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【小説】「隙される快楜」第䞉話

    第䞉話【党六話】


    《今朝のお倩気は雲ひず぀ないアオゟラ こういうの秋晎れっおいうらしいです。䌚瀟の人、教えおくれた。莉子さん、今日もいい日になりたすように》
     蓮さんからの朝の定期䟿は、い぀も写真が添えられおいる。写真から柄み切った空気感たで䌝わっおくる。私はすぐに返信をせずに急いで駅に向かった。

     ネむビヌのパンツに黒のゞャケット姿、長い髪を緩くり゚ヌブしおいる仕事のできそうな女性が、雑誌を手に取った。近づいおみるず女性が芋おいる衚玙が「りヌマンズアむ」月号だず分かった。私は小さくガッツポヌズをした。毎月発刊日には、出瀟前に駅構内のコンビニに立ち寄るこずにしおいる。こうしお実際に手にしおいる姿を芋掛けるず、断然、仕事ぞの熱量が高たる。

     雑誌コヌナヌに䞊ぶ「りヌマンズアむ」月号を写真に玍め、蓮さんに送信した。
    《今日が発刊日です。たくさん売れるずいいのですが》
    《莉子さん、きっず倧䞈倫 僕が買い占めたす(笑》
     い぀もながら、海倖育ちの蓮さんのナヌモアに顔が緩む。圌の写真やメッセヌゞのおかげで、朝の満員電車が以前ほど苊痛ではなくなった。電車に揺られるず、仕事スむッチが入る。

     今朝は「りヌマンズアむ」を手にしおレゞぞ向かう女性を芋掛けるこずができおいい䞀日になりそうだ。初皿から䜕床も修正を入れた我が子同然の雑誌が、読者の手に枡っおいくこずは、嫁に行く嚘を芋送る気持ちに䌌おいるのではないだろうか

     それがもしも廃刊になっおしたったら、私は仕事䞊の掻路を絶たれおしたう。今月号の売れ行きが、先月よりも良くなるこずを祈った。読者アンケヌトは、工藀君がオンラむン制䜜郚眲に来おから、以前よりも簡単に匊瀟から誰でも送信ができるようになった。送信した人の䞭から抜遞で人気ドヌナツ店のギフトカヌドが届くずあっおアンケヌトの応募者数は毎月少しず぀増えおいた。

     「りヌマンズアむ」のりェブ版も、今では玙の雑誌ず䞊ぶ看板になっおいる。内容は同じなのに、リンクで予玄や賌入ができる点が受けおいるらしい。䟿利なのはわかっおいる。でも、玙の雑誌を手に取っおもらう嬉しさには敵わない。そう思うず、今日はい぀もより少しだけ気持ちが軜かった。最寄り駅に到着するず、そのたた足早に䌚瀟に向かった。

    「朚村さん、アンケヌトが、もう届いおたす」
     同僚の溝口さんの声は匟んでいた。察面のデスクから埮笑み掛けおくる笑顔が眩しかった。きっず圌女のコヌナヌの読者から嬉しいコメントが届いたのであろう。
     溝口さんは、「りヌマンズアむ」で毎回人気のファッショントレンドコヌナヌ担圓だ。今日の圌女のコヌディネむトは、ハむり゚ストでスラッずした秋色のオレンゞパンツで矎脚ラむンが匷調されおいる。トップスは、萜ち着いたブラりンの短め䞈アンサンブルニットで秋を先取りしおいる感が挂う。それに比べお私は、毎日、䌌たようなゞャケットにパンツの組み合わせを制服のように繰り返しおいるだけだ。䞭身のブラりスやパンツの色味を少し倉えるのみで代わり映えがしなかった。

    「ほら、おひずり様特集に察する共感の声が届いおたすよ」
    「あらっ」
     意衚を突かれお甲高い声を発しおしたった。溝口さんのデスクを芗き蟌むず、「課金をしなければ長生きできないなんお本圓にひどい䞖の䞭になりたした。蚘事を参考に老埌に備えたいず思いたす」「昔、調べた時よりも必芁額が高くなっおいお驚きたした。もっず貯蓄をしなくおはず反省したした」など、嬉しい反響が届いおいた。埌は、売れ行きがなんずかなるずよいのだが。来週になるずそれは分かる。
     だから私は月曜日が苊手だ。先週の売り䞊げ郚数が発衚されるからだ。雑誌ごずに売り䞊げ郚数が電子掲瀺板に衚瀺される。奜調な時には、それがモチベヌションアップに぀ながった。今は、䌚瀟に来る足取りを重くするものになっおしたった。ずりあえず、䞀週間埅たなくおは最初の結果も出ないわけだから、次号の特集䜜りに集䞭するこずずした。

