチャーが融合した独特な世界観の絵が特徴です。
今回購入したポスターも、岡崎さんの世界観が余すことなく入っている+その中に所々Linkin Parkの過去のロゴやアルバムタイトルが兜に日本語で入っていたりと、上手く両者の世界観が融合されていて素晴らしかったです。そして、勿論メンバーのサインとシリアルナンバーもしっかり直筆で入っていました。自分がLinkin Parkのサインを手にする日が来るなんて本当に思ってなかったし、家宝がまた一つ増えました。僕はワンオクのサインも実は持っているので、大好きな2つのバンドのサインを家に並べる事が出来て、とても嬉しかったです。素晴らしいポスターを本当にありがとうございました。

(ポップアップで貰ったピック付き)
3.地上波生出演と新曲披露
ライブ前日の2月10日には、エミリー、マイク、コリンの3人が日テレの朝番組「DayDay.」に生出演するという、豪華な出来事もありました。Linkin Parkが日本のテレビ番組に出演したのは恐らく3回目、前回は2017年に出演した「NEWS ZERO」だったと思います。知ってる方も多いかもしれませんが、Linkin Parkは2012年にMステで初めて地上波に出演した際、局側のミスで演奏と音のズレが発生してしまうという放送事故があったので、それ以来もう出てくれないかと思いましたが、以降も出演してくれるというのは本当に愛を感じますね。日本のバラエティーを体験したいとの事で、色々なゲームに挑戦していました。世界的ビッグバンドに何やらせてんだよとは思いましたけど、ある意味彼らの器の大きさが垣間見えて良かったのかもしれませんね。(笑)
そして最後には、アルバム「From Zero」から「The Emptiness Machine」のアコースティックアレンジを世界初披露してくれました。朝番組だから激しすぎるのはやめようという事で気を利かせてくれたのをきっかけに、即席でアレンジを制作してくれたようです。下手したら、もう2度とこのバージョンでは聴けないかもしれないと考えると、本当に貴重ですし嬉しかったです。本当にありがとう!
今回の出演の様子は「DayDay.」の公式YouTubeに動画が残っていますので、見逃してしまった方は是非ご覧下さい。
4.ライブレポート(開演まで)
やっと!!ここから当日のレポート(笑)
ライブ前から運が爆発して、これ以上ないくらいボルテージも最高潮に高める事が出来た中で、いよいよライブ当日となりました。
1.会場到着
初日は夜勤明けからの一睡もせずにライブという感じだったので、正直体力的にしんどかった部分もありましたが、勿論ツアーのグッズ販売があったので、8時に仕事が終わって速攻で会場へ向かいました。以前行ったポップアップでツアーグッズも販売してくれたら最高だったんですが、残念ながらなかった為、再び並ぶ必要がありましたね。ですが、今回席は違うけど地元の友達もライブに来てくれてグッズも朝から並ぶと言っていたので、幸運な事に僕の分も朝一で買ってくれました。かなりの人数が並んでいたので、まじで感謝。Tシャツやトートバッグ、タオル、帽子などを購入しました。
さらに今回僕は両日VIP GOLD スタンディング席を購入したので、特典のグッズも受け取りました。ラミネートパスは結構集めたい派の人間だから嬉しかった。ただ、トートバッグは派手すぎて恥ずかしいやつだった。(笑)

日常使い出来ない派手さ具合
無事にグッズも手に入れて、開演までの時間は周辺を散策しました。どこもかしこもLinkin Parkのグッズを身に着けている人で溢れかえっていて、実感が湧いてきますね。お昼ご飯には近くの居酒屋のようなお店に入ったんですが、店員さんが気を利かせてくれて、テレビでLinkin Parkのライブ映像を流してくれました。因みに伝説の2004年のRock am Ringの映像でした。リンキンのファンなら一度は見た事ありますよね。自分も今でもたまに見ます。店員さん、どうもありがとうございました。その他のお店でも、沢山の場所でLinkin Parkの曲を流してくれていて本当に嬉しかったです。
※アーリーエントリー制度(ほぼ愚痴)
今回は両日VIP GOLD スタンディング席という、一番ステージから近い立ち見席を購入しました。本国のファンクラブ(LINKIN PARK UNDERGROUND→通称LPU)から最速でチケットを購入したのもあり、整番もかなり良かったです。しかし、ライブ直前になってLPUが海外公演と同様にアーリーエントリー制度という物を導入。これは、対象のチケット購入者且つファンクラブ加入者の人がさらに先着順でチケットの整理番号とは別の整番を取り合い、獲得者はその番号順での入場となり、当日入場時間より30分早く入場できる=最前が取りやすくなるよ!という制度です。確か各公演200~300人くらい限定でした。
正直これは本当にいらなかった(笑)だって、これのせいでチケットの整番が仮に1番だとしても、アーリーエントリーを持ってる人の方が早く入場できる=チケットの整番がいくら良くても最前を取れない。そもそも、もしこの権利を獲得できたとしても、チケットの整番より遅い番号になれば、それは単純に悪い位置になるという事です。さらに、30分ほど早く入場は出来ましたが、だからといってその間に何かイベントなどがあった訳でもなく、ただただ待ち時間が増えただけっていう鬼畜システム。そもそも集合時間もめっちゃ早くて、集まってもそこから会場に入るまで1時間以上謎に待たされてたし。(笑)
もっと言えば、このアーリーエントリー制度はどちらか1日しか獲得する事が出来ないので、自分のように両日最前ブロックを取っていた人は、必然的にどちらか1日の最前は諦めなければいけないというシステムでした。まあ同じ人が両日最前を独占してしまうみたいな事はなくなるので、そういう意味では確かに多少有効かつ平等なのかもしれませんが、この制度のせいでファンクラブ先行でチケットを買った意味も全くなくなり、しかもこの制度が発表されてから入会した人も参加できたので、もうまじで意味わからんかった。僕も今回の来日公演があったから先行に参加する為にファンクラブに事前加入した訳で、年会費だって確か特典込みで1万円くらい取られてますからね。しかもその特典のグッズは未だに届いていません!(笑)
まさに自分も被害者の一人で、初日にアーリーエントリーを取りましたが、結局チケットの整番よりも遅い番号になってしまった為、かなり萎えましたね。しかもこれサイトのエラーで一回受付日が延期になったし、当日も確か11時に受付開始だったのに、サイトのミスで1分前から受付が開始されてたようで、たまたま11時前に入った人が先に獲得できちゃってたという最悪な展開でした。
運営の方はSNSで、このシステムをとても評価していたみたいですが、全くもって良い点がなかった!次以降は是非なくして頂きたい。因みに海外公演でも自分が見た限りでは不評だったみたいです。(笑)
3.入場~開演前
めちゃくちゃ愚痴言ってすみません。(笑)ただ、入場してから開演までの時間の間に良い事もありました。初日にはポップアップの時にスタッフをやってた海外スタッフのお姉さんが最前に来てくれて、桜ロゴのステッカーをくれました。そして2日目には、なんとコリンが目の前を歩いてきてファンと交流してくれたんです。ちょっと話せたり、ハイタッチや2ショットなんかもしてくれてました。自分も2列目にいたので、手を伸ばして運良く握手が出来ました。めっちゃ嬉しかった。
そして、いよいよ開演時間が迫ってきました。どういう意図でチョイスしたのか分かりませんが、開演前の入場曲が初日は「Pokémon Theme」、2日目が「怪獣大戦争マーチ」でした。あまりにも謎すぎてみんな笑ってましたね。彼らの遊び心と日本愛を感じました。

5.ライブ本編レポート
ここからはライブ本編、1曲ごとに感想や曲の紹介を交えながらレポートしていきます。当たり前ですが、ツアーのセトリが出てきますので、ネタバレ等が嫌な方はご注意願います。
Act Ⅰ
1.Inception Intro
両日共に謎の選曲だった入場曲が終わり、会場内の笑いとどよめきが少し収まった時、会場は暗転。重低音と共に一筋の白い光がステージに降り注ぐ。この時、今自分がこの場所に立っているという「奇跡」を全身で体感して震えました。これまでずっとこの日が来る事を夢見てはいたけど、再始動するまで、そして今日という日が来るまで信じ切る事が出来ていなかった。物心付き始めた頃からずっと大好きで憧れだった存在がもうすぐ目の前に来るってだけで、頭は真っ白に。これまでの思い出や辛かった別れも全部、この一瞬で走馬灯のように蘇ってきた気がします。
後でも都度解説しますが、まず最初に抑えておいて欲しい情報として、今回のツアーの構成はアンコールを含めて5部構成のライブとなっており、それぞれのパートで明確なテーマを持っています。選曲も基本的には各テーマに合わせていて、曲順もLinkin Parkらしい綿密な繋がりを持っています。よって、それぞれの曲をただ単体で楽しむだけでなく、各パート及び全体の流れから逆算してサウンドや歌詞の意味を照らし合わせてみると、さらに深くライブを楽しむことが出来ると思います。

そして最初のSE。これを初日と2日目で変えてくるという、中々珍しいパターンでした。特にここまで大きいアーティストともなると、セトリも演出も事前にしっかり作り込んでくる分、何回見に行っても変更などは無かったりするので、初っ端から違うパターンで来たのは嬉しかったですね。初日はCastle of Glass、2日目はIridescentの一部分が入り混じったSEとなっていました。音楽的には重く、深い低音がゆっくりと脈打つように響き、そこに断片的な電子音、声のサンプル、そしてざらついたノイズが交差しながら、まるで記憶や思考が崩れては再構築されていくかのようなサウンドスケープが広がっていきます。
この「Inception Intro」は、単なるオープニングSEにとどまらず、「Inception(始まり)」という言葉が示す通り、これはまさに「物語が始まる前の導入部」であり、現実と非現実、記憶と現在、自分と他者――そういった境界があいまいになっていく感覚を観客に植えつけるような構成でした。観客一人ひとりが、このツアーという物語の中に深く潜り込む準備をさせられているような時間が流れていたように思います。
2.Somewhere I Belong
そして、SEと共にメンバーが続々と登場。楽器隊が入場し、イントロに合わせて音を鳴らし始めます。全然1曲目とは違う雰囲気のサウンドから、楽器隊が入る事で一気に会場の全員が知ってるあの曲に繋がっていく。イントロだけでご飯が無限に食べられそう。そして最前だからというのも勿論ありますが、まじで音が重かった。骨の髄から震えるような音でした。そして、遂にマイクとエミリーがゆっくりと登場して幕を開けます。
一曲目に選ばれた「Somewhere I Belong」という曲は、個人的に彼らの音楽の中でも特に思い入れ強い曲の1つで、この曲があったから僕はここまでLinkin Parkにのめり込む事が出来たと思っています。それには勿論サウンド面の魅力を始めとして様々な理由がありますが、中でも歌詞が僕自身にとっての代弁者的なものだったからだと思います。

この曲は「Meteora」の収録曲で、アルバムの中でも特に根強い人気のある曲の1つです。ミステリアスなアルペジオ(実は逆再生)から、一気にディストーションのかかった重厚なサウンドで幕を開けるイントロが印象的なこの曲は、「自分の居場所を求める事への葛藤」や「内面の苦しみと向き合う事」を描いています。彼らの音楽を聴き始めた頃は英語なんて全く分からなかったし、今のように調べる術や学ぶことも全く出来ていませんでしたが、ある時にたまたま歌詞を調べたら、物凄く衝撃を受けたのを今でも覚えています。もっと遡れば、聴き始めた頃は歌詞が全く理解できていなかったけど、サウンドから僕は何かを感じ取って自分の生き方と重ね合わせ、共鳴していたんだと思います。変な話かもしれませんが、そうじゃなきゃここまで衝撃なんか受けないと思います。
そして、肝心のエミリーのボーカルはというと、個人的には想像以上に良い印象を受けたなと思う反面、やっぱりチェスターと比べてしまうと少しパンチが足りないかなと思ったのも正直な所です。女性ならではの良さでもありますが、この曲に関しては少し歌い方が綺麗すぎる気はしました。ただ、マイクとの掛け合いから生まれる独特のエモさに関しては、チェスターとベクトルは違うとはいえど、変わらず健在でした。流石はマイク達が選んだボーカルなだけありますね。先程のパンチの足りなさに関しては、どちらかと言うとバンドサウンドをよりヘビーにした事でカバーしているような気もしました。

