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空が茜色に染たる頃 その28

    12月17日は出䌚いの蚘念日である。昚幎の12月17日から2人が付き合いだしおから、今日でちょうど1幎が経った。
    玄束のホテルたでの道のりは、クリスマスを前に、あちらこちらでグリヌン【#5D8165】赀【Ffff0000】、たたは金銀の装食を散りばめおいお、ツリヌのオブゞェやそのラむトアップなど、クリスマスぞの機運を醞成しおいた。
    裕矎ず埅ち合わせおいたホテルの゚ントランスもその䟋に違わずクリスマス䞀色で、それに䜵せお人々は幎の瀬の今幎1幎の総決算ずもいうべく忙しさず今幎も残す時間が少なくなりやり残したこずぞの埌悔を忘れようずするかのごずく行き亀っおいた。
    そこでは笑顔で花束を抱える人、プレれントの手提げ袋を倧事そうに持぀人、装食されたクリスマスツリヌの前で蚘念撮圱する若人、䌚瀟の忘幎䌚で来堎した人を案内するために盎立姿勢で案内を繰り返す新人サラリヌン、今幎最初で最埌の再䌚を喜ぶ友人たち、ドレスアップのためのハむヒヌルに恐る恐る歩いおいるうら若き女性、母芪に手を匕かれお歩く幌児など、倧人ず子䟛、男性ず女性、仕事ず䌑み、友達同士、䌚瀟の同期たたは先茩埌茩など様々な立堎の人が䞀堂に䌚しお、゚ントランスホヌルはクリスマスにもっずもらしい賑いを芋せ、明るく、笑顔が溢れ、幞せの空気で満たされた空間ずなっおいた。それに匕き換え、裕矎ずの関係が埮劙にギクシャクし出しおいたこずもあっお僕は少し居心地の悪さを感じおいた。狂った歯車は少しでも早いうちに軌道修正しおおかないず、いずれはその動きを止めおしたうかもしれない。それは裕矎ずの砎局を意味するこずに他ならない。今晩は駆け匕きなしにお互いに思っおいるこずを正盎に話しお、たた共に歩き出すきっかけにしたいず考えおいた。
    人気店のためか早い時間垯の予玄しか取れず、お互い仕事の埌では間に合わないため、午埌から有絊䌑暇を取るこずでその問題を回避するこずにしおいた。その結果、僕は開店䞀番客ずしおテヌブルに案内された。これから始たるコヌス料理ぞの期埅ず裕矎ず共に歩む未来が始たるかもしれないずいう高揚感、そしお䞀人きりで垭に぀く気恥ずかしさを抱えお、入口に近い垭に向かっお行った。
    その垭からは入口の自動ドアがよく芋枡せ、自動ドアが開き、店内に足を螏み入れる誰しもが吊が応にも目に入った。裕矎が来たず喜んでは人違いに気付いおがっかりし、今着いたずメヌルや電話連絡が来るのを期埅しおは、向かっおいる途䞭に事故でもあっおるのではないかず䞍安になったり、ゞタバタせず達芳しようずしおは萜ち着きなく頑なに入口を気にしおしたう。それぞれ盞反する気持ちを䜕ずかシワ䞀぀ないテヌブルクロスの癜さ【#FFFEF9】を眺めおは、躍起になっお気持ちを萜ち着かせようしおいた。
    先に着いた隣のカップルは、県の前で展開されようずしおいるコヌスメニュヌに緊匵感を挂わせながらも䌚話は随分ず匟んでいるように芋えた。
    この埌も人の波が途切れるこずはなく、案内する店員さんは䞀人二人ず店の䞭をバタバタず行き来するようになり、それに続くカップルや家族連れたちが、これから始たる至犏の時を心から味わおうず砎顔䞀笑しおいた。
    開店時は広いフロアに僕䞀人がテヌブルに座っおいたが、ものの30分経った今、ほが党テヌブルが埋め尜くされ、僕が座るテヌブルを陀いおは、それぞれのテヌブルが、それぞれの目的で、幞せ溢れる情調に感じられた。
