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芋出し画像

蓮は咲くか


    坊䞻なのにモテたい。
    その煩悩が、寺を揺るがし、ロックバンドを生み、
    ひずりの男の人生を倉えた。

    あらすじ

    寺を継ぐためだけに生きおきた真面目すぎる僧䟶・誠䞀郎。圌の密かな悩みは、「たったくモテない」こずだった。

    そんなある日、寺に転がり蟌んできた借金たみれの元ロックミュヌゞシャン・鮫島に、「モテたきゃロックをやれ」ず唆され、成り行きでバンド掻動を始めるこずに。

    癜塗り姿でステヌゞに立った誠䞀郎は、抑え蟌んできた怒りず欲望を絶叫し、芳客を熱狂させおしたう。

    “僧䟶”ずしお生きるべきか。
    “自分”ずしお叫ぶべきか。

    檀家、効、亡き父の寺、そしお初めお自分を肯定しおくれた音楜――。

    これは、救われる偎だった男が、“誰かを救う存圚”になるたでの、爆音ず煩悩の物語。


    ※本䜜は脚本圢匏で執筆しおいたす。


    登堎人物


    二条 誠䞀郎祥厳寺の䜏職。バンドネヌムはゞョヌ。

    鮫島 晃バンドマン。ギタリスト。

    二条 ずもか誠䞀郎の効。高校生。

    劂月タクダミュヌゞシャン。鮫島ず同じバンドだった。

    二条 勝久誠䞀郎の父。生前、祥厳寺の䜏職だった。


    二条 剛健勝久の匟。祥厳寺ずは別の寺で䜏職をしおいる。

    塩野目勝昭祥厳寺の檀家総代。

    束氞健䞉祥厳寺の檀家。

    束氞由矎健䞉の劻。

    束氞圭健䞉、由矎の息子。


    䜐々朚 麗奈

    客船にいた女性
    



    本線

    〇 カフェ

          排萜たカフェの䞀角。
          キャスケットを被り、堎にそぐわないほど玠朎な恰奜の二条誠䞀郎25ず、矎しく着食った䜐々朚麗奈25が向かい合っお座っおいる。

    麗 奈「別れよ」

          硬盎する誠䞀郎ずその衚情を䌺う麗奈。
          誠䞀郎、静かに深呌吞をしお。

    誠䞀郎
    「  麗奈さんが望むなら」

    麗 奈
    「拍子抜けしお  いいの」

    誠䞀郎
    「そう蚀わせおしたった僕が悪いず思うので  」

          麗奈、怅子から立ち䞊がっお。

    麗 奈
    「そういうずころが䞀番嫌いだった」

          お札をテヌブルに叩き぀けおその堎を去っおいく。
          茫然ずする誠䞀郎、䞀人぀ぶやく。

    誠䞀郎
    「  『䞀切皆苊』、かぁ」

    〇 葬儀䌚通

          お斎の料理がテヌブルに䞊んでいる。
          喪服姿ですでに出来䞊がっおいる参列者も䜕人か。
          袈裟を着おいる誠䞀郎。
          隣に座る二条ずもか(16)は箞が進たない誠䞀郎を心配そうに芋おいる。
          するず、酔っぱらった参列者がなれなれしく誠䞀郎に肩を回しお。

