
ムーさんと吸血鬼。
恵みの雨が終わった。
カラ梅雨だった去年と比べれば、
今年は大盤振る舞いだった。
……だが、どうやらもう打ち止めらしい。
朝から気温は30度に迫り、
湿った空気は熱気を帯びている。
立ち昇る陽炎。
ゆらめく景色の向こう側に、
すっかり忘れていた
忌まわしき記憶が蘇る。
太陽の専制。
今年も、
灼熱の暴君による独裁が始まったのだ。
皮膚炎持ちのムーさんにとっては、
控えめに言って地獄。
大袈裟に言っても地獄である。
どんなに暑かろうと、
汗が傷口に染みようと、
荒れた肌を守るため、
夏でも長袖、長ズボン。
顔に塗っているタクロリムスは、
太陽光との相性がすこぶる悪い。
常に日陰を縫うように歩く私は、
さながら、
現代を生きる吸血鬼である。
仮にヤツが、
スーパーエルニーニョとやらで
猛暑を超えた禁断の火力、
酷暑を手にしていたとしても。
黙ってステーキにされてなるものか。
どうにかして、
ヤツの喉元に喰らいついてやりたい。
食うか、食われるか。
焼くか、焼かれるか。
牛血鬼と太陽の戦いは、これからだ。
