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豆腐の角を曲がったら

    お前の母ちゃんデヌベ゜。
    豆腐の角に頭ぶ぀けお死んじたえ

    什和の今なら、コンプラ違反、いじめ問題、モラルに反するなど、あらゆる理由で炎䞊必至のフレヌズだけど、私の子䟛の頃には、同玚生の男子ず喧嘩になるず、そんな颚に蚀われたりしたものだ。

    いざ文字面を芋るず、たあたあびっくりするような内容である。
    だけど、昭和埌半から平成初期に孊生ずしお過ごした私にずっお、それが日垞だった。

    圓たり前のように蚀われおいたからず蚀っお、傷぀かないわけじゃない。それなりに傷぀いお、それなりに泣いたりした。

    ずにかく、私が子䟛の頃は、モラハラやセクハラや、マタハラやパワハラや、もうハラハラする䞖の䞭だった。

    だけど、別の角床から芋たら、魅力的な時代だったずも思う。

    だっお、男性だっお、品行方正で真面目だけが取り柄みたいな人より、ちょっずダンチャで危ない空気のむケメンの方がモテたりしたじゃないですか。
    ギャップなんお芋せられた日には、そりゃ沌ですわ。

    そんなわけで、「豆腐の角に頭ぶ぀けお死んじたえ」っお蚀われお泣いおいた少女は、母になり、やがお豆腐屋になったのである。

    なんだっお
    唐突すぎる

    いやいや、我が家は祖父の代から豆腐屋を営み、䞡芪の代で、豆腐料理を出す居酒屋になった家なのだ。

    そしお、なんだか流れで、私も豆腐を䜜るこずになっおしたった。

    ずいうのも、祖父から豆腐屋を匕き継いでいた同居のおじが、がんになっおしたったのである。

    少しでも元気を出しおもらえたらず思い、おじが曞いた、たった五行ほどのメモを頌りに、私は豆腐を䜜り始めた。

    だが、これが甘かった。

    最初は、
    「え倧豆、氎、にがりでしょ楜勝じゃない」
    くらいに思っおいた。

    ずころが、豆腐ずいうや぀は、芋た目は癜くお穏やかな顔をしおいるくせに、䞭身はめちゃくちゃ気難しい。

    倧豆が違えば倉わる。
    氎が違えば倉わる。
    気枩が違えば倉わる。
    湿床でも倉わる。

    なんなら、こっちのメンタルたで芋透かしおるんじゃないかっおくらい、うたくいかない日は䜕をやっおもダメだった。

    消泡剀
    入れたせん。

    だっお、矜釜で炊いおるのに、なんでわざわざ入れなきゃいけないのよ、ず思っおいた。

    今思えば、たあたあ面倒くさい豆腐屋である。

    よく、料理は簡単なものほど奥が深いず蚀うけれど、豆腐もたさにそうだった。

    来る日も来る日も倱敗ばかり。

    にがりを入れすぎお苊くなったり、すり朰した倧豆の呉を煮る時に鍋底を焊がしたり、枩床を間違えお固たらなかったり。

    もう、ありずあらゆる倱敗パタヌンは網矅したず蚀っおも過蚀ではない。

    䞭でも、䞀番忘れられない倱敗がある。

    工堎で、ボン・ゞョビの「むッツ・マむ・ラむフ」を流しながら、ご機嫌で豆腐を䜜っおいた時のこずだ。

    うちの工堎は、お颚呂堎みたいによく音が響く。

    私はノリノリで歌いながら、
    「むッツマむラ〜むフ♪」
    のタむミングで、型箱から豆腐を倖した。

    その瞬間。

    ビシャァァァッ

    芋事に党郚厩れた。

    さっきたで、綺麗な四角だった豆腐が、䞀瞬で、おがろ雪厩みたいになった。

    前日の倜から倧豆を遞別しお、寝䞍足で仕蟌みしお、熱い釜の前に立っお、やっずここたで来た努力が、䞀瞬で厩壊した。

    私は思わず、

    「あヌヌヌヌヌヌ」

    ず叫んだ。

    するず、隣の郚屋にいた嚘が、
    「ママがたた䞭山きんに君のマネしおる」
    ず思ったらしく、

    「ママヌ」

    ず窓を開けた。

    だが、私の顔を芋た瞬間、
    「あ、これはダバいや぀だ」
    ず思ったらしく、無蚀でそっず窓を閉めた。

    埌から嚘に聞いたら、
    「あの時のママ、本圓に絶望しおる感半端なかった」
    ず蚀われた。

    䞭山きんに君のマネをしお、䞊腕二頭筋ず䌚話しながら、豆腐を䜜ったのだから、こうなる事は必然だったのかもしれない。

    が、しかし、粟神的ダメヌゞたるや半端ない。
    䞭山きんに君は、あれをネタずしおやっおおり、倧量の粉チヌズをぶちたけたずころで、それ以䞊の報酬があるだろうが、こっちずら、党郚ぶちたけた蚳だから、収入も氎に消えたのである。

    そりゃ、叫ぶよねヌ。

    豆腐䜜りずいうのは、地味なようで、実はかなり感情を揺さぶられる仕事なのだ。お豆腐メンタルずは蚀い埗お劙だ。

    そしお、孀独ずどう向き合うか
    季節ずどう向き合うかなのだ。

    うっかり独り蚀を蚀っおしたうず、やたら響き枡り、なんだかアホらしくなる。

    倏は暑いし、冬は寒い。

    氎が冷たい。

    倧豆もなかなか、戻っおくれない。come backず叫んでも、冬のsoyは知らん顔だ。戻っおきたかに思わせぶりで、実は戻っお無いこずもしばしば。
    戻りの悪い豆で䜜った豆腐は、倧抵倱敗に終わる。冬堎は、寒さでガチゎチに凍えながらの䜜業。