    参列者
    「車。䜕乗っおんの」

    誠䞀郎
    「  はい」

    参列者
    「坊䞻っお、結構最っおんでしょ 俺なんおさ、小遣い少なくお毎日ギリギリよ。お垃斜、俺もほしいわぁ」

    誠䞀郎
    「  あはは。普通の、䞭叀車ですよ」

    ずもか
    「あの 僧䟶はサラリヌマンず䞀緒で――」

          蚀い返そうずするず誠䞀郎に制止される。
          去っおいく参列者。

    誠䞀郎
    「『智慧あるものに怒りなし』。腹を立おおも、損するのは自分だっお。お釈迊様も蚀っおるからね」

    ずもか
    「  玍埗いかない」

    〇 祥厳寺・党景倜

          無情に響く鐘の音。

    〇 同・境内倜


          鐘を鳎らしおいたのは誠䞀郎である。
          寺の䞭に入ろうずするず、賜銭箱の傍に人圱が。
          泥棒、バレたこずに気付き逃げ出す。

    誠䞀郎
    「埅っお」

          埌を远う誠䞀郎。逃げる泥棒。

    誠䞀郎
    「ちょ  ッ 逃げないで 食べるものが無いなら差し䞊げたす 居堎所がないならここに泊たればいい」

          しかし足は止たらない。

    誠䞀郎
    「埅っお――」

          蹎躓いお転ぶ誠䞀郎。
          泥棒、驚いお䞀瞬足を止める。

    誠䞀郎
    「なんで  なんでい぀も僕は」

          地面に這い぀くばりながら涙を零す。
          泥棒、逃げ去ろうか迷っおいる足元。
          仕方なく誠䞀郎に歩み寄っおくる。

    泥棒の声
    「泣くなよ  」

          誠䞀郎が顔を䞊げるず、ボサボサの髪にラむダヌスゞャケット    を着た鮫島晃35が立っおいる。

    〇 同・枡り廊䞋倜

                      飯を貪る鮫島の隣で項垂れる誠䞀郎。

    誠䞀郎
    「やっぱり髪の毛がフサフサでないずだめなんだ」

    鮫 島
    「かっこいいハゲもいるだろ」

    誠䞀郎
    「クリスマス䞀緒にいられないし」
     
    鮫 島
    「䞀倜に賭けすぎだろ」

    誠䞀郎
    「お寺は離婚率高いし」

    鮫 島
    「結婚にすら到達しおないけどな」

    誠䞀郎
    「声にならない声」

          その様子を面癜がっおいる鮫島。

    誠䞀郎
    「  すみたせん、僕の話ばかり。お賜銭に手を出したのも、䜕か理由があるんですよね。僕でよければ盞談に乗りたす」

    鮫 島
    「いいよ。アヌティストの悩みは凡人には理解できねえからな」

    誠䞀郎
    「アヌティスト 芞術家の  」

    鮫 島
    「ギタヌを鳎らす仕草」

    誠䞀郎
    「音楜家  」

    鮫 島
    「そそ。倧勢のファンの期埅に応えなきゃいけないっお、すごいプレッシャヌなわけよ。それで぀い぀い」

    誠䞀郎
    「  期埅に応えなきゃならない苊しみは、僕にもわかりたす。  早く盞手を探さないずっお、毎日そればかり考えおしたっお  」

    鮫 島
    「  」

          鮫島、䜕かを考えるそぶり。

    鮫 島
    「あのさ。今床バンド組むんだけど、なんかいい名前ない」

    誠䞀郎
    「  えっ。そんな倧事なこず、僕なんかが決めおいいんですか」

    鮫 島
    「ああ」

    誠䞀郎
    「責任重倧ですね  ええず  」

          芋回すず、ただ蕟の蓮が目に入る。

    誠䞀郎
    「『ロヌタスフラワヌズ』なんおどうでしょう」

    鮫 島
    「なに」

    誠䞀郎
    「蓮の華のこずです。煩悩だらけの䞖界でも、染たるこずなく枅く正しく生きる。泥の䞭で矎しく咲く蓮の華は、僧䟶が目指すべき姿なんです」

    鮫 島
    「ふうん。『ロヌタスフラワヌズ』か。うん。䞀人で玍埗いいじゃん」

     箞をくわえお、数秒。

    鮫 島
    「じゃ、俺達は今日から『ロヌタスフラワヌズ』な」

    誠䞀郎
    「はい」

    鮫 島
    「バンド組もうぜ。お前ず俺で」

    誠䞀郎
    「僕ずあなたで  バンド」

    鮫 島
    「ちょうど週間埌にラむブがある。出るんだよ。お前も」

          懐のチケットを誠䞀郎に枡す。

          誠䞀郎、チケットをたじたじず芋るも状況が呑み蟌めおいない。
          鮫島、煙草に火を぀けお。

    鮫 島
    「モテるぞバンドマンは」

                        途端に目を茝かせる誠䞀郎。

    誠䞀郎
    「も、モテたすか」

    鮫 島
    「モテるず蚀えばバンドマン。バンドマンずいえばモテる」

                        笑みが抑えきれない誠䞀郎、邪念を振り払うように頭を暪に振っお。

    誠䞀郎
    「ここの䜏職は僕䞀人なので。寺を空ける時間が増えるようなら、たず檀家さんに蚱可をもらわないず  」

          鮫島、怪蚝な顔で煙を吐く。

    鮫 島
    「  『煩悩だらけの䞖界でも、染たるこずなく枅く正しく生きる』ねえ」
          煙草の煙に咜かえる誠䞀郎。

    鮫 島
    「俺に蚀わせりゃ逆だね。無菌状態のずころにいたら咲くものも咲かないだろ」

    誠䞀郎
    「やっず咳が止たりはあ  」  

    鮫 島
    「お前に肥料をくれおやるよ」

          ニダリず笑う鮫島、猶ビヌルを誠䞀郎に枡す。

    誠䞀郎
    「あ、僕は結構です。仏教には『䞍飲酒戒』ずいうのがあっお――」

    鮫 島
    「いいから飲めよ。誰も芋おねえから」

    誠䞀郎
    「でも仏様が――」

    鮫 島
    「いいからいいから」

          キョロキョロず呚りを芋回す誠䞀郎。

    〇 祥厳寺日替わり・朝

                         境内に繋がれたダギが鳎いおいる。

    〇 同・枡り廊䞋朝

                         酒の空き猶や総菜の容噚などが散乱。
          ゎミの䞭で眠る誠䞀郎を揺さぶるずもか。

    ずもか
    「お兄ちゃん。お兄ちゃん」

    誠䞀郎
    「重い瞌を開け」

    ずもか
    「檀家さんずこにお芋舞い行くんじゃないの あずこのおじさん誰」 

          涎を垂らし爆睡しおいる鮫島。

    誠䞀郎
    「そうだった えっず  泥酔時の蚘憶を思い出そうず音楜家の方だから しばらく泊めおさしあげお。小声で檀家さんには芋぀からないようにね」

          誠䞀郎、二日酔いでフラフラしながら駆けおいく。

    〇 束氞家・リビング

                       怅子に腰かけおいる誠䞀郎。
          束氞由矎、お盆に乗せたお茶をテヌブルに眮きながら。

    由 矎
    「せっかく来おくれたのにごめんなさいね。お父さん、今ちょうど寝ちゃっおお」

    誠䞀郎
    「いえ、いいんです。健䞉さんのお顔が芋られただけで」

          リビングから、ベッドで暪たわる束氞健䞉の姿が芋える。
          身䜓からのびる点滎の管。

    由 矎
    「  もう、起きおる時間の方が少なくなっちゃっお」

           キッチンの匕き出しを開ける由矎。

    由 矎
    「ごめんね、お茶菓子切らしおるの。これでいいかな」

          お茶の暪に添えられた萜雁。
          萜雁をじっず芋぀める誠䞀郎。

    誠䞀郎
    「  倧奜きです 萜雁。この控えめな甘さが」

          萜雁を手に取り、二぀に割るずボゎッずいう鈍い音。
          もそもそず口に運ぶ誠䞀郎。
          䞊の郚屋から束氞圭が䞋りおきお、誠䞀郎を䞀瞥。

    誠䞀郎
    「こんにちは」

                         圭、耳にむダホンを぀けたたたで聞こえおいない。

    由 矎「こら 倱瀌でしょ圭」

                           圭、枋々むダホンを取る。

    誠䞀郎
    「あはは。いいんですよ。圭くん、䜕を聎いおるの」

    圭  
    「  いろいろ」

          匕き出しからクッキヌの小袋を取り出す圭。
          思わず凝芖する誠䞀郎だが、芋なかったこずにしお。

    誠䞀郎
    「じゃあ、鮫島晃も知っおる」

          途端に目の色が倉わる圭。

    誠䞀郎
    「ん」

    圭  
    「鮫島晃の曲聎くの」

    誠䞀郎
    「圧を感じう、うん。有名なのかな その人」

          圭、芪指で倖ぞ誘う。

    〇 束氞宅・圭の郚屋

                        が所狭しず䞊んでいる棚。
          テレビの前に䞊んで座る圭ず誠䞀郎。
          音楜番組の映像が流れおいる。
          液晶の䞭、ギタヌを激しくかき鳎らす鮫島。

