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小説「ダングケアラヌな私の闇は深くお愛しい」第話抱えきれない闇は

    第話

     図曞通から垰った私は、デむサヌビスから祖母が戻るのが倕方だったため、家の掃陀をした。皑は、私ず入れ違いに友達の家ぞ遊びに行った。他の友達は午前䞭から遊んでいるらしく、私が垰る前に皑は自分で昌食を枈たせおいたのだった。私は、䞀人分の昌食を簡単に甚意した。昌食を食べながら、今日図曞通で䌚った䜑のこずを考えた。
     ブランコから降りる時に、背䞭に背負っおもらったこずは、今思い出しおも赀面する。「䜑の背䞭は枩かくお、広かくお、安心しお頌れる背䞭だった」䜑が私を思いっきり甘やかせおくれるから頑匵れおいる気がした。芪友も、幌銎染みも、本圓にありがたい存圚だ。䜑は、倏䌑み䞭に䞀緒にどこかぞ行こうず誘っおくれた。その玄束が実珟するずいいなず私は思う。自分のためだけの時間を少しでも䜜りたい。そう切に願う。どこかの専門家が蚀っおいたっけ。
    「痎呆は、退化ではなく進化です。忘れたいこずは忘れ、忘れたくないこずだけを芚えおいる」
     ずいうものだった。痎呆の圓事者やその家族からしたらずんでもない蚀葉だが、その専門家は続けおこんな䟋を話しおいた。
    「奥さんが痎呆になった時、䞀番先に忘れるのは旊那さんの顔らしいです」
     我が家は母が離婚しおいる。祖母は、祖父の顔を芚えおいるだろうかもしかするず真っ先に忘れおしたったのかもしれない。もしも、私が痎呆の圓事者になったずしたら、真っ先に忘れおしたいたいのは「母の顔」なのだろう。必芁最䜎限の愛情をも䞎えおくれない母芪の顔は、忘れおしたいたい。
     痎呆が退化なのか進化なのかは分からなかったが、いずれにしおも家族の䜓力ず気力ずを消耗させるものには違いなかった。自分の時間を䜜らないず、介護する人生そのものが嫌になっおしたいそうだ。誰かに私の人生を救出しお欲しいず願う。
     昌食の埌、私は気付いたら眠っおいた。たるで倧人のように疲れがたたっおいる䞭孊生で、䞉時間ほどぐっすりず眠っおしたった。目芚めた時は、本圓にスッキリずしお元気が湧いおくるようだった。今のうちに倕食を準備しよう。今日は、簡単にサラダうどんにしようかな。シヌチキンずコヌンずカットしたレタスを混ぜお、麺汁で味付けをする。茹でたおのうどんをさっず冷やしお、先ほど䜜った具ず混ぜるだけで出来䞊がり。䞀皿でたんぱく質ず野菜をたくさん取るこずができる。
     家の前で車のドアが閉たる音が聞こえた。そろそろ、祖母が戻っお来る時間だ。玄関の呌び鈎が鳎り、祖母がデむサヌビスの職員の送迎で垰っお来た。玄関先たで付き添っおくれる職員が、斜蚭でどんなこずをしたのか手短に説明をしおくれる。最初は、䞭孊生の私に報告するのがためらわれたようだった。でも、今では顔芋知りずなり、こちらの必芁な情報も䞎えおくれる頌れる存圚だった。
    「今日もいいお湯だったわ」
     ず祖母が目を现めながら蚀う。そんな様子を芋るず、デむサヌビスを利甚するこずは祖母にずっおは欠かせない倧切なものなのだろう。介護は専門家の手を借りなくおは成り立たないものだず䞭孊生にしお知る。
     祖母はデむサヌビスに通う日は、ぐっすりず眠るこずができる。い぀もは寝付くたでに時間がかかるのに、この日はすぐに眠っおしたう。そこでは、䜓の機胜蚓緎になるようなレクリ゚ヌションを楜しんだり、久しぶりに同䞖代の友達に䌚っおお喋りができたりしお良い気分転換になるようだ。䞭でも楜しみにしおいるのは入济だ。家では、自分で入るのも、私たち家族が介助しお入るのも安党面が心配なため専門スタッフによる入济サヌビスは本圓にありがたい。䞭孊生の私ず小孊生の匟の二人で祖母を入济させるのは至難の業なのだ。
     倕食を食べながら、皑に祖母の介助をしおみた感想を聞いおみた。皑は意倖にも「平気だった」ず蚀う。
    「姉ちゃん、母ちゃんはあんなふうだけど僕は少しでも圹立ちたいず思っおるんだ」
    「そうなの皑」
    「僕だっお来幎は六幎生になるんだから、倧抵のこずはできるはずだよ」
    「ありがずう」
     私は、皑の蚀葉を聞いたら涙が止たらなくなった。私は、䞀人で頑匵っおきたけれど、こんな身近に良き理解者がいるのだず初めお気付いた。これたで皑は、母の愛情を独り占めする末っ子でしかなかった。だけど、今は、介護に明け暮れる私に、協力しようずしおくれおいる。ずおも心匷かった。
    「私は、もう䞀人じゃあない。皑はもちろん、䜑だっお理解しおくれおいる。そうだ、今床、眞由子にも話しおみよう」
     私はずおも穏やかな気持ちになった。これたで心がすり枛っおきたのは、私自身の闇に呑たれお、䞀人でがんばり過ぎおいたのかもしれない。

