
包丁研ぎ、意識しています|聞かれる前に気づく、という気配り
金悟です。
「包丁を研ぐ」と聞くと、寿司職人や板前さんが、砥石の前で一心不乱に向き合っているイメージがあるかもしれません。
修行のような、面倒な作業。
そう思われる方も多いと思います。
でも、今は違います。
買ったその日から、包丁を10回ほど動かすだけで、安全に切れ味が戻る研ぎ器が、巷で簡単に手に入ります。
修行も、特別な技術も必要ありません。

うちには、包丁が4本あります。
普通の両刃が3本(うち1本はペティナイフ)、そしてパン切り包丁が1本。
パン切り包丁は、刃が波型になっているので、専用の研ぎ器が必要です。
このパン切り包丁、前から家にはありました。
ただ、以前は主にカットされたパンを買っていたので、使用頻度はあまり高くなく、研ぐ必要もありませんでした。
それが変わったのは、コロナ禍で外出が難しくなった頃からです。
自宅でホームベーカリーを使い、エリさんが自家製パンを焼いてくれることが増えました。
カットされていないパンを切る頻度が上がり、パン切り包丁専用の研ぎ器を初めて使うようになったのです。

普通の波型の研ぎ器でそのまま研いでしまうと、波の頂点しか研げず、凹んだ部分はまったく研げない。
そのまま続けると、波形そのものが崩れてしまうそうです。
専用の研ぎ器は、波のカーブに合わせて砥石が動く仕組みになっていて、形を崩さずに刃を整えてくれます。
ただ、研いだからといって、それで全部解決するわけではありませんでした。
パンの粉の種類や、焼き上がりからの経過時間によって、切りやすさがまったく違うことも知りました。
同じ包丁、同じ研ぎ具合でも、出来立てのパンと、少し時間が経ったパンでは、刃の入り方が変わってくる。
包丁だけの問題ではなく、パン自体の状態も含めて考える必要がある。
奥が深い世界です。
普通の包丁は、引くだけで研げる簡易タイプの研ぎ器を使っています。
どちらも、覚えることなんてほとんどありません。
溝に刃を当てて、すっと引く。それを10回ほど繰り返すだけ。
誰にでも使える、シンプルな道具です。
それぞれ違う道具で、それぞれの刃を整える。
これも、最初は知らなかったことでした。
最初は、「言われてから」研いでいた
包丁を研ぐようになった最初の頃は、切りにくくなったらエリさんが教えてくれる、という関係でした。
「最近、切りにくいかも」
そう言われてから、研ぐ。
それで十分だと思っていました。
そもそも、私が包丁研ぎを担当するようになったのも、エリさんの一言がきっかけでした。
「研ぐの、怖いから」
本当は、誰でも簡単にできることです。
覚えることなんてほとんどない、シンプルな道具だということは、もう書きました。
それでも、エリさんはそう言って、私に役割を与えてくれました。
研いだ後は、いつも
「すごいねっ!切れ味最高👍」と、
少し大げさに褒めてくれます。
転機:黙って研いでおいたら
ある時、まだ何も言われていないけれど、「そろそろかな」と思って、黙って研いでおいたことがありました。
特に伝えずに、いつも通り台所に置いておいただけです。
それなのに、エリさんはめちゃくちゃ喜んでくれました。
言われる前に気づいてもらえたことが、嬉しかったようです。
それから、私の姿勢が変わりました。
言われる前に研ぐ。
それが難しいときは、
自分から「包丁の切れ味どう?」と聞く。
待つのではなく、こちらから確認する。
それだけで、エリさんの反応がまったく違いました。
トマトの皮で、わかるらしい

エリさん曰く、切れ味の違いが一番わかるのは、トマトの皮だそうです。
皮が薄くて柔らかいぶん、刃が少しでも鈍ると、すぐに皮が破れてぐちゃっとなる。
研いだばかりの包丁なら、すっと滑らかに入っていく。
その違いが、料理をする人にはすぐにわかるのだと教えてもらいました。
褒められて、台所に立つようになった
最近は、私も台所に立って野菜を刻むことが増えました。
きっかけは、エリさんに切り方を褒めてもらったことです。
決して手早くはありません。
でも、薄く切ったり、スライスの幅を等間隔に揃えたりするのは、案外向いているようでした。
洗濯のたたみと同じ感覚かもしれません。
丁寧に、一定のリズムで整えていく作業が、性に合っているのだと思います。
「ここは旦那の出番だね」
そう言われると、つい張り切ってしまう。
男性は、褒められるとやる気が出る生き物です。
私だけかもしれませんが、少なくとも私はそうでした。
エリさんは、本当に乗せ上手です。
そうして台所に立つようになって、切れ味の大切さを、身をもって再確認しました。
切れる包丁と、切れない包丁。
同じ野菜を切っているのに、かかる時間も、断面の仕上がりも、まったく違う。
副次的な効果として、料理の盛り付けまで良くなりました。
断面が綺麗だと、皿に乗せたときの見栄えが変わってきます。

