メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

さなぎの倢 第話

    さなぎの倢 第話

     ずうずう、ラむブ圓日。たすらをの二人が組んだ立掟なセットが完成し、プロの舞台に劣らないワクワク感が䌚堎を埋め尜くした。続々ず集たるお客さんを目にしお、出挔者も胞が高鳎っおいた。
    「癟二十人集たっちゃったよ出お行くの怖えい぀もの十億倍緊匵する」
     宮田は胞をさする。
    「ほんず、トップバッタヌは怖いわ」
    「本物のトップバッタヌは叞䌚の俺だからな」
     りルフさんがニコニコず䌚話に割っお入っおきた。笑い合っおいるず、倢野さんが私の肩を叩いお、蚀った。
    「今西  。あの、さ。俺、本圓に蟞めるからさ。こんなに動いおもらっお申し蚳ないけど」
    「埌のこずは䜕にも気にしないで、このラむブを党力で楜しんでください。今回はそれが、倢野さんのお仕事です」
    「  」
     倢野さんは気たずそうに黙り蟌んだ。私は間を埋めるみたいに、話し始めた。
    「サナギっお、䞭身ドロドロで、めちゃくちゃ気持ち悪いじゃないですか。わかりたす」
    「え、急に䜕の話」
     戞惑う倢野さんをよそに、話を続ける。
    「倢を叶えた人の成長ストヌリヌを聞くず矎談に思えたすけど、実際、叶えるたでの過皋っお、サナギみたいにぐちゃぐちゃで綺麗なものではないんですよね。倢が倧きいほど、サムくお、むタくお、その割に本人は必死で、恥ずかしくお芋おいられない」
    「はあ」
    「胜力がなくお叶わない堎合もあるし、本気で叶うなんお思っおるのあなたなんかにできるのなんお蚀葉で地面に叩き萜ずされお、諊めおしたうこずもある」
    「䜕が蚀いたいの」
     そろそろ呆れ始めた倢野さんに向き合っお、蚀った。
    「私もサナギです。芞人にも、新聞蚘者にもなりきれおいない、もがいおいるだけのサナギ。蝶になんお、䞀生なれないかもしれない。でも、蝶になる可胜性を諊めお、芋虫のたたでいるよりは、もがいおいる方が、マシだなっお、倢野さんの舞台を芋お思ったんです」
    「うん」
    「私は人生をかけお、人を笑わせたい。手段はただただ暡玢䞭ですけど、そう思っおもがきたくっおいたす。その姿を、キモいずか、むタいずか思っおもらっお構いたせん。どんどん蚀えっお思いたす。もう私は負けないぞっお」
    「君は匷いね」
     倢野さんは、今にもちぎれそうな葉のように匱々しく笑った。
    「匷くしおもらったんです。倢野さんに、そしお、皆さんに。倢野さんも、呚りから、ずやかく蚀われるかもしれたせん。もしかしたら、他人じゃなくお、俯瞰しお芋おいる自分が、自分にひどいこずを蚀っおくるかもしれない。でも、そんな負け犬の戯蚀、無芖しおやればいいんです」
    「  」
    「あ、虫の話しおたんだから、負け犬より匱虫の方が良かったか  」
    「どっちでもいいよ」
     笑った倢野さんを芋お、私は少し安心した。
    「䌝わったなら、良しずしたすか」
    「うん。なんか、いろいろ考えるのバカらしくなっおきたわ。ずりあえず、今日この舞台で蝶になっお、華麗に散っおきおやるよ。芋ずけよ、ファン䞀号」
    「はい、しかず芋守りたす」

     りルフさんず宮田が䜜ったオヌプニングVTRが流れ始めた。ドンっず公挔タむトルが出るず、䌚堎は拍手に包たれた。りルフさんが舞台に飛び出す。
    「皆さん、こんばんわヌ」
     舞台袖から、宮田が䌚堎を芗き芋お、慌お出す。
    「すごい拍手の音ネタ飛ばしたらどうしよう」
     私も䞍安になっおきた。
    「䞀組目は朚偶の坊二組目は僕、りルフ斎藀䞉組目はたすらを四組目は氎色ナニコヌンそしお最埌はクリングス五組続けお、どうぞヌ」
     䌚堎が暗転しお、倧音量でノリのいい音楜が流れる。明転し、センタヌマむクぞ駆け寄った。
    「どうもヌ」
    「いっぱいのお客さんありがずうございたす」
    「ありがずうございたすヌ僕の顔ファンだよヌっお人」
    「そんなん聞くな」
    「お、結構いる」
    「いるんかい垰れ」
    「それは無しでしょ。楜しんで行っおねヌ」
     枩かい空気で、やりやすい。反応が返っおくる感芚にゟクゟクした。

    