良くも悪くもチェスターがいた頃のリンキンって、個人的にはチェスター主体すぎるかなと感じる時が少なからずありました。あれだけ偉大なボーカリストだから必然的に目立ってしまうし、それが良さでもあるんですけどね。ただ、新体制になってからはエミリーをメンバー全員で支えて成り立ってる気がしたんです。今の方がよりバンドやってるなって感じがあって、個人的には一つにまとまって見える気がしました。
でも結局はもうサウンドとかメンバーがどうこうなんてどうでも良くて、会場にいた全員が「おかえりなさい」って思ったことでしょう。日本公演は約12年ぶりですよ。もう死ぬまで見れないんだろうなって自分も諦めてた。本当に現実なのか夢なのか、区別がつかないレベルで感情が渋滞してました。
※チェスター追悼コンサート
話は逸れますが、自分がこの曲をさらに好きになるきっかけとなったのが、2017年にチェスターが亡くなった際に開催された、旧体制最後のライブとなるチェスター追悼ライブでの披露でした。このコンサートでは残されたLinkin Parkのメンバーは勿論の事、これまでにLinkin Parkと関わってきた世界中のアーティストが彼を追悼する為に集結し、曲ごとにゲストとして出演。その中で今回の「Somewhere I Belong」も披露されました。そして、この曲でチェスターのパートを任されたのが、このコンサートで唯一日本人として参加したONE OK ROCKのボーカルTakaでした。Taka自身にとっても、バンドを始めるにあたってこの曲から物凄く衝撃を受けていたという過去があった為、今回抜擢されたんだと思います。しかし、彼はチェスターが亡くなってしまい、あと少しでLinkin Parkとツアーで共演できるという夢の予定も全て無くなってしまったという喪失感や、周りを見れば彼が憧れてきた世界中のロックスターがずらりと並んでいるという異質な空間に飲まれてしまい、大好きで何回も歌ってきた曲なのに、この日は全くキーが取れませんでした。彼自身もこんな事は初めての経験だったと語っています。
コンサートの映像はYouTubeでも残っていますので、見てみるといかにチェスターが偉大な存在だったかが一瞬で理解できると思います。Takaも確かにいつもの調子ではないのはよく伝わりますし、本家に比べれば足元にすら及ばないと言われればそれまでかもしれませんが、この空間で日本人代表として最後まで歌いきってくれた彼の勇気に改めて拍手を送りたいです。この日上手く歌えなかったのは、もしかしたら天国へ旅立ったチェスターのからかいだったのかもしれませんね。
※リンキン&ワンオク パリで念願の共演
さらに余談となりますが、両バンドは2017年にツアーで共演予定だったところ、チェスターが他界してしまった影響で断念。しかし、2025年7月11日に彼らはフランスのパリで約8年越しの共演を叶える事が出来ました。
彼らは今回のFrom Zero World Tourの一環で共演。今年のヨーロッパツアー最終日、キャパ約8万人のスタジアム公演(Stade de France)に前座としてワンオクが招待されました。(因みにワンオクは去年もMUSEの前座として、同じスタジアムで公演しています。)
前座ではありましたが、ワンオクの出番の時点で会場はほぼ満員で、かなりの盛り上がりをみせていました。さらに、コリンがギタリストとしてワンオクのステージに登場。代表曲「We are」で共演しました。また、その後のリンキンのステージにはTakaが登場し、「One Step Closer」で共演しました。長い時を経てお互いに成長し、共にステージに立ったのは本当に感慨深いです。チェスターもきっと見てくれていたと思います。
いつか日本でもリベンジをお願いしたい!!
3.Crawling & Points of Authority
話を戻しますが、1曲目の時点で死ぬほど歌ってほぼ満身創痍。そんな状態で2曲目からまさかのセトリ変更がありました。直近のツアーでも公演ごとに何曲かセトリ変更があった事は知っていましたが、当日楽しむ為にタイミング等をガチガチに調べて参戦した訳ではないので、初っ端から良い意味で裏切られて最高かってなりました。
この2曲もまた、彼らを語る上で絶対に外せませんね。2曲とも1stアルバム「Hybrid Theory」の収録曲で、未だにファンからも根強い人気があります。どっちも回収できて本当に良かった。
初日に披露したのは「Crawling」でした。2002年のグラミー賞で最優秀ハード・ロック・パフォーマンス部門を受賞したこの曲は、「精神的不安」や「自己否定」、「アイデンティティの喪失」などの痛みを包み隠さずに表現していて、チェスター自身の内面的な苦しみをそのまま音にしたような曲です。そんな強烈な曲を新しいボーカルは歌い上げる事が出来るのかという心配も少しありましたが、個人的には「Somewhere I Belong」よりもエミリーと相性が良かった気はします。チェスターはこの曲のサビでエッジを全開にかけて歌い上げますが、エミリーは振り切って逆を行ったような透き通った歌声で歌っていた印象です。再始動後の初ライブではどちらかと言えばチェスターに寄せた歌い方をしていますが、個人的には今回の方が意外にも好印象でした。チェスターと比較してしまうと違和感を覚えてしまう方もいるはずなので賛否両論あるとは思いますが、僕は無理にチェスターに寄せる必要なんてないと思いますね。エミリーにはエミリーの良さや強みがあるので、過去にリスペクトを払った上で彼女自身でいてくれた方が僕は良いと思いますし、十分過ぎるくらいにそれは伝わりました。また、所々でエミリーは観客にマイクを向け、みんなと大合唱する事を望んでいました。この曲はチェスターなき今、まさにファンが彼へ送る曲の一つなんだと思います。
そして2日目では「Points of Authority」を披露。有名度で言えば圧倒的に「Crawling」だとは思いますが、個人的にはこっちの方が断然嬉しかったです。「Crawling」はチェスターという存在がいるからそういう意味合いで特別だし大好きな曲ではありますが、そういう思い入れを抜きにした単純な曲調の好みで言えば、僕は完全に「Points of Authority」の方が好きなんです。というか、これはリンキンに限った話でもないんだと思いますけど、多くのファンがいわゆる代表曲として挙げるような曲って、自分はそんなにハマらないのかもしれません。Linkin Parkに関して言うなら、この曲よりも断然良い曲が沢山あるのに!って思っちゃう事も結構多いかも。先程のおすすめ曲の紹介であえて「Papercut」を選出したのも、まさにそれが理由の一つでした。

「Points of Authority」もまた、初期のリンキンの良さが100%詰め込まれていると思います。マイクのラップとチェスターの歌声のコントラストは勿論、この曲に関してはグルーヴィなビートとハーンのDJも相まって、よりHIPHOPに近いノリが生まれています。曲のテーマとしては「自己主張の必要性」や「支配されることへの反発」などを訴えるような内容で、リンキンらしさのある抽象的な歌詞に思えますが、現代社会での抑圧や人間関係の力学を想起させる物となっています。
歯切れの良いミドルテンポのイントロでは自然とジャンプしたくなりますし、サビも全員で歌いやすくて、所々モッシュなども起きていたようですね。そして、今回の披露で最高だなと思ったのが、Aメロの部分をマイクが代わりに歌っていたという事です。本来であればチェスターのパートなんですが、この曲は今回のライブでも原キーでの演奏という事で、エミリーにとってこのパートは若干音程が低くて歌いづらかった為でしょう。亡きチェスターが歌っていた部分を今はマイクが担当してるってエモすぎて死ぬかと思いました。
まだ新体制後のライブでの披露回数が少ない事もあって、途中エミリーは何度か歌詞を間違えていましたが、それもどこか愛くるしかったです。今後、回数をもっと重ねて自分のものにしていって欲しいなと思います。
4.New Divide
この再序盤というタイミングでこの曲を選んでくるあたり、改めて彼らの音楽の層の厚さを感じました。この曲は2009年公開の映画「トランスフォーマー/リベンジ」の主題歌になっている曲です。この曲でLinkin Parkを知ったという方も非常に多いのではないでしょうか。自分も当時はよく聴いていましたね。ライブでも会場全体に響き渡るような大合唱で最高でした。
この曲は彼らの3rdアルバム「Minutes to Midnight」からさらに進化し、エレクトロ・ロックの方向に舵を切った4作目「A Thousand Suns」に繋がる、言わば橋渡しのような一曲です。「Minutes to Midnight」の良さは残しつつも、トランスフォーマーの壮大なスケール感に合ったダイナミックなサウンドが特徴で、イントロのシンセサイザーから鳥肌が凄かったです。

この曲も歌詞はLinkin Parkらしい抽象的かつ感情的な表現が特徴で、曲名のNew Divide(新たな分断)からも読み取れる通り、「変化や別れ」、「再出発の象徴」とも解釈出来ますし、「過去の出来事や心の傷によって生まれた隔たりをどう乗り越えるか」、それらを乗り越えた先にある「真実」や「和解」を求める心情を描いたような曲だと思います。
また、先程から言っている抽象的な表現というのは決してマイナスな意味ではなく、これはリスナーの心情や人生経験とシンクロしやすい普遍性を持っているので、聴く人やその時の気持ちの持ち方で全く解釈が変わって様々な考察の余地がある為、非常に奥が深くなって面白いと僕は思います。要するに、答えがないという面白さを持っているという事ですね。
この曲も原キーでの演奏でしたが、ボーカルが変わっているとは言えど、あの頃の雰囲気はそのまま反映されている気がしました。
5.The Emptiness Machine
ここでようやく彼らの新曲が披露されました。会場にいた方は感じたと思いますが、明らかにこの曲からライブのギヤが一段階上がりましたね。自分も正直これには驚きました。あのでかい会場の雰囲気がたった1曲でここまで変わるのかと。改めて凄いバンドだなと感じました。そして、やっぱり新体制になってますから、最新曲の方が圧倒的に今のメンバーと合ってますし、エミリーのボーカルも素晴らしかったです。
この曲は本当に彼らの再始動を象徴するような一曲ですよね。「新生Linkin Parkの幕開け」という言葉、そしてAct Ⅰのテーマと一番マッチしている曲だと思います。初期のエネルギッシュで攻撃的なサウンドを継承しつつも、新たな可能性を感じることが出来て、個人的にも大好きな曲です。歌詞はタイトルからも少し読み取れる通り、現代社会における人間の孤独や感情の空虚さを象徴するような内容で、いかにもリンキンらしさの詰まったものとなっています。ただ、チェスターがいた頃の雰囲気と全く同じかと言われるとそうでもなく、個人的にはチェスターが激しい怒りの爆発という感じなのに対して、エミリーは激情と静けさのバランスが取れていて、悲しさが前面に出ているような印象を受けました。これは女性ボーカルだからこそ出せる強みだと思いますね。ですが、リンキンの核となる部分はしっかりと今も反映されていて、どちらの時代にもやはり良さがあるなと僕は思いました。

そして、個人的に心配だったのが観客の盛り上がり具合。特にLinkin Parkに関しては、どうしても初期の楽曲が圧倒的に人気なのもあって、新譜でどの程度会場が盛り上がるのかは不安でしたが、そんな心配がどうでも良くなるくらいに想像以上の盛り上がりを見せていました。多分、最初の3曲を聴いて違和感を感じてしまった方も、この曲で一気に引き込まれたんだと思います。自分は最前にいたからというのもあるとは思いますが、周りは最初の3曲より盛り上がっていた気がします。アルバムが出た当初は賛否両論ありましたが、なんだかんだ全員待ち望んでいたんでしょうね。
Act Ⅱ
6.Creation Intro
ここで一区切りついて第二幕へと入りました。
このパートでは、Linkin Parkの実験的で進化し続ける音楽性を象徴する流れとなっており、彼らの音楽性の幅広さを一番体感できる場所かと思います。全く同じコンセプトや曲調で最後まで駆け抜けるライブも良さはありますが、彼らのように数パートにしっかり分ける事で、全体にメリハリが付いているなと感じました。物語で言う起承転結みたいな役割をしてるようにも思いますし、今回のライブのように曲数が多くなると、どうしても一定の観客は疲れたりもします。そこで今回のように一気に雰囲気を変える事で、最後まで飽きさせない作りになっていますね。まあこういう作り方はそもそも彼らのツアーの演出だけに当てはまるのではなく、そもそも彼らの楽曲の作りを見ても同じように思いますけどね。
このままだと話が逸れてしまうのでこの辺にしておきますが、Act Ⅱのイントロはシンセサウンド主体の非常に神秘的でドラマチックな幕開けという感じでした。また、このイントロも日によって変えていたので、本当に凝ってるなって感じです。そもそもパートごとにイントロが入る事でライブへの没入感も上がりますし、そこから曲への繋がりも凄くシームレスでした。彼らのアルバムを通して聴いた事がある方なら、このイントロだけでも非常にリンキンらしさを感じたと思います。さらに題名にもある「Creation(創造)」の通り、ゼロから彼らの音楽が生まれていく瞬間を体感することが出来るものにもなっています。

7.The Catalyst
そして、ガラッと雰囲気が変わった第二幕の始まりを飾ったのはこの曲。先程のイントロから少しずつ「The Catalyst」のサウンドが足されていき、マイクの歌唱から曲は始まります。
この曲は個人的にLinkin Parkのキャリアの中でも特に実験的で、バンドとして新しい方向性へ舵を切った、言わばターニングポイントと言えるような曲の一つだと思っています。2010年にリリースされた4thアルバム「A Thousand Suns」のリードシングルで、それは従来の彼らのロックサウンドとは大きくかけ離れたものでした。よりインダストリアル要素やアンビエント色が強く、現代のポップスやHIPHOPにも繋がるような電子音楽を多様に取り入れています。

この曲の特徴はなんといっても、ミニマルなシンセループから始まって徐々にビルドアップするような構成だと思います。特に終盤の会場全体を包み込むような「Lift me up, Let me go」という歌詞の繰り返しは圧巻で、圧倒的なスケールの壮大さを全身で感じることが出来ました。また、6分近い長尺の曲ですが、途中でテンポや雰囲気が変わる「組曲」のようなアプローチがなされていて、それまでの彼らの曲にはあまりなかったようなリズムの複雑さだったり、マイクのロボティックな加工が入ったボーカルも特徴です。(ライブでは加工はかなり控えめで、クリーンなボーカルでした)先程の「Creation Intro」のアンビエント要素やシンセ主導の雰囲気がそのままこの曲に溶け込むように続いていて、曲が始まった瞬間から既に世界観が出来上がっている感じがしました。
曲のテーマとしては、一言で言えば「終末と再生」といった感じで、宗教的・終末的なイメージや人間の苦悩、再生の葛藤を強く描いた曲だと思います。曲名にあるCatalyst(触媒)の通り、宗教・科学・感情を全て一曲に混ぜ、それらを化学反応のように表現しているのがこの曲の凄さですね。だからこそ、先程の「Creation Intro」との親和性も抜群で、サウンド面だけではなく、歌詞も「再生」や「変化」を象徴している為、よりコンセプトが共鳴しているように感じます。ただ単にツアー用として「The Catalyst」に合わせて作ったイントロという訳ではなく、タイトルや歌詞への考慮など、全てにおいて一切の妥協がないものになっています。
また、曲のテーマから「壊れた世界に対して叫びや祈り」そして「それでも生きようとする人間の魂の賛歌」とも捉える事が出来ます。特に、不安定で分断された現代社会においてこの曲はとても響くものがあり、Linkin Parkからの「今の混沌から新しい世界を創るための問いかけ」のようにも感じました。2025年の今だからこそ、彼らのファンだけでなく、世界中の人に聴いてみて欲しい一曲だなと僕は思います。
8.Burn It Down
このシームレスで完成された素晴らしい流れに続いたのは、これまた彼らの代表曲の一つである「Burn It Down」。この選曲に関しても本当に素晴らしいなと感じていて、セットリスト全体として振り返ってみても非常に緻密に構成されているなと思います。
この曲はまさに「エレクトロ × オルタナティブロックの完成形」と言えるような楽曲で、ファンからも未だに根強い人気がありますよね。2012年にリリースされた5作目のアルバム「LIVING THINGS」の収録曲で、本作はハイブリッドの再定義を試みた彼らの「過去と未来の融合」を象徴するような一枚です。そんな一枚ですから、本作は「過去と未来のLinkin Parkを繋ぐ架け橋」とも捉えられますね。前作の「A Thousand Suns」が実験的でコンセプチュアルな構成だったのに対し、本作はメロディの強さや構造の明快さを意識している印象で、新鮮さはありつつも「Linkin Parkらしさを取り戻した」ような感じもします。
先程「過去と未来のLinkin Parkを繋ぐ架け橋」という言葉を使いましたが、それはサウンド面だけではなく、歌詞や今回のツアーでの選曲という立ち位置で見ても「架け橋」のような印象を受けました。というのも、「The Catalyst」の次にこの曲を選んだという点。「The Catalyst」が「宗教的・終末的な問いを投げかける精神の目覚め」を歌っているのに対して、「Burn It Down」のテーマは「成功や信頼、関係性の崩壊」や「社会や制度の自己破壊的側面」です。つまり、「Creation Intro」~「The Catalyst」では「壊すために築く」、そして「Burn It Down」では「ゼロから作り直す」という「再生の前提としての破壊」を一連の流れで描いているんですよね。この構造がCreation(創造)というセクションの逆説的な本質とぴったり合致していると思いました。「The Catalyst」で描いた「精神」から「Burn It Down」で描く「行動」への順序が自然で、セットリストの流れとして非常にスムーズなんですよね。この2曲はリリース時期こそ違うものの、ここまで構成の流れが一貫しているのは本当に凄いなと思いました。普段何気なく単体で聴いていたこれらの曲達も、ライブという場では組み方次第でここまで化けるんですね。

