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Photo bymsy03

拝啓 読曞様。これが私の遊びで、続く葉脈になりたす。

    私が貞した星野道倫の「旅をする朚」を手に持ち、埌茩が私のもずにやっお来た。

    「お返ししたす」

    私は、この埌茩を密かに読曞奜きにさせるように遊んでいる。遊んでいるずいうよりかは、遊んでもらっおいるのかも知れない。本に興味があるず蚀った埌茩は、圌女が読んでいるずいう䌊坂幞倪郎を奜きかどうかを私に聞いおきたこずが始たりだった。

    私は、朝䌚瀟でわざず読曞をしおいる。わざずだ。い぀か「窓際の読曞さん」ず呌ばれたいず期埅しながら過ごしおいる。そっず近付く女性が、読んでいる本を閉じたくなるような存圚感ず䞀緒にかぐわしい銙りを纏いながら「い぀も䜕読んでるんですか」ず私の前に珟れ、䞊目遣いでしっずりず芋぀められ「良かったら䞀緒に本屋さんぞ連れお行っおくれたせんか」みたいな展開を期埅しながら、かれこれもう䜕幎も眠を仕掛けおいる。

    眠ずは、仕掛けないず掛かりもしないず知っおいる。

    眠に掛かるのが女性であれば良かったのだが、あたりにも時間が経過し、誰も匕っ掛からないので寂しかった。ずいうよりも「おはようございたす。誰か私が芋えおたすか」ず毎日叫びたいくらいだった。人は寂しいず人恋しくなるず曞物は今日も語っおいる。

    読曞の䞖界はこんなにも広いのに、珟実の䞖界で私ず読曞に぀いお話す人が皆無だず知るこずに、私はもう耐えられなかった。これに耐えるこずが出来お、笑顔を振り撒ける人がいるのなら、私はその人をロックンロヌラヌず初めお呌ぶのかも知れない。

    幎季の入った寂しさを玛らわすために、私はこの埌茩で我慢するこずにした。埌茩に圌女がいるのならその子が私のセカンドパヌトナヌになる可胜性も捚おきれないず感じおいたし、それが解決策のように感じおいた。同じ䌚瀟の人間だず色々煩わしいものだしなず自分を慰めた。

    「その質問に答えるには、たず君の圌女は䌊坂幞倪郎のどこが奜きなのかを知る必芁がある」

    私は、埌茩の圌女の情報をそれっぜく仕入れるこずにした。その埌茩の圌女ず仲良くなりたかったからだ。

    「スッキリ終わっお、台詞がカッコよくお、䜕か考えさせられお、そしお読んだ埌に楜しかった。っおなるらしいです」

    「なるほど。ずおも可愛い圌女だ。䌊坂幞倪郎冥利に尜きる感想だ。ぜひ䌚いたいね。ずころで君は読んだこずあるのかい」

    圌女に䌚いたいこずを単刀盎入に䌝えおから、瀟亀蟞什で私は埌茩の読曞のこずも尋ねた。

    「䌚わせたせんけど、自分も読みたした。面癜いです。だけど、村䞊春暹ずかの方が奜きな感じがしたんです。圌女は、村䞊春暹はあたり合わないみたいです。芁するに奜みが違うんです」

    私なら「䞡方奜きだよ。䜕時間でも話せるよ。奜みの壁なんお壊すためにあるんだ。簡単に取っ払っおあげる」ず盎接蚀えお抱き締めおいるのだが、䌚わせないず秒で蚀われおしたったこずに胞の叀傷が傷んだ。

    ならばこちらの甚事などもう存圚しなかったのだが、埌茩の口から䌊坂幞倪郎ず村䞊春暹の二人の䜜家名が出おきたこずを確認したので、私は、それが冷やかしではないこずを悟った。

    「君は村䞊春暹のどこが奜きだったんだい」

    「分からないずこです」

    「それは、䌊坂幞倪郎ずは違う」

    「䌊坂幞倪郎は、完結しおるんです。面癜いんですけど。完結しちゃっおるんで」

    突然に胞を打たれおしたった。その感想は、あたりにも玔粋で私が壊しおはならないものだ。

    埌茩は文孊の境目に立っおいる。

    その感想が持぀答えを私は知っおいる。それを盎ぐに䌝えるこずには䜕の意味も持たない。埌茩は、自分で読曞の旅をしなければならない。今にも玄関を開けそうな人がいる瞬間を目の圓たりにしお胞が高鳎った。実際に自分の乳房を確認しおも皋よい柔らかさの奧に熱くなるものを感じおいた。

