
編集長、恋をする。#8 静かな夜|創作大賞|恋愛小説部門│第8話
│第8話 静かな夜
同僚に呼ばれて持ち場に戻る。
「⬜︎⬜︎、ここちょっと手伝ってくれ。」
「ああ。」
「…さっき話してたの知り合い?」
「ん?ああ、こないだの雑誌の取材でお世話になったライターさん。」
「ああ…あれ、よく書けてたよな。さすが本職だよな。」
「ああ。」
「おまえ、ライター泣かせだからな。喋らなすぎて笑」
「うるさい。そんなに言うならこれからお前が取材受けてくれ(苦笑)」
「いやなこった。」
軽口叩きながら手伝って、イベント終了間際、
明日の準備をしながら片付ける。
明日は早出だから先に帰らせてもらう。
「お疲れ。お先。」
「ああ、また明日な。」
会場を後にして、家路につく。
帰りに弁当と缶ビールとプリンを買って帰る。
\ ガチャガチャ /
\ パタン /
「ただいま…」
誰もいないけど、「ただいま」と「行ってきます」は
言うようにしている。
はぁ…疲れた。
大して面白くもないTVをつけて、
缶ビールを飲みながら、温めた弁当を食べる。
食後はプリン。
「うま…」
ぼーっとTVの画面観てたら、ついうとうとしてしまう。
気がつけば、ひとり暮らしも長くなった。
男やもめにウジがわく、なんて言うけど、
基本掃除は好きだし、持ち物は少なくしているから、快適に暮らせてる。
もう誰かと暮らすなんてこともないよな。
今で充分だし。
風呂からあがって髪を乾かしたら、読書の時間。
建築関係の本は何を読んでも飽きない。
腰を据える前に、コーヒーミルを回す。
こんなふうにひと手間かけて、
香りを楽しみながらコーヒーを淹れる…
この時間が好きだ。
マグカップに淹れたてのコーヒーを注いで
本を開く。
ページをめくる。
……ふと
「温かい文章ですね。」
今日、自分が口にした言葉を思い出す。
嬉しそうに笑っていた顔が、一瞬浮かんだ。
それだけだった。
またページをめくる。