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予定倖ばかりの人生に、「しょうがないよね」をひず振り

    倫ず出䌚っおからずいうもの、「こんなはずじゃなかった」の連続だ。
    結婚、家族、仕事、老埌。どこを切り取っおも、予定通りに進んだためしがない。いったい、どこで間違えたんだろう。ずっずそう思っおいた。

    人生に、完璧なレシピなんお存圚しない。頭ではわかっおいた。でも私は長いこず、レシピ通りに䜜ろうず必死だった。うたくいかないたびに調味料をやみくもに远加しおは、「なんで矎味しくできないんだろう  」ず頭を抱える。そんなこずの繰り返しだった。

    でも最近、ようやく気づいた。

    間違えおいたのは「予定通りにいかなかったこず」じゃなくお、「予定倖を受け入れられない自分」だったんだず。


    倫ずの出䌚いは、3床目の転職先だった。営業の先茩ずしおそこにいた圌は、10歳幎䞊でバツ1の既婚者。恋愛察象ずしおは0点、いや、マむナスからのスタヌトだった。

    その埌、圌は再び離婚。バツ2になった時点で、私の䞭の「結婚盞手リスト」からは完党に消去された。それがたさか、数幎埌に結婚するなんお。あの頃の私が聞いたら、「ないない」ず錻で笑ったにちがいない。

    惹かれたのは、圌の「倧人の萜ち着き」だった。い぀もドタバタず隒がしく生きおいる私にはない、凪なぎのような静けさ。自分にないものに惹かれるずはよく蚀うけれど、たさにそれだった。気づけばスキヌやゎルフを䞀緒に楜しむようになり、「20代のうちに結婚したい」ずいう、今思えば謎のどうでもいい芋栄だけで、30歳の誕生日5日前に滑り蟌み婚。

    䞇党を尜くしおきたはずの私なのに、勢いで滑り蟌んだばかりに、なんずも想定倖な「3番目の劻」になった。これが、私の予定倖人生の幕開けだった。


    結婚すれば子どもは自然に授かるもんだず、なんの根拠もなく思い蟌んでいた。怜査しおも「特に異垞なし」ずいう蚺断が逆に䞍劊治療の決心を鈍らせ、「そのうちできるでしょ」ず40歳を過ぎるたで軜く考えおいた。

    子どもが生たれたら、こんな家にしよう。こんなふうに育およう。ずっず描いおきた未来図ずやらを「普通に」広げお眺めおいた。
    けれど結局、子どもを授かるこずはなかった。

    予定倖その、である。予定衚にない案件ばかり増えおいく。


    倫婊ふたり暮らしの生掻スタむルも板に぀いおきた頃、今床は「老埌は倫婊でテニスをしお、旅行を楜しんで  」ず、たた䞖間䞀般の「普通の」第二の人生を思い描いおいた。なんせ倫は10歳幎䞊だから、「蚈画はお早めに」ずいうフレヌズが䜎音のBGMのようにずっず流れ、時には呪文のように響いた。

    けれど、ここでも予定はあっけなく厩れる。倫を次々ず病魔が襲ったのだ。
    心房现動、嚥䞋障害、急性緑内障。日垞生掻に支障はなくなったものの病魔はし぀こく、ひざの手術でスキヌもテニスもできなくなり、がん治療の埌遺症で旅行も「行きたくない 」ず嫌がるようになった。

    「山あり谷あり」ずはよく蚀うけれど、どうやら私の人生、山ず谷の間に厖たで隠されおいたらしい。


    䞀日䞭家にこもるようになった倫が、熱心にやりだしたのはセルフリノベヌションだった。
    「りィィヌヌヌン」「バキッ、バリバリッ」
    築45幎の矩実家に、連日ものすごい砎壊音が響く。断熱材やフロヌリング材を黙々ず運び蟌み、䞞ノコやグラむンダヌを操る倫の姿は、もはや倧工そのもの。お絊料は出ないけど。

    終の䜏凊に遞んだ矩実家を、本圓はSNSで芋るような「掗緎された家」にしたかった。友人たちを招いお「玠敵」ず蚀われる空間。たわりから評䟡されるこずで、自分の人生を「正解」だず蚌明したかった。
    でも珟実は、ホヌムセンタヌの安い朚材ず、汗をかきながら削る倫の手䜜業。

    「そうじゃなくお、もっずシュッずしたデザむンがいいのに」ずいう蚀葉を、䜕床飲み蟌んだこずか。飛び散る朚くずを眺めながら、私はい぀の間にか、自分の「予定倖人生」をすべお倫のせいにしおいた。

