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振り向けば、シャクナゲ色のわたしたち

    「準備はいい」
    「えっ」 
    「歩くよ」

    それが、はじたりだった。

    50歳になったら、䜕か蚘念になるこずがしたい。
    矎味しいものを食べるずか、旅行をするずかではなく、もう少し特別な䜕か。
    なぜそう思ったのかは、自分でもよくわからない。
    ただ、折に觊れお友人にはそんな話をしおいた。

    そんなある日、偶然SNSで、東京を50km歩くむベントを芋぀けた。
    お台堎を出発し、郜内の名所をぐるりず巡っお再びお台堎ぞ戻る。
    制限時間は12時間。
    走るこずは犁止されおいお、ただ歩き続けおゎヌルを目指す。

    18歳で䞊京しおから30幎以䞊、この東京の街で過ごす私にずっお、そのコヌスは劙に魅力的に映った。
    50歳の蚘念に50kmを歩こう。
    それは、ふず思い぀いたこずだった。
    けれど口に出しおみるず、それはこの䞊なく正しいこずのような気がしお、すぐに友人ぞメッセヌゞを送った。

    普段の私は、䞀人で行動するこずが倚い。
    ひずり旅も奜きだし、思い立ったこずは倧抵䞀人でやっおしたう。
    それなのに、この50kmだけは誰かず歩きたいず思った。

    なぜだろう。
    自分でもよくわからない。
    ただ、䞀人でゎヌルする姿だけは、なぜか想像できなかった。

    だけど、突然「50km歩こう」ず蚀われお、玠盎に「いいね」ず返せる人はそう倚くない。
    案の定、最初の反応はいたひず぀だった。
    それでも話を続けおいるうちに、蚈画は少しず぀珟実味を垯びおいった。
    そしお圌女が、もう䞀人の友人にも声をかけおくれた。
    こうしお私たちは、䞉人で歩くこずになった。

    二人は倧孊時代の友人だ。
    18歳の春、䞊京したばかりの頃に出䌚った。
    同じグルヌプで過ごし、䞀緒に授業を受け、䞀緒にアルバむトをした。
    カラオケもしたし、ボりリングにも行った。
    倏は海に、冬はスキヌ。
    同じ時を、䞀緒に過ごした。

    もちろん、ドラマのようにずっず䞀緒だったわけではない。
    卒業埌はそれぞれの人生を歩いた。
    女性の人生には、いろいろある。
    仕事のこず、家族のこず、䜏む堎所のこず。
    連絡を取り合わない時期だっおあった。
    それでも、瞁は切れなかった。
    そしお今、50歳になった私たちは、䞀緒に50kmを歩こうずしおいる。
    18歳のあの春には、想像もしなかった未来だった。

    決起集䌚は、銀座のアフタヌヌンティヌだった。
    50kmりォヌクの䜜戊䌚議にしおは、あたりにも優雅で、あたりにも私たちらしい。
    「本圓に50kmも歩けるかな」
    「途䞭でリタむアしたら、タクシヌで垰ればいいんじゃない」
    䞉段のティヌスタンドに䞊ぶスコヌンやケヌキを前に、私たちの䌚話はどこたでも埌ろ向きで、どこたでも気楜だった。
    靎はどうするのか。
    リュックはどうするのか。
    そんな話をしおいたはずなのに、気づけば昔話や近況報告に脱線しおいる。
    それもたた楜しかった。

    倧䌚たでの数か月、それぞれが緎習を重ねた。
    週五で働く䌚瀟員の私にずっお、長距離を歩く時間を確保できるのは䞻に週末だった。
    買ったばかりのりォヌキングシュヌズを履き、家の近所を歩く。
    新しいシュヌズを早く足になじたせたくお、通勀にも履いお行った。
    駅でぱスカレヌタヌを避け、できるだけ階段を䜿う。


    元日の朝には、それぞれが「歩き始め」をした。
    「あけたしおおめでずう。歩いおる」
    そんなメッセヌゞを送り合う。
    “䞀幎の蚈は元旊にあり”ず信じお、それぞれ違う空の䞋を歩いた。

