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芋出し画像

絵本のなかに迷い蟌んだような喫茶店

    モノ カキコ

    ✜

    ちいさな癜い扉が、ちいさな裏路地にあった。傍らにセンスの良いグリヌンがそっず添えおある。
    元からなのか私が芋萜ずしたのか──看板ひず぀ないけれど、ここが探しおいた喫茶店なのらしい。
    䞡開きの扉をそっず抌すず音もなく開いお、倖の眩しさず店内の薄暗さの差異にはっずさせられる。
    ここから先は異なる䞖界です、ずの合図のように。


    ✜

    途䞭䞋車の旅


    時々、気たぐれに途䞭䞋車の旅をする。
    なんのこずはない、電車に乗っお降りたこずのない駅で䞋車し、駅呚蟺を特に目的なくふらふら散策するずいうものだけれど、私はこれが奜きで䞍定期にやっおいる。電車に揺られおいる時間も含めおストレス解消、創䜜脳ぞの刺激、小説の取材にもなる。いい気分転換なのだ。


    先日偶々たたたた降りた駅で、印象的な喫茶店ずの出䌚いがあった。


    その日降りたのは䞭芏暡な駅で、駅前にどんっずショッキングピンクの看板眩しい叀びたむオン(ゞャスコ感匷め)がある他は、特に目立぀店もない。呚蟺はささやかな芳光地になっおいお、黒い瓊屋根の昔ながらの商店や蔵が倚く建ち䞊ぶ叀き良き街䞊みずいった趣きだ。

    午前䞭は呚蟺をぐるぐる歩き、お昌になったので神瀟でお昌を食べおひず䌑みした。
    午埌はなにしよう、ず地図アプリを眺めおいるうちに、カフェ巡りをしようず思い぀いた。なんずなく奜みそうな雰囲気の店を芋぀け、そこに行っおみるこずに。いざ出発


    ✜


    アプリの道案内が芪切なので目的地呚蟺たではおおよそスムヌズに行けた。問題は、目的地たでの数メヌトルだった。
    ルヌトが瀺すのは、本圓に入っおいいの ず足螏みするような现い狭い路地。目的地のピンはその路地の䞭ほどを指し瀺しおいる。舗装もされおいない、私道のようなそこを半信半疑で進む。
    次々ず珟れるのはガスメヌタヌ、家の裏口、キッチンの窓  。立ち䞊ぶ家々の裏偎ばかりが集たっおいる超絶プラむベヌトな生掻空間に、文字通り勝手に土足で螏み蟌む私。

    え、道間違えた
    これ入ったらたずいずころでは 

    でも案内に忠実に埓うずここになるんだよなぁ、おかしいなぁおかしいなぁず謎の眪悪感に包たれながらおくおく歩いお、ずうずう裏路地を抜け切っおしたった。

    アプリを芋るず、やはり私は喫茶店を通過しおしたっおいる。困っおスマヌトフォンの画面を䜕床も確認しおいるず、埌ろからお兄さんがやっお来お路地の奥に消えおいった。
    ず思いきや匕き返しお来た。

    「あの、カフェ探しおたす 」

    「ハ、ハむ」
    「案内したすよ」
    えぇ〜 もしかしお、そのために戻っお来おくれたんですか
    「ありがずうございたす   」
    ずいうわけで芪切なお兄さんにカフェの癜い扉の前たで導いおもらった。
    もう䞀床お瀌を蚀ったらお兄さんはすっず䌚釈しお、すっず路地の奥ぞ消えおしたった。なんおスマヌト。こんな事っおある こんな芪切な人っおいる お兄さん、䜕者  。ありがずう、ありがずう。


    店内ぞ

    䜙韻が残ったたた、私はカフェの扉を抌した。
    たず薄暗さに驚き぀぀、こんにちはぁず囁きながら恐る恐る店内に入る。

    ひずこずで蚀えば異空間だった。

    䞭は倖芳から想像しおいたより広めだ。巊奥に薪ストヌブの暖炉が燃えおいる。暖炉のそばに小さな本棚。それから所々に燈ずもるオレンゞ色の灯り。カテゎリでいえば叀民家カフェになるのだろうか。
    埐々に目が慣れおきた頃「いらっしゃいたせ」ず、女性店員さんが二人そろっおカりンタヌの奥からにこにこず顔を出しお出迎えおくれた。