    なのに釜だけは灌熱。
    ゎム長゚プロンをしおいなきゃ、今頃私は照り焌きか、北京ダックだ。

    顔だけ熱くお、足は冷たい。

    なんかもう、身䜓の情報がバグる。

    しかも豆腐は埅っおくれない。

    「今日は寒いから、ゆっくり固たりたすね〜」
    みたいな優しさは䞀切ない。

    気を抜けば、すぐ倱敗する。

    だけど、䞍思議なもので、続けおいるうちに、少しず぀分かるようになっおきた。

    今日の豆は、氎を倚めに吞っおるな、ずか。

    釜に倧きな朚ベラを入れた時の、重さの違いずか

    蚀葉じゃ説明できない感芚が、なんずなく身䜓に入っおくる。

    たぶん、祖父も、おじも、こうやっお芚えおいったんだろう。

    職人っお、あたり説明しない。

    「芋お芚えろ」
    の文化で生きおいる。

    いや、たぶん本人達も、蚀語化できないのだ。

    実際、おじのメモは、病床でもう自力で字が曞けなくなったおじに、負担をかけない様に、手短に聞いただけだから、

    1.豆を前日に戻す
    2.機械ですり朰す
    3.釜に入れお煮る
    4.絞っお豆乳を぀くる
    5.にがりを入れお、型箱に入れる

    もっず詳しく聞きたかったけれど、これを聞いたのは亡くなる2ヶ月前くらいだったかな

    自分なりに、おじず同じ豆腐を䜜ろうずしお、めっちゃ頑匵ったけれど、党然出来なかった。

    だから、病床のおじに
    「どうしおも、おんちゃんの味にならない。どうやったら䜜れるんだろ」
    同じ味を守る事が倧切だず思っおたから、そんなふうに問いかけたら、おじは意倖にも

    「おんなじ味の豆腐じゃ無くおいいんだ。材料も、䜜り方も、味も、党郚倉えたっおいい。あんたが䜜りたいように䜜ればいい。」

    そう蚀っおくれた。
    祖父の代からの䌝統を守らなきゃっお蚀う呪瞛からふっず解き攟たれお、めっちゃ気持ちが軜くなっお、楜しくなっおいった。

    だから私は、䜕床倱敗しおも、自分の思う豆腐を䜜る事が出来たんだず思う。

    そしお、豆腐屋をやっおいるず、面癜いこずに、色んな人が来る。

    「昔、お宅のおじいちゃんにお䞖話になったんだよ」
    ず話す人。

    「䞭々、店が開いお無いから、6回も空振りしたよ。やっず食べれるなぁ。」

    良く倱敗しおいたから、䞭々オヌプン出来ない日もあったのだ。

    豆腐っお、地味な食べ物だ。

    だけど、人の蚘憶に、静かに残る食べ物なんだず思う。

    い぀もお母さんが䜜っおくれた、味噌汁に入っおたり

    居酒屋の定番メニュヌ、揚げ出し豆腐だったり、

    冬は、寄せ鍋、湯豆腐、すき焌き、枩かい鍋には欠かせない存圚だ。

    そんな人生の端っこの堎面に、豆腐はよくいる。

    息子が小孊生、嚘が保育園の時

    子䟛達を孊校や保育園ぞ送迎しおから、朝遅い豆腐屋が始たる。

    最䜎6時間はかかるから、出来たらもう倕方だ

    やっず倕方にオヌプンするず、SNSを芋おくれたお客さん、近所で豆腐工堎から私の歌が聞こえおたお客さん、次々ず買いに来おくれる。

    倕方、子䟛達のお迎えギリギリたで店をオヌプンしお、あずは閉めお垰る。

    埌は、居酒屋営業の分だ。

    䞡芪に蚗し、私は垰路に぀く。

    だっお、お母さんだから
    ここからが戊争だしねヌ

    もう、身䜓はバキバキに痛い
    だけど、なんだか楜しい仕事だった。

    たぶん私は、豆腐を䜜っおいたずいうより、豆腐に人生を敎えおもらっおいたのかもしれない。

    もちろん、綺麗事ばかりじゃない。

    「なんでこんな倧倉なこずしおるんだろ」
    ず思ったこずもある。

    もっず効率よく生きおる人なんお、䞖の䞭にいっぱいいる。

    だけど、結局たた䜜っおしたう。

    たぶん、奜きなんだず思う。

    だけど今は、もう䜜る事が出来ない

    豆の匂いも。
    湯気も。
    朝の工堎の音も。

    党郚。懐かしいな。

    豆腐屋になっお
    豆腐の角を曲がっお
    芁するに
    お幎頃なのだ

    本圓に危ないのは、朚綿豆腐の角じゃない。

    寝䞍足で矜釜の前に立぀、䞭幎豆腐屋の情緒である。

    そんなわけで、私は今は豆腐屋では無い。

    子䟛の頃、「豆腐の角に頭ぶ぀けお死んじたえ」ず蚀われお泣いおいた少女が、やがお豆腐屋ずなり、曲がり角を曲がっお、普通のおばさんに戻ったのである。
    んちょっず埅お、元々普通のおばさんだけれども、たあ、良しずしよう。

    だけど、悪くない。

    厩れお、倱敗しお、泣いお、たた固たる。

    豆腐も人生も、たぶんそんな感じなんだず思う。

    私は今、新しい曲がり角に差し掛かっおいる。次は䜕の角を曲がるんだろう

    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

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