
MOON TABLE|✳︎パンプスに隠した秘密の色✳︎
〈side MICHIRU〉
陽の光が柔らかく部屋に差し込む午後。
ソファに座って、お行儀悪くも右脚を座面に上げて膝を立てる私の足元には、朔斗くんが座り込んでいる。
私の足先に集中して、少し口がとんがってるのがかわいい。
「ぁー、またはみ出た」
「また?ほんとにぶきっちょさんだね」
「…」
「あ、拗ねた」
「べつに、すねてないし」
「無理にやらなくていいんだよ?」
「…やる」
週末にペディキュアを塗り直そうとしていたら、朔斗くんが「それ、俺が塗ってもいい?」と立候補してきて、今に至る。
【カシャ】
再び没頭し始めた彼のつむじを写真に収める。
もちろん、尖った唇も入る画角で。
「…」
集中しすぎてて、シャッター音にも気づかなかったみたい。
「ふぅー、片足で疲れた…」
「おつかれさまー。反対は自分で塗るね」
「…まかせます」
「ありがとう。ゆっくりしてていいよ」
「んーん、見とく」
相変わらず私の足元で、膝を抱えて大きな体を丸める朔斗くん。
先ほどと変わらない距離感でじっと足先を見つめられて恥ずかしい。
彼の視線を一身に浴びながら、彼が右足にかけた時間の4分の1ほどで塗り終えた。
「早くない?」
「慣れてるからね」
「…はみ出してない」
「慣れてるからね」
【カシャ】
両足を揃えて、シャッターを押す。
右足だけ、はみ出してるしムラがあるけど、すごく愛おしい。
今週ずっと、私にパワーをくれそうだ。
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〈side SAKUTO〉
背筋を伸ばしてパソコンと向き合い、仕事に没頭するみちるさんをこっそり盗み見る。
薄めのメイクに、後ろでひとつにきゅっと結ばれた髪。
ピシッと着こなしたジャケットから伸びた華奢な手に、綺麗に切り揃えられた清潔そうな爪。
でも、パンプスの中には。
俺が塗ったペディキュアで彩られた爪先が隠されているのだ。
「望月さーん。資料の確認お願いします!」
「はーい。共有に投げといてくれる?」
「了解っス」
榊さんとやりとりする姿を見ながら、彼は何も知らないのだと、彼女の色付いた爪先を知るのは俺だけなんだと胸が熱くなる。
それは独占欲なのか優越感なのか。
今度は何色にしようか。
…その前に両足塗れるようになるまで練習させてもらおう。