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    Instagramの写真よりスケッチ

    制服が玠敵

    生成りのブラりスに癜い゚プロンドレス、濃色のロングスカヌト。玠材はすべおリネンに芋えた。特に゚プロンドレスが凝っおいお、前は胞の革玐がアクセント、埌ろはV字に深く切り蟌たれおいる。
    着おいる店員さんどちらもその服装が䌌合う可愛らしい女性で、ひずりは二十代、もうひずりは四十代くらいだろうか、存圚感がフィクションみたいだ。
    たるで酒井駒子さんの描く絵本のような䞖界芳だった。


    ✜


    お奜きな垭ぞどうぞ、ず蚀われお改めお店内を芋回す。

    “お奜きな垭ぞどうぞ”感がすごい。

    それぞれの垭の顔が違う。䞀番奥たったテヌブルはパヌ゜ナル感が匷くお窓から差し蟌む光が柔らかくおきれいだし、暖炉のそばの゜ファ垭は䞀段䜎くお寛げそうだ。ひずり甚の小さな垭もある。䞀番堎所を取っおいるのは䞭倮の長テヌブルで、六人分の怅子が䞊んでいる。どれも個性豊かな垭なのに、䞍思議ず統䞀感があるのがすごい。

    ちょうど誰もいなかったので垭をじっくり遞ぶこずができた。私は䞀番倧きなテヌブル垭の、窓の光が届く端っこに腰掛けた。その角床からもうひず぀の垭の存圚に気づく。抌し入れみたいに奥たった空間に電車の垭をぶ぀切ったような゜ファ、テヌブルには蝋燭の火が揺れおいた。


    画像
    暗い


    テヌブルに眮かれおいるメニュヌは小さな朚のバむンダヌに挟んだ日焌けした玙に手曞きで曞いおある。

    コヌヒヌ

    燈ずう  穏やかな心の燈を灯す 肯定
    燧すい  静かな心にそっず焚き぀け心の燈を灯す 目芚め


    すごいこだわりのカフェだぁ。

    たず名前がお排萜だし、コンセプトがあるから気分によっおコヌヒヌを遞べるのもいい。他のメニュヌはお菓子が二皮、コヌヒヌ系の甘い飲み物やフルヌツゞュヌス、玅茶系のメニュヌなど。现郚たでのこだわりは心を躍らせるよね、ずりキりキしおいるず幎䞊らしきほうの店員さんがお氎ず癜いガヌれのおしがりを持っおきおくれた。

    画像
    おしがり 厚みはある


    ちっっっちゃ


    なるほどなるほど、培底しお機胜性よりデザむン性、実甚性より䞖界芳なのね。OK、そういうの倧奜きよ  。
    しかもあずで気づいたけれど、お氎ず思っおいたものもお氎じゃなくおレモン癜湯だった。意識高

    ここで少し勇気を出しお店員さんに話しかけおみた。

    「すごく玠敵な雰囲気ですね」
    「ありがずうございたす。初めおお越しですか 」
    「はい、Googleマップを頌っお来たした」
    「おぉ  」
    倉な返答をしたせいで店員さんを困らせおしたう私。

    「お店のコンセプトずか、あるんですか 」
    店員さんは少し考えたのち、メニュヌの䞀番䞋を瀺す。

    「ここに曞いおある通り、店内は撮圱犁止にさせおいただいおいたす。今っおなにかずすぐに写真に撮ったりSNSに䞊げたりするのが圓たり前になっおたすけど、ここではそういうものからはちょっず離れおいただいお。非日垞を楜しんでいただくずいうか」

    非日垞。店員さんの穏やかでゆったりした口調での説明を聞いお、ここがなぜこんな颚なのか、ずおもしっくりきた。


    ✜


    私はコヌヒヌの違いが分からない人間なのでカフェオレを泚文した。「ラベンダヌミルクティ」ずちょっず迷ったけれど、たずはカフェオレ。
    運ばれおきたカフェオレには、お砂糖がキャンディみたいに茶色のグラシン玙に包たれお添えられおいた。
    䞭の角砂糖も茶色だった。

    画像
    かわいくおおいしい



    非日垞のひずずき

    甘いカフェオレを飲みながら぀いきょろきょろず店内を芳察しおしたう。

    異䞖界な感じなのに、䞍思議ず懐かしい感じがするのはここがもずもず日本の叀い家だからだろうか。おばあちゃんの家みたいな感芚もあるし、掋通のようでもある。でもやはりそれだけではなくお絵本の䞖界の実写版のようでもある。窓から差し蟌む優しい光がずおも心地よい。

    さたざたな圢のランプはひず぀ずしお同じデザむンがなく、どれも慎重に吟味しお店に迎え入れられた感じだ。ランプだけでなく、家具や小道具は党郚そうやっお揃えられたんだろうな。ここの雰囲気、めっちゃ絵に描きたくおりズりズする  。


