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【小説】「生き盎し 私を探す旅」 プロロヌグ・第䞀話

     䞻人公の花田萌歌はなたもえかは、生きづらさを抱えお生きおいた。長い努力の末のピアノコンクヌルファむナルの前倜、極床の緊匵から「オヌバヌドヌズ」に頌っおしたったずころ、意識を倱い昏睡状態に陥る。そこから「人生最期のトンネル」の門番である沖田から、「あなたは死に倀するか分からない」ず蚀われ、「生き盎し」をするこずを勧められる。「自分の過去に戻っお、様々な岐路のうち䞀぀だけやり盎すこずができる」ずいう。しかし䞉日ず䞉時間䞉分以内に戻っお来ないず呜が消倱しおしたう。ティムずいうシマリスず䞀緒にタむムリヌプするこずになった䞻人公はどうなるのか そしお「生き盎し」埌の人生はいかに

    泚) note倧賞は映像化する䜜品を募集するものなので䜜䞭に音楜動画をリンクしたたた
    応募をさせおいただきたす。

    プロロヌグ


     ショパン『倜想曲十䞉番』、ショパンが恋倚き女ゞョルゞュ・サンドず暮らしおいた頃の䜜品だ。倜想曲ずは、぀たり男女が倜に奏でるラブ゜ングではないかず私は思う。音倧のホヌルで、明日のピアノコンクヌルファむナルに出堎する人向けに開かれたリハヌサルで、私は今、挔奏しおいる。二倍速ドッピオ・モノィメントの箇所で、指がも぀れおしたい、感情が絡み぀く。二回目の䞻題の旋埋に感情を蟌めようずするず、突然、ゞョルゞュ・サンドの顔が浮かんできた。

     私は、曲を挔奏するずきに、その曲のも぀むメヌゞを物語にしお、楜譜に曞き蟌んでいる。曲の進行に合わせお物語を展開させながら音で衚珟する。ショパンの倜想曲を匟こうずするず、どうしおも子䟛の頃の出来事が頭をよぎり、途䞭で匟けなくなるこずがあるのだ。今日も、そうだった。ショパン倜想曲十䞉番の切ない、悲しい、優矎なメロディヌがトリガヌずなり、頭から消し去りたい出来事が、䞍意に襲っおくる。どうしおも優勝したいピアノコンクヌルを前に、呌吞は浅くなりめたいが襲った。私は急速に平静さを倱っおいくのが分かった。

     その倜、私は人生に深く倱望しおいた。沌の底に萜ちおいくように眠りに぀いた。明日は、人生を賭けたピアノコンクヌルファむナルの日だずいうのに。リハヌサルを兌ねた緎習もうたくいかず、私は、咳止めシロップをい぀もより倚く飲んで、ぐっすりず眠る぀もりだった。甘いシロップの味が安心を誘う。私は間もなく限りなく深い沌の奥深くに吞い蟌たれるように、萜ちおいったのだ。限りなく深く、冷たい、緑青色ろくしょういろの沌に。

    第䞀話


     翌朝、目を芚たすず芋知らぬ堎所にいた。
    「私は䞀䜓、どこにいるのだろう」
     蟺りを芋枡すず、どうやら針葉暹の森の䞭にいた。緑青色の朚々の奥は、さらに薄暗く、冷たい颚が吹いおいた。その先が芋えないくらい深い暗闇の掞穎のような入口も芋える。
    「ここは」
     目の前に、男がいるこずに気付いた。
    「ここは、『人生最期のトンネル』です。あなたは、昚倜、自らの呜を絶ずうずした。だが、ただ最期のお迎えは来おいない」
     男は、片手に持った小型のタブレット端末を芋ながら蚀った。

    「䜕をおっしゃっおいるのですか 死ぬ぀もりなんおありたせん。明日は、私のこれたでの人生を賭けたピアノコンクヌルファむナルの日なんですよ。予遞、セミファむナルず、ずっず勝ち残っおようやくここたで来たのです」
    「いや、あなた、぀たり、花田萌歌はなたもえかさんは昚倜『咳止めシロップの過剰摂取により自殺を図った』ずいう報告がメヌルで届いおいたす。それで、ここに連れお来られたのです。ほら、オヌバヌドヌズずいうアレですよ」

     私は、目の前にいる男が誰なのか分からなかった。その男は、えんじ色のスヌツを着お、垜子には緑色の矜が付いおいる。
    「あなたは」
    「わたくし 私は、『人生最期のトンネル』の門番、今颚に蚀えば、コンシェルゞュの沖田ず申したす」
     沖田ずいう男は手を胞に圓お、たるでドラマに出おくる玳士のように蚀った。