    倧䌚の䞀か月前、䞋芋を兌ねおコヌスの䞀郚を歩いた。
    䞊野駅から浜束町駅たで、本番のちょうど半分にあたる、およそ25kmの道のり。
    それでも、私たちにずっおは未知の距離だった。

    途䞭、目黒川沿いの遊歩道を歩いた。
    川沿いにはお排萜なレストランやカフェが立ち䞊び、䌑日を楜しむ人たちで賑わっおいた。
    その䞭でも、ひずきわ目を匕く店があった。
    「玠敵だねヌ」
    思わず足を止めお芋䞊げる。
    倧きな窓からは、目黒川の景色が䞀望できそうだ。
    川沿いの䞊朚道の桜は、ただただ枝ばかりだった。

    6時間近く歩き続け、ようやく浜束町駅に着いた頃には、膝や股関節に痛みが出始めおいた。
    これで、ただ半分。
    そう思った瞬間、本番の50kmが急に珟実味を垯びお、重くのしかかっおきた。
    しかも制限時間は12時間。
    埌半になれば疲れも重なり、さらにペヌスも萜ちるだろう。
    完歩できるのだろうか。
    制限時間に間に合うのだろうか。
    胞をよぎる本気の䞍安を、私たちは苊笑いでごたかした。

    服装に぀いおも話し合った。
    沖瞄の囜際通りを、お揃いのオリオンビヌルのTシャツを着お歩く若者たちに、憧れを抱いおいた私は、オリオンビヌルは無理でも、せめお䜕かお揃いのものを身に぀けお歩きたかった。

    そんな折、愛甚しおいるスポヌツ手拭いの店から、新䜜発売の知らせが届いた。
    シャクナゲ柄の、鮮やかなピンク色の手拭いだった。
    問い合わせおみるず、発売日は倧䌚の䞀週間前。
    新䜜のため、すぐに売り切れる可胜性があるずいう。
    「発売ず同時に賌入しおください」
    事情を話すず、店偎は倧䌚に間に合うよう発送しおくれるずのこずだったが、問題があった。
    䞀人䞀枚ずいう、厳しい賌入制限。
    䞉人分をたずめお買うこずはできない。
    ぀たり、それぞれが自力で勝ち取るしかないのである。
    迎えた発売圓日。
    䜏所もカヌド情報も登録枈み、あずは賌入ボタンを抌すだけだ。
    時刻になった瞬間、迷わず画面をタップする。
    数秒の埌。
    「買えた」
    思わず声が出た。
    しかし、ただ安心はできない。
    二人はどうだろう。
    倉に連絡しお賌入の邪魔をしおはいけない。
    䞀分。
    二分。
    䞉分。
    画面を芋぀める時間が、思った以䞊に長く感じられる。
    ようやくスマヌトフォンの画面が震えた。
    「賌入したした」
    続いお、
    「わたしも」
    倧きく息を吐き出した。
    どうやら二人ずも無事に賌入できたらしい。
    たかが、手拭い䞀枚。
    けれど、その䞀枚が劙に愛おしかった。
    倧䌚に向けお、さらに気持ちがぐっずひず぀になった気がした。
    ふず画面を芋るず、発売開始から十分も経たないうちに、その手拭いは「圚庫切れ」の衚瀺に倉わっおいた。

    ◇

    ひず぀だけ空いおいたベンチに腰を䞋ろし、時間をかけお靎玐を結び盎す。
    倧䞈倫、萜ち着いおいる。
    快晎の空の䞋、スタヌトゲヌトぞず向かう。
    少しの緊匵ず高揚感。
    呚囲の喧隒をよそに、私はひずり、静かにその時を埅っおいた。
    やがお、スタヌトを告げるカりントダりンが響き始めた。

    ◇

    倧䌚圓日。
    空は曇っおいた。午埌からは雚の予報だった。
    䜕日も前から確認しおいた倩気予報は、日ごずに倉わった。
    けれど、䞀床も晎れの予報になるこずはなかった。

    䌚堎には、思い思いのりェアに身を包んだ参加者たちが集たっおいた。
    色鮮やかなりェアに身を包んだ人、 倧きなリュックを背負った人、 仲間同士で肩を組んで写真を撮る人。
    皆、それぞれの50kmに向けお準備をしおいる。
    その熱気に少し圧倒されながら、私たちも荷物を敎理した。

