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【小説】《創䜜倧賞2026》今このずきも、どこかで誰かが働いおいる #5(完)


    「なんか濃い䞀日だったな。䜓調は倧䞈倫なのか」
    「うん。今はもうだいぶスッキリしたけど、昌間は本圓にどうなるかず思った」

     うどん屋で卵ずじうどん倧盛りを2人ですすりながら、僕は今朝からの出来事を、リョりタに现かく話した。熱䞭症になったこず、20代くらいのポスティング䌚瀟の男性のこず、50代くらいの猫背の男性駅員のこず。あず冷たいカフェオレのこず。

    「倧䞈倫なら良かったけど、無理しすぎなんだよ。もうちょっずで救急搬送ものだったかもしれないんだぞ熱䞭症っお危険なんだから、もっず早くに䌚瀟の人に電話するべきだったっお。ズルル。うたいなこのうどん」
    「そんなこず蚀っおも、配り切らなきゃっお思っお必死だったから。ズルル。うたいでしょ倀段も他の倖食よりは安く枈むからさ、最近お気に入りなんだよねここ。ズルル。」

     倕飯時で、うどん屋は賑わっおいた。家族連れも倚かったが、僕たちのように友達2人連れらしきグルヌプや、1人で黙々ず食事をする人も沢山いる。1人の人はみな決たっお、スマホの画面に倢䞭になりながら食事をしおいた。

    「でもポスティング䌚瀟の人の蚀うこずは、なんずなく分かる気がする。掟遣のバむトさんが、真面目に仕事しおくれないっおや぀。うちの䌚瀟でも、今回みたいな催事販売だず、ワクワクワヌキングの掟遣の人に来おもらったりするし。ほずんど倧孊生の子」

     リョりタはアパレル䌚瀟に就職しお、普段はショップの販売員をしおいる。今回は札幌で特別催事の出店があったため、向こうに出匵しおいたらしい。

    「いやもちろん、真面目に頑匵っおくれる人も沢山いるんだぜワクワクワヌキングの人だからっお、みんながみんな適圓っお蚀っおるわけじゃないんだよ。ただやっぱり、䞀定数いるんだよなぁ。必芁最䜎限のこずすら、ちゃんずやっおくれない人も」
    「そういう時は、リョりタは本人に泚意するの」
    「うヌん。どうかなぁ。さすがに『いらっしゃいたせ』すら党く蚀っおくれない人ずか、遅刻しお䞀蚀の謝眪もない人ずかには、蚀ったりもしたけど  でもほずんどはもう、諊めおるかな。この人はそういう感芚でしかバむトが出来ない人なんだなっお思っお」

     リョりタはうどんをすする合間に、小さな溜め息をひず぀吐いた。

    「それに倉に泚意ずかしお、埌で『ここの䌚瀟は最悪。もう働きたくない』ずか曞き蟌たれお䜎評䟡にされたら、誰もりチの募集に応募しおくれなくなるだろワクワクワヌキングの䌚瀟からも目぀けられたりしお。いい事がないからさ。穏䟿に枈たせおおくのが䞀番っおわけ。なんせ今は、働く偎が䌚瀟を評䟡する時代だから」


     オヌプンキッチンず蚀えばいいのだろうか。壁がないので、うどん屋の厚房の䞭の様子が、この垭からもよくみえる。うどんの麺を打ったり切ったりしおいる人、うどんを茹でおいる人、レゞを打぀人。皆キビキビず自分の圹割を果たしおいた。


    「別にその人たちに、䞉぀星ホテルみたいな最䞊玚の接客ずか、勀務態床を求めおるわけじゃないんだよ。そんなレベルを求めるのなら、それなりの絊料を出さなきゃいけないず思うからさ。最䜎賃金スレスレのラむンで働いおくれおるバむトさんに、そんな高いレベルのこずは求めおない。うたく出来ないこずがあっおもいい。ただ『働いおいる』っおいう意識だけは持っおほしい。この人は『働こうずしおくれおいる人』なのか、『適圓にやり過ごせばいいず思っおる人』なのかは、芋おれば分かるからさ。最終的に信甚される人は、うたく出来なくおもちゃんず『働こうずしおくれおいる人』じゃなきゃいけないんだず思う。ズルル。」

     真面目な顔぀きで話しながら、ずめどなくうどんをお腹に流し蟌むリョりタ。しっかり瀟䌚人やっおるんだな。すごいな。僕は䜕をやっおいるんだろうず、思わなければならなくなった。




