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Photo bymaron10ru3

楜芳䞻矩ず祈りず

    倕食埌に食噚を掗っおいたら携垯電話が震えお着信を知らせる。
    右手を拭きながら盞手が芋知らぬ人ではないこずを確認した。倫だ。
    応答ボタンをスラむドさせたら、指先がただ氎滎を持っおいたのか、指をひいた跡がすぅっず぀く。

    巊手がただ濡れおいるのでスピヌカヌホンにした。

    「もしもヌし、どうしたの」

    「あ、あのさ、スクラブで通勀するなっお蚀われるから、服、取りに垰るわ」

    声のトヌンがリラックスしおいるこずにホッずする。

    倫は今 家から少し離れたゲストハりスに䞀人暮らししおいる。今のりむルス隒ぎで、毎日重症者を蚺るから、家族にう぀したくないずいう配慮で。

    スクラブずいうのは 医療モノのテレビドラマなどでみるかもしれない、垃を盎線に瞫い合わせただけの、パゞャマみたいな服。倧抵病院の方で綺麗に掗っおあり、汚れたらすぐ着替えられるようになっおいるのだ。うちの倫は15幎以䞊、毎日垰宅前に新しい掗濯されたスクラブに着替えおきお、翌朝たたそれを着お出勀するずいうのをやっおいる。そのたた日をその服で仕事をし、たた垰宅前に着替えおいく。
    なので、理論䞊は「普段着よりキレむ」なのだが、このご時䞖、䞀般の方が怖がるこずをしおはいけない、ずいうこずらしい。

    この別居が始たっおから、毎日家族の誰かが倕飯や足りないものを倫ぞ届けおいる。今日はもう息子が届けたけれど、もう床、今床は私が行くずいうのは別に苊にならない。

    「服なら私、持っおいくけどどの服を持っおいけばいい」

    「ゞヌンズでいいや、あずは䞊着をただ着おるから良いでしょ。ああ、いいよ、家に戻るから」

    倫も少しは自宅の様子も倖から眺めたいのかな、ず思っおそのたた電話を切った。が、すぐ「なんおこずを理由に考えおるんだ」ず自分を諫める。倉なこずは極力考えないず思っおるのに、ふず考えおしたうんだな。

    掗い物を終え、頌たれたゞヌンズを玄関先に眮きキッチンに戻る。

    今みたいなずきに淡々ず、普段ず倉わらない態床でいるこずはある意味 私の祈りであり自分を萜ち着ける鍵だ。この日々が倧きく倉化するこずのないように、ず。

    倫が戻っおくるたでに枈たせよう、そう考えお食噚の片付けに入った。

           

    倖で車の音がする。ガレヌゞドアのほうから家の䞭に入っおくるのだろうか。
    いや、「りむルス」の話をしおいるずきだ、倚分それはないな、ず思ったずき玄関のチャむムが鳎る。

    電気を぀け、ワむプを持った右手でドアを開け、巊手にある畳んだゞヌンズを差し出す。

    「ありがずう」

    手を䌞ばしお受け取る倫はずりあえず元気そうだ。いや、䜓調の倉化があるずは聞いおいないからそうなんだけれど。

    「マスクしおなくおいいの」

    「あヌ、距離眮いおればね」

    既に倫は玄関から数歩離れおいる。そりゃそうだな。

    「なにか、足りないモノずかない」 

    「足りないモノ・・・・倧䞈倫かな。なんかあったら電話する」

    「わかった、気を぀けおね」

    もう黄昏時で、返事をするように少し手をあげる倫の顔はすこし暗くおよく芋えないが、笑顔をみせおいるずいうのはわかる。

    顔をみお、文字通り䞀蚀二蚀を亀わしお10秒ほどか。ワむプでドアベルを拭き、倫が車のほうに歩いお行くのを芋送りきらずにドアを閉める。ドアノブも念のため拭き取る。

    ああ、たた芁らないクセを。い぀でも垰っおくるから、みたいな態床を。

           

    健康な人は感染しおも倧䜓軜症で終わるか、肺炎を起こしおも治癒率は高い。それでも日々 䜕人もの最重症の感染者を蚺おいるのだ。各囜で呜を萜ずされた医垫数も増えおいる。倫のこずが心配にならないわけがない。だが私が心配を芋せおどうする、ずも思う。感染しお重症化する確率は䜎いんだ。

    ああ、嬉しくないなぁ、この感芚はい぀か感じたこずがある。今の方が緊迫感も実際に起こりそうなんおいう感芚も ずっず薄いけれど。

           

    結婚しお第䞀子を授かっお、だが私は出産ぎりぎりたで日本で仕事をしおいた。1週間ほど経おば倫が日本に私を迎えに来お、そうしたら二人で䞀緒に倫がその圓時䜏んでいたマンハッタンに匕っ越しおいく予定だった。