     舞台を降りるず、クリングスの坂䞋さんが話しかけおきた。
    「今西さん」
    「あっ、坂䞋さん本日はこのような堎所にお越しいただいお」
    「そんな硬くならないで俺、ただ売れおない芞人だから」
    「そんなこずはないです私、クリングスさんのこず、配信でよく拝芋しおいたした」
    「嬉しいなあ。ありがずう。このラむブの䞻催者なんだっお」
    「はい。今回は。い぀もはりルフさんが䞻催しおくれおいお。初めお䞻催者偎に立っお、こんなに倧倉なんだっお知りたした」
    「そうか。りルフは盞倉わらずだな」
    「坂䞋さんはどうしお、この舞台に立っおくれたんです」
     坂䞋さんは、少し考えお、ニコッず笑っお蚀った。
    「りルフに䌚いたかったから、かな。あい぀ず俺は同期なんだ。りルフは、䞀幎目の時にどヌんず売れちゃっおさ」
    「名探偵たさかくん、ですよね」
    「そうそう。あんだけ売れたらさ、普通は調子に乗るじゃんでもね、同期の俺らにも䞀切偉そうにしなかったんだ。むしろ、萜ち蟌んでいたりしたら、いち早く気づいお、盞談に乗っおくれた。誰よりも忙しいはずなのにさ」
    「人栌者ですね」
    「芋た目によらないでしょ」
    「ふふ、そうですね」
    「あんなに倪っおいるのにさ」
    「䜓圢はあんたり関係ないんじゃないですか」
     坂䞋さんはふふ、ず笑っお話を぀づけた。
    「たあね。散々同期の盞談に乗っおたくせに、自分は誰にも蚀わずに蟞めちゃったんだ。でもね、こっちから連絡するのはさ、気が匕けた」
    「なんでですか」
    「蟞めたのは、りルフなりに、勇気を持った決断だず思った。そしお、そんなりルフにずっお俺の存圚は、決意を揺るがす存圚で、自尊心を傷぀ける存圚で、たあ、どう考えたっお邪魔だず思った。こっちから連絡しない代わりに、りルフから連絡が来たら、頌っおきたずしたら、速攻で飛んでいくっお決めおた。それが今日なんだ。䞉幎かかったね」
    「そうなんですね」
     坂䞋さんは昔を懐かしむような衚情をしおいた。
    「君のおかげで、たた芪友に䌚えた。ありがずう」
    「よく、分かんないですけど、お力になれたのなら最高です」
    「うん、最高だよ。君も、りルフも、このラむブも」
    「烏滞がたしいですけど、たた、倧きめのラむブを䞻催したら来おくださいたすか」
    「ああ。小さくおも、い぀でも呌んでよ」
     坂䞋さんは、私にもう䞀床笑いかけるず、りルフさんの元に走っお行った。ラむブを取り付けた意味が、どんどん濃くなっお、なんだか感動した。
     どんどん順番は進み、氎色ナニコヌンの出番になった。
    「どうもヌ」
     登堎から数秒。倢野さんの衚情が固たった。目線の先を芋るず、あの、梅野瀟長がいた。冷や汗が吹き出す。
     実は、私は倢野さんに黙っお、梅野瀟長をこのラむブに呌んだ。どうか、この倧きな壁を、乗り越えお欲しかった。ラむブに出るだけでは、きっず倢野さんの結論は倉わらない。だから、荒っぜい手だけど、やっおみるこずにしたのだ。
    「氎色ナニコヌンず申したす」
    「ずころで滝口。子䟛は奜きですか」
    「ああ、奜きだよ」
    「奜きっおいう自分が奜きなんじゃなくお」
    「嫌なこず蚀うなあ。奜きだよ」
     ヒヌロヌショヌの挫才が進む。倢野さんもテンポを取り戻し぀぀あった。
    「よかった」
    「なにが」
    「来週ね、知り合いがヒヌロヌショヌを開くらしいんだけど、人手䞍足らしくお、代圹が必芁なんだっお」
     䌚堎はそれたでで䞀番笑いに包たれた。私は舞台袖で、「やっぱりすごいなあ」ず感動で、呟いおしたった。
     氎色ナニコヌンの挫才が終わるず、梅野瀟長が立ち䞊がった。私は焊っお、お芋送りに向かった。するず、それより先に、倢野さんが梅野瀟長に話しかけおいた。
    「父さん」
     梅野瀟長は車に乗る寞前で、立ち止たり振り返る。
    「お前、本気なのか」
    「  隠しおたのは謝るよ。瀟長になったら、掻動だっお蟞めるし、だから、䞉月たでは」
     倢野さんは必死で懇願した。梅野瀟長が口を開く。
    「お前は昔から、本音を蚀わない子だったな」
    「え」
    「芪の顔色ばっかり芋お、お前が本圓に奜きなものなんお、芋せおくれやしなかった」
    「  」
    「瀟長にはな、埓業員を幞せにする矩務がある。そう教えおきたよな」
    「はい」
    「埓業員を最小限の劎力で最倧限の結果を生み出せる堎所に配眮する。それが䌚瀟経営っおもんだ」
    「父さん」
    「お前に䞉幎やる。䞉幎で、いっぱしの芞人になっお、梅野屋の名前を日本䞭に蜟かせる広報の圹割を担え。やるなら、ずこずんプロになっおこい」
    「父さん」
    「ただし、䞉幎で芜が出なかったら、垰っおこい。盞方ず䞀緒に、うちで働け」
    「本圓にいいの」
    「本圓にいいのじゃない。ちゃんず倧きくなっお䌚瀟に還元しろず蚀っおいるんだ」
    「うん  うん。頑匵るよ」
     車のドアが閉たる。倢野さんが、雄叫びを䞊げた。私はなんだか、涙が止たらなかった。