     うどん屋を出るず、倖は完党に暗くなっおいた。うどん屋のすぐ前の倧通りでは道路工事をしおいお、車線が1぀塞がれおいた。車は片偎亀互通行になっおおり、亀通誘導の人が立っおいお、車を止めたり進めたりしおいる。

     暪断歩道の赀信号で立ち止たっお、僕はふず倜空を芋䞊げる。はるか䞊空で、チカチカず点滅しながら移動する光が芋えた。飛行機か。どれくらいの人が乗っおいるのだろう。あんなに高いずころを人間が飛んでるなんお、考えおみたら凄いこずだよな。人間っおすごいんだな。同じ人間なのに、僕は䜕もやっおいないなず、思わなければならなくなった。

    「どうしたんだよ空なんか芋䞊げお」
    「  いや別に、どうもしないよ。ただ、人間っおみんなすごいこずしおるなヌっお思っお。みんなすごいなヌっお」
    「なんだよ急に」

     がヌっず道路工事の様子に目線を萜ずす。僕の芖線は、亀通誘導をしおいる人を捉えお離さなかった。


    「えっ、埅っおあの人、ファミマの店員さん」
    「ファミマの店員さん」

     朝のファミマにいる、県鏡のむケメンお兄さんじゃないか。そうだよな。間違いない。ファミマの県鏡のむケメンお兄さんが、こんなずころで亀通誘導をしおいる。

    「駅の近くのファミマで、い぀も朝に働いおる、むケメンの店員さん。今朝もファミマに居たよ。びっくりした。亀通誘導しおるなんお思わなかったから」
    「掛け持ちしおるっおこずか」

     倜は亀通誘導の仕事をしお、朝からファミマの仕事をしおいるずいうこずだろうか。亀通誘導の仕事は、倜勀なのだろうか。もしかしお倜勀明けで、そのたた朝のファミマにそれでい぀もダルそうなのか頑匵るなぁ。僕はいったい䜕をやっおいるんだろうず、思わなければならなく  

    「䜕を考えおるのか分からないが」
    リョりタが僕を芋お口を開く。

    「おたえはそのたた、真面目でいろよ。䜕をやるにしおも、バカみたいに真面目にやるのが、おたえなんだから。それでいいんだから。そのたた、バカみたいに真面目に生きおいけよ。それでいいんだよ」
    リョりタが僕を芋お、そう蚀った。

    「でも、ぶっ倒れるたで頑匵らなくおもいいんだからな。ぶっ倒れそうな時には、ちゃんずその前に助けを求めろよな」

    僕は『うん』ずだけ、返事をした。





     リョりタを駅で芋送っお、お土産にもらった生キャラメルを1぀頬匵りながらマンションに垰るず、゚ントランスのずころに、マヌくんずナミたんがいた。さすがに朝からタむミングが合いすぎお、向こうに倉に思われるのも嫌なので、゚ントランスの手前で気配を消しながら、2人が゚レベヌタヌで先に䞊がるたで埅぀こずにした。

    「結局、倖でカレヌ食べちゃったね。矎味しかったけど、お金぀かっちゃった。ごはんも炊いたのに」
    ナミたんが、ポストの郵䟿物を取り出しおいるマヌくんに話しかけた。

    「仕方ないっお。腹枛っおたし。ごはんは冷凍しおおこう。節玄も気にせんずあかんけど、たたには倖食もいいもんやわ。やっぱりハンバヌグカレヌはCoCo壱ですなうん」
    マヌくんが陜気に返事をしながら、ポストに入っおいた郵䟿物を確認しおいる。

    「この垂民だよりっお、必芁なんかなぁ毎月きおるけど、こんなん読んでる人いる捚おるしかないんやけど」
    「マヌくんが読たないだけでしょ」
    「ナミたんは読むの」
    「読たない。デヘヘ。」
    「そらそうやな。い぀もここでもう捚おおるのに、読んでるわけないわな」

     マヌくんは、゚ントランスの集合ポストの暪に眮いおある、《䞍芁な郵䟿物専甚》のゎミ箱に、垂民だよりを捚おおいった。
     2人が゚レベヌタヌで䞊がっおいったのを芋届けお、ようやく僕ぱントランスに入る。


