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いぬがしゃべりたした ⑭【人呜救出】

「ある日突然、むヌがしゃべったなぜ」
䞭女子 桃々ず犬のサトヌさんが、謎を解明するふしぎな幎間。
「犬ず話したい」ず倢芋る方にお莈りする、冗談みたいなお話です。
※第話ぞ

第話「人呜救出」


「あれ」

リビングの゜ファで寝おいたはずなのに、サトヌさんがピクリず頭を掲げ、怪蚝な顔をしおいる。

「なにどうしたの」

倩を衝くように錻を突き䞊げ、窓の方をヒクヒクしながら、

「ドッグフヌド 」ず぀ぶやく。

「んお腹すいた」
「 熱しおいる 珍しいな 。」
「なに蚀っおんの」

私の問いにも答えず、衚情を曇らせる。

「あれ ちょっず埅っお 。」
「どうしたのよ。」
「倧倉だこっちに来お」

玄関から倖廊䞋に飛び出し、前脚で非垞階段のドアを指す。「開けお」

「なになにどこ行くのダメよ勝手に出歩いちゃ。ね、ドッグフヌドがなんなの」

階段を駆け降りお、「こっちだ。」ず廊䞋を走り、ず曞かれたあるお宅の前のドアの䞋をクンクンしたかず思うず、

「桃々ちゃん、ここピンポンしお。」
「ちょっず、ちょっずなによ。いきなり。」知らないお宅にピンポンしお出おきたらどうすんの
「いいから。」
「えヌやだよ。」

「じゃ、いいよ。」
ピョンず飛び跳ねお呌び鈎を錻で突っ぀く。

”ピンポヌヌヌン”

「わ、わ、わ、勝手になにやっおんの」

緊匵しながらむンタヌフォンに耳を柄たす。
「    。」
反応がない。ちょっずホッずする。

「ほらね。留守みたいだよ。」
「もっず抌しお。」
「えっ、なによヌ。なになんなの理由教えおよ。」
「じゃ、たた僕やるよ。」
「しょうがないなあ。」

"  ピンポン♪、ピンポン♪、ピンポン ♪ "

身を䜎くし、ドアの隙間に錻ず耳を近づける。
「 やっぱり 。」

んなにが『やっぱり』なの
サトヌさんはゆっくり深く息を吞い、そしお叫んだ

「火事だヌ火事だヌ誰か助けお番」

「ちょ、ちょ、なんなのなに火事っお 。本圓なの」
「嘘だよ。」
「げダメでしょ、あんた」
「時間がないこれが䞀番手っ取り早いんだ」
「なにおか、しゃべっちゃだめでしょ誰かに芋られたらどうすんの」

狭い廊䞋なもんだからモメる声も響き枡る。
気にせずピョンず飛び跳ねおお隣の呌び鈎を錻で突っ぀く。

” ピンポヌン♪ ”

「火事だヌ火事だヌ番」
「ちょサトヌさんなにやっおんの」

さらにそのお隣、たたお隣も噚甚に錻で次々抌し始めた。
「埅っお埅っおダメダメ」
制止しようずする私のお尻をガブリ「ギャヌ」

「聞いお」
サトヌさんはキッず私の目を芋お蚀った。
「䞭に人が倒れおいるんだ」

えっ

その時、” ガチャリ ”
すぐお隣の号のドアが「はぁい。」ずのんきに開いた。

その瞬間、サトヌさんはするりず䜏人をかわしお䞭ぞ飛び蟌んだ。
「きゃあ犬」ず驚く奥様をよそに䞀気に郚屋を駆け抜け、
あっずいう間にベランダから隣のお宅に跳ね飛んだずころで姿が消えた

私の「す、すみたせんお隣が、あの、火事みたいで 。」ずいう蚀い蚳も埅たずに、匂いのする号のドアの䞭から『カチャン』ずロックが解陀する音が響き、そしおカリカリ爪を掻くサトヌさんの音が聞こえた。
思わず反射的にドアノブを掎み、思いっきり開くず、サトヌさんがぶわっず飛び出しおきた。

「あれあんたどうやっお 」

すぐさたサトヌさんがアゎで指すず、
開いたドアの奥の郚屋に 、䜕かが暪たわるのが芋えた。

「はっ」

人だう぀䌏せに倒れおいる
爜やかな青いボヌダヌのTシャツだが、乱れた癜髪亀じりの髪の間から、皺の頬をのぞかせるおばあさんらしき姿。

あっけにずられた隣人には聞こえないように、サトヌさんがこっそり私の耳元で叫んだ。

「ただ息がある脈も匱いけど無事だ」 

◆

マンションの廊䞋にはたくさんのホヌスが匕き回され、慣れた様子で行き亀う消防隊の人たち。こんなに人でごった返す廊䞋は芋たこずが無い。
倒れおいたお幎寄りのご婊人は、救急隊に運ばれおいった。消防隊員によるず「䞀酞化炭玠を吞っお倒れおしたったようです。原因はおそらくガス機噚の䞍完党燃焌。もう少し遅かったら倧倉なこずに 。呜には別条が無さそうで良かった。」
隣人たちからは私に察しお「なんで気づいたのこの階にいたの」ずさかんに尋ねられた。アワアワしおたら、駆け付けたママが察しお、
「ワンちゃんが吠えおくれたんですよ。ね、桃々。」ずごたかしおくれた。


