
「悲しみと凪」
− 手放した先にあったもの −
36歳。
いろいろあったけど……
よくここまで、生きてきたと思う。
本当にありがとう。
梅雨のジメジメした感じも過ぎ去り、本格的な夏を迎える一歩手前だ。
とても爽やかな日。
今までのことが嘘だったかのように……
清涼な風が全てを持ち去っていく。
穏やかだし、健やかだ。
社会に出て16年。
何かを追い求めるように、走り続けていた。
足りないものを補うように。
ずっと渇望という涸れた沼の底を這っていた。
皮肉だ。
なんでだろう。
足りないものを、求めれば、求めるほど、渇いていった。
「もうええかな」
そして、手放した先が…
凪だった。
分かるのは、この穏やかさと、健やかさは本物ということだけ。
物差しと眼差しを、手にしていた。
今思うことは……
子供の頃に母が作ってくれた、パン耳の牛乳づけと、フレンチトーストが食べたい。
それが、一番の幸せなのかもしれない。