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穴を掘った王さま


    #創作大賞2026 #オールカテゴリ部門

    穴を掘るのが義務ならば、
    スコップを持つ権利がある。
    そうつぶやいた王さまは、
    皆の分のスコップを用意しました。

    王さまには悩みがありました。
    どうしても水が足りないのです。
    雨は充分降るのですが、
    海に流れていってしまうのです。

    ですが王さまは考えました。

    大きな大きな穴を掘ろう。
    大きな大きな穴を掘れば、
    海の代わりにその穴に、
    雨は流れ込むに違いない。

    そう考えた王さまは、
    すぐに人とウマとニワトリ、
    そしてサカナに手紙を書きました。

    何故って王さまは人とウマとニワトリ、
    そしてサカナの王さまだったからです。
    今の人は知らないでしょうが、
    昔はそんなこともあったのです。

    さて人とウマとニワトリ、
    そしてサカナとスコップが揃ったので、
    早速穴を掘り始めました。

    王さまがスコップで穴を掘っていると、
    ウマがやってきて言いました。
    「王さま、王さま、ごめんなさい。あなたのお役に立てません。」
    「わたしの前足は蹄ですから、どうもスコップは持てないのです。」


    王さまは考えた後言いました。
    「おまえの脚はたくましい。人より沢山の荷物を持てる。」「土砂を運ぶ役をしておくれ。」

    「それなら、王さま、お安い御用です。」
    そう言ってウマは沢山の土砂を運びました。

    王さまがスコップで穴を掘っていると、
    ニワトリがやってきて言いました。
    「王さま、王さま、ごめんなさい。あなたのお役に立てません。」
    「わたしの前足は翼ですから、どうもスコップは持てないのです。」

    王さまは考えた後言いました。
    「おまえの声はよく通る。おまけにおまえは早起きだ。」「夜明けに一声鳴いておくれ。」

    「それなら、王さま、お安い御用です。」
    そう言ってニワトリは夜明けの度に一声鳴きました。
    電灯の無い昔には、
    お日さまはとてもたいせつだったのです。

    サカナは独りで悩んでいました。
    サカナにはたくましい脚も無ければ、
    よく通る声もありません。
    サカナに何ができるでしょうか?
    王さまに相談もできません。
    サカナは喋れませんからね。

    サカナが悩んでいるうちに、
    大きな大きな穴が掘り終わりました。
    掘り終わるとちょうど雨が降り、
    大きな大きな穴は、
    大きな大きな池へと変わりました。

    人とウマとニワトリは喜んで笑っていましたが、
    サカナの目には涙が浮かんでいました。
    王さまの役に立てなかった自分が、
    ひどく無力に感じられたのです。

    サカナが池のほとりで泣いていると、
    王さまがやってきて言いました。
    「ああ、探したぞ。まだいたな。」
    「おまえには大事な仕事を頼みたいのだ。」

    「大きな大きな池はできたが、これで仕事は終わりじゃない。」
    「万人が永く使えるように、池の番人が必要だ。」
    「池の底まで潜れるおまえに、わたしはそれを頼みたい。」そう王さまは言いました。

    返事の代わりに、
    サカナは尾ビレで池の岸を叩き、
    水面に消えていきました。

    大きな大きな池は、
    その後永い永い間、
    人とウマとニワトリ、
    そしてサカナを潤したそうです。

    さて、時は流れ王さまは死に、
    土砂崩れで池は埋まってしまいました。
    人々は再び大きな大きな穴を掘ることに決めました。

    人々は大きな大きな穴を掘るでしょうが、
    王さまのようにはいきません。
    なにせ今度はウマとニワトリ、
    そしてサカナが居ないのですからね。



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