
ちいさな歯車
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たまにぼくがいま、死んだらどうなるだろうと思う。それは寝る前に、講義中に、街を歩く時に、ゴミ箱に投げたティッシュが入った時にふと、湧き上がる。勘違いしてほしくないんだけれど、ぼくはべつに死にたいわけではなくて、さっきまで普通に生きていた奴がふと事切れたら世界はどう動くのかを知りたい。ぼくが死んでも世界は問題なく進んでいくということを確認したいだけだ。
きっと、いまもぼくの知らないところで知らない誰かが絶えず死んでいると思う。ぼくがゴミ箱にティッシュを投げた瞬間に、ティッシュが入った瞬間に。世界はたがいにちいさな影響を及ぼしあっているから、ぼくの投げたティッシュが外れたら死ななかった命があるかもしれないなとか考える。ちいさい歯車をぼくたちは絶えず動かし続けている。
ぼくは世界にとってちいさい歯車になれているだろうか。ぼくが死んだら、世界に何が起こるんだろうか。なんとなく世界全体が淡くてやわらかい光に包まれて、その瞬間だけはだれも死ななければいいなと思う。代わりにぼくが苦しんで、もがいて、悶えて、醜い顔をして死んだとして、きみだけがやわらかい光の中で泣いていればいいと思う。存分に泣けばいいと思う。
きみの中心で回る大きな歯車がぼくであったなら、それだけでいいと思う。
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爪を嚙む 柔くかわいいその肌に歪な爪痕残してあげる