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短線小説『クむヌンズ・ブレヌド』

    #創䜜倧賞2026 #オヌルカテゎリ郚門




    ブン ブン 

    狭い郚屋の䞭に、剣を振るう音が響き続ける。

    䞀人の嚘が、自宀で玠振りをしおいるのだ。

    手にしおいるのは真剣だった。

    その剣は『クむヌンズ・ブレヌド』ずいう名で知られおいた。

    『クむヌンズ・ブレヌド』はセレスティアの女王が退䜍する時に、次期女王候補の嚘たち䞀人䞀人に配る剣であった。

    剣は受け取る者が実際に王䜍を継承する暩利を保持しおいるこずの蚌でもあり、たた、嚘たちが文字通りの戊いの䞭で敵を殺すために甚いるための歊噚でもあった。

    女王候補の嚘たちは旧女王が退䜍した埌、この剣を䜿っおお互いに戊い合うこずにより、次期女王を決めるのだ。

    代々セレスティアの女王が代替わりするたびに行われおきたこの戊いは『遞王儀』ず呌ばれおおり、セレスティアの囜民党䜓にずっおも特別なむベントだった。

    女王候補者たちには、この儀匏的な戊いの期間が始たるより前の段階であれば、支持者を募っお囜倖退去するこずが蚱されおいた。

    それは䌝統が候補者たちに蚱す、戊いを回避するために遞ぶこずのできる唯䞀の逃げ道だった。

    ずは蚀えそれも、䞀床女王遞定の儀匏が始たっおしたうず䞍可胜になる。

    この段階に入っおしたうず、女王候補たちの運呜は女王に即䜍するか、死か、二぀に䞀぀に絞られる。


    「セレナさた、セレナさた」

    郚屋の壁越しに女の声が䌝わっおきた。

    「どうしたの、ばあや」

    「今すぐに、お䌝えしなければならないこずがございたす」

    セレナず呌ばれた嚘は、汗を拭いながら剣を鞘に収めた。

    そしお郚屋の壁、ばあやの声が聞こえおきたあたりの堎所ぞず近寄っおいった。

    その瞬間──

    郚屋の壁を突き砎っお、なにか尖った長い物が宀内ぞず突き入れられた。

    幞いその長い物の切っ先は、セレナの身䜓の䜍眮を僅かに捉え損ねおいたため、セレナは䞲刺しにならずに枈んだ。

    ショックを受けたセレナは悲鳎を䞊げながら転倒し、床の䞊を転がっお距離をずった。

    圌女の耳に遠くから、申し蚳ありたせん、申し蚳ありたせん、ず蚀う声が埮かに聞こえおきた。

    どうやらセレナのばあやは、今しがた行われたセレナぞの䞍意打ちに協力させられたらしかった。

    セレナは動揺した様子で起き䞊がり、郚屋の隅たで埌退しお、先皋玍刀したばかりの剣を抜いお戊いに備えた。

    収めたり出したり、忙しいなあ などず匷がりを蚀いながら──

    セレナが芋守る䞭、䜕者かが敗れた壁を蹎足で乱暎に突き厩しながら䟵入しお来た。

    その手に握られおいたのは──

    「クむヌンズ・ブレヌド」

    セレナが蚀うより先に、䟵入者がセレナが持぀剣を指さしながらそう蚀った。

    「うっかり隅っこに、立おかけおいおくれればよかったのに」

    䟵入者は残念そうにそう蚀った埌、電撃のような速さで身を沈め、恐ろしい勢いでセレナに向かっお斬り掛かっおいった。

    斬られた──

    セレナはそう思ったが、気が぀くず自分の剣で盞手の剣を受け止めおいた。

    助かった。

    身䜓が自然にそう動いおいた。

    日々の鍛錬の成果なのだろうか

    セレナは唞り声を䞊げ、無我倢䞭で盞手を抌し返し、そのたた剣を振り回しお嚁嚇した。

    そしお盞手が数歩埌退した瞬間、剣を回転させ、背埌の壁を突いお砎った。

    䜕ずかしお、倖ぞ逃げたかった。

    䟵入者はセレナがそうするのを芋お、慌おた様子で剣を構え、もう䞀床斬り掛かった。

    ──駄目だ、間に合わない。

    もう䞀床受け止めるしか、ない──


    女王候補のために蚭けられた出入り口のない小さな郚屋を切り裂いお、逞しい䜓栌の嚘が這い出しおきた。

    その右手には栄光のクむヌンズ・ブレヌド、巊手には第䞃王女セレナの銖が掎たれおいた。

    圌女は第䞉王女のシスル。

    少し幎霢の離れたセレナの姉だった。

    シスルの姿を芋お、呚囲を取り囲んでいた圌女の支持者たちが沞き立った。

    圌らが圌女を讃えお䞊げる歓声が呚囲に響き枡る。

    みな、シスルのカリスマ性に酔っおいた。

    シスルはたさしく、女王に盞応しい颚栌の持ち䞻だった。

    身䜓が倧きく、嚁厳があり、歊術に秀で、姿も矎しかった。

    それに、圌女には運もあった。

    シスルは第䞀王女ず第五王女が盞蚎ちになった機䌚をうたく捉えたのだ。

    圌女はその知らせを聞いた時、その時点での最倧の敵だった第四王女に玠早く奇襲を仕掛け、それに成功しおいた。

    人気のあった第二王女ず第六王女が、既に支持者を連れお囜倖退去しおいたこずも远い颚だった。

    なのでシスルは第四王女さえ排陀するこずができれば、あずはずっず幎䞋の効──セレナを含む数名の嚘を盞手にするだけでよかった。

    シスルがセレナの銖を掲げお雄叫びを䞊げるず、呚囲の民たちはみな歓声を䞊げ、シスルに向かっお平䌏した。

    その䞭には、昔セレナを可愛がっおいたばあやの姿もあった。

    みな、シスルのこずが倧奜きだった。

    シスルは前任の女王ずは違っおいた。

    前任の女王は老いお匱り、昔持っおいた魅力を倱っおしたっおいた。

    圌女は結局、䞍満を募らせた民衆を抑えきれなくなり、退䜍を䜙儀なくされた。

    民衆は、旧女王がクむヌンズ・ブレヌドを嚘たちに枡すのを芋届けた埌、圌女を小突き回しお蟱め、付き人も付けずに囜倖ぞず远攟しおしたった。

    きっず圌女はもう既に、どこかで野垂れ死んでいるこずだろう。

    シスルは嚁圧的な態床で民衆を芋回した。

    そしお残った末の王女を狩るためにその堎を去っおいった。

    新しく結成された芪衛隊がシスルに矀がっおきた。

    圌らはその逞しい身䜓にはねかかったセレナの血を恭しく拭った。

    シスルはそれを意に介さなかった。

    シスルは誰のこずも信頌する぀もりはなかった。

    ただ、自分が老いた時には、母のように匱り切っおしたう前に支持者を連れおさっさず囜を出ようず、それだけを念じ続けおいた。



    ある蟲地を走る車道を支える、コンクリヌトの土台の壁面にできた亀裂に巣食う、蜜蜂たちの王囜での䞀コマである。





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