    誠䞀郎
    「なんか  思っおたより激しいね」

    圭  
    「かっこいいっしょ。鮫島晃、超ギタヌうたくおさ」

    誠䞀郎
    「ぞえぇ」

    圭  
    「坊さんが鮫島晃聎くなんお。かなり意倖だけど」

          次の瞬間、シャツを脱ぎ捚お䞊半身裞になる鮫島。
          ぎょっずする誠䞀郎。

    圭  
    「この䌝説の回を機にテレビから呌ばれなくなったけど、それも含めおクヌルっおいうか」

    誠䞀郎
    「呌ばれなくなった」

          曎に䞋たで脱ぎ党裞になる鮫島。
          芳客垭にそのたたダむブ。
          䌚堎が悲鳎に包たれる。

    圭  
    「䜕床芳おも最高」

          誠䞀郎、震える手で口を芆う。

    〇 祥厳寺・茶の間・枡り廊䞋

                        障子を勢いよく開ける誠䞀郎。
                        䞭には卒塔婆を曞く鮫島ずずもか。

    ずもか
    「あ、おかえり。ねえすごいよ。このおじさん、卒塔婆曞くの結構䞊手なの」

    鮫 島
    「照れるぞぞ」

          誠䞀郎、有無を蚀わさず鮫島の腕を掎んで廊䞋ぞず連れおいく。

    鮫 島
    「どうした。般若みたいな顔しお」

                         鮫島、煙草に火を぀ける。

    誠䞀郎
    「バンドの話はなかったこずに」

    鮫 島
    「は なんで」

    誠䞀郎
    「音楜性の違いです」

    鮫 島
    「ただ䜕もしおねえじゃん」

    誠䞀郎
    「では宗掟の違いです」

    鮫 島
    「なんだよ、䜕が悪かった 隠し事なんおしおない。党郚さらけ出しおるよ俺は」

    誠䞀郎
    「仰る通り、あなたが党郚さらけ出したから蟞めたいんです あんな音楜やったら檀家さんに離檀されちゃいたすよ」

          鮫島、説教に飜きた様子で吞い殻を倖に捚おる。

    誠䞀郎
    「拟っおください」

    鮫 島
    「枋々拟いぞヌぞヌ」

    誠䞀郎
    「寺を远い出したりはしたせん。ただ檀家さんに迷惑をかけるこずだけはやめおください。  お願いしたす」

          深々ず頭を䞋げる。
          気たずそうに頭をかく鮫島。

    〇 塩野目家・茶の間

                        机に曞類を広げおいる塩野目勝昭ず誠䞀郎。

    塩野目
    「じゃあ本堂の修繕費に぀いおは改めお総䌚で審議するずいうこずで」

    誠䞀郎
    「はい。よろしくお願いしたす」

                         塩野目、茶を飲みながら。

    塩野目
    「どう 最近。いい人芋぀かった」

    誠䞀郎
    「それが  お恥ずかしながら」

    塩野目
    「  そう。 た 誠䞀郎くんならすぐ良い人が芋぀かるよ。優しいし、人圓たりもいいしね」

    誠䞀郎
    「自虐的に笑いいえいえ  」

          誠䞀郎、居心地悪そうに身䜓を瞮める。
          塩野目、机の䞊の曞類をたずめお。

    塩野目
    「隣県の䞉犏寺あるじゃない そこは跡継ぎ芋぀からなくお。家族みんな、出おいくこずにしたみたいだけど」

    誠䞀郎
    「  」

    塩野目
    「そうだ、誠䞀郎くんに枡したいものがあるんだよ」

          腰を䞊げ、段ボヌルを誠䞀郎に枡す。
          開けるず、䞭に入っおいるのは叀びた掋服。

    塩野目
    「いいだろう。それ。うちの息子はもう着ないっおいうし。捚おるのはもったいないから」

          眉をピクリず動かす誠䞀郎。
          しかし䜕事もなかったように袖を通す。

    塩野目
    「䌌合う䌌合う。よりむケメンになったよ。これでいい人もすぐ芋぀かるなあ」

    誠䞀郎
    「あはは。たたたた」

    〇 同・枡り廊䞋

          先ほどのお叀を着たたた廊䞋を歩く誠䞀郎。

                         通りすがりに鮫島、ダサさに思わず二床芋。

    鮫 島
    「すげナりいや぀着おんな」

    誠䞀郎
    「  攟っおおいおください」

    鮫 島
    「嫌なら脱ぎゃいいだろ」

    誠䞀郎
    「あなたみたいに   すべおを晒けだせる人間ばかりじゃないんですよ」

    鮫 島
    「カラダに自信ねえっおか」

    誠䞀郎
    「そうじゃなくお いや  そっちも自信ないですけど」

          誠䞀郎、䜕か蚀いたげにもじもじしおいる。

    鮫 島
    「怪蚝な顔で䜕だよ」

    誠䞀郎
    「楜噚、朚魚しかできないんですけど、バンドやれたすかね  」

    〇 同・本堂

          本尊が食られおいる広い郚屋。
          メモを片手に正座しおいる誠䞀郎の呚りをぐるぐるず歩く鮫島。

    鮫 島
    「ドラムはサンプラヌでどうにかなるし、俺のギタヌがありゃあ十分。ずなるず、お前が担圓するのは――ボヌカルだ」

    誠䞀郎
    「え」

    鮫 島
    「バンドネヌムはゞョヌでどうだ。 二条のゞョヌ」

    誠䞀郎
    「無理です 歌なんお音楜の授業でしかやったこずないですよ」

    鮫 島
    「ボヌカルしかないだろ。楜噚できねえんだから」

    誠䞀郎
    「それはそうですけど  ロックバンドのボヌカルなんお具䜓的に䜕をすれば」
          姿勢を正し、ペンを握りなおす。

    鮫 島
    「簡単だよ。ロックの根源は『怒り』だ。怒りの感情をステヌゞ䞊で匕っ匵りだしお爆発させりゃいい」

    誠䞀郎
    「怒り  」

    鮫 島
    「あるだろ 日垞でムカ぀くこずの癟個や二癟個」

    誠䞀郎
    「  」
            虚空を芋぀めたたた硬盎する誠䞀郎。
    鮫 島
    「は」

    〇 同・庭倕方

          ずもかず草むしりをしおいる鮫島。
          ラむダヌスゞャケットに麊わら垜ずいうミスマッチな服装。

    鮫 島
    「坊さんっおさ、お前の兄ちゃんみたいな奎しかいないの」

    ずもか
    「お兄ちゃんみたいな奎っお」

    鮫 島
    「悟っおるっ぀ヌか、お人よしすぎるっおいうか」

    ずもか
    「  あそこにダギいるでしょ」

          境内の䞭に繋がれおいるダギ。

    ずもか
    「あの子、檀家さんからのお垃斜なの。お兄ちゃんが『お垃斜は断っちゃいけないから』っおそのたた飌っおるけど。単に飌えなくなっお抌し付けられただけ」

    鮫 島
    「どこたでお人よしなんだか」

    ずもか
    「そ。お兄ちゃんは特別」

    鮫 島
    「坊䞻になったのも、誰かに抌し付けられたからなんじゃねえの」

          冗談めかしお笑う鮫島。
          ずもかの足元。
                         芏則正しく巣に垰っおいく蟻の行列。
          ずもか、雑草を鷲掎みにしお。

    ずもか
    「  さぁね」

          匕っこ抜くず巣が厩れおいく。

    〇 同・茶の間日替わり早朝

                           垃団を被り暪になっおいる鮫島。
             倖から聞こえおくるダギの鳎き声。

    鮫 島
    「䜓を起こしうるせえ」

    〇 同・境内早朝

                        ダギに草を䞎えながら煙草を吞う鮫島。
          寒さで吐く息が癜い。
          誠䞀郎がお経を詠む声が聞こえおくる。
          × × ×
          本堂を芗くず、本尊の前に正座しおお経を詠んでいる誠䞀郎の姿。
          荘厳な空気に圧倒される鮫島。
          誠䞀郎、鮫島がいるこずに気付いお。

    誠䞀郎
    「おはようございたす」

    鮫 島
    「うっす」

          倖に吞い殻を投げ、誠䞀郎の暪に座る。

    誠䞀郎
    「拟っおください」

    鮫 島
    「枋々拟いぞヌぞヌ。  お前さ、なんでそんなにモテたいわけ」

    誠䞀郎
    「なんですかいきなり」

    鮫 島
    「だっお。普通坊さんっお、そういう欲を捚おるもんなんじゃねえの」

    誠䞀郎
    「埌継者が早めに決たっおたら安心でしょう   檀家さんも、ずもかも。それが䜏職ずしお、最重芁な仕事なので」

         鮫島、呆れた衚情。

    鮫 島
    「  䜏職だからモテなきゃいけないっお。そんな『枅玔掟女優』くらい矛盟した話あるか」

    誠䞀郎
    「朝から䜕を蚀っおるんですか」

    鮫 島
    「立ち䞊がりラむブたで時間がねえっお話だよ。緎習するぞ」

         本堂を出おいく鮫島。

         法衣を翻し鮫島を远う誠䞀郎。

    〇 ラむブハりス前週間埌

                   ペンで雑に曞かれた 『ロヌタスフラワヌズ』のポスタヌが颚で翻っおいる。

    〇 ラむブハりス・楜屋

                    壁䞭にステッカヌが貌られた汚い楜屋。
         メモを片手に右埀巊埀する誠䞀郎。
         鮫島、゜ファで寝転がりながらそれを暪目で芋おいる。
     
    誠䞀郎
    「お客さん、僕のせいで倧勢垰っちゃうかも」

    鮫 島
    「倧勢来るほどチケット売れおたら賜銭なんか盗たねえよ」

    誠䞀郎
    「檀家さんにバレたら  」

    鮫 島
    「倧䞈倫だ。絶察バレないようにする」

    誠䞀郎
    「でもでも」

             萜ち着かない誠䞀郎に鮫島、むラむラ。

    鮫 島
    「起き䞊がりうるせえ」

    誠䞀郎
    「怯えるひっ」

    鮫 島
    「ロックバンドのボヌカルに番倧切なこず。お前に教えるの忘れおたわ」

    誠䞀郎
    「メモを片手にえっ。なんですか」

    鮫 島
    「お前は今倜ここで死ね」

          誠䞀郎、唖然。

    鮫 島
    「ニルノァヌナっお知っおるか」

    誠䞀郎
    「涅槃を知らない坊䞻はいたせん」

    鮫 島
    「合っおるけどそっちじゃねえ。䌝説的ロックバンドの名前」

    誠䞀郎
    「はぁ」

    鮫 島
    「『少しず぀消えおいくのなら、いっそ燃え尜きた方がいい』ニルノァヌナのボヌカル、カヌトコバヌンが最期に残した蚀葉だよ。お前はどうだ 燃え尜きるどころか湿気っおんじゃねえか」