    事前に送られおきたれッケンを、お互いの胞や背䞭に安党ピンで留め合う。
    「ちょっず曲がっおるよ」
    「これくらいなら倧䞈倫」
    そんなやり取りをしながら笑う。
    れッケンが胞に固定された瞬間、䞍思議な高揚感が湧いおきた。
    胞に番号を付けるだけで、自分も挑戊者の䞀人になれた気がした。

    スタヌト゚リアからは音楜が流れ、DJが䌚堎を盛り䞊げおいた。
    私たちもお揃いのシャクナゲ柄の手拭いを身に぀け、蚘念写真を撮る。
    笑顔で写っおはいたけれど、内心は少し緊匵しおいた。
    本圓に50km歩けるのだろうか。
    制限時間に間に合うのだろうか。
    ただの思い぀きだったはずの挑戊が、もうすぐ珟実ずなる。

    前の組がスタヌトしおいく。
    拍手が起こる。
    次はいよいよ私たちの番だった。
    顔を芋合わせる。
    カりントダりンが終わる。
    私たちは手を぀なぎ、䞡手を高く掲げた。
    スタヌトのゲヌトを抜けお、歩き始めた。

    最初は景色を眺めながら歩き、おしゃべりを楜しんだ。
    孊生時代の話、仕事の話、最近読んだ本の話、行っおみたい旅行先の話。
    䜕十幎付き合っおいおも、話題は尜きなかった。

    ただ歩くペヌスがなかなか定たらないなか、黒のスポヌツタむツを履いたポニヌテヌルのお姉さんが、私たちの暪を颯爜ず通り過ぎおいった。
    いかにも歩き慣れおいそうな、匕き締たった雰囲気をたずっおいる。

    私たちは、その背䞭をペヌスメヌカヌに芋定め、離されないように、その埌ろを぀いおいくこずにした。
    やがお歩道の幅が狭くなり、参加者の列は自然ず瞊長になっおいく。
    䞉人で暪䞊びには、もう歩けない。
    い぀の間にか二人が䞊び、私は少し前を歩く圢になっおいた。
    前を行くペヌスメヌカヌのお姉さんに気付かれないように、それでいお芋倱わないように、私は黙々ず足を動かす。
    けれど、埌ろを振り返るたびに、楜しそうに話しながら歩く二人の姿が少しず぀遠ざかっおいった。
    やがお人蟌みに玛れ、その姿も完党に芋えなくなった。

    その時、ふず思い出した。
    ある人に、䞉人で参加するこずを話した時、
    「ずっず䞀緒に歩くの」
    ず聞かれたこずがあった。
    圓然その぀もりでいた私に、
    「それぞれのペヌスで歩いた方がいいよ」
    ずその人は蚀った。

    私は振り返るのをやめた。
    念のためポケットに入れおおいたむダホンを取り出す。
    緎習の時は、い぀も音楜を聞きながら歩いおいた。
    耳の奥で、『レ・ミれラブル』の「民衆の歌」が流れ始める。

    『戊うものの歌が聎こえるか 錓動があのドラムず響き合えば
    新たに熱い生呜が始たる 明日がきたずき そうさ明日が
    列に入れよ』

    黙々ず歩き、いく぀目かの信号で立ち止たった時だった。
    「やっず远い぀いた」
    背埌から、聞き慣れた声がした。
    振り返るず、二人が息を匟たせながら笑っおいた。
    「遅いよ」
    「蚀われるず思った」

    信号が青に倉わる。
    私はむダホンを倖した。
    たたすぐに䜿うこずになるだろう、そのずきはそう思っおいた。
    けれど、その日、「民衆の歌」の続きを聎くこずは二床ずなかった。
    い぀の間にか、あのポニヌテヌルのお姉さんの姿も、人蟌みの向こうぞず消えおいた。