そして、この曲のメロディ重視の楽曲構造も、エミリーの声と相性抜群だなと個人的には思いました。原曲のエモーションを壊すことなく、自分の声として曲を再構築していた気がします。エミリーの少しザラつきのあるトーンが、この曲の「壊れかけた美しさ」と非常にマッチしていますね。マイクとのデュアルボーカルの構造も活きている感じがしていて、チェスターが歌う場合よりも柔らかさと鋭さがよりはっきり分かれている印象を受けました。エミリーによってこの曲に新たな生命が吹き込まれ、Linkin Parkが今なお創造を続けるバンドである事の証明となっていたと思います。
9.Over Each Other
「Burn It Down」の熱量をそのまま受け継ぐかのように演奏されたのは、新生Linkin Parkの楽曲の中でも象徴的な曲の一つと言える「Over Each Other」。今回のツアーにおける新曲の中でも特に存在感と新鮮さを放っている楽曲の一つで、セットリスト全体においても過去と今とこれからを繋ぐような、非常に意味のあるポジションに配置されていると感じました。
この曲も「The Emptiness Machine」と同様に「新章の幕開け」を告げるような存在です。重厚なビートと浮遊感のあるシンセサウンドが印象的で、バンドがこれまでに培ってきたエレクトロ×ロックの融合スタイルを踏襲しつつも、サウンドの肌触りは明らかに「新しいLinkin Park」なんですよね。特にエミリーのボーカルが前面に出るパートでは、繊細さと芯の強さが共存していて、単なる新メンバーではなく「物語を語る存在」として完全に曲の一部になっていたのが印象的でした。
歌詞で見てもこの曲は非常に興味深いテーマを持っていて、まるで「人と人とが分断され、ぶつかり合いながらも理解を求めて歩み寄ろうとする姿」が描かれているように感じられます。現代の世界情勢やSNSの断片的な繋がり、個人間のすれ違いといった要素にも重なり、個人的な感情と社会的なメッセージの両方を内包した一曲として僕は聴こえてきます。

さらに素晴らしかったのは、この曲が「Burn It Down」からの流れの中で「今という時代に立ちすくむ感情」を受け止める役割を果たしていたことです。「Burn It Down」で描かれた「壊れていく過程」のその先に、「Over Each Other」が提示するのは「再構築への第一歩」。まだ全てが癒えたわけじゃない。でも、壊れたものの上にもう一度手を伸ばそうとする、その瞬間の人間的な脆さと美しさが、曲全体に沁みわたっていました。
また、新体制のバンドとしての力量もこの曲では際立っていて、音の作り方、間の取り方、緩急の付け方。どれを取っても非常に洗練されていました。ライブという場で初めて聴く新曲にもかかわらず、観客が自然と引き込まれていった空気感は、Linkin Parkが今なお進化の中で生きているバンドなんだと、改めて思わされる瞬間でした。
10.Waiting for the End
次に披露されたのは、Linkin Parkの楽曲の中でも屈指の美しさと内省性を持つ「Waiting for the End」でした。特にエミリーはこの曲をかなり気に入っているようです。それも相まってか、旧曲の中で個人的にはトップクラスに相性が良かったと感じました。
この曲も「The Catalyst」と同じ「A Thousand Suns」の収録曲で、Linkin Parkの音楽的変革期を象徴する一曲です。このタイミングでの選曲は、「過去の痛みと向き合い、そこからもう一度歩き出す」という意志を象徴しているようで、セットリストの中でも非常に重要な位置を担っていたように思います。特に今回の「From Zero World Tour」が掲げる「再生」や「始まり」というコンセプトとも強く結びついていて、単なる懐かしさだけではなく、今この瞬間にこの曲が鳴らされる意味がしっかりと感じ取れる構成になっていました。

この曲は「終わりと再出発の狭間で揺れる人間の脆さや希望」を繊細に描いています。「Waiting for the End」というタイトル自体が、ある意味で「喪失」と「未来への希求」の両方を生んでいて、ライブでその意味を噛み締めながら聴くと、まるで自分自身の人生の一部のように響いてくる瞬間がありますね。さらに特筆すべきなのは、この曲が「Over Each Other」の次に演奏されることで、「新たな関係性の始まり」から「喪失を乗り越えた再出発」という非常にドラマチックな流れを作り出していること。前曲で提示された「他者との衝突と理解の兆し」のその先に、「Waiting for the End」は「自分自身との和解」や「過去との対話」を描き出していて、精神的な物語として非常に完成された流れになっていたように思います。
また、音楽的にもマイクの柔らかなラップとエミリーの感情のこもったボーカルが絡み合う構成は、まさに「今のLinkin Parkを体現している」と言えると思います。エミリーが歌い継ぐチェスターのパートには、決して模倣ではないリスペクトと共鳴があり、彼女自身の声でしか出せないような切実さが宿っていたのが印象的でした。
この曲の存在は、過去への敬意と未来への希望を繋ぎながら、バンド自身がどれだけ「歩き続けること」に価値を置いているかを示していて、それが強く伝わってくるからこそ、今この瞬間のLinkin Parkが心から信頼できると、改めて実感させてくれました。
11.Castle of Glass
「Waiting for the End」の静かで深い余韻が会場全体を包み込んだ直後、そっと差し込むようにして始まったのが、「LIVING THINGS」の収録曲である「Castle of Glass」。この曲もまた、彼らの楽曲の中で特に叙情的で内省的な側面が強く、今回のツアーにおいても「壊れたものの上に築かれる新たな意味」を象徴するような立ち位置で演奏されていたように思います。
この曲はエレクトロニックでありながらも、どこかフォーク的な温かさを感じさせるサウンドスケープが最大の特徴で、ライブではそのミニマルな音像がより一層際立っていました。特に、冒頭のループするようなシンセのフレーズと淡々と進むビートが、観客一人ひとりの内側の物語に語りかけるような感覚を生み出していて、まるで静かな湖面に広がる波紋のような美しさを感じました。
この曲は「Castle of Glass(ガラスの城)」という比喩を通じて、自分が壊れやすく脆い存在であり、「自分の存在が完璧でないどころか、どこかにひびが入っていること」を描きながら、それでもその中に価値や意味を見出そうとする姿勢が貫かれています。壊れていても、欠けていても、それでも存在している。そして、何かの一部として生きている。この曲はそんな不完全さの肯定のような歌だと思います。

ライブではエミリーのボーカルが特に印象的で、繊細さと芯の強さが共存したその歌声が、この曲の持つ「壊れたままでもなお立ち上がろうとする人間の姿」を、まさに等身大で描き出していたように感じました。マイクとの掛け合いによる静かな対話のような構成も、歌詞の持つ孤独や葛藤、そしてかすかな希望をより一層引き立てていて、この曲がただの「静かなナンバー」ではなく、むしろ精神の奥深くを揺さぶる強さを持つ一曲であることを再認識させられました。
この曲は派手な展開こそありませんが、だからこそ言葉にならない想いのすべてを包み込んでくれるような優しさと強さがあります。それはまるで、観客一人ひとりの「ひびの入った心」を否定せず、そのまま抱きしめてくれるような、Linkin Parkからの静かなメッセージだったように思います。また、Linkin Parkというバンドが歩んできた喪失と変化、そしてその上で今なお音楽を届け続けていることの意味が、この曲を通して深く伝わってきました。
12.Two Faced
そして、ここまでの流れるような展開と静けさを切り裂くように鳴り響いたのが、先程のおすすめ曲にも挙げた彼らの新曲「Two Faced」でした。この曲が始まった瞬間、これまでの流れとは一線を画すような切れ味がライブ全体を貫きました。新しい時代を進むLinkin Parkの決意が、その重く切実なビートと緊迫した構成ににじみ出ていて、会場の空気をピンと張りつめさせるような力を感じます。ブレイクダウンではモッシュも発生し、一気に会場全体が引き込まれていきました。
サウンド面では、硬質なドラムと不穏なシンセサウンドが基盤となっていて、全体としてはインダストリアルの要素すら感じさせるほどの緊迫感があります。その上に乗るマイクのラップは、まるで心の奥底に潜む本音を無理やり引きずり出すかのように鋭く、そこにエミリーのボーカルが交錯することで、内面の葛藤がより立体的に描かれていきます。

先程もご紹介したので、曲のテーマなどは軽くの紹介としておきますが、「Two Faced(二面性)」という言葉が示す通り、歌詞のテーマは非常に多層的で、自分自身の中にある「理性と本能」、「優しさと怒り」といった相反する感情の共存に加えて、先程もご紹介した通り、信じていた他者が見せた裏の顔への失望や怒りといった外側の感情にも踏み込んでいます。日常では押し殺している本音、自分でも直視したくなかった一面、そして信頼の上に築いていた関係性が一瞬で崩れる瞬間。それらが絡み合うことで生まれる混乱と痛みが、楽曲全体に張り詰めたような緊張感を与えているように感じました。
つまりこの曲は、「偽っていたのは自分なのか、それとも相手なのか?」という問いを軸にしながら、内側と外側の二面性がぶつかり合う心理のリアルを描き出しているんだと思います。そしてその過程で生まれる戸惑いや憤り、さらにはそれらの感情をどうにかして受け入れようとする姿勢までもが細やかに、そして鋭く表現されている一曲です。

この曲が披露されたときの空気感は、「これが今のLinkin Parkだ」と言わんばかりの強さと説得力に満ちていました。重くて苦しい感情を包み隠さず音楽に変えてしまうその姿勢は、昔から変わらずに彼らの核にあるものだと思いますし、だからこそ観客も無意識に心を預けてしまうのだと感じます。「Two Faced」は、そんなLinkin Parkの「現在地」を象徴する一曲として、これからも語り継がれていくことになるはずです。
13.Joe Hahn Solo(with Colin on drums)
「Two Faced」で描かれた内面の混乱と緊張感が残る中、それらを一度「音のカオス」に昇華するように、ハーンによるソロパートが始まりました。また、このセクションではコリンも参加し、ビジュアルとビートが一体となったまさに五感を揺さぶるような演出が繰り広げられます。

このパートは単なる「幕間」や「息抜き」ではなく、むしろLinkin Parkの持つサウンドとアートのハイブリッド性を象徴するような位置づけに感じられました。ハーンのサンプル使いや高速スクラッチは、まるで過去の記憶を断片的に呼び起こすかのようなノイズとリズムの断層で、視覚的にもオーディエンスの想像力を刺激するような映像演出が加わり、まるで夢と現実の狭間をさまようような体験を生み出します。また、そこにコリンのドラムが入ることで、混沌とした世界に鼓動のようなリズムを与え、機械的でありながらもどこか生々しいビートを打ち出していました。
また、このタイミングで一度ボーカルが消えることで、観客一人一人が「言葉のない時間」を受け止めることになり、それが逆にこれまでの感情を整理し、次の章へ進む準備をするような役割にもなっていたようにも思います。まさにセットリスト全体の流れの中でも、心の中のノイズや怒りを音として吐き出す瞬間として機能していて、物語の中間点として非常に重要なセクションでした。
14.When They Come for Me
ハーンとコリンによるソロパートで感覚を揺さぶられ、会場が一度「混沌の極み」に包まれたその直後、ゆっくりと、そして確実に脈打つようなビートと共に始まったのは、導入の「Empty Spaces」、そして「When They Come for Me」。ここからまた雰囲気は変わり、このセクションではマイクの卓越したラップスキルを余すことなく体感する事が出来ました。また、この曲ではコリンがギタリストとして登場し、マイクと笑顔を交わしながら楽しそうに演奏していたのが印象的でした。「A Thousand Suns」の中でもひときわ異質かつ挑戦的なこの曲は、今回のセットリストにおいてもLinkin Parkの反骨精神と独自性を象徴する一曲として強烈な存在感を放っていたように思います。
曲の冒頭では、まるで戦場の太鼓のようなパーカッシブなビートが響き渡り、観客の身体を直感的に動かすような「原始的なリズム」が空間全体に広がっていきます。そしてその上に乗るマイクのラップが、言葉ではなく意志そのものをぶつけるような鋭さで突き刺さってきます。HIPHOP、インダストリアル、サイケ、中東やアフリカン的パーカッション要素などが入り混じった非常にユニークな構成で、彼らのジャンルの枠に収まらない実験性をフルに感じる事が出来ました。