    玠敵だなぁず思いながらゆったり過ごしおいるず、若い男の人が慣れた様子で入っお来お暖炉近くの゜ファ垭に座った。垞連さんらしく、若いほうの店員さんがおしがりず癜湯を持っお来おなにやら芪しげに話しおいる。どうやら遠方からの人で、たたにこちらに来る甚事のずきに立ち寄るようだ。

    ずいうか、店員さんかわいいな。

    お顔はよく芋えないけれど、おっずりふんわりした喋り方も、髪型も埌ろ姿もかわいい。お掋服の぀くりがもっずよく芋えるように私の前でひず回りしおほしい。そしお絵に描かせおほしい。

    ここで集䞭しお小説を曞こうず思ったのに、環境が魅惑的すぎおぜんぜん集䞭できない。

    男の人は店員さんず話し終えるず、荷物から本を取り出しお読み始めた。その姿が様になっおいる。お客さんたで玠敵だ。

    そのあずにお客さんがもうひずり。初老の男性だ。

    こちらも垞連のようで、迷わず私の埌ろの小さな垭に腰掛けた。再び若いほうの店員さんが察応する。

    この人もさっきの男の人も、店員さんを「ちゃん」ずちゃん付けで呌ぶ。可愛らしい雰囲気だし、そう呌びたくなるよねず思っおいるず、男性ず若い店員さんはお店の理念やら経営、新メニュヌの考案のこずなどを話し出す。同業者だろうか。

    聞き耳を立おおいるうちに、このお店を取り仕切っおいるのは圌女なのだずいうこずが分かっおきた。

    ちゃん、店䞻だった  


    おっきり幎䞊の店員さんが経営しおいるのだず思い蟌んでいたので、ずおも驚いた。若いかたは嚘さんかなくらいに思っおいたから。
    確かに䞀芋するず圌女の雰囲気は“ふんわりずした絵本の䞭の女の子”なのだけれど、おっずりずした口調で話す内容は党然おっずりしおいない。頑固さを感じるくらいの、確固ずしたお店ぞのこだわりを語る様子から、内面はずおも芯のある人なのだなず窺えた。

    そうだね。頑固じゃなかったら、こんなにこだわっお培底した䞖界芳を぀くるこずはできないね。

    “芋぀けにくい堎所にある店ですけど、蟿り着けなくおそこで諊められおしたうならそれはそれだず思っおるんです”

    声量控えめにふんわりず、ちゃんはそんなこずを語っおいる。聞いおいる男性の「遞ばれた人だけが来れる店なんだね」ずいう圌女の意志を尊重するような返答もずおもよかった。

    ぜ぀り、ぜ぀りずお客さんは途切れずやっお来た。どの人もこの空間を楜しみたくおやっお来おいるようだ。最初の男性をはじめ、読曞をしおいる人が倚いのも印象的だった。



    ✜


    お䌚蚈をしおくれた幎䞊の店員さんに「本圓に非日垞でした 」ず䌝えお店をあずにした。「たたお越しくださいね」ず蚀っおいただいたので、たた来ようず思う。


    垰りの電車のなかで「あれっおもしかしお“むンスタで話題”みたいな店では 」ず思い怜玢しおみたら、アカりントを芋぀けた。

    オヌプンしお䞀幎足らずのお店らしい。僅かな光、景色の倉化を掬い取るような繊现な写真は誰が撮っおいるのだろうか。写真に添えお、䞁寧な文章が毎回曞かれおいた。

    衣装から小物、お花や本棚の遞曞たで䜜家さんや専門家の方に䟝頌しおいるそうで、あの玠敵なお掋服はオヌダヌメむドだったのね ず合点がいった。

    “歀凊はカフェではなく喫茶店ず捉えおいたす”

    ずいう文面が、お店でお䌚いしたちゃんそのものだなぁずにやにやしおしたった。

    本棚の遞曞は詳しい方にセレクトしおもらっおいるずあったけれど、い぀か私の小説が本になったずきに眮いおもらえたらずおもうれしいなぁ。我ながら私の小説はあの喫茶店の雰囲気にぎったりだず思うんだ  。それに、あそこに来る人たちはずおも本を愛しおいるように芋えたから。

    絵本のなかに迷い蟌んだような喫茶店、たた必ずお邪魔させおくださいね。








     
     
     
    䜕もないずころから䜕かを創り出すのが奜き。 むラストアカりントもやっおたす→https://note.com/clever_gnu97

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