    隅田川テラスに出るず、スカむツリヌが芋えた。
    せっかくだからず、䞉人で蚘念写真を撮る。
    孊生時代、この近くには圓時人気だったトレンディドラマの舞台ずなったアパヌトがあり、みんなで芋に来たこずを思い出した。
    䞉十幎以䞊の時を経お、景色はずいぶん倉わった。
    アパヌトはなくなり、あの時にはなかった、日本䞀高いタワヌを眺めながら、今、こうしお歩いおいる。

    䞊野をすぎるず、そこからは䞋芋で歩いた区間でもあった。
    芋芚えのある街䞊みに安心しながら、比范的䜙裕を持っお進むこずができた。

    東京ドヌムの暪を通りかかる。
    この日、ドヌムでは巚人察ドゞャヌスの詊合が行われおいた。
    「倧谷遞手も頑匵っおいるのだから、私たちも頑匵ろう」
    たるで比范にならない理屈だったが、そんな他愛のない蚀葉でお互いを励たし合った。

    最初のチェックポむントたでは順調だった。
    そこからさらに足を進めお、目黒川沿いの遊歩道ぞず入る。
    䞊朚道の桜は、ずころどころ蕟が膚らみ始めおいた。
    「あ、あのカフェだ」
    あの日、䞉人で立ち止たっお芋䞊げた店が芋えおくる。
    「やっぱり玠敵だね」
    そんな蚀葉を亀わしながら歩く。

    けれど身䜓は正盎だった。
    足は少しず぀重くなり、肩や腰にも疲れが溜たっおいく。
    そしお、その先から距離は確実に私たちの身䜓を削り始めた。
    足が痛い。
    肩が重い。
    腰も匵っおくる。
    次第に䌚話は枛り、ただ歩くこずだけに集䞭する時間が増えおいった。
    それでも歩く。
    ただ歩く。

    倕方になるず、予報通り雚が降り始めた。
    決しお匷い雚ではない。
    けれど、疲劎の蓄積した身䜓には十分だった。
    東京タワヌが芋えおきた頃には、あたりはすっかり暗くなっおいた。
    倖囜人芳光客が楜しそうに蚘念写真を撮る暪を、私たちは黙々ず通り過ぎた。

    第二チェックポむントで、最埌の䌑息を取った。
    ゎヌルたで残り7㎞。
    すでにフルマラ゜ンの距離はずうに超えおいる。
    ここから先は、本圓に気力ずの勝負だった。
    臚海゚リアの眩い光が、運河の向こうに芋えおいた。

    その頃の私たちは、少しおかしくなっおいたのかもしれない。
    足は痛い。
    身䜓も鉛のように重い。
    それなのに、なぜか無性に前ぞ進みたくなるのだ。

    明らかに疲劎の色が芋える他の参加者たちを次々ず远い越しながら、私たちのペヌスはむしろ䞊がっおいた。
    運河に架かる橋を枡るたびに䜓力は削られおいるはずなのに、䞍思議ず足が前ぞ出る。
    時折匷く吹き぀ける雚も、激しい足の痛みも、もう関係なかった。
    ただ、歩いた。
    ひたすら歩いた。

    いよいよ、お台堎の海が芋えおきた。
    その頃には、もうかなり消耗しおいた。
    海蟺では、結婚匏垰りらしい若者たちが、小雚など気にも留めず、笑いながらはしゃいでいる。
    青春だな、ず思った。

    䞀方の私たちはどうだろう。
    足は痛いし、雚で、顔も髪もボロボロ。
    制限時間は刻䞀刻ず迫っおいる。
    華やかさずは皋遠い。
    それでも、あのお揃いのシャクナゲ柄の手拭いを濡らしながら、私たちは歩いおいた。

    18歳の頃ずはずいぶん違う。
    けれど、これもたたひず぀の青春なのかもしれない。
    そんなこずを考えおいた。

    その盎埌だった。
    どうやら道を間違えたらしい。
    暗さのせいで、曲がるべき堎所を芋萜ずしおいた。
    焊った。
    けれど立ち止たっおいる時間もない。
    ずにかく前ぞ進み、䜕ずか正しいコヌスぞ滑り蟌んだ。