曲の歌詞には、Linkin Parkが世間やレーベル、世の中の期待にどう抗い、自分たちの音楽性や表現を守り抜いてきたかという決意が込められていて、今のフェーズのバンドがこの曲を再び鳴らすことの意味は非常に大きいと思います。新体制になった今、これは「過去を受け入れた上での再宣言」とも言えるような選曲であり、バンドとしての自負と覚悟を強く感じさせる場面でした。
※Fort Minorとは
次の曲の感想に入る前の予備知識として、マイク中心のソロプロジェクトである、Fort Minorについて軽くご紹介しておきます。Fort Minorについても知っておく事で、Linkin Parkの音楽をより楽しむ事ができますし、マイクの凄さもより深く知る事が出来て、今回のセトリの構成や意図への理解度も格段に増すかと思います。知ってるよという方は、飛ばして頂いてOKです。
主な活動期間は2004年〜2006年(一時休止を経て2015年に一時再始動)で、マイクの他、Styles of Beyondなどのゲストも多数参加しています。また、2017年以降(チェスターの死後)は、Mike Shinodaの本名名義でのソロ活動にシフトして活動していました。
Fort Minorという名前の通り、「マイナーな視点で、でも芯のあることを語る場所」という意味が込められているとも言われていて、Linkin Parkの活動では描けなかったHIPHOPへの純粋な愛情とルーツを表現するために、マイクが立ち上げたプロジェクトとなっています。
そもそも「Fort」は音楽の中の力強くて攻撃的な側面を表し、対して「Minor」は、小さい、控えめなものという意味や、音楽的な「マイナーキー」のことで、これは暗くて内省的な雰囲気を持つ音階を表す言葉でもあります。つまり、「Fort Minor」という名前は、強さと繊細さ、攻撃性と感情的な深みといった対照的な要素のバランスを意識しているのだと思います。

音楽性としてはHIPHOPに完全にシフトし、政治や人種、アーティストとしての葛藤、アンダーグラウンド精神などが色濃く反映されているのが特徴です。また、これは単なるサイドプロジェクトではなく、Linkin Parkがバンドとして音楽的に進化する裏で、マイク自身がラップやプロダクションを突き詰めた証でもあり、その後のバンドのサウンドの深化にも大きな影響を与えています。
Fort Minorとしてのアルバムは、2005年にリリースされた「The Rising Tied」のみで、その他、ミックステープやEP、インストアルバムなど、多様な形態で作品を発表しています。基本的にはマイクがほぼ全ての楽曲を書き、楽器も演奏して、プロデュース、ミックスまでも手がけています。そして、「The Rising Tied」に関しては、あのJay-Z がエグゼクティブ・プロデューサーを務めている事もあって、ラップアルバムとして非常にクオリティが高い印象です。
※Kenji
また、「The Rising Tied」にはマイクの日本名でもある「Kenji」という曲が収録されており、これはマイクのご家族の実体験に基づいた物語を歌っています。今回のツアーとは関係ない曲ではありますが、一人でも多くの方にこの曲を知ってもらいたいと思ったので、ご紹介します。
この曲は1940年代、第二次世界大戦中のアメリカによる、日系人の強制収容という実際の歴史がテーマです。彼の父親や叔母は実際に、第二次世界大戦中に敵性外国人とみなされ、強制収容所に送られたという悲しい過去がありました。自分達は何も悪い事をしていないのに、ただ日本人というだけでスパイだと疑われ、家や土地を奪われ、強制的に収容され、自由を奪われる。父から聞いたそんな辛く悲しい過去を彼は以前、ロサンゼルスの「Japanese American National Museum(全米日系人博物館)」を訪れたことをきっかけに再度思い出し、この曲を制作すると決意。彼は博物館で世界大戦中の日系人収容について学び、そこに展示されていた話が自分の家族の歴史そのものだと気付きました。その瞬間、自分のルーツを音楽として表現しなければならないと思ったのがきっかけだったそうです。マイクはこの曲を商業的ヒットを狙って書いたわけではなく、「自分の家族が体験したことを、無かったことにしたくない」という強い思いから制作し、過去のインタビューでも、「日本人の血を引く僕がこれを語らずに誰が語るんだ?」と語っています。また、歌詞にはマイクの父と叔母の実際の声の録音が挿入されていて、ドキュメンタリーのようなリアリティがあります。
そもそも、日系アメリカ人の強制収容というテーマを真正面から取り上げた曲は、今も昔もほとんど存在しません。この出来事はアメリカの歴史教育やエンタメで長らく見過ごされてきた部分であり、歴史的に語られにくいテーマでした。差別や社会的マイノリティのテーマを扱うラップは数多くありますが、「日系人」という視点で語られることは極めて稀で、「日系アメリカ人が体験した不条理」をHIPHOPという形で世界に発信した異色の作品となっています。そもそもHIPHOPというジャンル自体が、社会的・歴史的な抑圧へのカウンターカルチャーから生まれた音楽ですから、マイクが自身のルーツや家族が実際に経験した痛みを「Kenji」で、ラップという形式で描いたことには大きな意味がありました。
何故この曲を今回ご紹介しようと思ったかというと、この曲をリスナーの僕達が知っていること自体が、「歴史の証人」になっていると言えると思ったからです。歴史的に見過ごされてきたテーマを当事者の視点で真正面から描いた数少ない音楽作品であり、今なお差別や移民問題がひしめくこの世界に強く訴えかけるような、これからも語り継がれるべき傑作です。非常に悲しくて重いリアルがテーマの曲ではありますが、2025年の今だからこそ、そして日本人のあなただからこそ、一度は聴いてみて欲しいと思います。
15.Remember the Name
それでは話を戻しまして、「When They Come for Me」の雰囲気からそのまま繋がるようにメドレー感覚で披露されたのが、今ご紹介したFort Minorの代表曲として知られる「Remember the Name」でした。「When They Come for Me」と同様に、この曲でもマイクの素晴らしいラップスキルを全身で体感でき、さらにLinkin Parkとしての彼とは一味違った雰囲気もあふれ出ていました。
一般人の自分がこれまでマイクを見てきて個人的に感じている事ではありますが、彼はLinkin Parkの核となる重要人物でありながら、基本的にはいつも出しゃばったりせず、温厚かつ真面目で極めて日本人らしい性格の方だと思っています。ステージ上でもぐいぐい前に行くタイプというよりかは、チェスターやエミリー&バンド全体を一番近くで支えるお父さんのような印象で、いつもどこか優しさがにじみ出ているように思います。そんな彼ですが、この曲では前へと大きく歩み出て、鋭く、そして自信に満ちたフロウを刻んでいく姿に、Linkin Parkのフロントマンとしての顔とはまた違った、ラッパー・Mike Shinodaの本質的な強さが現れていたのが印象的でした。

この曲は、「名声や派手な話題性ではなく、積み重ねた努力と本質で評価されたい」というテーマを持つもので、歌詞の中で繰り返される「10% luck, 20% skill, 15% concentrated power of will...」というフレーズは、まさに地道な努力と信念の強さを象徴しています。バンドとしての栄光や喪失を経験した今のLinkin Parkにおいて、この曲をあえてLinkin Parkのステージで披露すること自体が、マイクのアーティストとしての原点と覚悟を再確認する時間になっていたように感じました。
観客にとっても、ただ盛り上がる曲に留まらず、Linkin Parkがどれだけの道のりを経て今ここに立っているのかを再認識させられるような、非常に象徴的な1曲だったと思います。一味違ったマイクの堂々たる姿と、コリンのドラムとの呼吸の合ったパフォーマンスに、これからの彼らの進化がまだまだ続いていくことを、強く感じさせられました。
また、曲が始まる前には、マイクが被っていた帽子を客席に投げるというファンサービスもありました。しかも、帽子の鍔にはメンバーの直筆サインも入っていたという豪華っぷり。実は2日目の時、僕のほぼ真上に帽子が飛んできたんですが、当然ながら周りのファンと壮絶な取り合いになり、挙句の果てにマイクではなく自分が被っていた帽子が取られかけるという面白体験がありました。(笑)
※マイク&フェニックスの誕生日祝い
第二幕も終盤に差し掛かった所で、少しMCに入ります。そして、公演初日である2月11日は、我らがマイクシノダの誕生日でもありました。さらには、8日がフェニックスの誕生日という事で、二人の誕生日を祝う事になりました。スタッフが巨大ケーキを持ってきて、エミリーの掛け声で観客みんなで「Happy Birthday to You」を合唱しました。

また、普段はこういう事は全くしないんですが、今回ばかりは僕も何かお祝いの意味を込めて出来る事はないかなと考え、マイクの似顔絵を描いて当日会場に持っていく事にしました。そもそも全く絵なんて描かないので、1か月以上掛かってしまって大変でしたが、なんとか仕上げる事が出来ました。満足のいくクオリティになったかは微妙ですが、当日マイクも気付いてくれたっぽいのと、周りのファンやスタッフの方も褒めてくれたりカメラに映してくれたので、作った甲斐がありました。自分が一番分かってるので、下手というコメントは受け付けません!

昨年の再始動後に実施した初ツアーでは、アジアは残念ながら韓国公演のみという事で正直自分はがっかりしたんですが、この日に日本でライブする為に敢えて去年は来なかったんだと思います。マイクが日系人なので当然と言えばそれまでかもしれませんが、いつも至る所で日本愛を感じますね。そもそも現状アジアで二日間公演したのは日本だけですからね。メンバー含めて会場にいた全員が、特別な一夜になったと思います。あれから少し時間は経ちましたが、改めまして、二人ともお誕生日おめでとうございます!
16.Casualty & Keys to the Kingdom
初日は二人の誕生日を祝って和やかなムードになった後、その空気感をぶっ壊すかのように、エミリーの強烈なシャウトから「Casualty」が始まりました。また、二日目はセトリが変更され、今回のツアーで唯一の「The Hunting Party」からの選曲だった「Keys to the Kingdom」を披露しました。セトリは中盤、第二幕の締め括りというのもあって、最後はゴリゴリに激しい曲を持ってきましたね。先程も言いましたが、Linkin Parkほどのビッグアクトが2日間でセットを細かく変えてくるのは結構稀で、それ自体がファンに向けた特別な配慮のようにも感じました。
まずは「Casualty」について。最新アルバム「From Zero」からの選曲ですが、この曲は初期のような攻撃性と感情的なトーンを持ちつつも、「A Thousand Suns」や「The Hunting Party」の頃のような実験性が融合されている楽曲だと思っています。非常にヘヴィなギターリフとタイトなドラムが特徴で、グランジやガレージロック的な粗削り感やエミリーのシャウトからはDead Saraのエッセンスも感じる事が出来るような、今回のツアーの中でも屈指の暴れ曲でした。さらに自分がこの曲で印象に残ったのが、これまでとは違った雰囲気のマイクのラップです。
それまでのマイクのラップというのは、基本的にチェスターの感情的なボーカルとは対照的である無機質で冷静な印象を受けますが、彼が不在となってしまった今、新ボーカルのエミリーもこの曲ではがっつり叫んでいると同時に、マイクのラップもより強く感情的に歌っているのが特徴です。その姿はまるで、エミリーとバンドだけでは埋めきれなかった余白を埋めるかのようで、「Somewhere I Belong」の時にも言った「エミリーをメンバー全員で支えて成り立ってる気がした」というのは、この曲でも如実に感じる事が出来ました。この曲のマイクのラップは正に、Linkin Parkというバンドの「今」を象徴していると言えると思います。

曲のテーマとしては、タイトルの「Casualty(犠牲者)」が示す通り、「犠牲者にならない」という強い意志や「支配者への反抗」、そしてそこからの「自己解放」です。歌詞では裏切りや欺瞞に気付き、それらに屈しないという強い意志と、困難や不正に立ち向かい、自分らしく生き抜く事の大切さが強調されているように感じます。攻撃的かつエモーショナルな、非常にLinkin Parkらしい「痛みの中にいる人間への希望の灯」のような歌詞で、悩みや葛藤を抱える現代社会の多くの人へのエールともとれるような曲となっています。
ライブで初めてこの曲を聴いた時、僕は「Casualty」がただの怒りの歌ではなく、チェスターの不在という喪失を抱えながらも、マイクやエミリーを中心に再び歩み始めた今のLinkin Parkにとって、失ったものの大きさを知った上で、それでも進むという再生の決意表明のような位置付けに感じました。
そして、2日目には「Keys to the Kingdom」を披露。リリース当時、初期からのファンは原点回帰のロック精神に歓喜した一方で、新しいファンや一部の方からは「ヘヴィすぎる」、「キャッチーさに欠ける」、「進化と逆行している」などの意見もあり、彼らの作品の中でも賛否が分かれた6作目「The Hunting Party」。その影響もあってか、今回のツアーでも残念ながら1曲もセトリに入らなかった公演も多いですが、日本では2日目に唯一この曲だけ披露してくれました。「本作を捨てないでくれてありがとう」と思った方もきっと多いと思います。

元々「The Hunting Party」は、「今のロックはあまりに安全でつまらない」と感じたことがきっかけで、「攻撃性とエネルギーを取り戻すロック」を目指して制作されました。オーガニックな生ドラムやディストーションギターの多用、ゲストにTom MorelloやDaron Malakianなどを迎えるなど、オールドスクールでラウドなロック志向が特徴です。打ち込みではなく生の演奏に立ち返った事でライブ感や衝動性が強化され、コンセプトにもはっきりと一貫性がありました。しかし、前作「A Thousand Suns」のような電子的サウンドや強い実験性があった訳ではないので、そういう進化を期待していた層には「保守的」に映ってしまったというのも事実です。
ただ、今振り返ってみると、個人的には「万人受けしないからこそ意義がある」と言える一枚だったと思っています。まず前提として、多くのアーティストが「売れる音楽」=「多くの人が心地よく聴ける音楽」を意識すると思います。しかし、Linkin Parkは本作でそれを意図的に拒否しました。マイク達は、商業主義がロックを「牙を抜かれた存在」にしてしまったという事に気付き、敢えて不快になりうる、荒削りで挑発的な音を世に放つことに意義を見出しました。音が粗い、声が叫んでいる、曲が難解、構成が不親切…。本作は、そんな「現代ポップの常識」から外れた要素が満載です。しかし、だからこそ、本作は彼らが「ロックを諦めていない」ことの証明となり、音楽の多様性を守る行為でもあり、商業主義に媚びない誇りそのものだったんじゃないかなと思います。当時は賛否が巻き起こり、正直ファンの中にも未だに聞かず嫌いなんて方もいるんじゃないでしょうか。そんな方にこそ、このタイミングで一度挑戦してみて欲しい作品だなと思っています。初期の雰囲気はありつつも、Linkin Parkってここまで暴力的なサウンドも作れるのかと、衝撃を受けるかもしれませんね。
「Keys to the Kingdom」に関しては、おすすめ曲でもご紹介したので軽くにしておきますが、この曲も初日の「Casualty」と同様に、とにかく終始荒々しくて、攻めの姿勢が色濃く滲んでいました。ボーカルが変わってもライブでの破壊力は圧巻で、アルバムのコンセプト通りに「再びロックの牙を剥く」という姿勢を鮮烈に打ち出していたように思います。個人的には、エミリーのキー高めのシャウトとも非常に相性が良いように感じました。エミリーが歌う旧曲に違和感を覚えてしまっていた方も、この曲のスクリームには引き込まれたという方もきっと多いと思います。