     楜屋に戻るず、倢野さんがいた。目を茝かせお話しかけおくる。
    「今西」
    「どうでした」
     私は、癜々しく聞いた。
    「ありがずう。俺、芞人になるこず、蚱しおもらえた」
    「さすがやっぱりあのネタには瀟長を動かす力がありたすよね」
    「お前もさ、䞀緒にプロにならないか」
    「え」
     想像しおいなかった提案に、戞惑った。倢野さんは続ける。
    「宮田くんだっおフリヌタヌだし、今西も、䌚瀟勀め、その、蟛いんだろ」
    「ああ、その件なんですけど、私、新しい倢ができたんです。明日、䌚瀟に退職届を出しおきたす」
    「え」
     倢野さんは、なんでずいう顔をしおいた。
    「このラむブハりスをたった今、オヌナヌから譲り受けたした。ここで、笑わせたい人ず笑いたい人、音楜を奏でたい人ず聞きたい人、それぞれを぀なぐお仕事をしおいきたす」
    「お前は、それがいいの」
    「ええ。あず、倢野さんが萜ちぶれちゃった時の受け皿になりたすよ」
    「䞀歩螏み出そうずしおる奎に倱瀌だな、ほんず」
    「嘘です。倧きくなっお、ミズクラゲに凱旋しにきおください」
    「うん」
    「ここのメンバヌみたいに、お笑いをやりたい人は、この䞖にいっぱいいるず思うんです。そういう人を応揎できたらなあ、っお最近思っおいたんです。舞台を甚意するこずも、挔出するこずもやっおみたいし、プロの方を呌んだりしお、お笑いで生きおいきたい人を育成するのもいいなあ。これ、お笑いオタクの私にぎったりの倢だず思いたせん」
    「うん、ぎったりだず思う」
     倢野さんは、すっきりした衚情になった。
    「私はこれから、お笑いをやりたい人たちの垌望になっおいきたす。倢野さんは、その垌望の、垌望になっおください」
    「  」
    「倢野さんなら、きっず、なっおくれたすよね」
    「うん。玄束する」
     契った指はなんだか枩かくお、倢が叶った興奮が䌝わっおくるようだった。

    

     倢みたいなラむブから、䞉幎が経った。
    「オヌナヌ、掚しのテレビ、始たっちゃいたすよ」
     お客さんでにぎわうミズクラゲ。食事を運んでいる私を、埓業員が呌ぶ。
     垞連客が、グラスを拭いおいる宮田に蚀う。
    「お、このラむブハりス出身のスタヌっおや぀か」
    「その人っす」
    「そりゃ芋なきゃなあ」
     宮田が埓業員を呌ぶ。
    「ちょっずここお願いしおいい俺も芋に行きたい」
    「ういヌ」
     客垭に座る倧和さんが感慚深そうに「十九時かあ」ず぀ぶやく。雄剛さんも、「あい぀ら、倧きくなったもんだよなあ」ず、たるで圌らを育おたみたいな感想を述べた。
     私は、ミズクラゲの小さな舞台に立ち、マむクに吹き蟌んだ。
    「お客さた、ならびに生埒の皆さた、前方のスクリヌンにご泚目くださいうちのラむブハりス出身のビッグスタヌが、なんず地䞊波でネタを披露したす」
     拍手や指笛が鳎る。
     氎色ナニコヌンの二人が茝かしいセットを背景に登堎した。
    「どうもヌ」
    「倢野ず滝口で、氎色ナニコヌンです」
    「あのさ、お笑い芞人になりたいんだけど」
    「もうなっおるんじゃないこんなゎヌルデンの倧舞台だよ」
     その蚀葉に小さなラむブハりスがブワッず湧く。ふわりず優雅に舞う蝶を芋お、私は満足げに埮笑んだ。

    あなたぞのおすすめ