          黙り蟌んでしたう誠䞀郎。

    〇 ラむブハりス・芳客垭・ステヌゞ

                         開挔前。ドリンクを片手に駄匁る芳客。
          入り口から黒服のを匕き連れた劂月タクダが入っおくる。
                         芳客、䞀斉にタクダの方ぞ集たる。
         『ワヌルドツアヌお疲れ様です』などの声が飛んでいる。
          それを袖から芋おいる鮫島。
          鮫島の埌ろには誠䞀郎のシル゚ット。

    誠䞀郎
    「声  なんか僕たちが出る前にすでに盛り䞊がっおたすけど」

    鮫 島
    「恚めしそうに  フン。ただの客寄せに䜿われおるずも知らずに」
          ステヌゞ袖の鮫島に気付き、手を振るタクダ。

    誠䞀郎
    「声どちらさたですか」

    鮫 島
    「  元カノみたいなもんだ。未緎がたしいったらありゃしねえ。あい぀にゃ俺は高嶺の華よ」

          タクダに接觊しようず詊みる芳客たちが屈匷なにはねのけられおいる。

    誠䞀郎
    「声確かに高嶺の華ですね」

    鮫 島
    「  」

          鮫島、苛立った様子で誠䞀郎のシル゚ットの方を振り返っお。

    鮫 島
    「いいか テクニックや歌詞なんおどうでもいい。お前の人生、今倜が最埌だず思っお歌っおみろ。仏から干されおも、隣で俺が芋おおやるからよ。いくぞ」

          ステヌゞに向かっお歩き出す鮫島。

                         ステヌゞに人圱が珟れ、スケキペのように癜塗りにされた誠䞀郎にスポットラむトが圓たる。
                         棘だらけのリストバンドずチョヌカヌを身に着け た誠䞀郎。
          芳客、ステヌゞの方を䞀瞥するが、すぐにタクダの方に興味が戻る。
          緊匵で唟を飲み蟌む誠䞀郎。
          ギタヌを携えた鮫島ず目が合う。
          鮫島、誠䞀郎を促すように匷く頷く。
          マむクを握る誠䞀郎。

    誠䞀郎
    「蚀い聞かせるように  『怒り』を爆発させる」

          鮫島がギタヌをかき鳎らし始める。
          ギタヌの音色に恍惚ずするタクダ。
          ぎこちなくリズムに乗りだす誠䞀郎。
          クスクスず笑う芳客。

    誠䞀郎
    「盆圌岞の䟛物に萜雁は勘匁しろ い぀もお䞋がりを倧量に持お䜙しおる 固いしたいしお矎味くもないのに ラむダヌベルトのバックルくらいでかい 口の氎分奪われるんだよ」

                          喉が぀ぶれそうな皋のシャりト。
           芳客、驚きで目を䞞くしおいる。
           鮫島、その様子を芋お歊者震い。

    誠䞀郎
    「法事で家に行ったずきになあ 謎のオリゞナルドリンク出しおくるのやめろ 飲むのに勇気いるんだよ 既補品にしおくれよ頌むから」

          銖を振り回しながら叫ぶ。
          芳客、吞い蟌たれるようにステヌゞに近づいおくる。
          目を茝かせ、前のめりになるタクダ。

    誠䞀郎
    「毎日毎日お䞋がりばっかり お恵みばっかり もううんざりなんだよ 俺のために䜜ったものをくれよ 俺だけのために」

          誠䞀郎、着おいたシャツをビリビリに砎く。
          沞きた぀芳客。
          鮫島、誠䞀郎の熱にあおられ、ギタヌを振り䞊げる。
    激しい衝撃音。

    〇ラむブハりス・楜屋

                         誠䞀郎、癜塗り姿で䞊半身裞のたた頭を抱えおいる。
          鮫島、誠䞀郎の肩に優しく手を眮いお。

    鮫 島
    「同志よ」

    誠䞀郎
    「やめおください」

    鮫 島
    「どこに隠しおたんだよあの煩悩」

    誠䞀郎
    「死にたい  」

    鮫 島
    「歌詞はどうでもいいずは蚀ったけど、俺の曞いた歌詞ほが歌っおなかったな」

    誠䞀郎
    「ごめんなさい  」

    鮫 島
    「䜕謝っおんだ。俺が求めおたのはアレだよ あの情熱ず衝動  」

    誠䞀郎
    「顔を䞊げおえ」

    鮫 島
    「ピッチも正確、肺掻量もある。毎日お経詠んでるからか こりゃあ  カリスマボヌカルずしお爆モテしちたうかもな」

    誠䞀郎
    「本圓、ですか」

    鮫 島
    「マゞマゞ」

    誠䞀郎
    「  」

             癜塗り姿でりキりキの誠䞀郎。
                            テヌブルの䞊に眮かれたスマホが鳎る。

    誠䞀郎
    「手に取りはい」

    ずもか声
    「もしもし  今どこ」

    誠䞀郎
    「えっず  ちょっずホヌムセンタヌに買い出しに。陀草剀切らしおたから」

    ずもか声
    「そっか。束氞さんずこ、亡くなったから枕経あげにきおっお。ホヌムセンタヌなら近いし、すぐいけるよね」

                車の急ブレヌキ音。

    〇 束氞家・和宀

                               癜垃を被せられた健䞉の遺䜓。
                枕食りの前で枕経をあげる誠䞀郎。
                メむクを萜ずしきれず、顔がやや癜い。
                すぐ偎で由矎がハンカチで目を拭う。
                 圭、涙をこらえお俯く。

    〇 同・玄関

                                誠䞀郎を送り出す圭ず由矎。

    由 矎
    「本日はお忙しい䞭、䞁寧にお勀めいただきたしおありがずうございたした」
                  深々ず頭を䞋げる由矎ず無蚀の圭。

    誠䞀郎
    「頭を䞋げずんでもございたせん」

    由 矎
    「  あの人、誠䞀郎くんのこず、我が子のようにかわいがっおたでしょ だからね、あなたが立掟な䜏職になっお。  お経をあげおくれお。涙声できっず、すごく喜んでるず思う。ありがずうね。本圓に、ありがずう  」

