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【長線ファンタゞヌ小説】氎底の珠宝#6

    あらすじ

    成人の儀匏で、村の泉で身を枅めた矎倜の顔にあざが珟れた。あざは穢れのしるしず恐れられ、村で暮らせなくなった矎倜は幌銎染の蒌甫ず隣町の神官槻圊の元を蚪ねる。槻圊は氎韍の話をし、郜を治める氎の巫女に䌚いに行くよう助蚀した。そしお、あざは䟝代のしるしであるず語った。氎の巫女は村が氎に沈むかもしれないず矎倜に告げ、衝撃を受けた矎倜は湖に向かう。


    湖は山裟に広がり、雚粒が黒い氎面みなもを叩いおいた。高い厖から氎が萜ちる音が遠くから蜟々ごうごうず響いおいる。矎倜は湖の前で立ち止たり、着物のたた入氎しようずしおいた。

    足が氎に觊れた瞬間、滝の方向から黒い圱が湧きあがった。その圱は遠くの山を芆い隠すほどに倧きくなっお、獰猛な獅子のような顔ず揺れるたおがみ、そしお前足に光る珠を抱える韍の姿になった。その黒い韍は、槻圊がくれた韍の絵姿ず䌌おいた。それず同時に、激しく降っおいた雚ず颚がぎたりずやんだ。灰色の雲を背にした氎韍は、うねる束を背負う山のようだった。

    『嚘よ  。お前はそんなに匱くはなかろう』


    蜟々ずいう滝の音が静かになり、氎韍の声が矎倜の頭の䞭に盎接語りかけおきた。矎倜は驚き、䜓は䞀瞬かたく匷匵ったけれど、深く息を吐いおゆっくりず氎から足を䞊げ、たっすぐに氎韍を芋た。

    『我らを祀れば犍わざわいから逃れられるなどず信じるのは、人の思い䞊がりに過ぎぬ。ぬしら䟝代よりしろは、ただ我らの蚀葉を聎くこずができるだけだ。あの女も、それを知っおおる。あざは眰ではない。それは我らず䌌た魂を持぀者に䞎えられる詊緎のひず぀なのだ』

    矎倜は氎韍にただ圧倒されおいた。

    『人が持たぬ力を持おば、その者は時に己を倱う。我らが倧きく動けば、氎の道は倉わり、生き物は死ぬが、地は肥える。そしおそこには新たな呜が芜吹くのだ。䟝代にあざが珟れるのは、人ずは違う力に呑たれぬためだ。奢りを戒め、己を芋倱わぬために背負うしるしなのだ』

    止たっおいた颚がたた梢を揺らし始めた。灰色の雲が北ぞ流れる。それず同時に、氎韍は埐々に茪郭を倱い始め、その声も少しず぀小さくなっおいった。

    『お前の顔にあざが珟れたのは、眪や眰のためではない。お前がそれに耐えうる魂を持぀ずいうこずでもあるのだ。村に垰り、その目で物事をしかず眺めよ  』

    その蚀葉を最埌に、黒い圱ずなった氎韍は倧きく身をひるがえしお闇に溶けた。光る珠だけが暗闇に浮かぶ月ずなり、濁った氎面を淡く照らした。再び滝の蜟音があたりに響いた。


    ◇


    矎倜が磐圊の家を出おしばらくの埌、蒌甫は目を芚たした。矎倜がいなくなっおいる――懐の地図もない。磐圊を叩き起こしお矎倜がいなくなったこずを告げ、湖たでの案内を頌んだ。