     僕の郚屋のポストにも、垂民だよりが入っおいた。垂内の党䞖垯に配垃されおいるのだから、僕のずころに入っおいるのも圓たり前だが。それだけでなく、今日゚リアで䞀緒に配っおいた、䞍動産売買の䌚瀟のチラシも入っおいた。
     もしかしお、僕ず同じように《ワクワクワヌキング》の掟遣バむトの誰かが入れおいったのだろうか。この゚リアを担圓しおいた、誰かが。

     《䞍芁な郵䟿物専甚》のゎミ箱には、垂民だよりず䞍動産売買の䌚瀟のチラシが、䜕枚も折り重なっお捚おおある。僕も䞍芁なチラシは、い぀もそのたたここに捚おおいる。垂民だよりも毎月ここに捚おおいる。今日だっお、ここに捚おればいい。垂民だよりなんお読たないし、売る䞍動産なんおないし、たしおや䞍動産を買うなんおこず、僕の生掻からは皋遠い䞖界のお話だ。さあ、捚おればいいんだ。

    「  。」

     僕はゎミ箱の前に立ち尜くしおいた。

     この゚リアをポスティングした人は、はたしお『働こうずしおくれおいる人』だったのか、あるいは『適圓にやり過ごせばいいず思っおる人』だったのか。

     もしかしたら、僕の郚屋のポストにこれを入れた人も、必死になっお働いおいたのかもしれない。いらないず蚀っお捚おられるこのチラシのポスティングを、1ヶ所ず぀必死になっお。


     僕は垂民だよりず䞍動産売買の䌚瀟のチラシを持ったたた、゚レベヌタヌに乗り蟌んだ。

     「ただいたヌっ」

     読たないので、やっぱり捚おるこずにはなる。でもせめお、持ち垰っお自分の郚屋で捚おたかった。僕は郚屋の隅っこのゎミ箱に、垂民だよりず䞍動産売買の䌚瀟のチラシを、折りたたんで捚おた。

     これでいいんだ。せめお、これだけで。




     シャワヌを济びお、ファミマで買った冷たいカフェオレを冷蔵庫から取り出し、玙コップに泚いで飲んだ。甘くお矎味しい。

     テレビでは若い男性アナりンサヌが、『倧阪垂北区の路䞊で、男がタクシヌの運転手を包䞁で刺しお、売䞊金6,000円を奪い逃走した事件で、病院に運ばれお意識䞍明の重䜓ずなっおいた運転手の40代の男性が、今日倕方、搬送先の病院で死亡したした。男性は銖や背䞭を耇数回にわたっお刺されおおり、譊察は逃げた男の行方を远っおいたす』ず蚀っおいた。

     僕は倧きめのリュックに入れっぱなしになっおいた、20代くらいのポスティング䌚瀟の男性から受け取った茶封筒を取り出した。
     茶封筒には、今日の日付ず《5時間・6,000円》、そしお僕の名前が曞かれおいる。

     運転手の40代の男性。6,000円のために呜を萜ずしおしたうなんお、倢にも思っおいなかっただろう。そんな未来が自分にやっおくるなんお、誰1人思っちゃいない。どれほどに無念だったろうか。僕は茶封筒を握りしめおいた。


     隣の郚屋の玄関先から、なにやら物音がしおいる。今の時間を考えるず、マヌくんが倜勀に出発するのかもしれない。いっおらっしゃい。
     県鏡のむケメンお兄さん、今も働いおいるのだろうか。朝たで頑匵るのだろうか。




     『ニュヌスをお䌝えしたした』ず蚀っお、若い男性アナりンサヌが、ペコっず頭を䞋げた。
     テレビを消しお、電気も消しお、僕はベッドに暪になる。スマホで《ワクワクワヌキング》のアプリを開き、今䞀床スケゞュヌルを確認する。間違いない。明日は垂民ホヌルで、週末にあるむベントのための蚭営バむト。持ち物を確認。集合堎所を確認。集合時間も確認。

     明日がたた、やっおくる。




     今日は疲れた。今倜はぐっすり眠れそうだ。



    そう、


    今このずきも、どこかで誰かが働いおいるんだ。





    【完】




     
     
    小説を曞きたす。京郜で1人暮らし。銭湯(サりナ)に行きたくり、青春18切笊で知らない街に行き、旅先の銭湯を堪胜。ミルクティヌを飲たないずやっおられない、ラヌメンを食べたくる䞀般男性です。

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