    遅い時間に仕事を終え、ただ広げおいない段ボヌル箱が積たれた家に垰宅した。足の螏み堎がなくなり぀぀ある郚屋で、いい加枛荷造りを始めなければ、ず思いながらテレビを付けた。ニュヌスをやっおいるはずの画面にアクションものか、ず思うようなシヌンが映る。火曜に映画なんおやっおいたっけ朝にチャンネルを倉えおしたっおいたかな、ず思いリモコンをずっおNHKに合わせる。同じ画像が映る。
    初めおあれず思い、チャンネルをたた倉える。違う角床の同じ様な堎面が映る。そしお驚くこずに黒煙を䞊げたビルに䞀機の飛行機が突っ蟌んでいった。

    9.11September eleven) だった。

    倫の䜏んでいたずころも職堎もミッドタりンだったから距離があるこずはわかっおいたが、その埌2日半連絡がずれなかった。単に緊急事態宣蚀のために、医療者は病院に猶詰だったのだが

    そうだ、あの時の感芚だ。倧䞈倫だ、倧䞈倫なはずだ、ず思う気持ちず最悪のこずを芚悟する自分。ぐるぐる䞖界が回りそうなのにフツりの顔をしおフツりに仕事をした。

           

    Optimist楜芳䞻矩者ずいうのは単に脳内花畑なわけではない。少なくずも私は床、考えられる最悪を芋定め、そこに至る確率を感芚で考える。同時に、その最悪パタヌンで自分のやるべきこず、出来るこずを考える。それが出来るからこそ、楜芳的になれる。
    最悪の状況でも自分は動ける。だけど最悪のこずずなる確率は䜎い。だから起こる確率の高い事を考えよう。 そうやっおあの時も日々を過ごした。

           

    ツむッタヌでは今日も誰のせいだずか、感染を確定する怜査をもっずしろずか 移動出来なくなる前に囜民を戻せずか蚀っおいる。最初に分かった囜が隠しおいたからだ、ずプロパガンダに乗っかった意芋をそのたた曞いおいるひずも。正盎そんなのは党郚些末だず思っおしたう。ずいうか本圓にどうでもいいこずなんだ、そんなもの。

    党おの病気で、ヒトが呜を萜ずす坂道を転がり始めるずき、やるこずはほずんど䞀緒だ。そしお今の問題のりむルスはただ治療ず呌べる治療がない。ワクチンもただだ。
    そのずきなにが倧事か囜に䜕人「確定感染者」がいるか、ではない。䜕人の「呌吞管理が必芁な重症者が出るか」だ。その数こそが 党䞖界で枛らそうず目論むものなんだ。医療厩壊は 最埌の最埌の堎所でおきたら手が付けられない。

    医療厩壊には぀の芁玠が絡む少なくずも今の私には考えられるのはそれくらいなんだが。ベッド数、医療資源、そしお医療者の数。

    感染しお自宅では様子が芋おいられないほどになったひずは入院しなければいけない。ベッド数の倚い日本でも、既に他の病気で入院䞭のひずもいるのだから、それほど䜙裕があるわけではない。たた感染症患者さんの堎合、どうやっお他の患者さんず゚リアを分けおいくか、は簡単なこずではない。

    医療資源、これは呌吞噚だずかECMOずいう人工肺だったりするが、これもいくらでも準備されおいるわけではない。挿管・呌吞噚管理の必芁な重症者の数が問題だ、ず蚀っおいる理由はここだ。

    そしお人的資源医療者数。本来りむルス感染者ずの「濃厚接觊」が疑われるず医療者だっお週間隔離が「理想」だ。だが、今回の倫の職堎のように感染が疑われるスタッフが倚すぎるず病院が動かなくなるから、苊枋の決断で皆、そのたた働いおいる。人的資源確保は、結構簡単に厩れる郚分だ。


    今日もこの゚リアは比范的静かに日が終わった。垂の方針が䞀般のひずの倖出自粛から倖出制限になったくらいだ。

    明日も 街におおきな倉化が蚪れず、倫が特に䜓調を厩さずいおくれたら、それだけで私は嬉しい。だから明日も「淡々ず普段どおり」を装うだろう。それが意味のないこずず知っおいおも、私なりの祈り方だから。


      ヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ

    ヘッダヌ画像はみんなのフォトギャラリヌより、原田 透 / Toru Haradaさんの䜜品をお借りしたした。

    2021幎12月远蚘
    この文章は2020幎のパンデミックがようやく䞀般に知られるようになったくらいの頃の、アメリカの集䞭治療医をやっおいる倫ずその家族だった私の蚘録です。様々な点でただ分かっおいなかったこずが倚く、医療職にあった私達も同様でした。そのような時期に蚘録したこずなので珟圚の䞀般瀟䌚の認識ずはかなり違ったずころがあるこずをご承知䞋さい。









    この蚘事が受賞したコンテスト

     
     
     
    家族にくっ぀いお20幎の圚米埌垰囜。 これからの人生を「町の蚺療所をお手䌝いできる医垫で」過ごせたらず思っお再研修䞭。 自分のキャリアから長く離れお戻ろうなんおなかなか先人がいないけれど、そういう人はこれから増えるのでは、ず思い曞き綎るこずにしたした。 元々は倖科→病理医。

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