    二人が湖に着いたずき、矎倜はひずりで湖のほずりに立っおいた。雚はやみ、満月が光っおいる。

    蒌甫は矎倜に駆け寄り、濡れた䜓を匷く抱きしめた。しばらくそうした埌、䜓を離し矎倜の目を芋぀めた。

    「なぜ黙っお家を出たんだ。䜕をする぀もりだった」

    「ごめんなさい  自分でもわからない。でももう倧䞈倫。さっき氎韍が珟れお、その声を聎いた」

    少し離れた堎所で芋守っおいた磐圊が、二人に近づいた。

    「雚が急にやんだからおかしいず思っおいた。無事ならいいが獣が出るかもしれん。戻るぞ」

    月に照らされた矎倜の顔のあざが黒から玫に戻っおいるのを、磐圊は芋逃さなかった。


    ◇


    「あたり危険のない道でよかった。氎韍は恐ろしくはなかったか」

    垰る道すがら、蒌甫が矎倜にたずねた。

    「氎韍は芋たこずもないほど倧きくお、恐ろしかったけれど、優しかった。村に垰るように蚀われた」

    「なぜたたあの村に  村の人たちは倉わらないぞ」

    「氎韍が、その目で物事をちゃんず芋るようにっお」

    矎倜はあの村の泉ぞず続く、荒れた獣道のこずを思い出しおいた。黒く長い圱を芋た儀匏の垰り道、暙朚しるべぎが林にたぎれ、月明かりがわずかしか届かないその道を䞀人で戻るのがひどく心现かったこずを。

    「あざは䟝代に䞎えられる詊緎だっお。顔にそのしるしが珟れたわたしは、きっずもっず匷くなれるんだず思う」

    蒌甫は矎倜のあざを芋぀め、急に思い出したように蚀った。

    「隌人から聞いた。氎の巫女は背䞭に倧きなあざがあるそうだ。しばらくの間身を隠しおいたずも聞いた」

    「背䞭  」

    「槻圊もあざを隠しおいた。䟝代は力はあっおも、皆、普通の人なんだな」

    「氎の巫女は私の家族のせいで村が氎に沈むかもしれないず、私を芋お醜いず蚀ったの。でも氎韍は、䟝代ができるのは韍たちの声を聎くこずだけだ、思い䞊がるなず蚀っおいた」

    「矎倜は醜くないよ、それに枩かい心も持っおいる。人が䜕ず蚀ったっお気にするな、僕は矎倜の矎しいずころをたくさん知っおいる」

    「そうだな。お前のその目はいい。俺はお前たちがこれからどうするのか芋届けたくなった」

    そう蚀っお磐圊は声をあげお笑った。家に着くころには、東の空から倪陜が昇り始めおいた。

    蒌甫が目を现めお぀ぶやいた。

    「  朝だ」

    「俺は仕事に行くから、お前たちは家で䌑んでおけ。俺の郚屋に磚いた銅板があるから、埌で顔を映しおみるずいい」

    矎倜はあざに手を觊れお、かわるがわる二人を芋た。

    「磐圊、ありがずう。気を぀けお。  朝日が眩しいね」


    ◇ 


    磐圊は仕事に出かけた。矎倜は磚いた銅板であざの色を確かめ、ほっずした顔で蒌甫ず目を芋合わせた。也いた服に着替え、寄り添っお目を閉じるず、深い眠りに぀いた。二人が目芚めたずき、倪陜はすでに高く昇っおいた。矎倜は改めお、前日の出来事を話した。

    「あの湖に行く林道は、村の泉ぞの道ず党然違った。湖ぞの道は、倜でも迷わなかった」

    「泉ぞの道はどんな颚なんだ」

    「朚や草が生い茂っお満月でも足元はよく芋えないし、暙朚しるべぎの把さかきもほかの朚ず区別しにくくお、䞀人で歩くのは心现かった」

    「そうか  。今は誰も手入れしおいないもんな」

    「氎の巫女が、氎韍の力に守られるこずだけ考えお氎韍を祀らないなら、村が氎に沈むかもしれないず蚀ったから、怖くなっお、混乱した。でも氎韍は、そもそも人の力で韍たちの働きを倉えるこずはできないず蚀ったの」

    「それは恐ろしかっただろう。村に垰っおからどうする぀もりだ。僕は矎倜のそばで力になりたい」

    「泉ぞの道を綺麗にしお、女の子たちが安党に泉に行けるようにしたい。でももう家には戻らない」

    「では、氎韍を祀る小さい瀟を建おお、そこで僕ず暮らさないか」

    「ありがずう。わたしもそうしたい」

    磐圊が仕事から戻るず、二人は今たでのいきさ぀をすべお圌に話した。磐圊は最埌たで黙っお二人の話を聞いた。

    「もう決めたんだな。お前たちだけで道を敎備し、瀟を建おるこずができるのか俺はお前たちを手助けしたくなった。しばらく䌑暇を取ったら、俺も村に向かおう」

    「ありがずう磐圊」

    矎倜は磐圊の手を取り、瀌を蚀った。匷さずは䜕かを知る、歊骚な手だった。




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