
断っても、終わらない仕事
「断ればいいじゃん」って、何度も言われた。
「無理せず休みなよ」
「断ればいいじゃん」
上司じゃない人から、よく言われる。
その通りだと思う。
無理な仕事は断ればいい。
しんどいなら休めばいい。
正しい言葉だと思う。
でも、その“正しさ”が通用しない場所がある。
「これ無理です」
ちゃんと、言っている。
でも返ってくるのは、
「どうにかなる!」
「たのんまーす!」
軽い言葉で、重たい仕事が置いていかれる。
そして、その人はいなくなる。
残るのは、どうにかしないといけない現実だけだ。
その時、自分はトラックに乗っている。
走りながら、下の子たちに指示を出す。
でも、無理なものは無理だ。
人も足りない。
時間も足りない。
それでも仕事は止まらない。
断ったはずの仕事と、
自分の担当の仕事と、
そして、素直で真面目な後輩たちが残る。
「どうしたらいいですか」
そう聞かれる。
答えられないこともある。
やらせたくない。
でも、やらないと回らない。
その間で、少しずつ削られていく。
「断れないんでしょ?」
違う。
断っている。
それでも、仕事は残る。
そして結局、それは“誰か”じゃなくなる。
私は、特別な立場じゃない。
ただのリフトマンだ。
たまたま大型免許を持っていて、
最近、運行管理者試験に受かっただけ。
それでも、任される。
いや、任されているのか、押し付けられているのか、
正直もう分からない。
こういう現場では、
“できる人”から順番に余白がなくなっていく。
頼めばやってくれる人。
どうにかしてくれる人。
その人たちに、仕事は集まる。
そして、その人たちが限界に近づくほど、
周りはそれに慣れていく。
「今回も、なんとかしてくれるだろう」
その期待が、静かに積み重なっていく。
気づいたときには、
“なんとかできる人”が、
“なんとかしなければいけない人”になっている。
それでも現場は回る。
回ってしまうから、誰も止めない。
でも、その回り方はどこか歪んでいる。
無理が前提になったまま、動き続けている。
「断ればいい」
その言葉が正しい世界も、きっとある。
でも少なくとも、ここでは違う。
断っても、終わらない。
ただ、誰かに積み上がっていくだけだ。
そして今日も、
その“誰か”の上に、仕事が乗る。
たまたま、それが自分なだけだ。