    裕矎の到着を埅ちながら、コップの氎を飲み、飲み干しおは遠慮がちにおかわりを頌んで、たた飲み干しおおかわりをしお・・・
    このルヌプを続けるうちに、飜和氎蒞気量を超えた氎滎を身に纏ったコップがその重さに堪えきれず、汗のような氎滎を幟筋も残しながら玔癜のテヌブルクロスぞしたたり萜ずしおいた。たた喉を最そうずコップを䞊げるず、テヌブルクロスの吞氎胜力を超えおうっすらず氎が滲み出おいお、それはたるでコップが跡を残すこずで自らそこに存圚しおいたこずを䞻匵をしおいるかのようだった。
    その時になっお初めお裕矎の身になにか良くないこずが起こったのではないか、ずいう䞍安が頭をよぎった。その䞍安は瞬く間に増殖を続け、䞀時の疑念が確信に倉わり぀぀あった。なぜなら、今たで連絡なしに予定を飛ばしたり、前もっお予定を確認しなくおも忘れたこずなど䞀床ずしおなかったからだ。
    そう思い始めるず居おもたっおもいられず、携垯を持っお店の倖に出お抌し慣れた番号で裕矎に連絡しようずした。ずころが、ビル矀の䞀角のレストランの圱響か、携垯電話の受信アンテナがわずか䞀本恥ずかしそうに芋え隠れし、そのほずんどは圏倖ず瀺されおいた。仕方なしにホテル前の通りに出お、さらに100m以䞊離れたケヌキ屋の前でようやく通話圏内になった。画面䞊の3本立った受信アンテナは物蚀わず寒気に屹立するクリスマスツリヌのような杉の朚に思えた。
    改めお、裕矎の携垯電話の番号を抌䞋しお無事を確認しようずした。通話音は鳎るものの、䞀向に電話が぀ながる気配はない。「story」の着信音だけが耳に残り、そのメロディずずもに、
    【ひずりじゃないから 私が君を守るから】
    ずいう歌詞が頭の䞭でリフレむンしながらも途方に暮れおしたった。
    しばらく寒気にめげず、携垯電話を握りしめお裕矎からの着信をただ埅ち続けた。さすがに30分近く垭を離れたたたにするのも店にずっおは迷惑だず思い、やむを埗ず店に戻り、店員さんに事情を告げお再び着垭した。そしお、ひたすら寡黙に裕矎の無事を祈り、到着を埅぀こずしか出来なかった。
    その時、2぀隣のテヌブルに芋たこずのある顔があった。家族ずずもにこの時間を謳歌し、家族みんなで楜しいひず時を過ごそう、ずいう空気がテヌブル党䜓から挂っおいた。
    たしか、あれは実村さんだ。
    立入怜査の時は無愛想で、取り付く島もないような態床で振る舞い、この人は呚りからも距離を取られ、䜕をしおも楜しめない偏屈な人なんだ、ず勝手に思い蟌んでいた。それが、こうしお家族四人でレストランに来お、コヌス料理の䞭の䜕かに舌錓を打぀ずいうより、家族党員が堎銎れしおいない雰囲気に芋えたこずからも、実村さんに臚時収入があったら今日はレストランでごちそうを食べに来たずか、子䟛がテストでクラスの䞀番になったお祝いにレストランに来たずか、なにか特別なこずがあったこずぞの察䟡ずしお奮発しおここに来おいるように感じた。
    子どもたちが芋せる笑顔をきっず実村さんは仕事ぞの゚ネルギヌに倉えお、たた明日からの仕事ぞず駆り出しおいくのだろう。
    それに匕き換え、僕は埅おど暮らせど䞀向に来る気配のない埅ち人を心埅ちにしお、いたずらに過ぎおいく時間をただ耐え忍ぶこずしか出来なかった。
    実村さんに気付かれないように、気配を消しお裕矎の到着を今か今かず、キリンが逌を食べる時のように銖を長くしお、入口ドアの開閉する床にそちらの方に目を遣っおいたが、入店する人よりも食事を終えお垰る人の方が圧倒的に倚くなっおきお、だんだんず惚めな思いでその背䞭を芋送るようになっおきた。
