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第十八章:30年越しのコーンスープ

    これだけの青空なのに、この後、天気は崩れるらしい。

    本当なら、「盛華堂」のお団子を食後のデザートとして味わう予定だった。だが、ランチのスケジュールと順番が逆になってしまっていた。なかなか、思い描いた通りにはいかないものだ。

    少し後ろ髪を引かれるような思いで「盛華堂」を後にする。大豆畑の脇を、電動アシスト自転車が静かに走り抜けていく。

    西尾駅の近くまで戻ってきた頃、僕にはもう一つ、どうしても立ち寄りたい場所があった。

    「ステーキのあさくま シャオ西尾店」。名古屋周辺では有名なチェーン店だ。


    時を遡ること、およそ30年。

    かつて地元にも、「ステーキのあさくま」は存在していた。今でいうファミレスとは少し違う。

    もっと“ステーキハウス”寄りの空気を持った、少し特別な外食の場所だった。

    だが関西では、2004年に姿を消してしまった。

    それが今も、この名古屋方面では形を変えながら生き残っている。

    ――寄るか、絶対に寄るか。

    答えは決まっていた。


    懐かしさを求め、店のドアを開く。
    カランカラン、と懐かしい音が響いた。
    一瞬、あの日へタイムスリップした気がした。

    ……だが、店内を見渡して、少しだけ戸惑う。

    そこにあったのは、記憶の中の“ステーキハウス”ではなく、現代的なファミリーレストランの風景だった。

    「おひとり様ですか? こちらへどうぞ」

    店員さんに案内され、席に座る。

    パウチ式のメニュー。呼び出しボタン。

    「あぁ……こんな感じになってたのか」


    少しだけ寂しさが胸をよぎった。


    そうと決まれば、今日はガッツリ食べよう。ステーキランチと、サラダバーを注文する。

    自分でスープを運び、席へ戻る。


    ほどなくして、鉄板の上でジュウジュウと音を立てながら、ステーキも運ばれてきた。

    「いただきます」

    まずはコーンスープをひと口。




    その瞬間だった。思わず、スプーンを置いた。





    昼時で賑わう店内。







    その真ん中で、僕は静かに涙を浮かべていた。








    ――変わっていない。







    この味だけは、30年前から、1ミリも。いや、1ミクロンも変わっていなかった。



    まだ付き合い始めたばかりの頃。家内と一緒に食べた、あの頃の味だ。




    家内は、驚くほど穏やかな人だった。



    「将来は、優しいおばあちゃんになりたいな」



    そう笑っていた人だ。





    ……だから僕は、97歳の看板娘さんに会うために、この西尾市まで来た。




    涙で、テーブルが滲んでいた。



    ――そう、そう。

    ようやく、辿り着いたんだ。




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    パーマ侍/50代。 大切な人を見送り、独り旅を覚えた。 真冬の街を全力疾走する。 そんな… 流浪の旅侍。 果たして、本当に必要だった答えに、辿り着けるのだろうか。 また、くだらぬものを、書いてしまった。 ジャンル・ブレンダー|ズレ文学 *記事などの無断転載は禁止です

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