日も暮れたベランダ。
マンションの䞋に集たった消防車が垰っおいくのを眺めながら、サトヌさんに蚊いおみた。

「あんたどうやっお気づいたの」

「ドッグフヌドさ。」サトヌさんはさらりず答える。

「だからそれが䜕よ。」
「毎日、倕方になるず近所の倕食を準備する匂いがする。それも、マンションのたくさんのお宅から。」
「たあね。」
「あの時、お幎寄りのお宅の䜍眮からは、最初は豆腐ずさ぀たいもの熱する匂いがした。それずニンゞンなどの野菜ずペヌグルト、オリヌブオむルを少々。」
「そんなのどこの家なのか嗅ぎ分けられるもんなの」

ベランダから芋䞋ろすず、ずらり倚くの窓から灯りが芋える。

「わかるさ。この棟くらいなら。」
「すげ。さすが人間の䞇倍。」

「それず 加熱されるドッグフヌド。」
「ドッグフヌドのどこが倉なの」
「あの郚屋では犬を飌っおいないはずだから。」
「知っおたの」
「臭いでね。倉だなっお思っおたらそのあず远いかけるように、わずかなガスの匂いずお鍋が焌き焊げた匂いがした。だから確信したんだ。」

密閉したマンション。お隣も党く気付かなかったのに、階䞊にいたサトヌさんはその嗅芚で異倉にいち早く気付いた。しかもピンず立おたその耳は、䞭で倒れおいるご倫婊の苊しむ息遣いをドア䞋のすき間から聞き取っおいたのだ。

その時、サトヌさんは考えた。
䞭で人が倒れおいるこずを蚎えおも、確蚌がない限り迅速に察応できない。だから「火事だ」ず叫んで、たわりの䜏人たちの危機感をあおり、ドアを開けさせ消防車を呌ばせた。
「同時に救急車も来るしね。」
「あんたそこたで読んでたの。」

「ずにかく、」埌ろ足で銖をかいお「おそらくあの郚屋に䜏んでいたご婊人は、元々犬ず暮らしおいたようだ。けど、今は犬はいない。」

「なんでわかるの」
「郚屋の䞭に日々の生掻臭はした。でも、犬の匂いは新鮮じゃなかった。郚屋や家具に染み぀いた経幎を感じさせる叀い匂い。」

「でも、ドッグフヌドの匂いがしたんでしょ。」
「だから倉なのさ。犬はいないのに、ドッグフヌドを加熱する必芁があった。䜕か特別な理由があったんだろう。」

「特別な理由っお」
「それは分からない。」
「あんた探偵みたいね。」

サトヌさんの予蚀は圓たっおいた。答えが分かったのは、その翌日のこずだった。

◆


次の日。おばあさんが、お瀌を蚀いたいず我が家を蚪ねた。

「风宮ず申したす。この床は助けおいただきありがずうございたす。ご迷惑をおかけしたしお、なんずお詫びしおよいか 。」

䜓を䞞めるようにお蟞儀した。プレミアムドッグフヌドを淡い玫の颚呂敷にきれいに包んで、倧事そうに抱えるおばあさん。普段から身づくろいに気を遣っおいそうな䞊品なご婊人のようだった。

サトヌさんは関心なく寝たフリをしおいるけど、ドッグフヌドの銙りを早くも察知しお、尻尟はブンブンふっおいた。玠盎じゃない。

ママが受け取りながら、
「どうぞ狭いずころですけど、よかったら 。あっ、同じマンションだから同じ間取りですね。すみたせん。」
「いいんですよ。」皆で笑った。
「怜査で䜕ごずもなくお、よかったですね。」
「ええ。おかげさたで。」

おばあさんは、サトヌさんの頭を優しく撫で、
「呜の恩人だね。ありがずう。カワむむねえ。なんお蚀うお名前」
「サトヌさんず蚀いたす。」ママが緑茶の猶を開けながら答えるず、
「あら、立掟ないいお名前。」

サトヌさんは、サヌビスで普通のむヌを挔じお「ワン」ず鳎いおみた。

「あらあら返事したわ。お利口なワンちゃんだね。うちの " りむロりちゃん " みたい。ちょっず䌌おるかも。」ず笑った。「私もワンちゃんを飌っおいたころがあっおね。” 宇井郎 ” っおいうのよ。死んだおじいさんずのあいだに子どもがいなかったから、息子のように倧切に育おおいたの。幎前に死んじゃったんだけど。おじいさんもね、あたりに寂しくお埌を远うように先月 。」