この曲の根底にあるのは、「世の中や音楽業界に対する苛立ちと失望」、そしてそこからの「自分たちの道を貫く」という決意。強烈なシャウトとマイクのラップが交錯し、混沌とした現実に立ち向かう姿勢や、売り物にされる自分達の葛藤が歌詞に現れています。また、当時のエレクトロなサウンドが溢れかえっていた音楽シーンに、同様のサウンドを鳴らす彼らの前2作である「A Thousand Suns」、「LIVING THINGS」の延長上のような作品は出さないという気概も感じます。流行や商業主義に囚われることなく、あくまで自分達が今やりたい事、表現したい事を追求し続けるという、真っすぐな姿勢が垣間見えるような一曲です。
この曲は、Linkin Parkが自分たちの音楽性における「原始的な衝動」を取り戻した一曲で、今回のツアーにおいてもそれは理屈抜きで心と体を揺らすための武器のひとつでした。再構築の過程において、静かに語る曲や泣けるバラードも必要だとは思いますが、こうして思い切り感情を爆発させる瞬間があるからこそ、Linkin Parkは今もなお生きていると実感できるんだと、自分は思いました。
また、他の公演ではこの部分で「Minutes to Midnight」の代表曲の一つである「Given Up」を披露していたりしたので、そこは羨ましかったかも。
17.One Step Closer
両日共に激しく鳴り響いた彼らのラウドなサウンドに続いてActⅡをを締めくくったのは、彼らの代表曲の一つである「One Step Closer」でした。何度も語っていますが、言わずと知れたLinkin Parkのデビューアルバム「Hybrid Theory」の代表曲の一つであり、彼らが世界にその名を刻み込んだ最初の衝動そのものとも言えるナンバー。イントロのギターリフが鳴った瞬間、もはや説明不要の興奮と爆発的な歓声。これまで積み重ねてきた20年以上の歴史にわずか数秒の音で一気に巻き込んでしまうその力は、まさに「Linkin Parkの始まりにして永遠のアンセム」と言えるほどの存在感でした。この曲を生で聴く日が来たなんて、今でも信じられないくらいです。

今更僕が語るまでもありませんが、この「One Step Closer」という曲は、彼らのキャリアを象徴する初期の代表曲であり、ニューメタルの金字塔的な楽曲です。Linkin Parkらしさが最もストレートに表現されている楽曲のひとつだなとも思っていて、この曲があったからこそ、彼らは当時の音楽シーンにここまでの衝撃を与えたと思います。ヘヴィで切れ味のあるギターリフを主軸とし、ラップ×スクリーム、デジタル×アナログの完璧なバランス、そして「静と動のダイナミクス」がはっきりしている事で、感情の蓄積と解放を見事に表現しています。特に、ブレイクダウンでのシャウトは観客全員が感情むき出しで叫ぶのが定番で、圧倒的な一体感・カタルシスの瞬間を生み出していました。
「One Step Closer(あと一歩近づく)」というタイトルは決してポジティブな意味ではなく、この曲は「抑圧された感情や怒りの爆発」をテーマにしています。要は、限界に近づいていて壊れる寸前という意味合いで、怒りやストレスが爆発する直前の状態を示す比喩的な意味で使われています。誰にも理解されない苛立ちや、積もり続けたストレスによって壊れかけている心の状態をストレートに表現し、聴く人達に感情を爆発させてもいいんだという許しをくれるような曲です。10代の若者だけでなく、社会で抑圧されているすべての人の怒りや苦しみに響く傑作だと思います。

また、この曲が新体制になっても再び演奏される事にも大きな意味を感じました。これは過去をなぞる懐古ではなく、これまでの歩みすべてを肯定し、その上で「またここから始めよう」という意思表明のように僕は聞こえました。最も古い楽曲を、最も今のバンドらしいアレンジと感情で響かせる。それは、Linkin Parkが今なお進化しながら「あの時の気持ちを持ち続けている証」だと思います。「One Step Closer」という曲は、単なる名曲でも定番曲でもない。彼らが何度でも立ち上がるための起爆剤として、今もなおLinkin Parkの中核にある楽曲なのだと気付かされた瞬間でした。
Act Ⅲ
18.Break/Collapse
「One Step Closer」の狂気にも似たエネルギーの余韻が残る中、ステージは暗転。そして、まるで何かが崩れ落ちるようなノイズの波がゆっくりと場内を満たしていきました。この瞬間から、ツアーの物語はAct Ⅲ「Collapse(崩壊)」へと突入します。
このSEは、もはや演出やつなぎといった言葉では語りきれないほど、感情と空気を変える力を持ったものでした。聴覚というよりむしろ精神に直接触れてくるような不安定さを孕んでいて、会場全体が一度、「意識を内側へ沈められていく」ような感覚に包まれていきました。
ActⅢのセットリストを見返して個人的に思ったのは、彼らが精神的な崩壊を経て何かを受け入れ、それでも前に進む覚悟を表現したような構造だったんじゃないかという事です。このパートでは喪失や自責、後悔、過去との向き合いをテーマにした楽曲が多く、Linkin Parkにとっての「これまで」と「これから」を、感情ごと受け止める時間のように感じました。それらの楽曲たちが単なる名曲としてではなく、「再構築の物語」の中核として響いてくるようでした。
また、個人的に「Collapse」という言葉が持つ「崩壊」の意味は、今回のツアーにおいて、決して破壊や絶望だけではないと思います。それはむしろ、彼らが新しい何かを築くために必要なプロセスであり、Linkin Parkというバンドが常に繰り返してきた「壊すことでしか生まれない希望」の表現でもある。そう考えると、このSEは、まさに彼らの創造と再生という精神性そのものを音で体現したものだったと言えるのではないでしょうか。

19.Lost
先程の「One Step Closer」までの熱量を冷ますかのように、青い光に照れされながら静寂が続きました。そして暫く経った後、マイクのしっとりとしたピアノから曲は始まります。
この「Lost」という曲は僕にとってかなり思い入れがあって、もしこの曲に出会ってなかったら僕は今Linkin Parkを聴いていなかったと思います。というのも先程少し触れた通り、僕は17年のチェスターの死後、2023年頃まで彼らの音楽から完全に離れてしまいました。彼らを嫌いになった訳ではないですが、チェスターがもうこの世にいないという現実を僕は長年受け入れる事が出来なかったからです。ですが、これも運命なのか、「Lost」がリリースされる事をたまたま僕は知って、数年ぶりに彼らの音楽を聴いた時、僕は彼らの音楽に出会った時と全く同じような感情を抱きました。とにかく衝撃を受けたと同時に、やっぱり僕はLinkin Parkの作る音楽が大好きで、彼らの事が大好きだったという事を改めて思い出す事が出来ました。チェスターを失ったという現実は今でも辛いし、思い出す度に色々な感情があふれ出てきますが、この曲のお陰で僕は彼らと再び出会う事が出来たので、今ではとても感謝しています。

知っている方も多いと思いますが、この「Lost」という曲は、20年間リリースされずに眠っていた「幻の未発表曲」でした。2023年に「Meteora 20th Anniversary Edition」の一環としてリリースされたこの楽曲は、チェスターのボーカルをフィーチャーした新曲の一つとして、世界中のファンに強く響きました。この曲は2003年の「Meteora」セッション期に制作されていた為、そのサウンドはまさにLinkin Parkの黄金期の音像に直結しています。20年前の録音にも関わらず、チェスターの声の表情や感情のこもり方があまりに鮮烈で、本当にチェスターが「今」目の前で歌っているかのような臨場感がありました。他の「Meteora」の曲と比べると、より繊細で内向的な質感を持っているのが特徴です。
歌詞では心の奥に残っている癒えない傷や、過去の痛みに囚われている自分について描いています。自分自身の幻影や混乱の中で生き、痛みから解放されたいと願いながらも、それが出来ない迷子のような状態が伝わってきます。まさにチェスターの当時の心情をそのままリアルに歌っているような印象を受けました。
原曲では終始「Meteora」らしい安定感のあるバンドサウンドの曲ですが、今回のライブでは1番のみピアノのアレンジバージョンとなっていました。1番が終わって間奏に入る時の盛り上がりが最高で、とにかく鳥肌が凄かった。そもそも、この曲を今エミリーが歌うという点が物凄くエモくて切なさもあり、号泣してしまった方も多かったのではないでしょうか。個人的には、間違いなく今回のライブのハイライトの一つだったと思います。
また、この曲の初日の演奏の様子は公式SNSでも動画が投稿されていますので、是非ご覧下さい。
20.Good Things Go
切なさと少しの希望が入り混じったようなこの雰囲気に続いたのは、最新アルバム「From Zero」のラストを飾るバラード曲「Good Things Go」。アルバムをフルで聴いた方は分かるかと思いますが、この曲は単なるバラードではなく、この曲の最後が円環構造となっており、「終わり=新たな始まり」すなわち、ゼロからの再出発というメッセージが込められている。そんな意味の深い楽曲となっています。
この曲の特徴はなんと言っても、エミリーとマイクのツインボーカルの掛け合いだと思います。2人が同じ歌詞を交互に、そしてサビでは重ねて歌う事で、より歌詞の意味が強調されていると同時に、2人の声の個性と感情が際立っています。また、サウンドは壮大かつメロディアスで、日本人の耳にも馴染みやすい旋律だと思います。

また、この曲の歌詞は個人的に本作の中でも特に印象に残っていて、テーマとしては「喪失や後悔」、「感情を制御できない苦しみ」、そして「それでも支えてくれる人への感謝」です。一見するとLinkin Parkらしい心の葛藤を描いた曲に思いますが、歌詞に出てくる「本当は嫌いじゃないのに、嫌いだなんて言ってしまう」、「自分を抑えきれないこの僕を救ってくれるのは君だけ」などと、自分の弱さや不器用さをさらけ出しつつ、最後には「君を傷つけた事に言い訳はしない」、「それでもそばにいてくれてありがとう」という「感謝の気持ち」が込められているのが特徴です。曲の最後の円環構造とも相まって、喪失を乗り越え、新たな始まりへ向かっているという希望を感じられます。この「感謝の気持ち」や曲自体は特定の誰かを指している訳ではないのですが、一部のファンの間ではチェスターを失った悲しみや後悔、それを経ての再出発を描いているのではないかとも解釈されています。また、マイク達がチェスターに言えなかった言葉の羅列だったのかもしれません。チェスターを失った事を受けてのバンドの心情や、彼を救う事が出来なかったという後悔、そして彼やここまで支えてくれている人への感謝を表現し、チェスターの死という「悪いこと」を経験したバンドが、彼の存在という「良いこと」を、この曲をもって前向きに捉え直そうとしているように感じます。リスナーそれぞれの人生にリンクするような歌詞でありつつも、彼への鎮魂歌や追悼の意味合いも含まれているのかもしれません。
曲は暗く憂鬱な雰囲気ですが、本作の中でも個人的にはチェスターがいた頃のLinkin Parkらしさが残っているような気もします。2017年から再始動に至るまで、絶対的な存在を失ったバンドがここまで立ち直るまでの過程を、ゆっくり眺めているような気持ちになりました。
21.What I've Done
喪失や自責、後悔、過去に正面から向き合ってきたActⅢを締めくくるのは、彼らの3作目「Minutes to Midnight」のリードシングルで、映画「トランスフォーマー」の主題歌にも起用された代表曲「What I've Done」でした。特にここ日本でも、この曲がきっかけでLinkin Parkを知ったというファンは数えきれない程いるでしょう。今でも海外公演などではトランスフォーマーのコスプレをしてライブを観に来る人がいるくらい、ファンからも根強い人気があります。
この曲は「Meteora」までの攻撃性の強いラウドな音楽性から変化し、より普遍的・社会的なメッセージを持つ「現代的ロック」へと踏み出した第一歩と言えるような作品です。ラップや強烈なシャウトは控えめとなり、チェスターのクリーン且つパワフルで真っすぐなボーカルが前面に出ています。また、前作までの生バンド感も適度に残しつつ、エレクトロニック要素が見事に融合し、映画の壮大なスケール感にマッチした重厚かつシリアスなロックになっていると思います。貫くような冒頭の歪みの効いたギターリフも特徴で、これにより曲全体に緊張感を持たせていると同時に、ベースやドラムもタイトに交わって、シンプルながら曲全体に圧倒的な重みを感じます。ライブだとその重みが、冒頭からより顕著に表れていました。それもあって、個人的には彼らの楽曲の中でも原曲よりライブで聴きたいと強く思うような一曲でした。