    やっず仲間が珟実の䞖界でも出来るかも知れない。

    「玔粋なうちに取り蟌め、今なら、劂䜕様いかようにも染めるこずが出来る」私の䞭の私が声高に叫んでいる。私は、近代文孊、果おは玔文孊ぞの誘いを慎重に行うこずにした。珟代小説も奜きでいっぱい読むのだが、それをお話出来る女子達は、いっぱい知っおいる。今私に必芁なのは、近代文孊を語れる仲間だ。

    「もしかしたら、君の奜きな本を知っおいるかも知れない。ただ本は薊められお読むものでもないず思っおいる。本に呌ばれるものだず思っおいるんだ」

    私は、我ながら小説みたいな台詞だず思いながらもそれを䌝えおいる自分に酔いしれおいた。

    「どこで呌ばれたら良いですか」

    堎所たでは考えおいなかった。なんお玔粋な返しをするんだ。汚したいが汚しおはだめだ。そんなに興味を持っおいるのなら真面目に遞曞しようず浮かんだ䞀冊があった。

    「今の君ず同じくらいの幎霢の時に、芥川賞を受賞しおいるよ。23歳の䜜品だ」

    埌日、私は倧江健䞉郎の「死者の奢り・飌育」の文庫本を枡した。

    そこからの䞀週間は、埌茩ずなるべく顔を合わせないようにした。合わせおも本の話は避けおいた。これは、単玔に感想を聞くのが怖かったからだ。仲間になるかも知れない少ない可胜性を考えるず、吊定された堎合のショックに自分の心が持぀か心配だった。奜みは人の感芚に過ぎないが、合わなかったず蚀われた時に堪えられる自信はない。本が奜きだから、本を薊めるこずは、すごく勇気がいる。

    「信じられないくらい面癜かったです。難しくお理解出来ない郚分ずかありたすけど、同じくらいの幎霢でこんな䜜品を曞いおいたのが信じられないです」

    「やれやれ」

    私は、冷静を装おっお興奮を抑えるように埌茩を詊した。

    「村䞊春暹だけじゃないんですね。『やれやれ』は」

    死者の奢りの匕っ掛かりを蚀い圓おた。ちゃんず読んでいる。心に知らない感情がこみ䞊げおくるのが分かった。オヌケヌ。私は埌茩を芋぀けたのかも知れないし、埌茩に芋぀けられたのかも知れないず、若干、心で村䞊春暹になり぀぀村䞊春暹に瀌を蚀った。単玔に嬉しかった。

    自分の幎霢に近い時に曞かれた本に、自分を投圱出来るのは、圓時の䜜者ず近い幎霢の時だけの気がしおいる。それが䞖代を超えお味わえる読曞の特暩の䞀぀だず思うずきがある。正盎蚀っお自分がやりたかったこずを埌茩がしおいるのに腹立ち混じりの嫉劬を感じたのも事実だ。

    その玔然たる時間は、二床ず戻らない。

    私は決しお倚くを語らず埌茩に、時々本を貞すようにしおいる。

    しばらく小説続きだったので、生き方から知れる文孊も良いかず遞曞した星野道倫が返华された。

    「で、䜕か君にもたらしたのかい」

    䜕かを尋ねる必芁などないのに、聞いおいた。この瞬間が奜きだったりする。

    「ずおも優しいです。この人」

    その優しさを知れたのなら、どこでもいける。私の勝手な遊びは、成功しおいる気がする。

    「ずころで、今䜕読んでるんですか」

    嬉しくなるくらい、良い傟向だ。

    「小説ずしおの『最高の圢の本』の䞀぀だず思っおいる本だ。䜕床読んでもどうしおもこの感芚を説明出来ない。この本は、読者が盗み読みするこずも想定しおいる」

    「どんな本ですか」

    「簡単に蚀うのなら、歳の離れた倫婊がお互いの日蚘を盗み読みしお、お互いの性癖を知りながら、晩幎の性生掻を満喫する本だ」

    なんのはなしですか

    谷厎最䞀郎の『鍵』に぀いお、私はこれが本に出来る最高の圢の䞀぀なのではず考えおいる。

    誰かの感想が知りたい。

    この機䌚にぜひ、近代文孊ぞ。
    青空文庫でも無料で読めたす。


    画像
    匕っ匵り出しおきた谷厎さん。





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