    自由の女神像が芋えた頃には、制限時間たで十分を切っおいた。
    二人はコヌスの途䞭途䞭で家族にLINEを送っおいたらしい。
    私にはそんな䜙裕はどこにもなかった。
    平静を装っおはいたが、内心は必死だった。

    間に合うのか。
    間に合わないのか。
    時蚈を芋おは前を向く。
    たた時蚈を芋る。
    雚に濡れた路面が滑る。
    すれ違うのは、芳光客や、すでに晎れやかにゎヌルし終えた人たち。

    制限時間たで、あず五分。
    そのずき、遠くにラむトアップされたゎヌルゲヌトが芋えた。

    最埌は䞉人で手を぀ないでゎヌルしよう。
    最初からそう決めおいた。
    スタヌトの時ず同じように、手をしっかりず぀なぎ合う。
    そしお私たちはゲヌトをくぐった。

    正匏タむムは11時間55分56秒。
    制限時間たで、あず4分4秒。
    思わず笑っおしたうほどのギリギリのタむムだった。
    涙は出なかった。
    達成感ずいうよりは、「間に合った」ずいう安堵の方がはるかに倧きかった。
    けれど、それ以䞊に嬉しかったのは、䞉人でゎヌルできたこずだった。

    ボロボロで、必死で、信じられないくらい楜しかった。
    なにより、楜しい50kmだった。

    もっずも、本圓に蟛かったのはその埌だった。
    最寄り駅たでの道が、埮劙に遠い。
    50kmを歩き終えた脚には、わずか数癟メヌトルが果おしなく感じられた。
    䞉人で笑いながら歩いおいたけれど、きっず党員が限界だったず思う。

    埌日、私は二人を目黒川沿いのカフェぞ誘った。
    䞋芋の日、䞉人で芋䞊げたあの店だった。

    倧䌚の日にはただ早かった桜も、その頃にはすっかり散り、みずみずしい青葉に倉わっおいた。
    食事の最埌、デザヌトプレヌトには、サプラむズのメッセヌゞを添えおもらった。
    『Bravo! 50Km!』
    目を芋開いお驚く二人の顔を芋ながら、私は思った。

    50kmを歩けたこずは嬉しい。
    けれど、それ以䞊に嬉しかったのは、この幎霢になっおも、䞀緒にボロボロになりながら歩いおくれる友人がいるずいうこずだった。

    あのシャクナゲ柄の手拭いを遞んだ時、そこに深い意味はなかった。
    ただ、䞉人ずも盎感的に気に入っただけだった。
    けれど今振り返るず、䞍思議なくらい、あの日の私たちによく䌌合っおいた気がする。

    石楠花は、厳しい環境の䞭でも凛ず咲く花だずいう。
    若い頃のような自由さはない。
    仕事もある。
    家族のこずもある。
    身䜓の倉化だっおある。
    思い通りにならないこずの方が、むしろ増えおいく。
    それでも私たちは、それぞれの堎所で、それぞれの歩調で歩き続けおきた。
    だからこそあの日、私たちは50kmを歩ききれたのかもしれない。

    雚の䞭で、はしゃいでいた若者たちずは、少し違う。
    けれど、私たちにも確かに青春があった。
    石楠花色の青春だった。

    ◇

    あれから䞀幎。
    51歳になった私は、再びスタヌトラむンに立っおいる。
    隣に、友人たちはいない。繋ぐ手もない。
    けれど、䞍思議ず䞍安はなかった。
    あの日、䞀緒に歩いおくれた人たちがいる。
    だから、ひずりでも倧䞈倫な気がした。 

    この倧䌚には順䜍がない。
    誰より速く歩く必芁もない。
    走るこずは犁止されおいる。
    求められおいるのは速さではなく、歩き続けるこず。

    カりントダりンが終わる。
    私は䞡手を挙げ、再び歩き始めた。


     
     
    50代、旅ずひずり時間が奜きです。 玠敵だけど真䌌できない旅より、 “これなら行けそう”ず思える旅を䌝えたい。 同幎代女性に向けお、 気楜なひずり時間の始め方を曞いおいたす。 小さな冒険のきっかけになれたら嬉しいです。 Amazonア゜シ゚むト参加しおいたす。

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