この曲は、自らの罪や過ちを認め、そこから新たに歩み出そうとするという非常に人間的で普遍的なテーマを持つ楽曲です。また、当時の社会や政治情勢(戦争、環境問題、メディアの暴力性)に対しての暗喩も込められていて、MVも戦争や差別、環境破壊、飢餓などの実写映像が使用されており、「僕たち人類がやってきたことに対する問いかけ」となっています。ただの映画に合わせて作った曲という訳ではなく、むしろ世界中が混沌としている現代だからこそ、改めて歌詞に注目して聴いてみてほしいなと思います。
一見するとこの曲はシンプルでストレートなロックソングですが、内面の葛藤と向き合う普遍的な痛みを描いたことで、多くのリスナーが「自分ごと」として共感できる名曲になっています。まだ聴いた事がないという方は、是非MVや映画と共に楽しんで頂くと、曲の壮大さと重厚感をより感じる事が出来ると思います。また、ライブでは特に大合唱が巻き起こる曲の一つなので、いつか是非一度体験してみて欲しいです。
Act Ⅳ
22.Kintsugi
早くも本編最後のパートとなるAct Ⅳ。本当に楽しい時間というのはあっという間ですね。時の流れというのは本当に残酷だなと、僕はよく思います。そんな事は置いといて、一つの小説を読んでいるような感覚でこれまでのパートを辿ってきて、その最後の始まりを飾るのは「Kintsugi(金継ぎ)」でした。
突然ですが、皆さんは「金継ぎ」という言葉をご存じですか?
そう、「Kintsugi」という言葉は、実は日本語なんです。Linkin Parkというバンドからはいつも至る所で日本からのインスピレーションや文化へのリスペクトを感じますし、それが日本でも根強く愛され、慕われている理由の一つだと思います。
「金継ぎ」とは、割れたり欠けたりした陶磁器の破損部分を漆で接着して、その上に金粉を蒔いて装飾する日本独自の伝統的な修復技法の事です。この修復をする事で、金色の継ぎ目が模様のように入り、この世にひとつだけの新たな食器が生まれるというのが特徴です。傷を隠すのではなく、傷そのものを美しく際立たせるという哲学的なアプローチ。つまり、「壊れたこと自体が価値になる」、「欠けた部分を愛する」という文化です。その文化を体現しているかのように、崩壊しているものが光で癒され、修復されていくかのような映像や照明の演出がありました。
それらを踏まえて、ここまで記事を見て頂けた方なら、この「金継ぎ」が今回のツアーにおいてどんな意味合いを持つのかは、なんとなく想像がつくのではないでしょうか。
そう、「Kintsugi」が意味しているのは「チェスターの存在」という大きな一つのピースが欠けてしまったこのバンドが、その経験を経て後戻りするのではなく、それを受け入れた上で新たなメンバーを迎えて再び立ち上がったという、まさに「金継ぎ」された新しいLinkin Parkだと思います。一言で言えば、Act Ⅰは「始まり」、Act Ⅱは「創造」、Act Ⅲは「崩壊」、そしてAct Ⅳでは「再生」を意味しています。たとえ壊れてしまっても、新たな形として再生する。From Zeroというアルバム、そしてツアー全体のメッセージと深く結びついている展開だと思います。また、彼らも音楽スタイルやステージ演出は進化していきますが、その上でかつての傷も隠さずに見せているような構成がなされている点でも、非常に深くリンクしています。
個人的にはチェスターがこの世を去ってしまってから聴くLinkin Parkの楽曲というのは、ただただ悲しみしか残らなかった。しかし、再始動を経た事でそんな考えが少しずつ浄化され、息を吹き返したように思います。これはまさに、彼らがステージに帰ってきたことで僕が彼らに対して抱えていた思いも「金継ぎ」され、生まれ変わったからなのかもしれません。

23.Overflow
「Kintsugi」された新たなLinkin Parkがこのパートで1曲目に披露したのが、「From Zero」の中でも一際ミステリアスかつ異質さを放っている「Overflow」。正直に言うと、この曲はかなり実験的な面があるのでライブでは捨てるかなと思っていましたが、披露してくれてとても嬉しかったです。というのも、本作の中で個人的に一番ハマったのが意外にもこの曲でした。この曲の世界観や雰囲気は、エミリー率いる今のLinkin Parkでしか表現できない、極めて現在進行形の楽曲だと思ったからです。チェスターよりエミリーが良いとか優れてるとかそういう話ではなくて、個人的にはメンバーが変わっている以上、やはり今のLinkin Parkにしか作る事が出来ない世界観を模索していく事が重要だと思っています。その点で考えた時に、僕はこの曲が最も新鮮味と未来を感じる事が出来ました。暗くて地味な曲に聴こえるかもしれませんが、聴く度にまるでブラックホールに吸い込まれていくような感覚を体感できる、独特な中毒性のある曲だと思います。
また、この曲はアルバムの中で最も試行錯誤を重ねたそうで、何度も歌詞を書き直したとマイクが語っています。さらに、この曲では製作段階にて、アメリカ・ジョージア州コンヤーズ出身のシンガーソングライター「Teddy Swims」がコラボしていたそうです。彼と言えば、2023年に「Lose Control」が一躍大ヒットし、国際的な成功を収めました。また、2022年にはONE OK ROCKの楽曲「Free Them」にてコラボしたり、昨年はフジロックに出演、今年も11月に豊洲PITにて単独公演が決まっているなど、ここ日本にもゆかりのあるアーティストです。
そんな彼は「Overflow」のライティングセッションに数回参加し、ボーカルのデモも収録していたそうです。その過程もあってか、一時期は彼がLinkin Parkの新ボーカルなのでは?との噂もありました。その後はエミリーが正式にバンドに加わり、曲もエミリー&マイクの2人で歌った方が満足のいくものになったそうですが、マイクは彼の事をとても称賛していました。
さらに言うとマニアックな情報ではありますが、この曲の最後にはカセットテープを裏返した音と別の曲の音源が一瞬流れます。実は一瞬流れたこの曲というのは、Linkin Parkの前身バンドであるXero時代の楽曲「Fuse」の一部なんです。この曲はXeroの4曲入りデモカセットに収録されていた曲の一つで、2020年にリリースされた「Hybrid Theory (20th Anniversary Edition)」に唯一未収録だった曲です。(この曲がリリースされなかったのは、恐らく曲の冒頭に使用されているサンプルの著作権的な問題があったからだと思います。)この曲を使用した詳細な意図は明かされていませんが、この一瞬のこだわりからも本作が原点回帰の象徴を表していて、彼らの原点と言える時代の曲を、最新曲の中で最も実験的な曲のエンディングに挟むことで、まるで「すべてはここから始まった」というルーツへの回帰や過去と現在の繋がりを強調しているのではないかと自分は考えています。音源はYouTubeに残っていますので、興味があれば聴いてみて下さい。
解説が長くなってしまっていますが、そんな楽曲「Overflow」は、Linkin Parkがこれまで築いてきたダイナミックなサウンドや爆発力のある音楽性から逸脱し、静けさや余白、内面の声にフォーカスした、これまでの枠を意図的に外した音楽的アプローチが特徴です。Linkin Parkの楽曲は「静と動」のコントラストで感情を爆発させる構成が多いですが、この曲ではサビでも爆発力はあまりなく、むしろ感情のピークを「静けさ」で表現しているのが異質だと思います。また、エミリーのボーカルも、「強く歌い上げる」というよりは「吐息を織り交ぜた感情の余韻」をメインに構成されていて、エモーショナルでありながら極めて繊細です。イントロは夜明け前の静けさのような情緒を持ち、全体としてはミニマルで余白と残響を感じるような音像。淡々としたスローなテンポ感かつアンビエントな質感のシンセやエレクトロニクスがメインの曲なので、夢中になって聴いていると宙に浮いてしまいそうな感覚に陥ります。
また、最後のエミリーの力強いシャウト混じりの「To overflow」の連打では会場全体に圧倒的な歌声が充満していましたが、こちらもこれまでの楽曲で魅せてきたシャウトとは一味違う「静けさの中にある叫び」のような情緒を感じます。Linkin Parkと言えばやはりニューメタルやハードなロックを想像しがちですが、何度も語っている通り、型にはまらない音楽性の幅広さや実験性も彼らの大きな魅力です。今でも探求心剝き出しで音楽を作っているのがとても嬉しい事ですし、この意欲の復活には、やはりエミリーやコリンの参加というのが大きく関わっているのだと思います。これまでのLinkin Parkが培ってきた技術を活用しつつも、今の体制だから作れる世界観というのをこれからも深く追求していってくれたら僕は嬉しいです。

歌詞はというと、こちらもまた抽象的な内容となっているので正解はないと思いますが、「破滅的な状況の中での虚無感」や、「自暴自棄な心情」を描いているように感じます。現代社会のストレスや情報過多、個人の孤独、世界の不安定さなど、そうした複雑な現代の病を音楽で叫んでいるような一曲で、それらに対する純粋な怒りや悲しみ、絶望よりも、どこか諦めや無気力さを感じる不穏な曲です。そもそも「overflow(溢れる)」という表現もこの曲においては、現代を生きる人間全員が直面する精神的・社会的な辛さのキャパオーバーを象徴している思います。
世界がどれだけ壊れても、自分がどこまで堕ちていっても、もはやどうでもいいという「何をしても意味がない」という虚無感を表している非常に根暗な曲ですが、だからこそ今を生きる人達に響く強さと引き込まれる魅力があるので、個人的には本作の中でも特におすすめしたい一曲です。
24.Numb(with "Numb / Encore" intro)
ここからライブは終盤モード。往年の代表曲のオンパレードが続きます。
まず披露されたのは、Linkin Parkの一番の代表曲と言ってもいいくらい人気の「Numb」でした。
この曲のMVは、2025年7月時点で25億回以上再生されていて、Linkin ParkのMVの中で最も再生されています。有名ではありますが、特にチェスターが亡くなった直後、世界中のファンの間で「Numb」の再生数を伸ばして彼を追悼しようという動きがあり、結果として彼らのYouTubeの公式チャンネルで初の10億回再生を突破した曲になりました。その後20億回も突破して最大のヒットとなり、現在に至るというわけです。
また、今回は導入部分のみ、2004年にリリースされたJay-ZとLinkin Parkのコラボアルバムである「Collision Course」で収録されたリミックス「Numb / Encore」でのバージョンとなっていました。先程も軽く紹介しましたが、このコラボ曲で彼らは2006年のグラミー賞にて、最優秀ラップ/ソング・コラボレーション部門を受賞しました。この曲はまさに、ジャンルの壁を越えることに成功した象徴そのものだったと思います。

この曲が最大のヒットとなった理由の一つとしては、やはり歌詞の共感性だと思います。「親や社会に押しつけられる理想像」と「本当の自分」のギャップに苦しむ若者の心情をストレートに描き、国境も時代も超えて愛され続けました。自分を見失い、相手の期待に応えることに疲弊し、やがて感情すら麻痺してしまう。そんな「Numb(麻痺)」した精神状態。程度は違っても、この世界を生きる誰もが一度は経験した事があると思います。そんな内面的な苦しみや葛藤を真っすぐに代弁し、心の奥にある「自分とは何か」、「どう生きたいか」という問いに向き合う曲となっています。そんな歌詞をチェスターが感情をむき出しにして歌う事で、内面的な葛藤がさらにリアルに伝わり、結果として「時代の声」となりました。
また、サウンド面においても本当に唯一無二の存在だと思います。浮遊感のあるシンセリードで始まる冒頭から非常に印象的で、1音聞いただけで「Numb」と分かるアイコニックなサウンド。切なさや孤独感、内面の閉塞感がリアルに伝わる演出がなされていて、とても幻想的な印象を受けます。感情の爆発とコントラスト、ダイナミクスの巧みさも非常に際立っていて、サビで重いギターとドラム、そしてチェスターのエッジのかかった歌声が一気に入ることで、内に秘めていた怒りや葛藤の爆発を秀逸に表現しています。それでいて激しすぎる事はなく、ポップスやエレクトロに近い音像のクリアさも併せ持っているので、ロックだけどラジオフレンドリーという希少なサウンドデザインを実現しました。

ライブでは、どちらかとエミリーはきっちり全て歌い上げるのではなく、オーディエンスと一緒に歌いたいという感じでした。人によっては少し歌わせすぎと思う所もあったかもしれませんが、僕個人の意見としては、それで良かったと思っています。もはや、エミリーが全部歌い上げたとしたら、それはそれで違うかなという気すらしました。エミリーのボーカルがダメとかでは全くなくて、この曲は最初の説明でもあった通り、今ではみんなでチェスターへ送る曲の一つなんですよね。きっと僕達の歌声は天国まで届いていたと思います。会場のみんなと一緒に歌えたあの時間は一生忘れません。
25.In the End
続いて披露されたのは、先ほどの「Numb」と同じくらいのヒットとなった「Hybrid Theory」の代表曲「In the End」。今回のおすすめ曲にはあえて入れませんでしたが、Linkin Parkを全く知らない方でも一度はどこかで聴いた事があるのではないでしょうか。今でも至る所で耳にしますもんね。僕自身も飽きるほど聴いてきて当たり前の存在のようになっていましたが、曲冒頭のピアノフレーズが流れた瞬間の鳥肌と感動は本当に凄まじかったです。イントロだけでここまで感動出来るって、改めて凄いなと。

そして、写真を見てお分かりかと思いますが、この曲では両日とも奇跡が起きました。初日にはエミリー、そして2日目にはマイクが目の前に降りてきてくれたんです。曲が終わった時にはエミリーとハイタッチでき、二日目は曲中にマイクが手を握ってくれて、彼は柵に上っていて落ちそうだったので、足をずっと支えてあげてました。(笑)しかも2日目は2列目を陣取っていたんですが、この曲が終わった時に最前列の方がずれた影響で、自分が一番前に行くことができました。本当に運が良かったです。
奇跡的にあの瞬間の出来事は動画にこそ残せましたが、今でも本当に信じられないくらいです。ライブ中はあまりに非現実的すぎて記憶がほとんど飛んでしまい、終わった直後ですら放心状態でしたが、後から動画を見返した時には涙が止まりませんでした。自分が最も影響を受けて12年以上応援してきたバンドのボーカルが目の前に来てくれて、みんなで代表曲を大合唱してて、ずっと画面の中の存在だった人に一瞬でも触れたんですよ。音楽が好きな身として、これほど幸せな時間ってないなと思いました。