                   由矎、震える手で誠䞀郎の腕に瞋る。
                   誠䞀郎、気たずそうに目をそらす。

    誠䞀郎
    「そんな、僕なんお  党然  」

                   誠䞀郎が着る法衣の袖から棘が生えたリストバンドが芋えおいる。倖し忘れたのだ。
                   圭、リストバンドに気付き目を芋開く。

    〇 祥厳寺・枡り廊䞋倜

                                   床に腰かけおいる誠䞀郎ず鮫島。
                    鮫島、猶チュヌハむ片手に䞊機嫌。

    誠䞀郎
    「  」
                  誠䞀郎、ラむブの時に぀けおいた棘たみれのチョヌカヌを掌の䞊で芋぀める。 

    鮫 島
    「ラむブ埌によくお経なんお詠めるな。蟛気臭くお仕方ねえわ」

    誠䞀郎
    「  」

                 誠䞀郎、姿勢を正し鮫島の方を向く。

    誠䞀郎
    「  僕の䜿呜は寺を護り、仏様の教えを受け継いでいくこずです。ラむブは。あの経隓は。ずおも  」

                   ゆっくりず瞌を閉じる。

    × × ×
    フラッシュ

                  ステヌゞの誠䞀郎に吞い寄せられるように集たっおくる芳客。
    × × ×

    誠䞀郎
    「ずおも   忘れられるものではありたせん。でも  やっぱり。バンド掻動を続けるのは――」

                       鮫島、新たに酒のプルタブを開ける。

    鮫 島
    「ああそう。  次のラむブの誘いも来おるのに、もったいねえな」

                    鮫島、わざずらしくため息。

    鮫 島
    「タクダが䞊げた俺たちのラむブ映像、もう䞇再生いっおんだぜ」

                                  誠䞀郎、気にしないふりをしお緑茶を飲むが、耳をそばだおおいる。

    鮫 島
    「そういや、『ゞョヌくんに䌚いたい』っおコメント来おたな」

    誠䞀郎
    「  」

    鮫 島
    「『ゞョヌくんず結婚したい』っおコメントもあったかも」

    誠䞀郎
    「  」

    鮫 島
    「あもったいない」

                   誠䞀郎、我慢ならず立ち䞊がり。

    誠䞀郎
    「爆モテしたっお あんな音楜やっおたなんお蚀えないし、どこで出䌚ったかずか、檀家さんになんお説明すればいいんですか」

    鮫 島
    「なんでも銬鹿正盎に蚀う必芁ねえだろ」

    誠䞀郎
    「戞惑い  」

                   䞖話が焌けるな、ず頭をかく鮫島。

    鮫 島
    「いいか こんな時に䜿える魔法の蚀葉を教えおやる」

    誠䞀郎
    「魔法の蚀葉  ゎクリ」

    鮫 島
    「『知人からのご玹介』だ」

    誠䞀郎
    「チゞンカラノ  」

    鮫 島
    「そ。『知人からのご玹介』。合コンで出䌚った奎らの垞套句よ。披露宎で䞀䞇回は聞いたね。これさえ䜿えば濁せる。俺を信じろ」

    誠䞀郎
    「迷う  」

    〇 束氞家・圭の郚屋倜

                                   真っ暗な郚屋。
                     ベッドに寝転がりながらスマホを眺めおいる圭。
                                   頬には涙の跡。
                    スマホの液晶にはロヌタスフラワヌズのラむブ動画。投皿䞻はタクダである。
                     画面を芳ながら泣き笑いする圭。

    〇 ラむブハりス・舞台袖週間埌

                                    癜塗り姿の誠䞀郎。
                                    舞台袖で項垂れおいる。

    誠䞀郎
    「ブツブツず欲に負けたわけじゃない。鮫島さんがどうしおもっおいうから」

    鮫 島
    「おい、そろそろ行くぞ」

    誠䞀郎
    「やや萜ち蟌みながらはい」

    鮫 島
    「今日も暎れようぜ。ゞョヌ」

                   なれなれしく誠䞀郎の肩に手を回す。
                   されるがたたの誠䞀郎。
                   舞台袖からステヌゞぞ出るず、割れんばかりの嬌声。
                                  ステヌゞから芋える満員の芳客。
                   抌し合いながら、䞀挙手䞀投足を芋逃すたいず誠 䞀郎を芋぀めおいる。

    誠䞀郎
    「状況が呑み蟌めず硬盎  」

                  鮫島、誠䞀郎を促すようにギタヌをかき鳎らし始める。我にかえる誠䞀郎。

    誠䞀郎
    「も、盛り䞊がっおいくぞ」

                     歓声で応える芳客。
                     誠䞀郎、匷匵った衚情が綻ぶ。

    〇 ラむブハりス・裏口倜

                                 癜塗り姿のたたの誠䞀郎ず鮫島が裏口から出るず、ファンの矀衆にもみくちゃにされる。
                                 朜り抜けお車に乗り蟌む鮫島。
                  ファンに囲たれ団子状になっおいる誠䞀郎。

    誠䞀郎
    「さ、鮫島さぁん」

                 ず助けを求めるが。

    鮫 島
    「楜しんでこい。ずもかには俺が蚀っずく」

                 ず誠䞀郎を残しお車のドアを閉める。
                 ファンの枊に飲み蟌たれおいく誠䞀郎。
                 鮫島のスマホが鳎っお。

    鮫 島
    「うっす」

    タクダ声
    「あ、鮫ちゃん」

    鮫 島
    「  お前かよ」

    タクダ声
    「冷たいなあ。いい話もっおきたのに」

    〇 祥厳寺・玄関倜

                 鮫島が垰っおくる。
                 寝巻で迎えるずもか。

    ずもか
    「おかえり。あれ  お兄ちゃんは 䞀緒じゃないの」

    鮫 島
    「ああ。あい぀な。買い出し行ったあずさ、檀家に捕たっちたっお。たた長話に付き合わされおたわ」

    ずもか
    「  そっか」

                  鮫島、ずもかの浮かない衚情を芋お。

    鮫 島
    「どうした」

    ずもか
    「や  お兄ちゃん、最近お寺にいないこず倚いからさ」

    鮫 島
    「  」

    ずもか
    「もしかしお」

    鮫 島
    「ドキリずする」

    ずもか
    「私に隠しお病院通っおたり  ずか」

    〇 ラブホテル倜

                              照明の電源が芋぀からず、ベッドの呚りをたさぐる誠䞀郎。
                困った誠䞀郎、ベッドの䞊に仁王立ちしお。

    誠䞀郎
    「倩井に向かっおヘむ、シリ 照明消しお」

                必死に倩井に向かっお叫んでいる誠䞀郎。
                隣でそれを芋おいたファンの女性。
                誠䞀郎の腕を匕く。

    ファン
    「ゞョヌさん、かわいい」

    誠䞀郎
    「  」
                ゆっくりず抌し倒される誠䞀郎。

    〇 祥厳寺・茶の間倜

    ずもか
    「鮫島を無垢な瞳で芋぀める」

    鮫 島
    「芖線が痛い  兄ちゃんだっお、䞀人になりたいこずだっおあるだろ」

    ずもか
    「  」

    鮫 島
    「  䜙蚈な心配しおないで、子䟛はさっさず寝ろ。あい぀には俺から蚀っずくから」

    ずもか
    「うん  」

    鮫 島
    「  」

    〇 束氞家・圭の郚屋倜

                            寝転んでスマホを芋おいる圭。
              ロヌタスフラワヌズのアカりントに、テレビ出挔の情報が茉っおいるのを発芋する。
           衝撃のあたり飛び起きる圭。

    〇 祥厳寺・玄関倜

             玄関の戞が開き、ぞろぞろの誠䞀郎が垰っおくる。
             埅っおいた鮫島、立ち䞊がっお。

    鮫 島
    「鶏ガラみたいになっおんぞ。倧䞈倫か」

    誠䞀郎
    「䞊の空でふぁい」

    鮫 島
    「  お楜しみ盎埌に悪いが。しばらくおずなしくしずけ」

    誠䞀郎
    「  」

    鮫 島
    「テレビ出挔の話が来おる。今バレるのはたずい。ずもかも心配しおるしな」
           誠䞀郎、ゆっくりず靎を脱ぐ。

    誠䞀郎
    「  そうですね」

    鮫 島
    「  」

    誠䞀郎
    「気を付けたす  ず蚀いながらも䞊の空」

          その背䞭を䞍安そうに芋぀める鮫島。

    〇 同・本堂日替わっお朝

                          本堂に集たる檀家の人々。
          ずもか、前方で檀家に向かっお案内をする。

    ずもか
    「定䟋法話䌚にお越しくださり誠にありがずうございたす。導垫が入堎いたしたすので、合掌におお迎えください」

          䞀同、合掌。が、誰も入っおこない。
          ずもか、本堂を出お廊䞋を芗くず、疲れ切っお眠っおいる誠䞀郎がいる。

    ずもか
    「揺さぶっおお兄ちゃん 檀家さんがお埅ちだから」

    誠䞀郎
    「ねがけおいけない  オヌディ゚ンスを埅たせおは」

    ずもか
    「オヌディ゚ンス」

          × × ×
         檀家に語りかける誠䞀郎。

    誠䞀郎
    「かのニヌルダングは蚀いたした。『倉わり続けるからこそ、倉わらずに生きおきた』ず。これは仏教における諞行無垞の考えに等しく――」

    檀家
    「小声で誰だ。ニヌルなんずかっお」

    檀家
    「小声で知らん。シッタヌルダの芪戚ずかだろ」
    × × ×
          熱狂に包たれるラむブハりス。
          満員の芳客を前に、鬌気迫る衚情で煜る誠䞀郎。

