
憧れをさがしてる
「あれはなかなか出てこないよ。」
店主はそう言った。
僕は楽器屋にいた。
たまにしか行かないが、でも薄く長い付き合いのある店だ。
「何とかならないですかね。ネットは見てるんですけど…」
いつか手にしたいと思っていたアコースティックギターを探すことにしたのだが、それがすぐに見つからないのは承知の上だ。
「そりゃ妥協すれば手に入るよ。でもそこじゃないでしょ?中古で出てくるのを気長に待つしかないね。」
僕が欲しいギターは少しだけマニアックな仕様だ。ある一点、しかも音に影響しない装飾の部分。
ここさえ目を瞑れば新品で手に入るのだけれど、どうしてもそこは首を縦に振れない。
「色にはそんなこだわりないんで、いい感じのが出てきたら連絡ください。」
僕は申し訳程度にギター弦を買って店を出る。
こだわりがないわけではない。それでも手に入る可能性が低い今、間口は広く取っておくほうが良いと思ったのだ。
別段、アコースティックギターが必要な用事があるわけではないし、その予定もない。
そもそも1本持っている。しかも、探している物と同じメーカーのものを。
抱えやすいようにあえて小ぶりのものを選んで気に入っているのだが、実のところ、当時もこの探しているギターが手に入らなかったので代わりに買ったものだ。
でも、なぜ今そのギターを探しているのか。
多感な時期、20万人を集めたライブがあった。
そのステージで使われていた1本。当時、 その映像をニュースや雑誌、ビデオで見るのが精一杯だったけれど、インパクトは強く残っていてずっと頭の片隅にある。
いつか手に入れよう。
けれど、いつかは勝手にやって来ない。老いは毎日少しずつ進み、動いている指もいつまでも今のままではない。そう考えると手に入れるのは今ではないかと思ったのだ。
だが、発売されてそこそこ年数は経っている。
過去にリイシューと称して復刻版が期間限定で発売されていたようだが、いつかいつかと思うあまり、アンテナを立てていなかったタイミングで販売され、その期間を終えてしまっていた。
楽器を買う時、少しだけ縁のようなものを感じることがある。
探していたものが旅先で突然現れたり、いつまでも出てこなかったり。そういった意味では縁がないのかもしれないが、だからこそ手に入れたい。
先日、あのライブ映像を見た。
いよいよ本格的に探している今だからだろうか。
改めて見てもやはりすごいライブで、そのギターはとても印象的だった。
その音はずっと僕の根幹にある。
僕は憧れをさがしてる。