今更僕が語るほどの事でもないですが、この曲も「Numb」と同じように、歌詞という面で「圧倒的な共感性」があったからここまで売れたというのは確実にあると思います。
一生懸命頑張ってきた。努力してきた。それなのに、結局は全部無意味だったという「思春期の葛藤」や「社会に出てからの挫折感」など…。誰もが一度は経験した事があると思います。そんな人生や人間関係における「努力が報われない無力感」や「時間と共に消えていくものへの諦め」、「信頼の裏切り」をストレートにこの曲は描いています。また、主にLinkin Parkの他の楽曲では「怒り」や「攻撃性」を前面に出していたものが多かった中で、この曲ではどちらかというと「絶望」や「諦め」を表現していた為、より多くの人々に刺さりやすいものだったと思います。「怒り」ではなく「虚無」や「諦め」に寄り添ってくれる曲って、意外と希少だったりするんですよね。
また、先ほども言った通り、冒頭のピアノリフの非常にシンプル且つ一瞬で耳を引きつける中毒性。当時のこの手のロックバンドには中々なかった「繊細さ」があります。全体の構成も非常に分かりやすく、派手なソロや展開の起伏はないですが、その中に極まったダブルボーカルの表現力や、切なさと重厚感が合わさった唯一無二のサウンドが合わさり、当時のミクスチャーロックの中でも圧倒的な異彩を放つ存在となりました。
さらにこの曲はミュージックビデオも非常に完成度が高く、砂漠と幻想的な建造物が浮遊するCGを駆使した壮大な世界観が画期的でした。当時はMTVなどで頻繁に放送され、2002年にMTVビデオ・ミュージック・アワードの「Best Rock Video」にノミネート。YouTubeでは2025年7月時点で20億回以上再生され、2000年代を象徴する映像作品となりました。
ライブではこちらも「Numb」と同様に、エミリーがしっかり歌い上げるというよりかは、全員で大合唱する時間でした。それで良かったと思います。ライブの中で一番みんなの歌声が聴こえました。12年ぶりの日本での公演、そもそも英語圏ではないし、7年のブランクがあってメンバーも変わった。それなのに、そんなの関係なく全員が一つになっていました。音楽というのはつくづく素晴らしいものだなと感じました。チェスターに届いたかな。Linkin Parkはこれからも永遠だよ。
26.Faint
代表曲が2曲続いて会場も最高に温まった所で、本編最後を飾ったのはこの曲でした。これを聴かずにLinkin Parkのライブは終われませんからね。イントロが流れた瞬間に全員が察知して飛び跳ねて、会場全体が揺れるあの感じ、最高ですよね。リリースから20年以上たった今でも変わらず愛され続けているどころか、新体制になった事でブラッシュアップされ、新鮮味すら感じました。
この曲もまた、Linkin Parkらしさの塊みたいな一曲ですよね。ハイブリッドなロックとHIPHOPの融合を極限まで高めたトラックで、彼らのスタイルの象徴的な存在だと思います。
おすすめ曲でも紹介したので簡単にまとめますが、この曲も「Numb」や「In the End」などと同じように冒頭のフレーズから非常に印象的で、一音聴いただけで「Faint」だと分かります。クラシック的要素をロックに組み込んだ斬新なアプローチのストリングスリフで、ジャンルの壁を越えたミクスチャー感覚と曲全体の疾走感が際立っていると思います。そこにアップテンポでタイトなリズムと重厚なギター、その上にマイクのスピーディーで攻撃的なラップとエモーショナルなボーカル&シャウトが入ることで、この上ない程の緊迫感を生み出しています。
さらには曲のコンパクトさも魅力の一つですね。約2分40秒という短さの曲にこれだけの怒りとエネルギーが凝縮されているのに、それでいてごちゃついていることもなく、かといって物足りなさも全くない。一切の無駄がなく、まさに計算され尽くしている構成だなと思います。

そんな彼らのスタイルを凝縮したようなこの曲が伝えたいのは、やはり「若者の内面の叫び」、「孤独や疎外感」です。
自分の声を聞いてほしい、理解してほしい。自分の存在を無視したり、背を向ける、見捨てる相手に対しての怒りやフラストレーション、そして「Faint(かすかな、気絶、弱気な…)」からも読み取れる「自分という存在が薄れていく不安や恐怖」をエネルギーに変え、真っすぐに歌っています。
ヴァース部分のマイクのラップでは、過去のトラウマや抑圧された感情、そして心の中で爆発しそうな自己主張が冷静にリズムに乗ってぶつけられ、対してチェスター&エミリーの力強いボーカルでは、理性で抑えきれない限界を超えた叫びを表現。この「冷静と激情」の対比が、曲に生々しいリアリティと緊迫感を生み出し、聴く側にとっても「自分が言えなかったこと」や「表現できなかった感情」が具現化されたように感じるんですよね。理屈ではどうしようもない部分、叫ぶしかないような感情を代弁してくれている。そんな歌詞に、数えきれないほどの人が救われてきたんだと思います。
本編最後の曲がここまでエネルギッシュだったので、この時点でもう終わってしまうという寂しさはあまり感じませんでした。まだアンコールはありますが、とにかく感謝の気持ちとやり切ったという清々しさに満ち溢れていたのを覚えています。もし過去に戻れるなら、チェスターが亡くなってしまって絶望していた自分に、この日の事を伝えてあげたいです。「Linkin Parkは今でも生きてるぞ」って。
Encore
27.Resolution Intro
自分もやり切った、全て出し切ったという清々しさに満ち溢れていた。そんな達成感を十分に感じながらも、今回の物語はまだ終わっていません。Linkin Parkの新たな幕開けと再生を描いてきたこの公演の最終章が、会場の暗転と重低音と共に始まりました。
「始まり」、「創造」、「崩壊」、「再生」を辿ってきた彼らが最後に提示してきたのは「Resolution(決意)」。これは単なるおまけ程度のアンコールという立ち位置ではなく、「From Zero」が掲げるテーマの通り、「ここから新しい物語が始まるんだ」という希望と今後への期待を与えてくれるような存在でした。そして選曲を振り返ってみて感じたのも、彼らが過去の歴史を大切にした上で、未来に突き進むというメッセージ。そもそもアンコールに限らず、終盤や重要な局面ではしっかりと思い入れの強い選曲をしてくる所から、どれだけこれまでのキャリア、そしてファンを大切にしているかが強く伝わってきました。
今回の新体制を受けて、人それぞれ色んな思いがあったと思います。会場に足を運んだ方でさえ、大きな期待や興奮とは裏腹に、不安も抱えていたかもしれません。現に自分もその一人でした。
中には、バンド名を変更して活動すれば良かったのでは?と感じた方もいるでしょう。「再始動までの経緯」の部分でも説明した通り、彼らとしてもLinkin Parkを復活させようという明確な目標のもとで再始動したというよりかは、単に友達と一緒に過ごしたいという気持ちから活動が始まったので、そう思うのも無理はないです。しかし、僕個人の意見としては今回ライブを目の当たりにした上で、それは少し違うかなと思いました。
時は流れてメンバーも変わり、新曲と共に新しい幕が開けた。だけど、彼らはやっぱり紛れもなくLinkin Parkなんだと思いました。そして、やっぱり僕はLinkin Parkとしての活動が見たかったんです。少なくとも、会場にいた方もそう思ったのではないでしょうか。
「ここから新しい物語が始まるんだ」という希望と今後への期待。それらの思いが段々と高まるかのように、リズムが早まっていく音と照明、そしてオーディエンスの手拍子が会場全体に響き渡り、メンバーも続々と再登場。遂に最終章が始まりました。また、2日目に関しては、エミリーが大谷翔平選手のユニフォームを着て登場してきました。とてつもない認知度…。

28.Papercut
そして、アンコール1曲目に選ばれたのは、僕がおすすめ曲でも紹介したこの曲でした。もう本当に最高でした。僕が一番やって欲しかった曲です。個人的にはやっぱりこの曲が一番Linkin Parkを感じるんですよね。彼らに出会ってから12年以上経ちましたが、離れてた期間を除けばほぼ毎日のように聴いてるくらいこの曲は大好きで、このライブを観てからはさらに聴くようになってしまいました。自分でもよく飽きないなと思います。そんな曲を2日間とも最前列で聴けたのは、自分にとって本当に価値のある時間でした。大サビでエミリー、マイク、フェニックス、アレックスの4人が並んで演奏してたあの景色。一生忘れたくないです。
あの時僕はチェスターの事を思い出しました。特にキャリア終盤の頃。年齢を重ねてあのハイトーンの大サビを苦しそうに声を枯らしながら、命を削るように必死に歌ってたチェスターを支えるかのごとく、マイクがチェスターの肩を取って二人で頑張っていたあの景色。あれからメンバーは変わってしまったけれど、あの頃と変わらない景色を今自分が目の前で見てる。本当に感慨深くて切なくて、でも変わらず死ぬほどかっこよくて。「生きててよかった」という言葉は自分にとって、この日この瞬間の為にある言葉だったんだなって。
これまで本当に色んなことがあったし、生きる意味を見失ったような時もあったけど、この瞬間僕は「人生ってこれほどまでに素晴らしい物だったのか」と思いました。あなた達の音楽があったから、これまで僕は生きてこれたんです。改めて、感謝と尊敬しかありませんでした。
また、「Hybrid Theory」の1曲目であるこの曲をアンコール1曲目という位置に持ってきたという点に、僕は凄く意味を感じました。Linkin Parkというバンドの核と言えるスタイルが一番純粋に、そして色濃く反映されている。僕がこの曲で一番Linkin Parkを感じると言った理由というのは、まさにそこなんですよね。そして、そんな曲を「Resolution」というテーマのセクションの初めに持ってきたという点から、バンドのアイデンティティや変わらない核となっているものを再度ファンに示しているんだなと思いました。

そもそも「Hybrid Theory」というアルバム名。これは異なる要素が融合することを意味する「Hybrid」と、理論や仮説を意味する「Theory」。この2つの言葉が合わり、異なる音楽スタイルを融合させるという理論=「音楽的実験」という意味合いが込められています。そのタイトル通り、ロック、ラップ、エレクトロニカ、メタルなど、多種多様なジャンルを混ぜ合わせた実験的かつハイブリッドな音楽スタイルにより、他のバンドとは一線を画す存在となりました。
しかし、そもそも「HIPHOP+メタル」や「ロック+エレクトロニカ」のようなアプローチ自体は90年代末頃から存在していました。よく例に上がるのは「Korn」や「Limp Bizkit」、「Rage Against the Machine」とかですよね。Linkin Parkもそういったバンド達から勿論影響を受けています。じゃあLinkin Parkはこれらの先駆者達と何が違ったのか。それは「洗練されたセンス」や「アプローチのバランス」だと思います。
いま例に挙げたバンド達というのは、非常にエネルギッシュで攻撃的なサウンドが売りで、基本的にハードコアなファン層をターゲットにしていました。そんな中、Linkin Parkはその激しさを保ちながらも大衆的に受け入れやすい音楽に仕上げ、よりポップでアクセスしやすいものにしました。その結果、ミクスチャーロックというスタイルを確固たるものに押し上げたんですよね。
ヘヴィなメタルギターサウンドやエレクトロニック要素を取り入れる一方で、メロディとラップのバランスを巧みに取り、それを非常に計算された形で極めてナチュラルに融合。また、歌詞の内容に関してもこれまで様々な曲でご紹介してきた通りで、単に反抗的だったり攻撃的だったりするだけではなく、より普遍的なテーマ、自己表現や心の葛藤に焦点を当てていたのも大きな違いであり魅力です。その一環として知っている方も多いと思いますが、「Hybrid Theory」や「Meteora」では、意外にもFワードや露骨な暴力的表現が使われていません。言葉で直接的に攻撃するのではなく、自己表現や心の問題について真摯に向き合い、音と感情でその強さを伝える。このアプローチもまた、当時ほかのバンドがなかなか挑戦しなかった部分でした。
ジャンルを容易に横断しつつも自然なバランス、整理&最適化、洗練され尽くしたサウンドプロダクション、激しさに負けないメッセージ性の強い歌詞とメロディのポップさ。それらの要素全てが完璧に調和しているのが、本作の凄さだと僕は思います。
本作の魅力についてはここで全部語りきれる訳がないのでこの辺にして、「Papercut」という曲についてフォーカスします。この曲は主に「精神的な不安」や「Paranoia(パラノイア=偏執症)」について描いています。パラノイアとは、要は被害妄想の事です。精神的な状態を指す言葉で、極度の不安感や疑念、他者に対する過剰な疑いや監視されているという感覚の事を指します。
この曲では、主人公が日々の生活で感じる過剰なプレッシャーや原因不明のストレス、不信や焦燥感が自分を支配している感覚。それらの「Papercut(小さな傷)」が積み重なり、心の中に潜むもう一人の自分に悩み苦しむ様子を表現しています。これらの精神的な傷というのは、他人には見えにくく、理解されにくいですよね。しかし、最初は小さなものであっても次第に膨れ上がり、支配的な感情となっていく。心の中の小さな傷が、やがて大きな苦しみとなるという、多くの人々が感じることのできる普遍的な感情を歌っています。
サウンドと歌詞の親和性も非常に高く、ダークで歪んだギターリフや不安感を引き立てるサンプリング、絶え間なく前進し続けるようなリズムのドラムビートなどで精神的な圧迫感を秀逸に表現していると共に、二人のボーカルが交互に、そして同時に響き渡る事で、複数の自我が衝突するような心理状態や追い詰められる感覚を強調していると思います。
そんな暗くて内面的な苦しみをテーマにした曲ですが、サウンドやエネルギーがここまでかっこよく感じられるというのは、Linkin Parkの音楽的才能とアプローチの賜物ですね。暗い歌詞をただ重くするのではなく、そのエモーショナルな痛みや葛藤をかっこよく、力強い形で表現することで、リスナーに強烈な印象を与えていると思います。
29.A Place for My Head & Lying From You
そして、アンコール2曲目。ここでもまさかのセトリ変更がありました。しかも、どちらも個人的に聴きたかった曲だったので、自分の為に作ったセトリなんじゃないかと思うくらいでした。
初日で披露したのは「A Place for My Head」。こちらも「Papercut」と同様に「Hybrid Theory」からの選曲で、個人的に本作でTOP3に入るくらい好きな曲です。非常にエネルギッシュな曲でライブでも盛り上がりますし、この曲もまた、初期のLinkin Parkのスタイルが凝縮されていると思います。
イントロのギターリフがシンプルながら非常に印象的で、個人的にアレックスの見せ場の一つだなと思っていたので、案の定とてもかっこよくて嬉しかったです。彼は確かにサポートメンバーという立ち位置かもしれませんが、個人的には正式メンバーでも良いんじゃないかというくらい、素晴らしいギタリストだと思いました。
その他にも、エミリーのシャウトはここでも非常に光っていましたし、マイクの振る舞いにも感動しましたね。というのも、彼は一番盛り上がるブレイクダウン後のラスサビの時、エミリーのボーカルの部分を少し一緒に歌っていました。「Points of Authority」などと同じように、ここでもエミリーを支えているのが垣間見えて嬉しかったです。
曲名である「A Place for My Head」は文字通りの「頭のための場所」という意味というよりは「自分の心が(頭が)安らげる場所」を指していて、感情的な苦しみや内面的な葛藤、他者による精神的負担や搾取から解放され、心の拠り所となる場所を強く求める願望を描いている曲です。
個人的に冒頭の歌詞が気に入っていて、月が太陽の光を借りて輝く様子を比喩に、他人からは無償のように見えても後で見返りを求められる関係性が語られ、それに対する反発を上手く描いています。そして、ブレイクダウンではそれらが爆発したかのように、支配からの解放を叫んでいます。「You try to take the best of me, go away!」のシャウトは聴いていて凄くスカッとしますよね。
また、この曲はチェスター自身の薬物依存や内面の葛藤に向き合っていた時期を反映しているとも解釈できますね。彼が自らの過去や依存症と向き合いながら、逃げ場を求める心情や絶望感が歌詞に込められていると思います。そう捉えて曲を聴くと、普通に生きてきた人にとっては共感しづらい部分も本来なら出てくると思うのに、そこで終わるのではなく、さらに視野を広くして普遍的な葛藤や人間的な苦しみもバランス良く反映しているからこそ、Linkin Parkの楽曲はここまで多くのリスナーが共感できるのだと思います。