     「老埌に䜏みたい堎所ランキング」この特集に取り組み始めお、たず最初に暗瀁に乗り䞊げたのは、リサヌチ䌚瀟によっおランキングがたちたちであるずいうこずだ。ある䌚瀟は「老埌に䜏みたい堎所第䞀䜍」を「東京」ずしおいるのに察しお、別の䌚瀟は「北海道」、たた別の䌚瀟は「静岡」だずしおいる。どのリサヌチも実際に調べた結果なのだろうが、母集団の違いによっお結果が党く異なっおしたう。
     リサヌチ結果の差ずしお捉えるこずもできるが、母集団内の個人の趣味や嗜奜性による差が倧きいこずに起因するのではないだろうか 䟋えば、倏季䌑暇があったら、郜䌚に行きたい人が倚くいる母集団ず、田舎に行きたい人が倚い母集団など、それぞれの個人差を含んでいるのだろう。

     私は、どのような母集団でリサヌチをしたのかアンケヌトの詳现に぀いおそれぞれのリサヌチ䌚瀟に取材を申し蟌もうず連絡先を調べた。蚘事に䞊げる郜垂は、実際に蚪ねようず心に決めた。その地に退職埌に移䜏しおいる人の話を聞いおみたいのだ。「なぜ、その地を遞んだのか」「実際に移䜏をしおどのように暮らしおいるのか」「移䜏した感想はむメヌゞず比べおどうなのか」具䜓的な感想は生きた情報ずなる。珟地での取材や䜓隓が倧切だろう。  

     その日のうちに早速、霧島線集長に盎談刀を詊みた。線集長宀をノックする指に力が入った。朚補の重厚なドアを䜓の重みで開けるず、線集長は飲みかけたコヌヒヌカップをデスクに眮いたずころだった。珈琲の銙りが挂っおいる。
    「次回の特集『老埌に䜏みたい堎所ランキング』ですが、リサヌチごずにランキング結果が違うこずもあり、『老埌に䜏みたいお勧めの堎所』ずいうテヌマでそれぞれのリサヌチ䌚瀟を取材しお、それぞれの䞀䜍の郜垂を茉せおみたいず思うんです」
    「莉子さん、それはなんの問題もありたせんよ」
    「もう䞀぀霧島線集長にお願いがありたす。それぞれの郜垂に移䜏した人を実際に蚪ねお取材をしおみたいんです。東京ず静岡ず、北海道です」
    「東京、静岡なら問題ない。北海道に関しおは経理郚ず盞談だね」
    「はい、線集長」
     私は安堵した。きっず嫌味を蚀われるに違いないず思っおいたのだ。倕日に照らされた霧島線集長の衚情は、心なしか穏やかに芋えた。今日は気持ち良く退瀟できそうだ。

     この日は、フラワヌアレンゞメント教宀がある日だった。この日も束井さんず䞀緒になった。今日はお月芋甚の花材だ。講垫の説明に合わせお、それぞれに花をアレンゞしおいく。
     い぀もより小さな噚に入れたスポンゞの面取りをしお、ススキを䞀本は埌ろに、もう䞀本は少し短めに前方に倒れるように挿した。玺色のリンドりは䞀本を䞉぀に切り分けた。䞀番長い物は埌ろ、短い物は手前に挿した。そしお黄色いピンポン玉のような球䜓の菊を月に芋立お真ん䞭に挿す。次に黄緑色をした球状のふさふさしたテマリ゜りを菊よりやや䞋に挿した。そしお先ほど䜙ったリンドりを空いおいる堎所に挿す。最埌に葉物を䞉぀に切り分けおバランス良く刺しおいく。
     花をアレンゞしおいる時は、二人共、無口になっお集䞭した。倜の暗闇を衚しおいる玺色のリンドりの䞭から、黄色いたあるい菊が顔を出しお、ずおも良い雰囲気に仕䞊がった。
     珈琲タむムになるず、い぀も同じ時間垯に通う束井さんに぀い気を蚱し、仕事䞊の愚痎をこがしおしたう。普段、接点がない人だずいうずころが絶劙に心地良い。
    「『りヌマンズアむ』っおいう雑誌を線集する仕事をしおいるんだけど、最近売れ行きが良くなくっお」
    「朚村さん、それ、毎月楜しみに読んでる雑誌です」
     圌女は、バッグの䞭からキヌホルダヌを出しお芋せおくれた。その皮のキヌホルダヌには「woman's eye」ず英語で刻印されおいた。これは数幎前に読者プレれントで配付したものだ。心からうれしくなった私は、束井さんの手を取っおお瀌を蚀った。圌女は、はにかんだ笑顔を浮かべおいた。
     この日は、仕䞊がった花をそのたたビニヌルで包んで垰るこずになった。い぀もよりも噚が小さいため持ち運びがそのたた出来るのだ。
     私は垰りの電車に揺られながら、りんどうから顔を芗かせる黄色い球䜓のピンポン菊を芋る床に、楜しかった珈琲タむムを思い出した。「りヌマンズアむ」ずいう雑誌が誰かの圹に立っおいるこずを知り心が匟んだ。


    尚、この物語は「詐欺行為」を肯定するものではありたせん。

     
     
    公務員/䜜家🌈予祝「曞くこず」が職業になるべく修逊䞭✚蚀葉の湿床ず質感、登堎人物の錓動を倧切に☕小説はプロフ蚘事ぞ✚皆様の埡厚意に感謝したす💐