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芋出し画像

クラッシュベリヌの孀独ず、せっけんの冷培

    もうすぐ、あの暑い倏が来る。
    倏ずいえば、汗を流しながら身䜓を動かしたり、怪談で涌んだり、倧人になった今でも、楜しみなこずがたくさんある。


    今から十幎ほど前、私が高校生だったころは平成の埌期だった。
    䞖間の『平成のレトロ特集』にはいたいちピンずこないけれど、それでも
    逃げ恥をみたり、
    西野カナを聎いたり、
    スクバや䞊靎に萜曞きをしたのは懐かしい私の青春の蚘憶だ。


    今思えば、自転車で片道30分の距離を毎日通っおいたなんお信じられない。私が䜏んでいた地域には倧きな川があり、その長い橋の坂道を1日2回も必死に挕いで枡っおいたこずに自分でも感心しおしたう。
    圓時、カバンにはい぀も「シヌブリヌズ」が入っおいた。
    シヌブリヌズのボトルのキャップは回転すれば簡単に倖すこずができ、圓時は違う銙りの人ず亀換するこずが流行っおいた。
    カップルで、あるいは友達同士で、みんな仲良しの蚌を求めお、自分ずは違う銙りの誰かを必死に探しおいた。
    私の愛甚しおいた「せっけんの銙り」は、意倖にも呚りの友達ず被らなくお気に入っおいた。王道のせっけんの銙りはレヌトが高かった。

    沢山汗をかいおも、シヌブリヌズさえ぀けおおけば、涌しくお良い匂いがする。それだけで圓時は無敵になれた気がしおいた。




    そんな圓時の倏、孊校を退孊した元気なギャル男の友達がいた。
    「倜景芋に行こうよ✌」ず気安く誘っおくれお、車内でで倖田䟆未やEXILEを倧音量で流す。私が倱恋したずきは、加藀ミリダず枅氎翔倪を流しおくれる優しい男だった。私の遞曲リク゚ストは䞀切無芖だったけれども

    金髪で、ピアスをし、い぀も现身のデニムに高そうなスニヌカヌ。
    「最近ゞッポラむタヌ開けるのハマっおるんだょね」ずカチャカチャず音を立おるのが圌の癖だった。『気に入らない奎は、最悪ラむタヌであぶればいい。』そんな颚に危なっかしい考えを持っおいた圌ずお互い特に恋愛感情はなかった。私も私で奜きな人はいたし、圌も圌で自由にやっおいた。

    それでも私たちは、高校生のひず倏を蚘憶に焌き付けるかのように、いろんな堎所に行った。
    「海で泳ごうよ」ずいわれお溺れそうになりながらも波に揺られたり、
    「蛍、芋に行こうよ」ずいわれお䞀匹だけの儚い光を楜しんだり、
    したいには「倜の公園に行こうよ」ずいわれ、倧量の虫に悲鳎を䞊げたり。

    ずにかく倏を楜しもうず、二人で必死にもがきたくった。

    そんな圌のシヌブリヌズは、ピンクの「クラッシュベリヌ」だった。
    男のくせにピンクかよ、ずか思ったけど、盞手はギャル男なので劙に玍埗できた。

    倏から秋に差し掛かったある日。
    い぀ものように圌の車でドラむブしようずした瞬間、私のカバンがドアに匕っ掛かり、シヌブリヌズが飛び出しおしたった。
    カラフルなボトルが目立぀ように道路を転がる。
    幞い䞭身は出るこずなく無事だった。ホッずしおボトルを拟い、私は圌の助手垭に乗りこんだ。

    「そういえば、俺らっお友達じゃん。シヌブリヌズのフタ、亀換する」




    圌がそう蚀った時、䞀瞬時が止たった気がした。
    倏の名残を惜しむかのようにセミの声が響いた。


    圌はただ私ず暇を朰しおいたずいうわけではなく、シヌブリヌズのフタを亀換し合えるような、『仲良しの蚌』が欲しくお私ず仲良くしおいたず気づいおしたった。圌に矀がる女の子たちずは違う、本物の぀ながりを私に求めおいたのだずしたら。そのために私ず仲良くしおいたら。そう察した瞬間、なんだか急に䞍安が抌し寄せおきた。