    「『人生最期のトンネル』ですっお」
    「では、埡説明したしょう。そこに芋える掞穎の入口が『人生最期のトンネル』に繋がっおいたす。人生に深く倱望しおいる人が、死ぬ間際に連れお来られるトンネルで、その人が、本圓に死に倀するかどうかを芋定めるためのものなのです」
    「死に倀するかどうかっお、死ねない人がいるっおいうこずですか」
    「そう、その通りです。勘がいいですね、萌歌さん。あなたは、ただ、死に倀するかどうか分からないずいうこずで、ここに来おいるのです。぀たり、人生に倱望しきっおいるか、人生のミッションを達成したか、いずれかでないず死ぬこずはできないのです」

    「私は、たしかに人生に深く倱望しおいたす。でも、ただ死にたくはありたせん」
     私は、そのコンシェルゞュを名乗る沖田ずいう男に鋭い芖線を投げ぀け、匷い口調で蚀った。

    「死にたくなかったのですか その思いは、倩空の䞖界に届いおはいないのです。あなたは、倚量の咳止めシロップを服甚したずいうこずで『自ら死を遞んだのでは』぀たり『死にたい』ずいう埡垌望があったずいう疑いをもたれおいるのですから」

    「それでも」
     くちびるを噛みしめ、䜓の底から声をしがり出した。
    「私は、ただ死にたくはないのです。人生の党おを賭けお、明日のピアノコンクヌルファむナルのために時間を費やしおきたのですから」
     コンシェルゞュの沖田さんは、私の蚀葉に停りがないか心の奥たで読み取っお審議するかのように、私を凝芖しお、尋ねおきた。

    「あなたが、死にたくなかったのだずしたら、なぜ、あのようにオヌバヌドヌズしおしおしたったのでしょう 本圓に、死ぬ぀もりがなかったず蚀えたすか」
    「沖田さん。私は、ただ䞍安から解攟されお、眠りたかっただけなのです。明日のピアノコンクヌルファむナルで、どうしおも優勝したくお。人生を賭けおいたした。だから、死ぬ぀もりなどありたせんでした」

    「わたくし共は、萌歌さん、あなたが『死にたいのか』『死にたくないのか』諮りかねおいるのです」
     私は俯いお、瞳をゆっくり閉じた。そしおゆっくり顔を䞊げ、コンシェルゞュの沖田さんを力なく虚な目で芋た。
    「そこたで蚀われるず、私自身でも、分からなくなりたす。死ぬ぀もりはなかったはずなのに、危険ず知りながらも飲み過ぎおしたった」
    「今、あなたの生死に぀いおは審議䞭のため、あなたの䜓、本䜓は、救急病院の集䞭治療宀のベッドの䞊です。他の人が芋たら、意識䞍明の昏睡状態に陥っおいるずいうわけです」
    「昏睡状態なんですか 私は 明日のコンクヌルにどうしおも出堎しなくおはいけないのです。生きお、出堎しなくおはならないのです」

     コンシェルゞュの沖田さんは、困った衚情を浮かべた。
    「どうしたらいいでしょう」
     私は力なくその堎に座り蟌んでしたった。
     唇の端ず眉毛を少しだけ䞊げお笑顔を䜜り、コンシェルゞュの沖田さんは語り始めた。
    「このトンネルを戻っおいくず、今に぀ながる岐路に遭遇したす。その岐路をもう䞀床、『生き盎し』するこずで、今、あなたが死ぬべきか、生きるべきか、たたはもっず違う未来に぀ながるのかはっきりしおきたす」

    「『生き盎し』ですか」
     私は、コンシェルゞュの沖田さんの顔を、芋぀めた。
    「そうです。私達は、過去に戻っお人生をやり盎すこずを『生き盎し』ず呌んでいたす」
    「私が、自分の過去に戻っお、もう䞀床、人生をやり盎すずいうこずなのですね」
    「そうです。あなたは、遭遇する過去の様々な岐路のうち、䞀぀だけを自分で遞択しお『タむムリヌプ』するこずができるのです」

     コンシェルゞュの沖田さんの説明によるず、「タむムトラベル」が䜓ごず時空を移動するこずになるのに察しお、「タむムリヌプ」は、䜓の感芚はあるが、意識だけが過去をさかのがり、その時空の自分自身の䜓に乗り移りその堎面を生き盎すこずができるようだ。限られた状況の人だけに起こる、特別な移動のこずらしい。

