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ポンコツ人生、それでも自分を抱きしめる|第二章 第5話「色が消えた世界」

    第二章 優しさが痛みに変わるまで

    彼の眼に私はどんなふうに映っていたのだろう。
    あの笑顔は偽物だったのだろうか。

    雨に舞う桜も、海岸線にきらめく水仙も、彼と見た景色はどれも色鮮やかに輝いて見えた。
    どこへ行っても楽しかった。
    何を見ても綺麗だと思えた。
    それなのに今は、その思い出さえ本物だったのかわからなくなっていた。
    信じていたものが壊れると、楽しかった記憶まで嘘だったように思えてしまう。

    ただの恋愛感情ではなかった。
    人として尊敬し、一番信頼していた相手に裏切られたショックは、想像以上に大きかった。
    まるで色のない世界に、静かに飲み込まれていくようだった。

    自分は何のために生まれてきたんだろう。
    私は幸せになれないんじゃないか。
    幸せになってはいけない人間なんじゃないか。
    そんなことばかり考えるようになり、自分の人生を見失っていった。
    やがて、自分は愛される価値がないんじゃないかと思うようになった。
    もうどこにも、自分の居場所はないような気がしていた。

    眠れない日々が続いた。
    睡眠薬を飲んでも眠れない。
    アルコールを飲んでも眠れない。
    気がつけば、窓の外は明るくなっていた。

    食事も喉を通らない。
    ようやく一口口に運んでも、それ以上はどうしても食べられなかった。
    もう友達と会っても、以前のように笑えなくなっていた。

    通い慣れた道を歩いていても、いつもと同じ景色がどこか霞んで見えた。
    信号待ちで見上げた空も、道端に咲く花も、きれいだと思えなかった。
    まるで世界から、色だけが消えてしまったようだった。

    朦朧としながら働き、大好きだった仕事さえ嫌いになりそうだった。
    気がつけば、生きる意味そのものを見失っていた。

    早く楽になりたい。
    消えてしまいたい。
    そんなことを考える日が少しずつ増えていった。

    それでも、誰か一人でも私のことを心配してくれる人がいるかもしれない。
    そう思うことで何度も立ち止まり、踏みとどまろうとしていた。

    あの頃の私は、本気で生きることを諦めかけていた。
    生きている意味なんて、もうわからなかった。


    第二章 完


    信じていたものほど、簡単に壊れていく。
    それでも時間だけは、何事もなかったかのように流れていった。

     
     
    傷ついた記憶も、愛された記憶も、 全部抱きしめながら生きています。 うまく生きられない日々、 忘れられない恋、 ぽっかり空いた心の傷。 「ポンコツ人生」の中で見つけた、 小さな光や再生の気持ちを、 静かな言葉で綴っていきます。

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