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“非公認”の記念日が問う少子化——産めないのか、産まないのか、インドまで揺れている

    今日6月11日は「中国人口日」とされる。
    だが、中国政府の公式発表・通知にその名はない。
    それでも、中国に人口を考えずに済む日はない。


    📅 公式には存在しない「記念日」

    微博(ウェイボー)や微信(WeChat)のSNSを眺めると、6月11日は「中国人口日」と説明されている。 国民の人口意識の向上を目的として制定された記念日だという。

    ただ、百度百科などで「法定記念日・活動日」の一覧を確認しても、6月11日の記載はない。 財新網も以前、この記念日が公認されたものでないと指摘している。 世界人口デーは7月11日だが、その1か月前を「中国の人口日」とする根拠も乏しいというのだ。(🔗“中国人口日”应该设在哪一天?)

    公式には見当たらない記念日であっても、いまの中国が人口問題を突きつけられていることは疑いない。

    6月1日の国際児童デーを過ぎ、今年は同月19日(旧暦5月5日)に端午節を控える。 「忠義を貫いた愛国詩人」屈原を偲ぶ中国の端午節は、日本の「子どもの日」とは無縁だが、少子化という問題を考えるにはふさわしいタイミングにある。


    🔄 「産むな」から「産んでほしい」へ

    かつて中国は、人々に「産むな」と言った。 長く続いた一人っ子政策は、人口爆発を抑える国家的号令であった。

    ところが2016年には、すべての夫婦に2人までの出産を認める「全面二孩(全面的な二人っ子)」政策へ移行し、2021年には3人まで認める「三孩」政策へ踏み込んだ。

    国家のメッセージは、「産むな」から「もう一人産んでよい」、そして「さらに産んでほしい」へと反転した。

    この反転こそが、中国人口問題の核心である。

    直面している数値は厳しい。中国国家統計局によると、2025年末の総人口は14億489万人で、前年比339万人の減少だった。 出生人口は792万人、死亡人口は1131万人。 千人あたりの出生率は5.63、合計特殊出生率(TFR=一人の女性が生涯に産む子どもの推定数)は0.97~0.98。自然増加率はマイナス2.41を記録した。

    人口は4年連続で減少し、出生率は過去最低となった。

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    💊 避妊具課税という奇策

    中国政府の対策は続く。

    2025年には3歳未満の子ども1人あたり年3600元の全国的な育児補助制度が導入され、2000万を超える家庭が恩恵を受ける見込みとされた。 だが専門家は、保育・育休・女性の雇用保護への持続的な構造投資なしでは、出生率への効果は限られると指摘している。

    避妊具への課税という奇策も打ち出した。

    中国は2026年1月1日から、コンドームや経口避妊薬など避妊関連品への免税措置を廃止し、13%の付加価値税を適用した。

    この措置に対し、ネット上の反応は冷笑に近いものだった。

    問題は避妊具の価格ではない。 住宅費の高騰、重い教育費、不安定な雇用。 そして出産がキャリア断絶リスクを意味する女性の現実にある。
    若者が拒んでいるのは、将来設計を不可能にする社会コストというわけだ

    かつてルーマニアのチャウシェスク政権は、1966年の政令770号で人工妊娠中絶と避妊を厳しく制限し、強制的に出生数を押し上げようとした。 ソ連にも「無子税」が存在したことがあるという。

    ちなみに、ロシア・ポーランド・ハンガリーなどが現在行う出生奨励策は、出産・育児家庭への給付や税控除を中心に設計されている。

    どうやら少子化対策の成否は、信頼・雇用・住宅・教育の重さで決まる。それが歴史の教訓といえそうだ。


    🌏 東アジアに広がる人口の断層

    少子化問題はいまや東アジアが直面する共通の課題となっている。

    厚生労働省が公表した2025年の人口動態統計によると、日本の合計特殊出生率(TFR)は前年比0.01ポイント減の1.14で、過去最低を更新した。

    韓国は2025年に2年連続で上昇して0.80となったものの、依然として「1」を下回る。

    その韓国よりさらに深刻な事態に直面したのが台湾で、2025年の出生数が10万7812人に落ち込み、TFRが0.8を下回る可能性も指摘されている。

    「人口爆発」の国として知られたインドでさえ変わりつつある。 インドのTFRはすでに人口置換水準(2.1)を下回る1.9まで低下した。 南部タミルナド州や東部西ベンガル州では1.3と、欧州の低出生国に近い水準にある。


    📊 2100年の世界地図は塗り替えられる

    人口大国の未来が揺れる。

    英医学誌『ランセット』掲載の論文(ワシントン大学IHME)は、現在の傾向が続けば2100年の世界人口は約88億人(国連推計より約20億人少ない)になると予測する。

    ■ Lancet予測|2100年 国別人口ランキング上位

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    現在の世界1位・中国は3位に後退し、ナイジェリアが2位に躍り出る。 中国の人口規模は、現在比で約半減だ。日本の人口は5300万人まで大きく減少すると予測されている。

    別の推計(国連WPP2024)では、中国の人口は2100年にかけて2024年比で55%超の減少が見込まれており、アジア主要国の人口規模と国際的な重みが現在とは一変することを示している。


    🌱 人口の二面性

    「中国人口日」という記念日にどんな根拠があるのか調べがつかずにいるが、公認の日があろうとなかろうと、中国では人口を考えなくて済む日がほとんどない。

    人口減少は、統計グラフの線が単に下を向くことだけを意味するのではない。
    社会全体で、未来への信頼残高が少しずつ減っていくことを示すものだ。

    その点、摩擦を伴いながら外国人労働者の受け入れ拡大が避けられなくなった日本はいま正念場にある。
    地域社会・労働市場・文化をめぐる、さまざまな課題が伸し掛かってくる。

    日本初の全国戸籍調査が1872 年 1 月 29 日に行われたことから、この日は「人口調査記念日」と呼ばれている。

    これを単なる歴史の一コマとして終わらせたくはない。少子化と移民問題を共に考える日として位置づける必要もありそうだ。

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    参考情報

    • 中国国家統計局「2025年国民経済和社会発展統計公報」 https://www.stats.gov.cn/

    • 厚生労働省「令和7年(2025)人口動態統計月報年計(概数)の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai25/index.html

    • 韓国国家データ庁 2025年出生統計(JETROビジネス短信) https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/03/b292cb8ff3c49c9f.html

    • Vollset SE et al. "Fertility, mortality, migration, and population scenarios for 195 countries and territories from 2017 to 2100: a forecasting analysis for the Global Burden of Disease Study." The Lancet, 2020. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30677-2

    • 国連「World Population Prospects 2024」 https://population.un.org/wpp/

    • 国連「World Fertility 2024」 https://www.un.org/development/desa/pd/

    • 人口戦略会議「人口ビジョン2100」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jinkousenryaku/index.html


    付録:中国の祝日・記念日一覧

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    耕雲

     
     
    上海在住。日中ビジネス、制度、移動、暮らしの現場に流れる空気を、ときには実務の視線もまじえて綴ります。

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