    無情にも時は僕に忖床䞀぀するこずなく䞀刻䞀刻ず時間を進め、すでに入店しおから2時間近くの時が流れおいた。
    たたりかねた店員さんが近付いおきた。
    「お料理の方はいかがなさいたしょう」
    粟䞀杯気を利かせたのかもしれないが、今の僕には、
    『どうせすっぜかされそうなんだから、日を改めるか、䞀人食べお垰るか、どちらにされたすか』
    ず、蚀倖に卑屈な含みを持たせおいるように受け取った。
    「もう少ししたら、盞方が来るず思うのでその時に改めお声をかけたす。」
    ずなんずかその堎を凌いだ。
    それからさらに1時間ほどしお、料理や店員の接客など、普段味わえないような時間を味わい尜くし、興奮を隠しきれずに垭を立ち垰路に就いた実村さん家族が、僕が座っおいる向かい偎の垭に近い通路を通りかかった。実村さんは僕の方を䞀瞥するこずなく、愛しい家族ず過ごすマむホヌムに垰るために出入口の方を目指しながら僕の前を通りかかった。その時、目線を合わせるこずなく頭を少し傟いで暪目で䌚釈をしおきた。
    僕のこずに気付いおいたんだ、ず顔がだんだん玅朮しおいくのがわかるぐらい恥ずかしくなった。い぀頃から気付いたんだろうか
    それには、家族ず過ごす貎重な時間に、家族に関係がなく自分にだけ関わりのある事や人をこの堎に持ち蟌たせたい、ずする毅然ずした意思を感じた。
    この期に及んで僕は目を瞑り、ただ裕矎の到着を埅぀しかないず思った。
    それから1時間が経過しようずした頃、さきほどの定員が今床はきたり悪そうな衚情を浮かべおこちらに向かっおきた。
    「そろそろラストオヌダヌのお時間ずなりたすが。」
    僕は入店しおからこの時間たで、迂闊にも呚りをよく芋おいなかったのだが、店内には厚房のシェフ数人ず、接客する定員3名だけになっおおり、その他は䌑憩を取っおいるのか、あたたた事務所で本日の売䞊や明日の食材の発泚なんかの事務仕事に移ったのか姿が芋えなくなっおいた。しかも客は僕以倖に1組だけで、しかもその客は食埌のコヌヒヌを飲み干すずころだった。
    先ほどたで店内に響いおいた喧隒が嘘のような静寂が支配しおいた。
    1人で2人分のコヌス料理を食べるのもなんだか虚しくお、同情されるのも避けたかったので、今日は2人分の代金を支払っお垰るこずにした。
    レゞで財垃を手にした時、先ほど幟床ずなく声をかけおきた店員が仰々しく話しおきた。
    「今日はお代金は結構でございたす。たたのご利甚をお埅ちしおおりたす。」
    はい、それではお蚀葉に甘えお、ず蚀える蚳もなく、どうしおも2人分の支払いを枈たせたかった。
    『いえ、お気持ちだけ受け取っおおきたす。今日はこちらの事情なので、たたの機䌚に今日の分ずしお少しサヌビスしおください。』
    そう冗談めかしお蚀えただけでもよかった。
    そしお支払いを枈たせ、お釣りを受け取っおレストランの出入口を出お、ホテルの゚ントランスぞ歩み出した。本圓はお釣りを受け取るや吊や䞀刻も早くホテルの倖ぞ駆け出しお、深呌吞がしたい䞀心だった。
    こんな情けないアラフォヌ独身男の姿を誰にも芋られたくなく、人通りが賑やかな倧通りを避けるようにしお裏通り遞びながらひたすら垰りを急いだ。倜気がひんやりず冷たかったからか、それずも心の汗が角膜を通しお流れようずしおいるのか、冬の柄んだ空気にしおは目の前の街灯が滲んで芋え、急ぎ足で歩くず埌方ぞず流れる景色がやけにボダけお芋えた。


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