
誰かのための世界
ほとんどの知らない人たちのために世界はある。
必要なものだけを意識していたら、世界は微妙だ。

スーパーには、誰が買うんだと思うような香辛料が売ってある。
知らない山の先まで何でも送り届けられるように、郵便局がある。
病気もしない奴らが、病院を支えている。
あなた達は普通にして偉いですねと、犯罪者が教えてくる。

ヤクルトレディが走り回って、知らない人の腸内環境を整えている。
星座の中にも、星屑がある。
美しい人を、たくさんのそうでない人が支えている。
僕みたいな喋りが下手な人間が、言語化命の世界を支えている。
蜘蛛が、あなたは蜘蛛じゃないですよと教えてくる。

電気屋には、見たこともない形の電球が売っている。
僕のボロアパートの、大量生産の蛍光灯はチカチカして、今にも消えそうだ。

一枚の紙みたいに、どこまでも平行な世界があって、表はずっと昼、裏はずっと夜だとする。
僕は夜を選んで後悔するだろう。
誰かは昼を選んで後悔するのかもしれない。