    誠䞀郎
    「おたえらぁ 次のラむブで䌚う時たで死ぬんじゃねえぞ 死んだら殺しおやるからなぁああああ」

          芳客、倧歓声で応える。

    誠䞀郎
    「受け取りやがれぇええええ」

          銖に巻いおいたタオルを投げる。
          芳客が䞀斉に手を䌞ばすず――圭が぀かみ取る。
          圭、タオルを倧事そうに抱き抱える。
    × × ×
          祥厳寺境内で逅撒きむベント䞭。
          檀家の集団、逅を取ろうず手を䌞ばしおいる。

    誠䞀郎
    「受け取りやがれぇえええええ」

          誠䞀郎、鬌の圢盞で逅を投げる。
          誰も受け取らず地に萜ちおいく逅。
    × × ×
          ラむブハりス楜屋。
          ラむブ盎埌、汗をかいたたたの誠䞀郎。
          ファンに向かっお卒塔婆を差し出しお。

    誠䞀郎
    「お前に最高の戒名を授けおやる。結婚しよう」

    ファン
    「は 重すぎ。キモ  」

          隣で芋おいた鮫島、呆れ果おおいる。

    〇 祥厳寺・境内倜

          倜のお勀めをしおいる誠䞀郎。
          悲しみを晎らそうず朚魚を激しく連打。
          心配になっお本堂を芗いおいるずもかず鮫島。
          二人の埌ろから足音が近づいおくる。
          鮫島、我慢ならずに誠䞀郎のもずぞ。

    鮫 島
    「おたえさ――」

         誠䞀郎、鮫島の声で振り向くず――。

    剛 健
    「久しぶりだな」

         ずもかの埌ろに二条剛健がいるこずに気付き硬盎する。

    〇 同・茶の間倜

          法衣を着た剛健の前に正座するずもかず誠䞀郎。

    剛 健
    「  檀家総代から連絡がきたよ。䜏職ずしおのお前の姿勢に、䞍安を感じるず」

          ずもか、暪目で誠䞀郎を芋る。
          隣の郚屋で聎き耳を立おおいる鮫島。

    剛 健
    「ここたで育おおくれた檀家の皆様ぞの感謝の気持ちはないのか   寺を護っおきた  お前の父さんの気持ちを螏みにじる぀もりか」

    誠䞀郎
    「  それは」

          剛健、返事がない誠䞀郎に呆れお。

    剛 健
    「  僧堂で修行しなおしおこい」

    誠䞀郎
    「  」

    〇 同・境内倜

          網代傘を被り、荷物を携えた誠䞀郎が寺の出口ぞず向かっおいる。
          その埌を远う鮫島。

    鮫 島
    「だから蚀ったんだ おずなしくしずけっお」

    誠䞀郎
    「  」

    鮫 島
    「生攟送たでに戻っおこれんのかよ」

    誠䞀郎
    「  」

    鮫 島
    「ふざけんなよ  この倧事な時期に」

    誠䞀郎
    「怒りたいのはこっちですよ たた坊䞻だらけの集団生掻。  やっぱりバンドなんおやらなきゃよかった  」

    鮫 島
    「嫌ならやめちたえばいいだろ 坊䞻なんお」

    誠䞀郎
    「無理ですよ  」

    鮫 島
    「無理じゃねえだろ」

    誠䞀郎
    「無理ですっお   には、間に合ったら出たす。それでいいでしょ」
          鮫島、倧きくため息。

    鮫 島
    「  お前さ。ロックっお、ただのゞャンルだず思っおるだろ」

    誠䞀郎
    「い぀ものロック蘊蓄は必芁ないですよ。今は」

    鮫 島
    「泣きおえ時。人生の分岐点にいる時。い぀だっお。俺の䞭で生きるロックスタヌが語り掛けおくるんだよ。奎らの歌声が。蚀葉が。『お前は今、ロックに恥じない生き方をしおんのか』っおな」

    誠䞀郎
    「  」

    鮫 島
    「䜕を聎くか遞ぶこずは、どう生きるかを遞ぶこずだ。  お前の今の生き様は、ファンに誇れんのか」

    誠䞀郎
    「  たるで宗教ですね」

    鮫 島
    「笑っおそうかもな。  改宗しちたえ。お前も」

          真正面から向かい合う二人。

    誠䞀郎
    「  解散した方がいいず思いたす。今床こそ  宗教性の違いです」

          寺を出おいく誠䞀郎。
          鮫島、瞳に倱望の色が滲む。

    〇 同・本堂倜

          䞍安を玛らわすように掃陀に打ち蟌むずもか。
          荷物を背負った鮫島がやっおきお。
          ずもか、鮫島の倧荷物に気付く。

    ずもか
    「え  おじさんたで、いなくなっちゃうの」

    鮫 島
    「  䞖話になったな」

    ずもか
    「ずっずいればいいじゃん  」

          鮫島、困ったように埮笑む。

    鮫 島
    「  お前に話しおおきたいこずがある」

    ずもか
    「」

    〇 同・境内深倜

          寂し気に鳎くダギ。
          荷物を抱え寺を出おいく鮫島。

    〇 僧堂前倜

          芋枡す限りの坊䞻が堂内で座犅を組んでいる。
          心底嫌そうにため息を぀く誠䞀郎。


    〇 公園深倜

          ベンチに腰掛けおいる鮫島。
          スマホを手に取り、電話をかける。

    タクダ声
    「もしもし 鮫ちゃん どうしたの」

    鮫 島
    「  この間蚀っおた、生攟送のあれ。やっぱなしで」

    タクダ声
    「えっ。なんで」

    鮫 島
    「切ろうずする」

    タクダ声
    「埅っお   俺、ずっず埌悔しおるんだよ。鮫ちゃんの才胜を生かせなかった事」

    鮫 島
    「  」

          鮫島、煙草に火を぀けお歩き出す。

    タクダ声
    「組んでは離れる鮫ちゃんをずっず芋おきたけどさ、この間のラむブを芋た時すごい嬉しくお。やっず鮫ちゃんにも  運呜の人が珟れたっお」

    鮫 島
    「  キモむ蚀い方すんじゃねえ」

    タクダ声
    「ごめん。でもさ、圌。今たでで䞀番、鮫ちゃんの曲ず合っおるず思う」

          信号で立ち止たり。

    鮫 島
    「  それは䞀番、俺がわかっおるよ」

    タクダ声
    「そっか。  出挔、考えおみおよ。最近䞀抌しのバンド、スタッフから聞かれおおさ」

          鮫島の目の前を倚くの車が通っおいく。

    鮫 島
    「  ああ。あのさ」

    タクダ声
    「うん」

    鮫 島
    「  ありがずな」

    タクダ声
    「え」

          照れ隠しに電話をブツ切りする鮫島。
          信号が青になり、煙草をその堎に捚おお歩き出す。足取りが心なしか軜い。
          ふず立ち止たる。
          捚おた煙草が気になり、螵を返す。
          スピヌドを萜ずさずに目前に向かっおくるバむク。

    〇 僧堂・枡り廊䞋朝

          敎列し、座犅を組んでいる僧䟶の集団。
          その䞭に誠䞀郎の姿もある。
          枡り廊䞋から芋えるのは芋枡す限りの青空。
          その䞭を飛んでいく䞀矜の鳥。
          ふず瞌を開け、鳥を目で远う誠䞀郎。

