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【文学フリマ挑戦】#18 一番読まれていた記事を、ピン留めから外した話|MMPP Publishing

    ▶ 1つ前のお話はこちら

    「最初の1本、どれを読めばいいですか?」

     そんな問いが、来ることがある気がしていた。

     気がしていた、というのは、実際に来たことがあるわけではないからだ。
     ただ、来ないとも言い切れない。
     むしろ、来ない方が不自然な気もしている。

     作品は並んでいる。
     どこからでも読めるようにしている。
     そういう設計にしている。

     ……はずだった。

     でも、人は迷う。
     特に、入口が多いときほど迷う。

     迷うなら、入口を決めてしまえばいい。
     そう思ったのが、ピン止めの変更だった。

     最初は、#1の記事だった。

    「#1 文学フリマを知って個人レーベルを立ち上げた話」

     これは強かった。
     強すぎるくらいに強かった。

     一番読まれていた。
     一番スキも付いていた。
     実際、そこから人が入ってきてくれていた。

     つまり、入口として完成していた。

     だからこそ、そこに置き続けるのが正しい気もしていた。

     でも、ある時から違和感が出てきた。

     これは入口ではあるけれど、“今の入口”ではないのではないか。

     レーベルは変わっている。
     記事も増えている。
     章も増えている。
     棚もできている。

     なのに入口だけが、最初のまま止まっている。

     それが、少しだけ引っかかった。

    「どこから読んでもいい」

     そう言っている。

     実際、どこから読んでも成立するように作っている。

     1話ごとに完結している。
     途中から読んでもいい。
     気になったところだけでもいい。

     そういう設計にしている。

     でも同時に、もう一つの現実もある。

     どこからでもいいと言われると、
     人は逆に、どこから入ればいいのか分からなくなる。

     自由は、迷いにもなる。

     だから考えた。

    「最初の1本問題」

     せっかく書いた。
     せっかく並べた。
     でも、入口がなければ、そこにあることすら気づいてもらえない。

     本棚の隅に置かれたまま、誰にも見つけてもらえない本みたいで、それは少し寂しい気がした。

     どれを最初に読むかで、この場所の印象は変わる。

     それなら、ちゃんと整えた方がいいのではないか。

     そう思った。

     そして、ピンを変えた。

     相談はしていない。

     誰かに決めてもらうことでもないと思った。

     ただ、ひとつだけ引っかかっていたのは、
     その判断が正しいかどうかではない。

    「一番読まれているものを外していいのか」

     そこだった。

     あの記事は、最初から私を支えてくれていた。
     読んでくれる人がいた。
     スキも付いた。
     実際、そこから人が入ってきてくれた。

     だからこそ、外すのが怖かった。

     積み上げてきたものを、自分で壊してしまうような気がした。
     何度か戻そうかとも思った。

     でも、もう一つの声もあった。

     それは数字ではない。

    「今の入口として、それは本当に適切か」

     という声だった。

     正直に言えば、迷っていた。

     かなり迷っていた。

     結局のところ、どちらでも成立する状態だった。
     だから余計に厄介だった。

     最終的に決めたのは、理屈というよりも感覚だった。

     今のレーベルは、もう「始まりの話」だけではない。
     ならば入口も、それに合わせるべきではないか。

     そう思った。

     ピンを差し替えた、その瞬間、少しだけ違和感が残った。

     あれほど支えてくれていた記事を外すというのは、思っていたより静かに重かった。
     でも同時に、少しだけ軽くもなった。
     その軽さの正体を考えていたとき、もう一つの感情が出てきた。

     それは、整った判断でも戦略でもなくて、「そもそも案内記事って必要なんか」という声だった。

     作品は作品のはずだった。
     どこから読んでもいいと言っている。

     なら、入口を作ること自体が、少し矛盾しているのではないか。

     そんな気もする。
     でも現実には、迷う人はいる。

    「どこから読めばいいですか」

     もしそう聞かれたら、何も用意していない状態の方が不親切かもしれない。
     そういう理屈もある。

     つまりこれは、正しさの話ではない。
     どちらも間違っていない。
     ただ、どちらを優先するかだけの話だ。
     その調整の結果が、今回のピン変更だった。

     そして気づく。

     これは単なる整理ではない。
     運営の話でもない。
     たぶん怖かったのは、誰にも見つけてもらえないまま、終わってしまうことだった。

     作ることだけを考えれば、作品は静かに並んでいく。
     でも、届かなければ、そこにあることすら知られない。

     だからといって、読まれることばかり考え始めると、今度は作品の方が窮屈になる。
     その間で、ずっと迷っている。

     たぶん一番近いのは、「読まれること」と「作ること」の境界線。
     そんな気がしている。

     結局のところ、やったことは単純だ。

     一番読まれていた記事を外して、今の構造に合うものを前に出した。

     ただそれだけだ。

     でも、その「ただそれだけ」の中に、少しだけ言葉にならないものが混ざっている。
     迷いとか、違和感とか、あるいは、まだ整理しきれていない何か。

     ピンを変えたあと、画面を見ながら思った。

     これでよかったのかどうかは、まだ分からない。
     でも少なくとも、今の状態には合っている。

     そして、もう一つだけ思った。

     たぶんこのレーベルは、完成していくものではなくて、ずっと調整し続けるものなのかもしれない。

     最初の1本は自由でいい。
     でも、最初の1本で迷わせたくはない。

     分からないけれど、今は、この入口でやってみようと思う。

     答えは、たぶん、もう少し先にある。


    ▶ #19 数字の呪縛を越えて。通り過ぎる四百ではなく、立ち止まる三百
    ▶ #17 記事整理、ようやく話が始まった気がした。

    ▼ 文学フリマ大阪14への軌跡|一覧はこちらからどうぞ

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