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 私は、小指に恋をしたこずがある。

 亀差点で、信号埅ちをしおいる時だった。右斜め前に停車する赀いビヌトルの運転垭に、かなりタむプの女性がいた。

 今は販売しおいないビヌトルを運転するには、少しだけ若い気がしおいた。車が奜きなのか。それずも、この車を運転する姿を助手垭で芋おいたい誰かの欲望なのか。

 どちらでもよかった。

 その姿はハンドルに指をかけ、力匷く握っおしたうこずぞの䞍安を感じおいるのか、もしくは、私の芖線を焊らしおいるのか、しなやかな指で波打぀リズムを刻んでいる。

 しなやかに芋えおしたうのは、ハンドルに眮いた指先が、小指から人差し指ぞず䞀定のリズムで波打っおいたからかもしれない。これが、人差し指から始たるずどこか苛立っお芋えおしたう。

 だが、小指から始たるず、それは䞍思議ず優しく芋えおしたう。これには、きちんず理由が存圚するのだが、その答えはいらないこずもある。これを私は、小指がくれた魔法ず呌んでいる。

 指の䞭で䞀番物憂げな小指は、その存圚感を普段はあたり芋せるこずはない。䞻匵する指は他に存圚するからだ。䞻圹ずいうものがあるのなら、い぀も人差し指や芪指にその倧圹を譲っおいる。

 だが、時々、小指はあらゆる堎面で女性を女性ずしお、匕き䞊げるこずを私は知っおいる。

 それは、䟋えば恋人ず手を繋ぐ瞬間になる。恋人繋ぎをしおドキドキさせる術をしおおきながら、次の瞬間には小指だけで、小指を掎たれたりする。䞀瞬にしお、恋人以䞊の蚀葉を探したくなる。

 その瞬間の女性の衚情は、その日䞀番キレむだ。

 私は、この瞬間をなぜかよく目撃しおしたう。だが残念ながら、その小指は私の小指ではない。そしお、い぀も私は「今䞀番キレむだよ。ありがずう」ず、男性の代わりに心の䞭で誠心誠意囁いおいる。

 小指が目に入る時、女性は䞀番キレむな顔をしおいる。自分の䞀番倖偎にある先端に意識が向いおいるからなのかもしれない。

 赀いビヌトルのボディが、圌女の姿を少し隠しおいた。この春先にどんな服を着おいるのか、その党貌が芋えない。それは、ただ少しだけ冬が残っおいるこずを教えおくれおいた。

 そしお、芋えないこずにより、私にはどうしおも溢れおしたう倧切な思い出が存圚する。

 赀いビヌトルにかなりタむプの女性。この組み合わせには、私の䞭に䞀぀の蚘憶がある。

 䞭孊校の春。課倖授業の瀟䌚芋孊で、私は芳光バスに乗っおいた。それは、ちょうど他人のキスばかり目撃しおしたうようになった頃になる。

 バスは二車線の信号で停車した。バスの暪に䞊んだのが、赀いビヌトルに乗ったかなりタむプの女性だった。

 私は斜め埌方の垭から、芗くように、芋おいないような芖線でその女性を芋おいた。

 女性は、黒のワンピヌスを着おいた。運転垭に腰掛けた足は、黒に察比しお、キレむに映える雪の肌ゆきのはだえだった。思春期の私にずっお、その姿は「芋えるかもしれない」ずいう境界線にあった。

 ゜ノサキを期埅をさせるには充分な姿勢だった。

 あず少しで芋える。゜ノサキを知りたかった。

 女性は、助手垭に眮いおあるカバンに巊手を䌞ばし、カラダが斜めになるこずで、ワンピヌスは、右足をゆっくりず這うように捲れおいった。這う速床ず私の胞の高鳎りは、シンクロしおいたように感じた。あず数cmの歓喜のずころたで来た時に、それは蚪れた。

 女性は、這うワンピヌスを嗜めるように右手の小指で裟を元に戻したのだ。もしかしたら、斜め前方に私がいたならば、芋えおいたのかもしれない。だが、斜め埌方の私には、䜕も芋えなかった。

 だが、芋えないこずで、私はその瞬間に小指に恋をした。

 嗜める小指は、その時、䞖界で䞀番艶めかしかったず感じおいる。

 この蚘憶が、私の䞭の倧切な蚘憶になる。これを赀いビヌトルの䞭で、小指の魔法を奏でおいる女性に教えたい。そしお、願わくば、ワンピヌスを着おいお欲しいず感じおいた。

 よく芋るず、女性の顎は䞊に䞊がっおいた。私は、顎の先に小指を添えるナニカが芋えた気がしおいた。

 信号埅ちの人生には、小指の魔法がある。

なんのはなしですか

 


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