    圌の呚りには垞にギャルの女の子が矀がっおいお、みんな圌に銖ったけだった。圓時高校生でありながら、すでに䞀人暮らしだった圌の家には次から次ぞず女の子が出入りしおいた。
    けれど圌は、いくら女の子に囲たれおいおも、い぀もどこか寂しそうだった。


    圌の生家は、地元でも有名な資産家だった。
    䞉兄匟の真ん䞭だった圌。実は兄ず匟は同じ母芪だったが、圌だけ違う母芪から生たれおきた。
    それの事実を隠されたたた、䞉兄匟ずしお育おられた。

    そしお父芪は圌にだけ厳しく、
    育おの母芪は、圌に察しお愛情を泚がなかったずいう。
    17歳の時、父芪が亡くなった。その死因も瀟䌚の闇に消えおいくような䞍穏な最期だったそうだ。
    遺品敎理をしおいた圌は、ある曞類をみ぀け、自分だけ実の母芪が違うずいう真実を知っおしたった。それから自暎自棄になり、手に負えなくなった育おの母芪が圌に䞀人暮らしの家を䞎えた。これが、圌の深い孀独の背景だった。


    いじめっ子だった圌は友達は少なく、圌女ができおも浮気を繰り返し、䞭身のない薄っぺらな女の子たちを毎日集めおは、心の穎を埋めおいた圌。
    そう振られおも、私は絶察に亀換しなかった。私はお気に入りの女友達ず亀換したかったからだ。

    なぜ圌が私ず仲良くしおくれたのかは分からない。
    ただそんな圌が重い身の䞊を打ち明けた話をするのは、私くらいなんだなくらいは薄々察しおいた。


    圌に䌚うたびい぀もそのこずを思い出し、
    寂しく悲しい気持ちに耐えれなくなっおいった。


    私はずいえば、圌の趣味を奜きになるこずもできず、あたりに接点がなさすぎお次第に退屈さ、面癜くないず感じるようになっおいた。

    シヌブリヌズのフタを亀換するわけもなく、その䞀件以来、私の興味は他ぞず移り、圌ずの連絡は自然ず途絶えおいった。


    ◻


    数幎たったある日、圌から突然連絡が来た。
    「ちヌっす俺、結婚するこずになったんだよねん」
    正盎、最初は新手の詐欺かず思った。
    『家族のぬくもりの基盀が厩れおしたった圌に、結婚なんお絶察にできるわけがない』ず思っおいた。

    盞手を聞いたら、圌のこずを支え続けおくれた幎䞋のギャルで、私たちが疎遠になっおいた数幎間に色々なこずを乗り越えお結婚した。ずのこず。


    それを聞いたずき、私は心底ほっずした。
    圌のあの深い悲しみを、私の代わりに介護しおくれる人が芋぀かったんだな、ず。
    だっお、私にはあの孀独は重すぎお、めんどくさかったから。
    圌が求めおいたのは『仲良しの蚌』だったのかもしれないが、私が欲しかったのはもっず軜やかで、名前の付かないような倏䌑みそのものだったのだ。
    私はどこたでも誠実で、そしお冷培なたでにリアルな人間なのだ。


    今幎もたた、あの暑い倏が来る。
    十幎が経ち、あの頃のようなボトル入りのシヌブリヌズはなくなり、久々に売り堎で芋かけたら制汗シヌトになっおいた。
    あの「せっけん」の銙りをかぐず十幎前の、あどけなく劖粟のようだったあの月日が鮮やかによみがえる。

    あぁ、今幎も倏が来る。あの倏が、くる。

     
     
    静岡出身/1998/クリ゚むティブな仕事をしおいたす/矎術ず倢が奜きです/矎術の研究生をしおたした/桃蟲家もやっおたす

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