
312 カメムシ
友人と旅行した時のこと。旅館の部屋には大きなベランダがありました。
夜になると、ベランダの先には見たことのない満天の星空。大興奮のまま部屋に戻ると、不穏な気配がありました。
カメムシ、たくさんおる…
窓には「カメムシが入るから、開放しないでください」という張り紙。
時すでに遅し。
張り紙には、「カメムシが入ったら、フロントに内線ください」とも。
内線すると、なんだか歯切れの悪い返事。
「今担当の者がいなくて…あ、でも大丈夫です」
しばらくして部屋に現れたのは、バケツとトングを持ったおじいちゃんでした。
彼は慣れた手つきで、ぽんぽんとバケツにカメムシを放り込んでいきます。
残すは、電灯に体当たりしてるアイツ。
おじいちゃん、椅子に乗って応戦。
わたしたちに妙な緊張感が走ります。
おじいちゃん、プルプルしてる…
今にも椅子から落ちるか、布団にバケツの水(カメムシ入り)をぶちまけそう…
「やりましょうか」とも言えず、見守ることしかできない…!
でも、無事にラスト一匹も御用となり、わたしたちはお礼を言ってお見送りしました。
平穏が訪れた部屋に戻ると、布団にメモ書きが落ちていました。
「312 カメムシ」
おじいちゃーん、忘れものですよー。