そして、2日目には「Meteora」から「Lying From You」を披露。本作も名曲が多すぎるので悩ましい所ですが、TOP4に入るくらいには好きな曲だと思います。まあ好きな曲なんてその時の気分で変わりますけどね。(笑)
この曲も非常にエネルギッシュでアグレッシブな曲かつ、ミクスチャーロックの典型的なスタイルを持つ曲で、Linkin Parkの特徴的なサウンドを色濃く反映しています。また、シンセサイザーのサウンドもどこか近未来的で、2025年の今聴いても全く色褪せてませんね。HIPHOPに近いグルーヴ感も感じることが出来ます。
個人的にこの曲の最大の魅力は、やはり「破壊力のあるサウンド感」と「圧倒的なキャッチーさ」が完璧に同居しているところだと思います。イントロからここまで攻撃性のあるヘヴィなバンドサウンドを鳴らしておきながら、もはや心地よさすら感じるレベルですんなり耳に入ってくるんですよね。
これはバンドサウンドから強烈なエネルギーを感じながらも、その中でメロディが耳に残りやすい形で展開している、負けないくらいの存在感を放っているからだと思います。イントロのギターリフやリズムセクションも、シンプルでありながら非常にキャッチーで印象的ですよね。ヘヴィでありながらも、音のクリーンさや精緻さがあり、曲の中で強い安定感を生んでいます。
勿論ダブルボーカルの対比も非常に有効で、特にマイクのリズミカルなラップは曲に緩急を生み出して聴く側に一息つく余地を与えつつも、ヘヴィなエネルギーを維持していると思います。
そんなこの曲では「自分を偽って生きることに対する疑問」と、それに伴う苦しみを描いています。嘘をつくことで自分を守ろうとする一方で、心の中でそのことが引き起こす痛みや葛藤に苦しむ。そうやって「他人に合わせ続ける生き方への限界」と「自己の本質を取り戻すための葛藤と抵抗」をストレートに表現した楽曲だと思います。
また、そもそも曲名も少し変わっています。一般的には「lying to you」という表現が使われることが多いんですよね。これだと「あなたに嘘をつく」という意味ですが、「Lying From You」を直訳すると「あなたから嘘をつく」となります。これだとちょっと不自然ですよね。
あえて「From」を選んだ意図に関しては様々な解釈がありますが、その一つとして、嘘を「あなたに対してつく」のではなく、自分自身や相手との関係そのものからの逃避を表現しているのだと思います。単に相手を騙すのではなく、「相手から遠ざかるため」や「本音の関係から逃げたくて」嘘をつく事を選んでいるという、自己分裂や関係性の切迫を象徴する言い回しになっているのかもしれません。この辺の解釈は是非ほかの方の意見も聞いてみたいですね。僕自身、別に英語を完全に理解している訳でもないので(笑)
先程も書きましたけど、こうやって様々な解釈の余地があるのも音楽の良さだと思います。正解なんて作者に聞かない限り分からないですし、自分なりに捉えてもらって大丈夫だと思います。彼らの楽曲に限らず、音楽に答えなんてないですし無限ですからね。

30.Heavy Is the Crown
往年の代表曲を続けて披露。盛り上がりも一気に再燃したところで、満を持してぶつけてきたのがこの曲。本当に最後の最後まで攻めてきたなという印象でした。最新作「From Zero」の中でも特に往年のLinkin Parkのスタイルを踏襲しながらも、新体制による新たな風を強く感じる事が出来る。そんな素晴らしい楽曲だと思います。
この曲を個人的に超ざっくり説明するなら、「Faint」と「Given Up」を混ぜ合わせて現代のミックスを施した。そんな感じでしょうか。(笑)ヘヴィなビートとダークで重厚感あるギターサウンドが特徴的で、Linkin Parkらしいエモーショナルなロックに仕上がりつつも、肌触りは確かに新しさを感じます。それでいて、マイクの高速ラップからは「Faint」のような懐かしさを感じますし、なんと言ってもこの曲の最大の見せ場はエミリーのロングトーンですよね。初めて原曲を聴いた時は流石に度肝を抜かれました。こんないかついシャウト出来る女性なのかと。ライブでもまさに圧巻でした。
そして、この曲のシャウトは「Given Up」の伝説の17秒シャウトより若干短い15秒程度ですが、これが「チェスターへのリスペクトの意味を込めて意図的に少し短くした or 近づけたのではないか」という事で話題にもなりました。調子が良い時には稀に息継ぎせずにフルで叫んでいる時もあるくらいなので、本当に凄い。チェスターとは違うけど、それでもどこかチェスターの面影を見ているようで、言葉では表せないような感情になりながら聴いていたのを覚えています。

新体制のLinkin Parkが魅せる本気の一曲。そんなこの曲では「Heavy is the crown(王冠は重い)」というタイトルからも読み取れる通り、「責任の重さ」とそれに伴う苦しみに焦点を当てています。周囲の期待に応えようとする一方で、リーダーシップや重要な役割を担うことの難しさ、そして権力や名誉がもたらす重圧によって、時に自分を失いそうになる。リーダーとしての強さと内面での脆さ、自己犠牲と苦悩が絡み合った深いテーマが、この曲を通じて表現されています。
この曲の内容もまた、規模の大小はあったとしても、今を生きる多くの方が経験した事があると思います。「責任の伴う選択」をした人が誰しも直面する苦悩や重圧、そしてそれを引き受けることの痛みと尊さを、圧倒的なサウンドと詩的な歌詞で表現した楽曲です。
また、この曲の歌詞は新体制となった今のLinkin Parkやエミリーを象徴するようなテーマでもあると思います。チェスターの死後、バンドが新しい方向性を模索しながら、彼のレガシーを引き継いでいくという責任をどのように感じているのか。今まさにLinkin Parkが直面しているプレッシャーや苦悩、ジレンマ、そして過去の栄光を背負いながら、新しい未来へと踏み出すバンドの姿勢を歌っているとも言えるでしょう。
31.Bleed It Out("Cut the Bridge" bridge)
本当にあっという間の2時間でした。これまでの人生で最も時間の流れが速かった。これまでに自分は、およそ100本近いライブに行ってきました。本当にどれも一生の思い出になるような、素晴らしい時間ばかりでした。だけど、この2公演は自分にとって次元が違った。ここまで強烈に余韻が残ったライブは初めてでした。
最後を飾るのはやはりこの曲。もう定番ですね。イントロのギターが鳴った瞬間、もう終わってしまうという寂しさと感謝の気持ちが混ざり合った感情に溺れそうになりました。

最後の曲「Bleed It Out」は「Minutes to Midnight」の収録曲で、バンドの持ち味であるハードなロックサウンドに、ポスト・グランジやパンク、HIPHOPの要素を融合させた、非常にアグレッシブかつライブでも盛り上がる楽曲です。ライブ最後にこの曲が来るのはもうお決まりみたいなものなので、この曲をもって「Linkin Parkのライブに行ったんだ」という感覚になりますね。締め括りがこのように伝統化していると一貫性がありますし、何より記憶にも残りやすいと思います。また、この曲はライブだと一部歌詞を変えてくるのも特徴で、今回のライブでは「From Zero」から「Cut the Bridge」の一部を抜粋していました。
この曲の魅力は個人的に「エネルギッシュで疾走感あふれるバンドサウンド」と「圧倒的なライブ映え」かなと思います。イントロから感じられるドラムの速いテンポとパンク色の強いギターリフは、シンプルながら強い勢いを持っていて、自然と手拍子したくなりますよね。また、サビのフレーズが非常にキャッチーかつ繰り返されるので、コール&レスポンスも起こりやすく、今回のセトリの中でもひと際オーディエンスとの距離が近い曲に感じました。また、「Meteora」までの楽曲よりもラップとロックのバランスがより均等になり、音楽的な比重やラップのスタイルの変化を感じるのも魅力だと思います。
この曲で伝えたいのは「感情的な痛みやフラストレーションを外に出し、自己を解放する」という強いメッセージ。満たされない苦しみや怒り、挫折感を何度も外に吐き出し続ける姿が描かれています。特に印象的なのはやはりサビ。繰り返される「I bleed it out, diggin' deeper just to throw it away」というフレーズからは、何度も自分の内面を掘り返して外に吐き出しても、また新たな痛みが心から湧き上がり、決して終わらないという状態を象徴しています。出口のない苦しみとそれを吐き出さずにいられない衝動、発散と無力感が交錯する人間の矛盾。この「堂々巡り」が曲の最大のメッセージかなと思います。
また、「Minutes to Midnight」というアルバムでは、より社会的&政治的な問題を扱った楽曲が多く、歌詞に深いメッセージが込められているのも特徴です。そういう視点で見た時にこの曲は、タイトルの「Bleed It Out(血を流せ)」という言葉や、歌詞に戦場や流血、爆発、死をイメージさせる表現が多用されている点。そして、そもそも「Bleed It Out」という言葉が単なる自己表現ではなく、「理不尽な暴力や犠牲」に対する抗議の叫び」としても読めること。それらの様々な点からこの曲は、戦場での無意味な流血や犠牲に対する怒りや悲しみをショーの熱狂や自己発散のメタファーに重ね、リスナーに抗議の思いも訴えかけていると解釈出来るかもしれません。個人の内面の問題と社会的メッセージを重ね合わせた楽曲の解釈が楽しめるのも、彼らの楽曲の醍醐味だなと思います。

本編が終わった時にも感じたように、最後まで駆け抜けるように終わったので、今思えば寂しさはあまりなかったなと思います。本当に一瞬で終わったけど、満足感は十分でした。新旧しっかりバランス良く混ざった神セトリ。一冊の分厚い本を読み終えたような感覚でしたね。初日のライブ後には、6人が肩を組んで写真を撮っていました。あの背中、まじで大きかったなあ。「Bleed It Out」が終わったとき、僕は歌いすぎて枯れまくった声で「ありがとう!」と叫びました。一番影響を受けたアーティストにそう言えた事。本当に誇らしかった。色んな事があったけど、Linkin Parkに出会えて本当に良かったです。
6.感想&まとめ
ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました。想定していた何倍もボリュームが膨れ上がってしまいました。
実際のところは分かりませんが、日本でここまで今回のライブについて細かくレポートを書いてる一般人は中々いないと思います。勿論このライブが素晴らしかったから沢山書きたかったのもありますが、僕にとってLinkin Parkというバンドは人生の一部です。これまでの思い出を全部どこかに記録として残しておきたかったのと、彼らへの感謝、そしてチェスターへの弔いの意も込めて仕上げたつもりです。ファンになって12年以上経ちましたが、これまで一人で密かに応援してきた結果、今回の来日で全て報われたんだと思います。タイトルにもある通り、僕の夢が一つ叶った日でした。

日本に戻ってきてくれてありがとう。素晴らしいライブをありがとう。夢を叶えてくれてありがとう。そして何より、大きな苦悩や悲しみを乗り越えてバンドに戻ってきてくれた事。本当に感謝しているし、チェスターも天国できっと喜んでくれていると僕は思います。彼がいなくなってしまった悲しさをこれからも一生忘れる事はない。だけど、僕たちは今生きている以上、いつまでも悲しみの中に囚われる必要はないと思うし、そんな事を彼はきっと望んでないと僕は思います。大丈夫、これからもLinkin Parkは永遠だから。
このツアーを通してメンバー達は勿論、僕も新たな一歩を踏み出すことが出来ました。ここからまた新しい物語が始まり、さらにバンドとして成長して、再びこの場所に帰ってきてくれる日を待っています。
⬇️今回のセットリストのプレイリスト⬇️
改めまして、閲覧頂きありがとうございました。
ささやかではありますが、ここまで見て頂いた方への感謝として、今回の公演で撮影した自分の動画をいくつかまとめてYouTubeに投稿しました。特に終盤にかけて自分の下手くそな歌や奇声が多々入っているので見づらいとは思いますが、興味がある方はご覧頂ければと思います。結構なボリュームなので、十分余韻に浸れるはずです。なお、無断転載等はお控え頂きますよう、お願い致します。
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