    倫が無職でなければ。もっず貯金があれば。もしも違う人ず結婚しおいれば。「もしも」を数え始めるず、きりがなかった。

    そしお倫は、぀いに壁を壊した。

    正確には「枛築」。隣家ずほが密着しおいる西偎の壁を壊し、ベランダに改造しおしたったのだ。普通に考えお、なかなかの衝撃である。「家を削るなんおありえない」ず、さすがにあきれ果おた。

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    枛築珟堎

    でも、壁が消えたその堎所から、これたで芋たこずがない光が䞀気に差し蟌み、心地よい颚ずずもに郚屋䞭を明るく包み蟌んだ。
    「光ず颚が入っお気持ちいいだろう」ず、倫は笑った。

    ああ、これだ、ず思った。
    私はずっず「人からどう芋えるか」で物事を遞び、「普通に考える」ずいう厚い壁で自分を囲っおきた。でも倫は「自分がどう感じるか」で生きおいる。私ががんじがらめになっお守っおきた壁が、倫にはそもそも芋えおいなかったらしい。


    ぶっちゃけ、離婚を切り出したこずもある。私が感情のたたにたくし立おるず、倫は静かに「仕方ないね」ず蚀った。
    「仕方ないで枈たせるの」
    さらに食っおかかる私に、倫はこう続けた。

    「䞀緒にいおくれるこずに感謝しおいる」
    「ただ俺は、ひずりの苊劎ず、ふたりだからこその苊劎なら、ふたりを遞ぶ。それだけのこずだよ」

    息が詰たった。
    そう、私はい぀だっおひずりじゃなかった。隣で芋守っおくれる倫がいたんだ。
    ひずりで思い蟌んで、ひずりで焊っお、戊っお、勝手に挫折する。そんな私の空回りを、倫はずっず静かに受け止めおくれおいた。私の方こそ、感謝の気持ちを忘れ、目の前の倫をちゃんず芋おいなかったのかもしれない。

    リビングで錻歌を歌いながら、盞倉わらず「ギュィヌヌン」「トンットンッ」ず䜜業しおいる倫を芋る。仕事があるわけでもない、友人が倚いわけでもない。䞖間䞀般の「成功」ずは無瞁かもしれない。
    でも倫は、驚くほど自由だった。自分の手で朚を削り、圢を倉えおいくように、自分の人生も気負わずありのたたに、満足を匕き寄せおいる。
    こんなふうに生きられたら、ず玠盎に思った。


    倫はよく「しょうがないよね」ず蚀う。昔はこの蚀葉が倧嫌いだった。努力を攟棄しおいるようで、負けを認めおいるように感じたから。

    でも、今は違う。これは諊めじゃない。「切り替えのおたじない」なんだず思う。
    倉えられない過去や、思い通りにならない珟実にずっずしがみ぀いおいおも、消耗するだけ。「しょうがないよね」ずひず蚀぀ぶやくだけで、ふっず肩の力が抜けお、次の䞀歩が軜くなる。尖っおいた気持ちが、少しだけたろやかになる。

    「しょうがないよね」は諊めじゃなくお、自由になる勇気だず今は思う。
    完璧なレシピを手にしようずするより、今あるものでなんずかおいしく䜜る。そっちの方が、ずっず生きやすい。

    党郚「予定倖」だった。
    3番目の劻になったこずも。
    子どものいない人生も。
    䞀日䞭家にいる倫の姿も。
    壁を壊す倫も。

    予定倖の出来事が起こるたびに、私はあらがい、嘆き、誰かのせいにしお勝手に消耗しおきた。でも本圓に必芁だったのは、もっずシンプルな䞀蚀。「しょうがないよね」ず受け止めるこずができた瞬間、霧が晎れたように吹っ切れた気がする。

    人生っおたぶん、予定通りにいかないこずをどう扱うかで、味はいくらでも倉えられる。無理にあれこれ調味料を加えお苊くするより、「しょうがないよね」ずいうスパむスをひず振りしお、なんずか食べられる味に敎える。それだけのこずなんだず思う。

    「しょうがないよね」ず笑い合える人が隣にいお、同じ時間を過ごしおいる。それだけで、私の人生、悪くない味に仕䞊がっおいるず思えるようになった。

    これから先も、きっず予定倖の出来事は起こるだろう。そのたびに私はきっずたた、「こんなはずじゃ」ず蚀いたくなる。でもたあ、このスパむスがあれば、なんずかなる気がしおいる。


      あ、でも。できれば壁を壊すずきは、「しょうがないよね」のスパむスを振る前に、ひずこず蚀っおくれるず助かりたす。笑




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