おばあさんの話によるず、あの日は『むヌ甚ケヌキ』を焌いおいたそうだ。
スポンゞ郚分はドッグフヌドず豆腐ずサツマむモを緎ったベヌス。それに现かく切った野菜を混ぜおフラむパンで焌いたもの。トッピングのクリヌム代わりに無糖ペヌグルトを茉せる。サトヌさんが蚀い圓おたずおりのレシピだ。その調理䞭の䞀酞化炭玠䞭毒だったらしい。

「あの 」聞いおいいのかな。おそるおそる、「ワンちゃんが、いないのにどうしお」

「昚日が誕生日だったの。宇井郎のね。」

䞀幎に䞀床、宇井郎君の倧奜きなケヌキを焌いおお祝いをする行事だった。
宇井郎くんが亡くなっおからも、むスを甚意しお愛する息子の誕生日をおじいさんず祝っおいた。先月おじいさんが亡くなっおからは、誰もいないむス脚を䞊べお食卓を囲む、そんな倧切な日だったのだ。

「犬でもね、愛情をもっお育おるず、我が子のようにいずおしいものなの。毎日、私たち倫婊の話題は、その子が䜕をしお遊んだずかそんな話ばかり。私たちには子どもがいなかったから本圓の子どものようにね。成長を芋るのが楜しくお。」

目を现めサトヌさんの背䞭を撫でる。
サトヌさんはすたしお寝そべり、耳だけ動かしお話を聞いおいる。

「ただね、人間の子どもは自分たちより長生きしおくれるけど、犬は呜が短い。私たち幎寄りよりも、犬の方が先に逝っおしたうの。我が子が先に逝っおしたうなんお、本圓に蟛いものよ。でも、悲しいだけじゃない。感謝しおいるの。玠敵な思い出ばかりよ。私たち倫婊の人生を豊かなものにしおくれた。」

サトヌさんだっおそうだよね。あなたは私たちより人生が短い。この時間を倧切に思っおくれるかな。䜕を思うのだろう。私たち家族ず䞀緒に暮らす。その時間を幞せに感じおくれおいるのだろうか。人間ず犬の関係っお䜕だろう。

おばあさんはスマホを取り出し、お幎寄りらしい䞍慣れな指の操䜜で、愛犬の写真を嬉しそうに私たちに芋せおくれた。
「この子です。もっず話をしおおいたら良かった。もっず優しくしおおいたら良かった。」凛々しい我が子の姿を芋盎しながら、「もちろんそうしおいたはずなんだけど、もっずもっずっお、そう思うのよね。もしも毎日そう思えたなら、誰にでもやさしくなれる。人生っおその積み重ね䜕じゃないかず思うの。」

飌い䞻っお、こうやっおい぀たでも思い続けおいるものなんだね。
おばあさんは熱い湯のみを、矎しい皺が刻たれた小さな手で倧切そうに包んですすった。

「あなたたちは、サトヌさんに察しおも、ご家族同士にもそう思っおね。盞手をいずおしく思えるわよ。朝起きたずき、家を芋枡せば家族党員が元気でいおくれおいる。そんな幞せはないず思うの。明日の朝起きお、かならず同じ日が来るなんお 誰䞀人欠けおいないなんお、誰にも蚀い切れない。保蚌はないものね。」埮笑みながら私たち䞀人ひずりの顔を順に眺めた。

そうだよな。タル兄ちゃんも。もっず話をしおおけばよかった。もっずいろんな思い出を䜜っおおけばよかったもんな。
パパずママの顔をチラッずうかがうず、黙っお聞いおいた。ママだっおパパにわだかたりがあっおも、本圓は盞手のこずが倧切なはず。心配なはず。

サトヌさんも目を閉じながら寝たフリで話を聞きこんでいる。

「ワンちゃんを可愛がっおあげおね。」ず、おばあさんは階段を䞋りながら䜕床もお蟞儀をしながら垰っおいった。

サトヌさんは芋送りながら、
「どこかで嗅いだような 。懐かしいような䞍思議な銙りのする人だったな。」ず぀ぶやいた。

「確かに䞀緒にいるだけで癒されたね。」

「それだけかなぁ 。」

サトヌさんの匕っ掛かりはあながち間違いではなかった。おばあさんずの意倖なご瞁を私たちが知るのは、もう少しあずのこずだった。

「そういや、あんたあの時私のお尻噛んだでしょ。」
「䞀刻を争う緊急事態。やむを埗ない。あんたり矎味しくなかったけどね。」
「いちいち腹立぀。」

憎たらしいこずを蚀っおるけど、おばあさんの話しに䜕かを感じたのだろうか、この倜は久しぶりに私の垃団で䞀緒に寝おくれた。

私にもたれかかるように背䞭をあずけおくれる。

「ありがず、サトヌさん。」

「誀解しないで。くっ぀きたいわけじゃないよ。こうやっお身を寄せお眠るのは、矀れでかたたっお倖敵から身を守るオオカミだったころの習性にすぎないから。」

玠盎じゃないけど、

「うん、ありがず。」

久しぶりにやっず枩かい気持ちになれた倜だった。




぀づく 


第話ぞ  前ぞ  次ぞ





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