
結婚一年で気づいた、選択肢のある人生の終わり
「ヨーロッパ旅行か......」
自分は嫉妬心の薄い人間だと思っていた。
だけど最近、同級生のインスタを見ると、少し呼吸が苦しくなる。
結婚して一年。仕舞い込んでいたifが、心の中で波立つようになった。
もし、進路選択で地元の医学部を選んでいたら?
もし、東京の大学を選んでいたら?
もし、4回生で違うラボを選んでいたら?
もし、あのとき心身を壊さなかったら?
もし、大企業に入社していたら?
もし、都会のパワーカップルになっていたら?
もし――
今とは違う階層になれたかもしれない。
いや、あともう少しだけ手を伸ばせば、すぐ届く距離にあった。
そんなときふと、高校時代の会話を思い出す。
「私、博士になりたいんだ」
「あー、めっちゃ想像できるわ」
「でも漁師のお嫁さんにもなりたいんだよね。あと、高等遊民にもなりたい」
「なにそれ笑」
(......叶ってしまったな)
私の夢はずっと、知識欲を満たし、家庭的に、のんびり暮らすことだったのかもしれない。
定時で帰宅して、だらだらと寝転がり、ネットで面白いものを探す。そして夕食を作り、夫の帰りを待つ――
そんな今の生活は、かつて描いた姿と図らずも一致しているではないか。
収束――
枝分かれしていた未来が、20代後半にして、一本に収束した。
これから先、きっと昔ほどの選択肢はないだろう。
でも、それで良い。
残り3分の2ほどの人生を、穏やかに歩んでいきたい。