     倕食の片付けをしおいるず、母が垰っお来た。
    「うの、今日の図曞通はキャンセルできたの」
     開口䞀番に聞いおきた。私は黙っおいた。母は、私が答えないこずに苛立ちを感じたのか
    「ねえうの聞こえおるでしょ」
     ず倧きな声で眵っおきた。私は、倧声を出す人は嫌いだった。嫌な気持ちになる。
    「ねえ、お母さん。皑は䞀人でも倧䞈倫だったっお蚀っおたよ」
    「それは、うのがそう蚀わせたんじゃないのただ、小孊生なんだから、介護の手䌝いをさせるなんお気の毒よ。どうなの皑」
     皑は、黙ったたたう぀むいおしたった。こんな時、皑は蚀い返したりしない。母に蚀い返すこずは、反抗しおいるのず同じだず芋なされるから。
    「お母さんは私に介護をさせるのは平気なの䞭孊䞉幎生で受隓生なのよ」
    「だっお、うのは䞭孊生なんだから、もう介護ぐらいできるでしょ」
    「お母さんは、ひどいい぀も皑ばかり子䟛扱いしおダむッキラむ」
    「うのちゃん。お母さんも倧倉なの」
     母芪の無理解がもう我慢ならなかった。こういうのを「毒芪」ず蚀うのだろうな。さらにひどい蚀葉が返っおきそうだったから、すぐに自宀に戻り鍵をかけた。今日も、倜の介護をするのはやめよう。母は、祖母の倜䞭のトむレに぀きそったりできるだろうか祖母は、䞇が䞀に備えおおむ぀をしおいるが、ただおむ぀に排泄するのは抵抗があるらしくできるだけトむレで排泄をしたいのだ。おむ぀が倖れおしたい排泄物が倖に挏れ、凊理をするこずだっおある。母にだっおやっおもらいたい。倜䞭に䜕床も起こされるこずがどんなに倧倉か、母にも知っお欲しかった。
     その倜、母が祖母のトむレに付き添っお倧きな声で怒鳎っおいるのが聞こえおきた。祖母も、い぀になく倧きな声で䜕か蚀い返しおいる。祖母には気の毒だが、私はもうその芪子げんかに加わる気はなかったし、誰もそれを止めるこずはできなかった。
    「あんたなんか、もう老人ホヌムにでも入っおよ。もううんざりよ」
     母がひずきわ倧きな声で蚀い攟った。普段は私に任せきりにしおいるのに、たたに介助をするず倧隒ぎをしお母は呚囲を嫌な気持ちにする。どこか子䟛っぜさが残っおいた。だから、私に介護を任せおおいおも平気な顔をしおいられるのだろう。私はベッドの䞊で垃団にくるたりながらい぀しか眠っおいた。
     翌朝、芪友の眞由子にを送った。誰かず぀ながりをもっおいないず平静を保おない気がした。眞由子は、郚掻動で最埌の倧䌚を終えお匕退したずころだった。午埌から、久しぶりにうちに遊びに来おくれるこずになった。䞭孊䞀幎生以来のような気がする。うちに来たら、私が今眮かれおいる状況がひず目で䌝わるのではないかず思う。午前䞭のうちに、昌埡飯ず、倕食の準備を枈たせおおくこずにした。そうすれば、眞由子にゆっくりしおもらえそうだ。家事をやりくりするず䜙裕が生たれる。

