
意思決定が遅い日本、あきらめが早いアメリカ【アメリカ駐在17年で学んだこと⑳】
アメリカの取引先との会議で、今でも忘れられない出来事があります。
日本からの出張者3人と駐在員の私。
アメリカ側は4人。
長時間の打ち合わせも終わりに近づき、
「ようやく結論が出そうだ」
と思った、そのときでした。
日本側の責任者がこう言ったのです。
We’ll review this internally and get back to you.
「日本に持ち帰って検討します」
すると、アメリカ側の出席者たちの表情が一斉に曇りました。
そして一人が、不満そうにこう言いました。
Why don't we make a decision here?
「なぜ、この場で決めないんだ?」
なんとも後味の悪い会議になってしまいました。
アメリカ人にとって会議とは「結論を出す場」
アメリカ側の言い分は明快でした。
「会議とは、結論を出すためのもの」
だから、
意思決定できる人(Decision-maker)が出席しない会議は理解できない。
という感覚なのです。
さらに、
「日本企業は意思決定が遅すぎる」
という不満を耳にすることも少なくありませんでした。
一方、日本側にも言い分があります。
関係部門の合意がなければ前に進めない。
そもそも今回の訪問は、
「まず相互理解を深めること」
が目的だった。
決してサボっているわけではないのです。
逆に「アメリカ人はあきらめが早い」と感じたことも
ところが、逆のケースもありました。
あるプロジェクトで納期遅延が発生したときのことです。
アメリカ側は、
"There's nothing more we can do."
「これ以上改善するのは無理」
の一点張り。
それに対し、日本側は、
「そこを何とかできないか」
と食い下がりました。
そして、いろいろなアイデアを出し合った結果、
意外にも解決策が見つかったことがありました。
そのとき、日本側の関係者がぽつりとつぶやきました。
「アメリカ人はあきらめるのが早いな…」
私は思わず苦笑してしまいました。
実は、どちらも合理的
駐在生活を通じて感じたのは、
どちらが正しいという話ではないことです。
アメリカは、
まず決める
まず動く
必要なら後で修正する
という文化。
一方、日本は、
十分に検討する
関係者の合意を得る
納得してから動く
という文化です。
つまり、
アメリカは「スピード重視」
日本は「確実性重視」
なのです。
日本企業の強みでもある
日本の意思決定は遅い。
これは事実かもしれません。
しかし、一度決まると強い。
事前に十分な根回しと合意形成が行われているため、
実行段階で大きな抵抗が起きにくいのです。
逆にアメリカでは、
決定は早いものの、
途中で方針変更や軌道修正が入ることも珍しくありません。
駐在で学んだこと
海外企業との会議では、
まず、
「今日の目的は何か」
を明確にしておくことが大切です。
意思決定をする会議なのか
意見交換の場なのか
これを双方で共有しておかないと、
期待値のズレから不満が生まれてしまいます。
また、
誰が意思決定者なのか
どこまでその場で決められるのか
を事前に整理しておくことも重要です。
理想はハイブリッド型
17年のアメリカ駐在を振り返ると、
理想は、
「アメリカのスピード」と「日本の合意形成」
を両立することではないかと思います。
迅速に決断する。
しかし、現場を置き去りにはしない。
そんなハイブリッド型の意思決定こそ、
これからの日本企業に求められているのかもしれません。
これもまた、駐在を通じて学んだことのひとつです。
【アメリカ駐在17年で学んだこと】シリーズについて
このシリーズでは17年のアメリカ駐在で学んだことを書いています。
・日本との文化の違い
・仕事の進め方
・英語コミュニケーション
海外ビジネスに興味がある方は
フォローしていただけると嬉しいです。
少しだけお知らせ
こうした駐在経験を含め、30年以上の貿易業務と17年のアメリカ駐在で学んだことをまとめたのが、『英語で書く、ビジネスメールの基本』(2023年出版)です。
本書では:
・実務で使える英文メールの型
・文化を踏まえた伝え方の工夫
・相手の行動を促す表現テクニック
・豊富な例文と実用付録
を紹介しています。
海外との仕事に関わる方の一助になれば嬉しく思います。
最後までお読みいただき本当にありがとうございました。
17年間のアメリカ駐在で経験した、
「日本では当たり前、でも海外では違った」
そんな仕事文化や異文化コミュニケーションをシリーズでまとめています。
また、「学校で習わなかった英語」シリーズも眺めていただけると嬉しいです。