     そしお、『生き盎し』をするこずで運呜が倉わったら、「死にかけたポむント」ではなく新しい運呜にふさわしいずころからもう䞀床、人生を『生き盎し』するのだずいう。
     聞き慣れない蚀葉に、私は戞惑っおいた。
    「あなたは、ただ死んではいないのです。恐らく、やり残した倧切なこずがある。なのに、死にたがっおいた」
    「わたしが、死にたがっおいた」
     私は心の奥底を芋透かされた気がしお、俯いた。

    「党おを犠牲にしおピアノコンクヌルに賭けおきたずおっしゃっおいたしたが、あなたは、そのピアノコンクヌルに心から自分の意思で出堎したかったのでしょうか」
    「そう蚀われるず、分かりたせん。私は、これたで自分の意思で自由に決めおきたこずなんお、䜕䞀぀ないのですから」
    「䜕か、倧切なこずを人生のどこかに忘れおきおしたった方のようですね。あなたのような人こそ、『人生最期のトンネル』で、自分の人生の出発地点に戻るべきだ」

     私は、やはり、死にたがっおいたのかもしれない。自分の意思で自由に歩んでこなかった人生に、本圓は嫌気が差しおいたのかもしれない。甘すぎるシロップが匕き起こす危険は、充分認識しおいたのだから。無意識のうちに死を求めおいた。いいえ、死を求めおいたのではなく、ひょっずしたら私は、「自由」を求めおいたのかもしれない。

    「そのトンネルで、時空をどう進んだら良いのでしょう」
    「トンネルの䞭に入るず時空の波に乗っお自然に䜓が宙に浮かびたす。宙に浮かんだ状態で時空をさかのがり、出発地点に戻っおいきたす。そこから自分の人生を芋぀め、心をフラットにしお『生き盎し』したい所で降りお䞋さい」
     「時空の波に萜ずされない」「心をフラットにする」ずは 次々に疑問が浮かんだ。

    「䞀぀だけですよ。自分の心にしっかり問い掛けお、『生き盎す』べき所かどうか刀断をお願いしたすね」
     たった䞀぀だけ『生き盎す』べき所を遞ぶ。それはずおも難しいこずなのかもしれない。

    「䞀番、倧切なこずを今からお䌝えしたす。心の準備はいいですか」
     コンシェルゞュの沖田さんは、瞬きもせず、私の顔をたっすぐ芋぀めおこう蚀った。
    「『人生最期のトンネル』に入っおから戻っおくるたでのタむムリミットは䞉日ず䞉時間䞉分です。絶察に遅れおはいけたせん。もしも、䞀秒でも遅れおしたうず、その時点で、あなたの呜は消倱しおしたいたす。必ずや、お気を付けお」

     タむムリミットを過ぎおしたうず呜が消倱するず聞いお、震えが止たらなくなった。自分の力では、どうしようもないくらいに肩も足も震えおいる。぀たり、死を恐れ始めおいる。䞀秒でも過ぎたら、今床こそ間違いなく死んでしたう。たった䞀秒、間に合わなかったずいう理由で死んでゆくこずになるのかもしれない。
     でも、呜ず匕き替えに「自由」が手に入るのであれば、それならそれで、いいのかもしれない。私は、䜕かが吹っ切れたような心持ちずなり、ゆっくりず立ち䞊がった。
    「分かりたした。やっおみたす。私の人生を取り戻しに」

     コンシェルゞュの沖田さんの向こう偎を、緑青色の朚々のはるか䞊ぞ向かっお、小鳥が飛んで行くのが芋えた。森の䞊空からは、朚々の隙間をぬっお、やわらかな日差しが降り泚いでいる。この男の蚀葉を信じおみよう。
     私が、考えごずをしおいるず、コンシェルゞュの沖田さんがこんなこずを぀ぶやいた。
    「あなたには、ティムずいうポケットサむズのシマリスが同行するず思いたす。元は人間で、蚳あっおシマリスに転生しお掻動䞭なんですがね。䜕床か『人生最期のトンネル』を行き来しおいるので、きっずお圹に立おるず思いたすよ」

     私は、そのポケットサむズのシマリスず䞀緒に時空の移動をしたいず願った。䞀人で時空を圷埚うのは、少し寂しすぎる。人生においお最も倧切なのは、愛を語る恋人ではなく、自分を理解しおくれる「話し盞手」ではないかず私は思っおいる。
     なぜなら、これたでの経隓で、恋人ずは「愛を語り尜くした埌、い぀か自分の元を過ぎ去っお行くもの」だず知っおいたから。



     
    公務員/䜜家🌈予祝「曞くこず」が職業になるべく修逊䞭✚蚀葉の湿床ず質感、登堎人物の錓動を倧切に☕小説はプロフ蚘事ぞ✚皆様の埡厚意に感謝したす💐