    〇 祥厳寺・玄関日埌

          誠䞀郎が垰っおくる。

    誠䞀郎
    「ただいた」

    ずもか
    「パタパタず走っおきおおかえり 早かったね」

          出迎えるずもか、なぜか喪服を着おいる。

    誠䞀郎
    「うん。早めに解攟されおよかった  今日、葬儀の予玄かなんか入っおるの」

    ずもか
    「  蚀い出しにくそうに」

          埐々に青ざめおいく誠䞀郎の衚情。

    〇 葬儀堎党景倕方

    〇 葬儀堎倕方

          焌銙の列に䞊ぶ人々。
          花祭壇には鮫島の遺圱が食られおいる。
          鮫島の䞡芪が端で芋守る。
          列に䞊ぶ誠䞀郎ずずもか。
          僧䟶がお経を唱えおいる。
          䞍快そうに顔をしかめる誠䞀郎。
          顔を䞊げるず鮫島の遺圱ず目が合う。

    〇 同・倖倜

          車に乗り蟌もうずするずもかず誠䞀郎。

    タクダ声
    「ゞョヌくん」

          誠䞀郎が振り返るず、喪服姿のタクダ。

    タクダ
    「ゞョヌくんでしょ 君」

    誠䞀郎
    「䞀瞬驚くが  誰かず間違えおたせん」

    ずもか
    「あの人。テレビによく出おる   ゞョヌっお 誰」

    タクダ
    「間違えるはずない。君のラむブは党郚芋おるもの」

    誠䞀郎
    「芳念しお  」

    タクダ
    「  寂しいけど。鮫ちゃんにしおは長生きしたほうかな。『俺もカヌトコバヌンみたいに歳で死んで䌝説になる』が口癖だったから」

    誠䞀郎
    「  」

    タクダ
    「あのさ。明日の生攟送  君䞀人だけでも出た方がいいず思う」

    誠䞀郎
    「無理に決たっおるじゃないですか。この状況で」

    タクダ
    「俺もそう思っおたよ。  でもさ」

          誠䞀郎をたっすぐ芋据える。

    タクダ
    「鮫ちゃん、あんな湿っぜい葬儀を喜ぶ人じゃないでしょ」

          䜕も蚀葉が返せない誠䞀郎。

    タクダ
    「鮫ちゃんらしく  送っおやりたいっお思うんだよね」

    誠䞀郎
    「  」

    タクダ
    「サポヌトギタヌが必芁なら、俺が入るよ。鮫ちゃんより䞋手くそだけど。  考えおおいお」

          去っおいくタクダ。
          わけがわからず誠䞀郎ずタクダの背䞭を亀互に芋るずもか。

    〇 車内倜

          運転する誠䞀郎、助手垭にはずもか。
          ずもか、口を開いおは蟞める、を繰り返す。
          誠䞀郎、おもむろにオヌディオにを差し蟌む。
    画面に䞊ぶデモ音源の曲たち。
          その䞭の曲を遞ぶず、激しい音楜が流れ始める。
          確かに聞こえる鮫島のギタヌの音。

    誠䞀郎
    「これ、鮫島さんが䜜った曲。  俺さ、あの人ずバンドみたいなこずやっおお」

    ずもか
    「  」

    誠䞀郎
    「でももうやらないし、やれないから。声が震えおもう二床ず  こんなバカなこずしないから。檀家の皆さんに謝っお  ちゃんず蚱しおもらっお  それで  」

          泣き出しおしたいそうな誠䞀郎、ぐっずこらえる。
          ずもか、誠䞀郎を芋ないように窓の倖に目を向ける。

    〇 束氞家・圭の郚屋倜

          曎新が止たったたたのロヌタスフラワヌズのツむッタヌを眺めおいる圭。

    圭  「  」


    〇 祥厳寺党景朝・日替わり

    〇 同・本堂(朝)


          本堂に集たっおいる檀家の集団。
          廊䞋で埅機しおいる誠䞀郎ずずもか。

    誠䞀郎
    「こんなこずに付き合わせおごめん」

    ずもか
    「  」

          誠䞀郎の顔を芋䞊げ、䜕か蚀いたげなずもか。
          郚屋ぞ入っおいく二人。
          檀家の前で正座をしお。

    誠䞀郎
    「この床は皆様に倧倉なご迷惑をおかけしたしお、誠に申し蚳ございたせんでした」

    ずもか
    「申し蚳ございたせんでした」

    誠䞀郎
    「先代からの門颚を守り぀぀、曎なる粟進をしお参りたす。皆様には倉わらぬ倧慈悲心をもっおご指導ご鞭撻をお願い申し䞊げる所存です」

          檀家、頭を䞋げる二人を芋お。

    塩野目
    「  自分の圹目を、忘れないようにね。寺はあくたで、檀家ず共有の財産。君たちは䜏たわせおいただいおる立堎なんだから」

          同意するように頷く檀家䞀同。

    誠䞀郎
    「はい」

          匵り詰めた空気の䞭――圭が立ち䞊がる。
          ロヌタスフラワヌズのタオルを銖に巻いた圭。

    圭  
    「バンドは」

    誠䞀郎
    「  」

    圭  
    「たたラむブで䌚おうっお 蚀っおただろ」

          頭を぀けたたた硬盎する誠䞀郎。
          圭、ずかずかず前ぞ出おきお誠䞀郎の襟を鷲掎む。
          慌おお止めに入る由矎。

    由 矎
    「䜕しおるの」

    圭  
    「あんたのこず嫌いだったよ。ずっず。笑った顔が気持ち悪いし。人の死で金皌いでる死神みおえな奎だなっお」

    塩野目
    「眰圓たりなこずを蚀うんじゃない」

          他の檀家も入っおきお圭を矜亀い絞めにする。

    圭  
    「芪父が亡くなった時 あんたの唱えるお経なんかじゃ、悲しみは癒えなかった。だけど  だけど  」

          タオルを匷く握りしめる圭。
          立ち尜くすずもか。
          誠䞀郎、䜓の震えをおさえながら頭を䞊げる。

    誠䞀郎
    「  人違いじゃないかな」

    圭  
    「  」

          郚屋の倖ぞ連れ出される圭。
          錻で笑いながら。

    圭 
     「そうかもな。あの鮫島晃が認めたゞョヌは。ロヌタスフラワヌズのゞョヌは。あんたみたいなダサい奎じゃねえもん」

    誠䞀郎
    「  」

    ずもか
    「  」

          圭が出お行き、静寂が戻る。
          ずもか、意を決しお口を開く。

    ずもか
    「お父さんが亡くなった時。お兄ちゃんが継ぐっお蚀わなかったら、私たちはここを远い出されおた。ずっず感謝しおる。  でも――ずっず埌悔もしおる」

    誠䞀郎
    「  」

    ずもか
    「お兄ちゃんが奜きなこず、やりなよ」

          誠䞀郎、呆気にずられる。

    誠䞀郎
    「だけど  そうなったらここを――」

    ずもか
    「わかっおる。  おじさんの話聞いおたら、そうなっおも倧䞈倫かなっお」

    誠䞀郎
    「おじさん」

    ずもか
    「頷く」

    〇 回想祥厳寺・本堂倜

    鮫 島
    「お前に話しおおきたいこずがある」

    ずもか
    「」

    鮫 島
    「応揎しおたバンドがさ、䜜颚倉わっおいったり、キャラが倉わっおいったりするこずあるだろ」

    ずもか
    「  なんの話」

    鮫 島
    「ファヌストアルバムの時の初期衝動の感じがよかったのに、急に倧衆向けにポップになったなずか。逆にポップだったバンドが急にハヌド寄りになったなずか。あれ、すげダセえず思っおたんだけど」

    ずもか
    「わけがわからず  」

    鮫 島
    「  でも、倉わるのには勇気がいる。たずえ奜みの音楜じゃなくなっおもさ。倉わろうず決めたそい぀の勇気を。芚悟を。決断を尊重しおえっお  そう思うはずだろ。本圓のファンなら。本圓に  そい぀を倧切に思っおいるのなら」

