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Photo byfz5050

AIは実質オールドメディアだ――情報の多様性はこうして死ぬ

    現代のネットでは、あらゆる声が渦巻いている。
    公的機関の発信、主婦の愚痴、自称専門家のステマ、オタクの妄信、陰謀論、極右と極左のレスバ。
    もはや魑魅魍魎だ。
    でもその魑魅魍魎こそが、ネットの面白さだった。


    そんなある日、同僚が言った。
    「AIのレシピでステーキ焼いたら、人生で一番うまく焼けたんだよ」

    ほう、興味深いなと思った。

    本来、ステーキには無数の流派がある。

    強火で一気に焼き上げるか、弱火でじっくり火を通すか。
    塩をあらかじめ振っておくか、焼く直前に振るか。
    フライパンに置いたら触らないか、何度も返すか。
    油は牛脂か、オリーブオイルか、バターか。
    ホイルに包んで休ませるか、休ませないか。

    ステーキは、多様性の象徴だ。


    だが、流派をひとつひとつ調べるのは面倒だ。
    そこでAIの出番である。
    『ステーキの焼き方を教えて』
    そう問いかけるだけで、数秒でレシピが出力される。
    AIは、多くのレシピに共通する部分を抜き出し、どの流派にも怒られない無難な答えを返してくれる。均質化されたレシピはベストではないが、ベターではある。
    なので結果的に、『そこそこ美味いステーキ』が出来上がる。

    そしてステーキガチ勢以外は、その『そこそこ美味いステーキ』で大満足だ。
    何も問題ないように見える。
    だが、皆がAIに聞くようになった暁には、世界中のステーキが全部、『そこそこ美味いステーキ』になってしまわないか?


    ここまで読んで、AI批判だと思った人は、どうか落ち着いて聞いてほしい。
    これは、ただの回帰だ。

    皆が同じ情報源を信じる――
    まるで、オールドメディアの頃のようじゃないか。
    新聞やテレビが主要メディアだった時代、人々はあまり疑問も持たず、限られた情報を受け入れていた。
    それでも世界は、案外問題なく回っていた。

    むしろ、今が特殊なだけなのかもしれない。


    AI時代では、尖りは均される。
    情報環境は発展するどころか、昔の姿へと逆行する。
    多様性は永遠じゃないのかもしれない。
    AIの席巻に伴い、静かに死んでいくのかもしれない。

    シンギュラリティ前夜。時代の流れは止められない。
    だから、夜明けまで踊ろう。
    このカオスの海を、忘れられない思い出にしよう。

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