斧と、一閃の剣
我が家には、手動のぶんぶんチョッパー(みじん切り器)もあります。
便利な道具ですが、刃で「叩く」ような切り方になるので、切れ味も、できあがる料理の味も、研いだ包丁とは別物です。
それに、使った後はパーツが多くて、洗い物が地味に面倒です。
例えるなら、
力任せに振り回す武器と、
一閃で仕留める剣のような違い。
ある漫画で、
二刀流で猪突猛進するキャラクターと、
一瞬で相手を仕留める剣士がいますが、
その対比に近い気がしています。

研いだばかりの包丁の切れ味は、それくらい鋭い。
「切られた鬼も、痛みがわからない」というシーンがありました。
共感力の高いエリさんは、
「野菜もきっと自分が切られたと気づいていないんじゃないかな?」と、
研いだ包丁に切られた野菜と
善逸に切られた鬼の気持ち
に寄り添ったようです。
それから、エリさんは、少量のみじん切りなら、チョッパーを使わずに包丁で済ませるようになったのです。
道具を出して、洗って、しまう手間を考えると、研いだ包丁一本で十分な場面が増えたと、エリさんは嬉しそうでした。


百貨店での検証
少し前、気になっていたブランドから、
新しい包丁が発売されました。
正直に言うと、百貨店に行く前から、もう買うつもりでいました。
少なくとも私は、購入にかなり前のめりでした。
ただ一応、切れ味を確かめてから決めようと、百貨店まで足を運びました。
販売員の方も自信満々に紹介してくれました。
実際にトマト🍅キュウリ🥒鶏肉🍗などを試し切りをさせてもらって、驚いたことがあります。
その高級な包丁の切れ味が、自宅でいつも研いでいる包丁と、ほとんど変わらなかったのです。
その瞬間、考えが変わりました。
新しい包丁を買う必要はない。
私が、もっと積極的に研げばいいだけじゃないか。
道具そのものの性能差より、手入れの差の方が大きいのかもしれません。
結果として、新しい包丁を買わずに済みました。
無駄な出費を抑えられたのは、地味だけれど、ありがたい発見でした。
ただ、百貨店で収穫がなかったわけではありません。
まな板のことを、教えてもらいました。
まな板によって、包丁へのダメージが変わる。
そして、まな板によって、長時間使ったときの手へのダメージも変わる。
知らなかったことでした。
手にも包丁にも優しいまな板。
切るときの音も静かになって良いとのことでした。
百貨店で教えてもらったまな板を参考に、その後ネットで調べ尽くし、選りすぐりの逸品を購入することができました。
(エリさんグッジョブ👍)

※まな板の入手までのお話は、我が家の厳選グッズとして別の記事で紹介しますので、お楽しみに♪😊
包丁を研ぐことだけを考えていたのに、まな板まで視野が広がった。
道具は、一つだけでは完結しないものだと、改めて感じました。
反省していること
ここまで、褒められて嬉しかった話を、たくさん書いてきました。
正直に言うと、その逆を、私はまだできていません。
エリさんが作ってくれた料理を、無言で食べてしまうことがあります。
当たり前のように食べて、感想も感謝も言わずに、他の話を始めてしまうこともあります。
そういう時、エリさんは少し不機嫌になります。
当然だと思います。
私は褒められると、あんなに嬉しくて、やる気が出る。
それなのに、エリさんに同じことを返せていない。
感謝と配慮が足りなかったと、後から反省することばかりです。
特によくないのが、食事中に集中していないことです。
頭の中で仕事のことを考えてしまい、エリさんが話しかけてくれても、生返事をしてしまう。
これは、絶対にやってはいけないことだと、わかっています。
食事の時間は、二人にとって大切な時間を共有する時間です。
仕事のことは、
その時間の外に置いておく。
最近は、その場に合った音楽を流すようにもしています。
ジャズピアノが流れる夜もあれば、カフェミュージックが流れる朝もある。
音楽があるだけで、いつもの食事が、少しだけ特別な時間に変わります。
包丁研ぎを褒めてもらって気づいたことを、料理にも返していく。
それが、次の自分の課題です。
最後に
包丁研ぎは、ただ刃を整えるだけの作業ではありませんでした。
聞かれる前に気づくこと。
切れ味の違いを、料理を作る人の視点で理解すること。
そして、それが盛り付けや家計にまでつながっていくこと。
「切れ味どう?」
その一言を、これからも続けていきたいと思います。
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伏見金悟