    ずもか
    「  」

    鮫 島
    「なん぀ヌか  頭をかいお人間、どこ行っおも倧䞈倫だっお話   たあ、どうしようもなくなったら金目のもんでも盗め。今は電動自転車のバッテリヌがアツいらしいぞ」

    〇 祥厳寺・本堂回想戻る

    誠䞀郎、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらも笑っおしたう。

    誠䞀郎
    「効に有害なこず教えないでくださいよ  」

    ずもか
    「お兄ちゃんが䜏職をやめおも、仏様にお仕えする人は、他にもいるず思う。  でも、『圭くんにずっおの仏様』はお兄ちゃんしかいないんじゃない」

    誠䞀郎
    「  」

          逡巡しお――寺の倖ぞ飛び出おいく。
          残されたずもかず檀家の集団。
          気たずくなっおはにかむずもか。

    〇 楜屋

          本番間際でバタ぀いおいる楜屋。
          タクダのもずに電話がかかっおくる。

    タクダ
    「はい。  え もちろん。もちろんだよ サポヌトは   いらない わかった 埅っおるよ」

          電話を切り、笑みがこがれ出す。

    〇 車内

          電話を切り、車を発進させる誠䞀郎。

    〇 鮫島ずの思い出をモンタヌゞュ

          䞀緒にショップを巡る鮫島ず誠䞀郎の様子。
          音楜に぀いお熱く語っおいる鮫島。
          × × ×
          道端にある自販機の釣銭口を持る鮫島。
          止める誠䞀郎。
          × × ×
          ステヌゞ䞊でギタヌをかき鳎らしながら、誠䞀郎を芋お楜しそうに笑う鮫島。
          × × ×
          パチンコ店の床に萜ちた玉を拟い集める鮫島。止める誠䞀郎。

    〇 スタゞオ・祥厳寺茶の間・寺の前のカットバック

          煌びやかなセット。
          タクダを含めたアヌティストたち、ひな壇に座っおいる。
          䞭倮に立぀叞䌚にスタッフが耳打ちし、はけおいく。

    叞䌚
    「  先日悲しいニュヌスがあったばかりのバンドですが、なんず、急遜出挔が決たりたした。劂月タクダいち抌し ロヌタスフラワヌズです どうぞ」

          玠顔のたたの誠䞀郎がスタゞオに珟れる。
          スタンドマむクの前に立぀誠䞀郎。

    誠䞀郎
    「はじめたしお。ロヌタスフラワヌズです。芋おの通り  元々僧䟶をやっおいたす」

          玠顔の誠䞀郎にざわ぀くスタゞオ。

    誠䞀郎
    「既に知っおる方も倚いずは思いたすが、ギタリストの鮫島晃が亡くなりたした。未だに  信じられたせんが」

          痛たしい衚情で芋守る出挔者たち。

    誠䞀郎
    「『䞀切皆苊』。この䞖はすべお苊しみでできおいる。人生は思い通りにはならないから  耐え忍んで生きおいこうずいうのが仏教の考え方です。楜しみにしおいたラむブも。倧切な人ずの時間も。倧事にすればするほど。楜しめば楜しむほど終わった時に苊しさは増す。楜しさなんお䞀瞬の幻だから  どうせ苊しみに倉わるっお  そんなこずわかっおるのに。わかっおるはずなのに  」

          スタゞオ、誠䞀郎の話に聞き入っおいる。

    誠䞀郎
    「耐え忍ぶだけの人生なんおロックじゃないっお。  僕の䞭で生きるロックスタヌが。鮫島晃がうるさいから だから――」

          手を挙げ音響スタッフに合図を送る誠䞀郎。
          音響スタッフ、から音楜を流し始める。
          スタゞオに響く鮫島のギタヌの音。

    誠䞀郎
    「俺ず䞀緒に楜しんで 苊しんでくれぇえええええ」

          マむクスタンドを思い切り蹎りずばす。
          タクダ、涙目で真っ先に立ち䞊がる。
          × × ×
          祥厳寺茶の間。
          テレビの前で頭を抱える檀家たち。
          䞀人拳を振り䞊げるずもか。
          × × ×
          祥厳寺前。
          スマホで芋守る圭、䞀人歓声を䞊げる。
          × × ×
          激しく歌い䞊げる誠䞀郎。 
          スタゞオの党員が曲にノッおいる。
          なぜか法衣の垯を緩め始める誠䞀郎。
          スタッフの衚情が曇りはじめる。
          叞䌚、バタ぀くスタッフを芋お䞍安に。
          盛り䞊がりが最高朮ぞ。
          誠䞀郎、すべおを脱いでカメラに向かっおダむブする様がスロヌで。
          叞䌚ずひな壇のアヌティスト、茫然。
          笑うしかないタクダ。
          × × ×
          祥厳寺茶の間。
          卒倒する檀家たち。

    ずもか
    「ここたでやれずは蚀っおないんだけどな」

          × × ×
          祥厳寺前。
          圭、スマホを芋ながらガッツポヌズ。
          × × ×
          スタゞオ。
          燃え尜きお床に倒れる誠䞀郎。
          その満足気な衚情ず矎しいお尻。

     幎埌

    〇 ロヌタスフラワヌズ事務所党景

    〇 同・䞭

          誠䞀郎のラむブやの宣䌝ポスタヌが壁 に貌られおいる。
          その䞭で䜜業をする瀟員たち。
          䞭心にあるひず際倧きいデスクにはずもかの姿。

    ずもか「(スマホに)もしもし 乗れた」

    〇 客船内

          海颚なびく客船のデッキ。
          海を芋ながら電話をしおいる誠䞀郎。
          傍らには屈匷なが぀いおいる。

    誠䞀郎
    「うん。もう出発したよ。それじゃ」

          スマホを切る誠䞀郎。
          広倧な海を眺めお。

    誠䞀郎
    「信じられないですよね  海の向こうで僕らの音楜を聎いおる人がいるなんお。  芋おたす 鮫島さん」

          感傷に浞り、目を现める。
          こみあげおきお――。

    誠䞀郎
    「嘔吐」

    
    「背䞭をさすりだから飛行機にしたしょうっお蚀ったのに。飛んだら時間もかかりたせんよ 北海道なんお」

    誠䞀郎
    「息も絶え絶えに怖いし嫌です。デノィッドボりむも飛行機嫌いだから船で来日しおたっお鮫島さんが――」

    
    「ハむハむ。氷氎持っおきたすから。ちょっず埅っおおくださいね」

          その堎を去る束原。
          地面にぞたりこむ誠䞀郎。
          目の前にハンカチが差し出される。
          誠䞀郎が顔を䞊げるず、矎しい女性。
          埌光が差したように神々しく芋える。

    女性
    「倧䞈倫ですか」

    誠䞀郎
    「ハンカチを受け取りハむ  」

    女性
    「今日は波が高いから  結構揺れたすね」

          誠䞀郎に優しく埮笑む。

    誠䞀郎
    「  」

          誠䞀郎、花柄のハンカチを握りしめる。

    タむトル『蓮は咲くか』

    【了】



    創䜜倧賞、初参加です。

    noteに䜜品を公開するのは初めおなので少し緊匵しおいたす。

    『蓮は咲くか』

    坊䞻なのにモテたい。
    そんな煩悩から始たるロックンロヌルです。

    最埌たで読んでいただけたら嬉しいです。
    感想や奜きなセリフ、奜きなキャラクタヌなど、䞀蚀でもいただけたら飛び䞊がっお喜びたす。

    応揎よろしくお願いしたす


     
     
    もふおみ 🐶 仕事、本、プロレス、音楜、矎術、映画、おいしいものなど。 奜きなものを入口に、自分の人生を分析する゚ッセむが倚めなアラサヌです。 ご盞談などございたしたら お気軜にお問い合わせください🐕 📩mofuomi.work@gmail.com

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