
巡りの森のミッケ あとがき
あとがき
『巡りの森のミッケ』を、
ここまで読んでくださって、
本当にありがとうございました。
この物語は、
「特別な誰か」の話ではなく──
きっと、 誰の中にもある “巡り”の物語です。
疲れた日。
言葉を飲み込んだ日。
頑張りすぎて、
自分の声が聞こえなくなってしまった夜。
そんなとき、
わたしたちの中にある“森”も、
静かに影響を受けています。
風が止まる日もある。
霧が深くなる日もある。
光が届かなく感じる日もある。
でも、巡りは、
なくなってしまったわけじゃない。
ただ、 少しだけ、
止まっていただけ。
『巡りの森のミッケ』は、
そんな“巡り”を、
森という景色にした物語でした。
この森に流れているものは、
東洋医学やアーユルヴェーダで
とても大切にされている 「気」の流れです。
気が巡ることで、
水が巡り、
血が巡り、
感情が巡り、
言葉が巡り、
現実までも、
少しずつ動き始めていく。
逆に、 気の流れが止まると、
森にも静かに影響が現れます。
めぐみの丘で、 受け取れなくなること。
いのちの泉で、 力が湧かなくなること。
霧の門で、 閉じてしまうこと。
ひかりの広場で、 揺れてしまうこと。
風の小径で、 前へ進めなくなること。
でも、 この物語で描きたかったのは、
「悪い場所を治すこと」 ではありません。
止まってしまった自分を、
責めることでもありません。
大切なのは、
“今の自分に合う流れ”を、
少しずつ思い出していくこと。
未喜は、 森の中で、
何度も試しました。
止まってみたり。
休んでみたり。
受け取ってみたり。
言葉にしてみたり。
うまくいかない日も、
戻ってしまったように
感じる日もありました。
それでも、 試し続けたことで、
少しずつ、 流れが見えるように
なって行きました。
そして、 その積み重ねが、
『巡りの森のミッケ』 という
物語になりました。
もしかしたら、
人生の流れが変わる瞬間というのは、
そんな小さな“違和感”や、
何でもない“直感”から
始まるのかもしれません。
なんとなく気になる。
なんとなく、 こっちな気がする。
理由はわからないけれど、
少しだけ、 やってみたい。
そんな小さな感覚に従った先で、
景色が変わり始めることがあります。
巡りを試していくことは、
自分の流れを知っていくこと。
そしてそれは、 少しずつ、
“本来の自分”へ戻っていく旅
なのかもしれません。
もしかしたら、
この物語を読んでくださった
あなたの中にも、
もう、 小さな風は
吹き始めているのかもしれません。
もしまた迷ったら、
もし、 止まってしまったように感じたら、
いつでも、 森へ来てください。
ミッケは、 きっと、
どこかで待っています。
そして、 森には、
まだ語られていないことがあります。
風が止まる理由。
霧が深くなる夜。
巡りが戻る順番。
それぞれの場所が、
どんな役割を持っているのか。
未喜もまだ、
その森のすべてを
知っているわけではありません。
だから次は──
ミッケと一緒に、
もう少しだけ、
森の奥へ進んでみようと思います。
巡りの森は、
まだ、 続いています。
そして──
ラスト、
ミッケと目が合った、
そこのあなた。
……もしかしたら、
次に森に行くのは、
あなたの番かもしれません。
2026年5月
新緑の風が、やさしく巡る季節に
月森未喜