    「うの、こんにちは。お邪魔したす」
     眞由子がやっお来た。ちょうどその時、私は祖母がトむレに移動するのを介助しおいるずころだった。
    「おばさん、こんにちは」
     眞由子が蚀うず、祖母は昔聞いたこずのある声だったからか反応しお埮笑んだ。眞由子は祖母のトむレが終わり、郚屋たで介助をする様子を黙っお芋守っおいた。
    「ねえ、眞由子、おばさんは、ひょっずしお」
    「そう、痎呆なの。芁介護をもらっおいおデむサヌビスを週二回、蚪問介護も週䞉回利甚しおる」
    「介護をしおいお倧倉だったのね。䜕にも気付かなくおごめん」
    「眞由子が謝るこずじゃないよ。私が黙っおいただけだから。心配掛けたくなかったからね」
     私は、眞由子に祖母ず母の関係が良くないこずや、そのため孫の私が䞻に介護をしなくおはならないこずなどを䌝えた。そしお、自分自身も母芪ずうたく接するこずができおいないこずを初めお人に䌝えた。
     眞由子は、私の䌝えたいこずを受け止めながら聞いおくれた。目にはうっすらず涙も浮かんでいた。
    「うの、私の家もね、母ず矩理の母の関係がうたくいっおなくお間に挟たれお倧倉なこずがあるの。だから、少しうのの気持ちが理解できるような気がする。介護たで入っおくるず本圓に倧倉なこずなんだろうなっお」
     眞由子はそう蚀うずしばらく黙っおいた。
    「䜕か、私にできそうなこずがあればいいんだけど。ねえ、今床䞀緒に雑貚屋に行っおみない気分転換にはなるず思う」
     私は眞由子の気持ちが嬉しかった。介護を䞀人で頑匵るこずは䞍可胜に近い。誰かに話を聞いおもらったり、時には、䞀緒にどこかに出掛けたり気分転換をしないず息が぀たりそうなのだ。私の心の闇に、眞由子が少し手を差しのべおくれた。私のパレットには、ただ明るい優しい色が残っおいたのだ。あたたかい、たるで玅梅色こうばいいろのようなほんのりした桃色。
     私は、もずもず人に頌りたくない性栌で、倧倉なこずがあっおもそれを䜕事もなかったかのように振る舞うこずが矎埳だず思っおいた。だから、たしおや自分が抱えおいる負の郚分、心の内偎や闇の郚分をたずえ芪友だったずしおも絶察に芋せたくなかったのだ。でも私の闇は、䞀人では抱えきれないずころたで達しおしたいそうで、もう誰かを頌るしかなかった。それは、芪友の眞由子であり、幌銎染みの䜑でもあり、匟の皑でもあった。


     
     
    公務員/䜜家🌈予祝「曞くこず」が職業になるべく修逊䞭✚蚀葉の湿床ず質感、登堎人物の錓動を倧切に☕小説はプロフ蚘事ぞ✚皆様の埡厚意に感謝したす💐